バン「なんだよ、話って。なんで俺に?」
げんじゅつし「ありがとう。エド、人間の仲間、なれた。エドは人間。自分達、魔物。生き方、違う」
バン「感謝されるような事はしてないぞ。人間だって様々いるんだからな。エドは俺達の大事な仲間だ。だから、俺はあんた達が許せない。家族と信じていたエドの心を踏みにじった」
げんじゅつし「........わかっている。自分達だって........こんな事.....したくなかった」
げんじゅつしはそのまま崩れ落ちると、涙を流し始めた。それを見た周りの魔物達も泣き始めたり、涙を滲ませていた
バン「.....さっき、エドに帰る場所はないと言ったよな。なんでだ?」
ゴーレム「.....○〜#$>\・♪☆」
泣いて話せなくなったげんじゅつしに変わってゴーレムが話し始めた
バン「エドは元々人間だから魔物の自分達と一緒に暮らすべきではない、か。じゃあ、なんでエドを育てたんだ。話に聞く限りだとエドの父ちゃんが拾ったとか」
げんじゅつし「そう....。ベンガルが、山に捨てられていたあの子を、持って帰ってきた。自分達は猛反対したのだが、ベンガルは聞かなかった。渋々育てていくうちに......自分達に.....ココロが芽生えた。
エドはとてもよい子。可愛く、真っ直ぐで、頑張っていた。自分達もエドにどれだけ救われたか」
げんじゅつしがポツリポツリと話していく。周りの魔物達も黙って涙を流しながら聞いていた
げんじゅつし「エドはきっと、もう自分達の事、嫌いになった。人間として過ごしてもらうために.......魔物の自分達を気にしないでいいように......たくさん傷つけた。皆にもつらい思いをさせた、すまなかった」
げんじゅつしは村の皆に向かって頭を下げた
バン「......馬鹿だな、お前達。なんでそれをエドに言わないんだよ」
げんじゅつし「エドは、必ず自分達を気にする。エドは、ここが好きだから。帰ってこようとする。だから......嫌いになるようにした。こんな事、言えない」
バン「そうか。まあ事情があったのはわかった」
げんじゅつし「.......これでいいと思っていた。思わなければいけない。だが.......こんな気持ちになるのなら初めから........いや、ココロなど芽生えなければよかった」
バン「.......」
バンは静かに涙を流す魔物達を見てそのまま去っていった
その後、プチャラオ村
宿屋
包帯や薬を塗ったエドがベッドに横たわっていた。バンは先程の魔物の話をシルビアとテルマにしていた
シルビア「そう.....。エドちゃんは人間だから、ねぇ。エドちゃんから見たらそんなの関係ないのに。エドちゃんはあの村の皆を家族だと楽しそうに話していたのに」
テルマ「.....エドには、この事話すんですか?」
バン「まだ話さない。ここで話したらエドはすぐに村に戻るだろうからな。エドが目を覚ましたらデルカダールへ帰る。その後でエドには話そうと思う」
テルマ「わかりました」
シルビア「魔物だから、人間だから。確かに全く違う種族だけど、時に分かり合える存在なのに心苦しいわね」
その夜
テルマ「ん......。まだ.....夜か」
テルマがふと目を覚ました。テルマはチラリと周りを見るとまだ真っ暗で夜な事がわかる
シルビア「スゥ......スゥ.....」
バン「メグ......へへ」
近くのベッドにはシルビアとバンの姿はあるが、エドのベッドからはエドがいなくなっていた
テルマ「!?エドがいない?」
テルマはそのまま外に出ていった
プチャラオ村 広場
夜も更けてきて商人の街といえど、流石に静かになり人気もなくなっていた
テルマ「どこ行ったんだ、エドのやつ」
おっさん「お〜、どうした坊主、ヒック。探し物かい?」
テルマが走りながらキョロキョロと見渡していると、それを見た酔っぱらいのおっさんが話しかけてきた
テルマ「あ、すみません。あの、俺と同じくらいの身長で、前髪がこんな感じのやつ見ませんでしたか?」
おっさん「ん〜......あ〜、あの坊主の事か。そいつならちょっと前に、この先にある高台に向かっていったのを見たぜ、ヒック」
テルマ「ありがとうございます!」
高台
テルマ「ハァ、階段が多いな。あ、エ.....ド.....」
長い階段を登って村の高台へやってくると、大きな岩の上にエドが座り込んでいた
エド「.......」
エドは青い毛が生え、爪や尻尾、牙が生えた魔物の姿になっていた。その姿のまま、夜空の月を眺めていた
テルマ「......エド、探したぞ。あまりその姿になるなよな。村人が驚くだろ」
テルマがエドに話しかけながら近づいた
エド「........」
テルマ「おい、エド。無視すんなよ、聞こえてんだろ?」
エド「テルマ」
テルマ「ん?」
エド「お前には、俺が、何に見える?」
エドはつらそうな、悲しそうな表情でテルマを見た
テルマ「.......何言ってんだよ。その姿を見るのは久しぶりだけど、どんな姿でもエドはエドだ。俺の大事な友達だ」
エド「.........俺は、一体何なんだ。人間なのか?魔物なのか?俺は......どっちにもなれない......」
テルマ「エド.....」
エド「俺、知ってるんだぞ。見習い達の中で、俺の事を人間になれない魔物だって言われてるの。別に気にしてはなかったけど、家族の......魔物の皆からは、人間はこの群れにいらないと言われた。人間からは魔物に見られて、魔物からは人間に見られて......。俺は.....俺は.....」
テルマ「エドは人間だ!ちょっと不思議な力が使えるだけだ!見習い達の意見なんか気にするな!俺が帰ったら絶対懲らしめてやる!」
エド「......もうわかんねえよ。俺が何なのか、俺すらもわからねえ。父ちゃんから貰った自慢のこの力も......今は何の役にも立たない」
テルマ「俺はその力で助けられたんだぞ。エドならきっとその力でいろんな人を助けられる!」
エド「......魔物の力、だよな」
テルマ「まあそうだな」
エド「もう魔物になっちまいてえよ。そうすれば俺は、皆にまた家族として迎え入れてもらえる」
テルマ「それは......エド?」
エド「そうだ.....魔物になれば父ちゃんみたいになれる。俺の事を魔物だと言う人間達にも、本物の魔物を見せてやれる。魔物に......魔物に!」
エドは突然力を溜めながら呟き始めた。エドの体からはそれに合わせて怪しい雰囲気に包まれていく。赤いオーラがエドを包み込む
テルマ「な、なんだこれ!おい、エド!!しっかりしろ!」
エド「俺は!!!魔物だ!!!」
テルマの叫び声をかき消すようにエドが叫ぶと、エドに生えていた青い毛は逆立ち、エドの体を覆うように大量に生えてきた。また、尻尾は二つに分かれ爪や牙は更に伸びて凶悪になっている。エドは赤いオーラを纏い、目も黒い目ではなく、真っ赤な目をしている
その姿はまさに、理性を無くした魔物の姿
テルマ「エド!!!」
魔物「ギャオオオオ!!!」
一際大きな雄叫びをあげた。怒りと悲しみと困惑に囚われた、魔物の叫び声は村中全体に響き渡った