思い出の館が出来てから1ヶ月後
デルカダール城 大広間
玉座の前でマーズがマルティナ達に報告をしていた
グレイグ「なに?城下町の質屋に変なやつだと?」
マーズ「はい、国民からその報告がありました。べグルが向かっておりますが、何やら揉めているそうなのです」
マルティナ「となると、値段の交渉とかではないの?」
マーズ「す、すみません。俺も話しか聞いていなくてそこまでは」
ラース「まあべグルが行ったならある程度はなんとかなるだろ」
バタン
べグル「失礼します、マルティナ様」
その時、ちょうどべグルが入ってきた
グレイグ「おお、速いな。どうだった?」
べグル「それが....旅人が魔物の素材を売ろうとしてたみたいなのですが。質屋が言うにはあまりに素材がいいのでお金が足りずに買い取れないとの事でして」
全員「えぇ...?」
グレイグ「そんなにいいものなのか」
べグル「そ、そういうのは俺にはわからないのでなんとも....。とりあえず、こちらで預かってきました。旅人も付いてきて城の前で待っております」
べグルが持つ麻袋にはそれなりに大きな膨らみがある
ラース「俺達もあまり素材はわからないんだよな」
マルティナ「グレイグ、あなたなら多少はわかるんじゃないかしら」
グレイグ「まあそれなりには。専門的とまではいきませんが、少し見てみます」
しばらくして
グレイグ「確かにかなり上物の毛皮だったり、珍しい魔物の体に付着している宝石です。しかも相当の手慣れだと思われます。刃物の扱いも器用なのでしょう、綺麗に裂かれております」
べグル「そうなんですか。とてもそんな風には見えなかったけど」
ラース「そういうのはカミュやイレブンに聞くと買い取ったり利用したりしてくれそうだよな」
マルティナ「確かに。ちょっと後で連絡してみましょう」
グレイグ「では、私達の方で買い取っておきましょう。べグル、俺もその旅人に話に行くぞ」
べグル「はっ!」
デルカダール城下町 城前
そこには藍色の髪をした藍色の服を着て、サスペンダーをした背の高い男性がウロウロしていた
旅人「あ!兵士さん、遅いですよー!俺、ただ金が欲しかっただけなんだ。って、あれ?こちらはどなたです?」
べグル「悪いな、ちょっと時間かかってたんだ。この方はグレイグ将軍。俺達よりも偉い方だ」
旅人「ほ......ほええー!そんな方にわざわざ出向いてもらえるなんて光栄です!」
旅人はべグルの説明を聞いてグレイグの顔を驚きの表情で見ている
グレイグ「貴方がこの素材を持ってきた旅人ですか。こちら、相当いい素材でしたのでぜひ我々の方で買い取らせていただこうと思いまして」
旅人「え、あー、本当ですか!それならよかったです。もし駄目だったらどうしようかと思いましたよ。ほら、せっかく頑張ったのにお金にならなかったら悲しいじゃないですか〜」
グレイグ「相当な腕前ですね。何かこういった素材を集める方ですか?」
旅人「いやいや、適当に旅してたらいつの間にか溜まってたんでお金にしようかなと思って売りに出しただけですよ」
グレイグ「そ、そうでしたか。お金のほうはこのくらいをご用意しましたがいかがでしょう」
グレイグは持ってきた10万ゴールドを渡した
旅人「わっはーい!こんなに貰っていいんですか!ありがとうございます!」
グレイグ「ああ。こっちこそいい素材に感謝する」
旅人「それじゃあまた溜まったらここに持ってきますねー!」
べグル「いや、城はそういう場所じゃねえから」
旅人「だってここの質屋さん駄目だったじゃないですか。あ!兵士さん、もしよかったらまだ頼ってもいいですか?」
べグル「ん?いいぞ。まだ何かあったのか?」
旅人「ありがとうございます」
グレイグ「では、俺は城に戻るとする。べグル、ありがとう」
べグル「いえ、当然の事ですので」
旅人「あ、えっと、グレイグさん、お金ありがとうございましたー!」
広場
べグル「で、なんだ?頼りたい事って」
旅人「まあまずは自己紹介するさ。俺の名前はベタヤール。ただのしがない旅人だ。兵士さんは?」
