宿屋
ギャオオオオ!!!
二人「!?」
突如現れた魔物の気配と咆哮にバンとシルビアが飛び起きた
バン「うおっ!?な、なんだなんだ!?」
シルビア「なに、この気配!?普通の魔物ちゃんじゃないわ!」
バン「この気配....エドが魔物の姿になった時と似てる。あ!二人がいません、シルビアさん!」
シルビア「じゃあ、この異様な気配はエドちゃんが?まずは外に出ましょう!」
バン「はい!」
広場
広場では先程聞こえた魔物の咆哮により、多くの人達が戸惑っていた
バン「悪い、さっき聞こえた魔物の咆哮について教えてくれ!」
女性「は、はい。えっと、突然高台がある方から魔物の声が聞こえてきて」
シルビア「高台の方ね!ありがとう!」
バン「きっとテルマとエドもそこです!急ぎましょう!」
その頃、高台
魔物「グオオオオ!!」
青き獣となったエドが月に向かって咆哮をあげている
テルマ「エド!!大丈夫なのか!おい、返事しろ!」
テルマはエドが立っている大岩に乗ろうとする
魔物「グァォ」
魔物は大岩から飛び降りてテルマの前へと降り立った
テルマ「なあ、本当に....エドだよな?魔物の姿になってるだけだよな?」
テルマはゆっくりと魔物に向かって近寄っていく
魔物「ハア!!」
魔物が手に力を込めると手が赤黒いオーラを纏い始めた
テルマ「!?これ、エドの技のダーク」
ドガァァン!!
テルマが言葉を言い終わる前に魔物はテルマの真横へ移動しており、そのままテルマを殴り飛ばした。テルマの体は勢いよく岩を粉砕して飛ばされていく
テルマ「〜〜っ!!」
テルマの口から勢いよく血が出てくる。また、殴られた場所は薄鎧を突き破って素肌が出ていた
魔物「これが.....魔物」
バン「エド、テルマ!!」
シルビア「キャッ、なんなの、これ!」
バンとシルビアが慌てて高台へとやってきた
魔物「お前らにも見せてやる」
魔物はバンの方へ向かっていく。今度は足に赤黒いオーラを纏い始めた
バン「!?この感じ、やっぱりお前エドだろ!なんでこんな姿に!」
シルビア「これがエドちゃん!?こんなの、本物の魔物みたいじゃない」
魔物「俺は魔物になるんだ!!」
魔物がバンへと蹴りかかる
バン「こい!」
バンが迎え撃とうとすると
シュン!
バン「!?」
魔物が瞬時にスピードをあげて、バンの真後ろへと回った
魔物「はあ!!」
バン「っっ!!」
ガァン!
バンは咄嗟に体勢を変えて体を捻って躱した。それと同時に足を振り上げて魔物の足へと蹴りを当てた
バン「ビッックリした!!速い!!」
魔物「流石バンだな」
シルビア「テルマちゃん!平気!?簡単な応急処置だけど、リベホイムよ」
シルビアは崩れた岩の近くで倒れていたテルマの元へと駆け寄っており、腹部に緑色の魔法陣を描いた。赤くなっていた腹部が緑色に包まれるとゆっくりと傷跡が薄れていく
テルマ「あり....がとう、ございます」
シルビア「何があったの?あの魔物ちゃん、本当にエドちゃんなの?声までそっくりだわ」
テルマ「そう、です。エドは人間にも魔物にもなれないって言ってました。そして、エドが魔物になると言った瞬間、赤い光がエドを覆ってあんな姿に」
バン「赤い光!それ、師匠から、危ねっ!聞いた事、あるぞ!魔物になる力が暴走する時があるって!うお!」
バンが魔物からの猛攻を避けながら大声をだした
シュッ
バン「っまず」
魔物の鋭利な爪がバンの額を斬り、流れた血でバンの視界が一瞬失われた
魔物「おらぁ!!」
バギィッ!
バン「ぐっ!」
その隙に素早くバンの背後に回った魔物がそのまま下に殴り飛ばした。バンはそのまま地面に勢いよく当たってボールのように飛び上がった
バン「ふっ!」
バンはそこから体勢を立て直して魔物と距離を離してシルビア達に近づいた
バン「すみません、シルビアさん。あいつ、俺一人じゃあかなりキツいです。救援お願いします」
シルビア「そうね。アタシも戦うわ、油断出来ないみたいね」
シルビアも持っていた剣を構えてバンの隣に立った
テルマ「ま...待ってください。あの魔物は、エドです!エドを、殺すんですか!?」
バン「.....師匠から、前に言われていた。エドがもし、魔物の力が暴走して人を襲う時があれば斬り捨てろ、と」
テルマ「!!!」
シルビア「ごめんなさい、テルマちゃん。アタシ達にもその話は回っていたの。それに見て、あの魔物ちゃんを。自我があって、友達だと言っていたテルマちゃんを何の躊躇いもなく殺そうとしたわ。あれがエドちゃんだと思えない」
テルマ「そ、そんなの、絶対嫌です!!俺の、俺の大事な友達なんです!!」
テルマは立ち上がってバン達と魔物の間に入った
テルマ「やめろ!エドを殺すな!!」
テルマはバンとシルビアの前に立ち、必死な形相で腕を広げている
シルビア「テルマちゃん...」
魔物「俺は!!魔物になって、家族に戻るんだ!!」
それを見ていた魔物がテルマの背後にやってくる
バン「やめろ、エド!!テルマをこれ以上攻撃するな!!」
ズバッ!!
