デルカダール城門前
マルティナ「待ちなさい!」
マルティナは先程の男を捉え、大きな声をあげた
男性「くっ!」
男性はその声に怯み、振り返ってマルティナを見た。その手には先程取ったと思われるおもちゃが握られている
マルティナ「どうしてこんな事をするの!?あそこにあったのは思い出の詰まった大切な物!それを盗むなんて!」
男性「うるさい、うるさい、うるさーい!!!お前らが悪いんだ!!俺を、この国から追い出したせいだ!!これは報復なんだよ!」
マルティナ「報復?何の話よ!!」
ロベルト「マルティナ様!」
その時、マルティナの後ろからロベルトとルリ達がやってきた
マルティナ「ロベルト!と、ルリちゃんまで!」
ロベルト「走っていくマルティナ様が見えたので後を追ってきました。こいつが、この女の子の言っていた犯人ですか」
ルリ「私のうーちゃんを返して!」
ルリの母「ルリ、静かにしてなさい!」
男性「はっ、覚えているわけもない!俺は昔、この国に住んでいたんだ!だが、仕事をなくして税が払えなくなった俺を、お前達はなんの慈悲もなく追い出した!そのせいで、俺はこんなみずぼらしい生活をしなくちゃいけなくなった!」
マルティナ「税が払えなくなったからといって追い出した?そんな話、お父様からも聞いた事ないわ」
ロベルト「......はっ!思い出しました!こいつ、見た事ある顔だと思ったら!昔兵士だった男です!でも、街の人に恐喝を行って追放されています!グレイグ将軍の部下だったのでグレイグ将軍ならご存知かと」
男性「兵士は力のない一般人共を守ってやってるんだ!優遇されて当然だ!」
マルティナ「そう.....。自業自得ね。少しでも同情の念を向けようとした私が間違っていたわ」
男性「なんだと!!」
マルティナ「その追放は情けをかけたものよ。本来なら牢屋にいるはずなのだから。もしかしたら、更生するかもしれないとしてね。それすらも理解出来ずにこうやって罪を繰り返すのなら、大人しく牢屋に入っていなさい!」
男性「あんなゴミを集めて何になる!あんな物、誰にも必要とされない!つまり、盗みでもなんでもないんだ!」
ルリ「うーちゃんはゴミじゃない!!」
男性「さっきからやかましいぞ、このクソガキ!」
男性はルリに向かって腕に仕込んでいたボウガンを発射した
ドガン!!
ルリ「!?」
ルリの母「駄目!!」
ルリの母が咄嗟にルリを覆った
ロベルト「!」
ロベルトも盾をルリ達に向ける
バキン!
全員「!」
男性「なに!?」
マルティナ「.......」
しかし、ボウガンの矢はマルティナの蹴りで粉々になった
マルティナ「あそこにあるのは、ゴミでも必要とされない物でもない!!誰かの大切な思い出達よ!これまで大切にしてきた素敵な記憶達が詰まったかけがえのない物よ!」
男性「そんな物、何の役にも立たない!」
マルティナ「そんな事ないわ!思い出は、その人を支える大切な物となる!誰かを思い出させる大切な物!誰かの人生の大切な一部よ!!それをそんな風にしか考えられないなんて許せない!ましてや、ただの自業自得に逆上してこんなに多くの人を悲しませてきた!しっかりと罪を償ってもらうわ!」
男性「何が思い出だ、何が大切な一部だ!!そんなものは慰めにしかならない!」
マルティナ「どんな物にも誰かの想いがある。石像にも、人形にも、お花にも、本にも。必ず物には誰かの気持ちや思い出が込められているのよ。この国は、そんな誰かの想いが集まって出来た国よ。この国から、あなたが盗んでいい物なんて何一つとしてないわ!!」
男性「言わせておけば!!」
男は持っていた錆びた片手剣でマルティナに斬りかかった
ルリ「マルティナ様!!」
ガキン!
男性「なっ....!」
男の持っていた刃物は真っ二つになった
ロベルト「一応、面目は保たせてもらいますよ。マルティナ様なら心配いらないのはわかっていますが、俺の立つ瀬がないので」
ロベルトがマルティナの前に出ていた
マルティナ「ふふ、そうね。ありがとう、ロベルト」
ロベルト「この俺の剣にも、鎧にも、兜にも。数え切れない大切な思い出が詰まっている。お前のような何の思いもないような刃に、俺の剣が負けるかよ」
男性「くっそー!!!」
その後、男は牢屋へと送られていき、盗んだ物の場所も吐いた
デルカダール地方 小さな山の中
穴の中にこれまで盗んだ物が無造作に積まれていた
マルティナ「あったわ。これで全部だと思うんだけど」
ロベルト「わざわざマルティナ様が出向かなくても、俺達兵士が集めて持っていきましたよ」
マルティナ「いいのよ。この件は私が始まりなの、だからなんだって私がやる事に意味があるのよ」
マルティナはリストを見ながら足りない物がないか確認していく
マルティナ「あ」
積まれていた物の下に泥がついたいっかくうさぎのぬいぐるみが落ちていた
マルティナ「これがルリちゃんが言っていたうーちゃんね.....あ」
付いていた泥を払い除けると、角は折れて中の綿が飛び出ていた
ロベルト「あ、もうそんなんになっちゃったんですね。流石にこれは、展示しない方がいいのでは」
マルティナ「.......いえ、ちゃんと展示するわ。ただ、このままだとルリちゃんもうーちゃんも悲しむでしょうから少しだけ私がお手伝いするわ」
ロベルト「お手伝い?」
マルティナ「ええ。楽しみにしてて」