テルマ「あ......」
ドサ
魔物はテルマの背中を引き裂いた。テルマの背中から爪の跡に沿って血が流れていく
バン「〜〜!!この....馬鹿野郎が!!」
バンは猛スピードで走り込み、倒れたテルマを見つめていた魔物に向かう
シルビア「ごめんなさい、テルマちゃん。もう、うやむや言ってられないわ」
バン「ばくれつきゃく!」
バンが勢いをつけた体勢から素早く連続で足技を魔物に放つ
魔物「いっ...くっ!」
初めの数発は当たるがそのまま素早く足技を回避していく
シルビア「これ以上テルマちゃんを痛めつけるのは、アタシの正義が許さない!!ハア!!」
魔物の後ろへと跳んだシルビアがポーズを決めると魔物の足下がピンク色の爆発に覆われた
バン「うお!す、凄え、シルビアさん!俺も!ひょうけつらんげき!」
ピンク色の煙に覆われる中に氷を纏った槍でバンが乱れ打ちを放った
魔物「グオオオオ!!」
二人「!」
魔物が煙を振り払うように咆哮をあげた。その体は少し傷ついている
魔物「俺の邪魔をするな!俺は、魔物にならなきゃいけないんだ!父ちゃんみたいに強くなって、俺も家族として認められるんだ!!」
バン「そうか。父ちゃんに憧れて、か。なら、その父ちゃんはさぞ残念がってるだろうな!こんな事をする息子になってよ!」
魔物「お前に父ちゃんの何がわかる!!」
バン「大事な友達を傷つける息子になんてなってほしくなかったはずだぜ!魔物になってまで家族になろうとしても何も得られないぞ!」
シルビア「エドちゃん、よく聞いて!村の皆がエドちゃんを追い出したのは、エドちゃんに人間として生きてほしいからよ!魔物になってほしくないから、アタシ達に託したのよ!
そのあなたが魔物になっても、村の皆は嬉しくなんてないわ!だって、村の皆が好きなのは魔物のエドじゃなくて、人間のエドなんだから!」
魔物「.....うるさい.....うるさい!!俺は、俺は、一人になりたくないんだー!!!」
魔物は叫びながらバン達に向かって走り出した。赤くなっている目からは、涙がこぼれていた
二人「!」
バンとシルビアは同時に武器を構えた
魔物「うおおお!!」
ザシュッ!
全員「!!」
テルマ「ぐ.....エド」
魔物とバン達の間にテルマが割り込んできた
魔物の攻撃がテルマの左肩を貫いた
バン「テルマ!!」
シルビア「テルマちゃん!?なんて事を!!」
魔物「テルマ....」
テルマ「ずっと......そんな事思ってた、のか。わかるぞ......俺も一人だった。チャムの世話ばかりで.....友達も出来なくて.....周りの大人も頼れなくて......寂しかった」
テルマが青白い顔で魔物へと倒れかかる。その体を魔物は優しそうに抱き止めた
テルマ「でもさ......俺、にも、友達ができた。エド、お前だよ。ちょっと騒がしかったり......不思議な力持ってたりするけどさ。俺の、初めて出来た、大事な友達だ。
どんな姿でも.....俺の大事な友達だけど。エドは、人間の姿の方が、よく笑ってる。今のお前は......苦しそうだ。そんな顔、見たくない」
テルマはそっと魔物の顔を触る
魔物「........」
魔物を覆っていた赤いオーラが消えていく。それに伴って、逆立つ青い毛や尻尾、牙や爪も元通りになっていく
テルマ「俺と.......ずっと友達でいてくれるん、だろ?そう......言ってくれたもんな」
エド「ああ......ああ......」
エドが涙を流しながらテルマを見つめる
テルマ「はは......泣き虫だな、エドは」
エド「すまねえ......すまねえ.....」
バンとシルビアも武器を閉まって二人の元にやってきた
バン「謝るよりも先にテルマを回復させてやらないとまずい。出血多量で死んじまうぞ」
シルビア「これ使って。せかいじゅのしずく、一瞬で元気になるわ」
バン「は、初めて見た。てっきり空想上の物かと」
シルビア「まあこんな貴重なの使う機会はないわよね。でも、今はそんな事言ってられないわ。はい」
シルビアはテルマの体に振りまくようにしずくをかけると、テルマの周りがキラキラと輝きながらテルマの体についていた傷がみるみるうちになくなっていった
テルマ「おお......凄い、あんなに苦しかったのに楽になった」
テルマは立ち上がって腕や肩を回している
エド「テルマ......本当に」
テルマ「エドが元に戻ってくれて本当によかった」
テルマがエドを抱きしめた。その体は少し震えている
テルマ「お前を.....失うのかと思ったら、怖くて怖くて.....仕方なかった」
エド「.........ごめん」
テルマ「エドは一人ぼっちになんかならないぞ!俺も、皆もいる!家族にはなれないかもしれないけど、ずっと一緒だ!離さないからな!」
エド「ああ........。俺も、テルマ達と一緒にいたい」
テルマとエドは互いに涙を流しながら抱きしめあっていた