べグル「....べグルだ。見ての通りデルカダール城の兵士をやってる」
ベタヤール「べグルか、よろしくな。頼みたい事ってのはこの地方全体の魔物の事についてなんだ。ちょっと魔物について勉強してるんだ。兵士さんならこの地方の魔物にも詳しいだろうと思ってな」
べグル「ほー、なるほどな。それならまあある程度は教えられるぞ。それに、この広場にはこんな物もある」
べグルはそう言って噴水の近くにある看板に向かっていく
ベタヤール「これは?」
べグル「これは魔物掲示板。今日このデルカダール地方で主に見られる魔物とその危険度を知らせてるんだ。今日はスライムとおおがらす、マンドラが多いみたいだ」
ベタヤール「へ〜、こんなの他の国にはなかったな。便利だなー、これ!でも、俺直接見たりしたいんだよ。ほら、俺だって戦えるんだからいざって時も平気だからな」
ベタヤールは自分の腰に添えられた二本の片手剣を軽く上げて見せた
べグル「まあそうだろうな。じゃあちょうどいい。俺の見回りに着いてくるか?魔物達を観察できるぞ」
ベタヤール「お!いいのか!?ありがとな、べグル!べグルも兵士にしてはかなり体格いいし、大剣なんて持って強そうだよな」
べグル「まあな。他の国の兵士よりは全然強いぜ。鍛えてるからな」
ベタヤール「じゃあいざという時の護衛もよろしくな〜」
べグル「いや、戦えるんだったら自分の身くらい守れよな」
デルカダール地方
ベタヤール「へへ、可愛いじゃん」
スライム「ピキー?」
ベタヤールはしゃがんで近くにいたスライムを撫でている
べグル「(....あの素材の剥ぎ取り方から実はかなりヤバいやつとか思ってたけど、そんな風でもなさそうだな)」
ベタヤール「そんなジロジロ見ないでよ。警戒するのはわかるけどさ、何もしないって」
ベタヤールは少し笑いながらべグルに振り返った
ベタヤール「俺、そんなに怪しかった?」
べグル「.....悪い。別に警戒したり怪しんでたりするわけじゃない。最初は流石にあれだったけど、なんだかそうでもないように思えてな」
ベタヤール「ありがとう。警戒してても構わないけど、べグルの顔怖いからさ。睨まれてるとなんだかこう、落ち着かないというか」
べグル「わ、悪かったな。生まれつきこういう顔なんだよ」
ベタヤール「ははは!だろうな。生まれ持ったものは仕方ないよな、受け入れなくちゃ」
べグル「お前は、どうして魔物の勉強を?」
ベタヤール「.....うーん。なんとなく?」
べグル「な、なんとなく?」
ベタヤール「そう、特にこれといった理由もないんだ。学者になりたい訳でもないしな。ただ、身近にいるのにわからない事は多いだろ?だから気になったんだ」
べグル「まあ、そんなもんなのか。じゃあなんで旅を?」
ベタヤール「はは、めっちゃ聞いてくるじゃん。何?俺の事知りたい?」
べグル「や。そ、そういう訳じゃ」
ベタヤールはふと草原に横たわった
ベタヤール「いいよ、別に。ただ、べグルの事も教えろよな。俺ばかりは不公平だ。べグルはなんで兵士に?」
べグル「......俺は......」
べグルが少し言葉に詰まっていると
ベタヤール「あー、言いにくかったか?悪いな」
べグル「いや!なんて言葉にしたらいいのかわかんなかったんだ。昔と今とで、兵士になる理由が変わったからよ」
ベタヤール「理由が変わる?それはまた不思議な事もあるもんだな」
べグル「まあ、な。簡単に言うと、昔はデルカダール兵士になって強くなる事しか考えてなかった。でも、今はもう違う。俺の仲間が教えてくれた。自分の大切なものを守る事も強さなんだと。俺は、もう大切なものを失わないために兵士をやってる」
ベタヤール「........」
二人の間に沈黙が訪れた。草原を走る風の音がする
べグル「あ。と、突然悪い。いきなりこんな事言われてびっくりしたよな」
ベタヤール「いや、そんな事ない。べグル.....お前、かっこいいやつだな!!俺、惚れ惚れした!」
ベタヤールは立ち上がってべグルの両手を握り興奮したように息巻く
べグル「え.....。あ、ありがとよ」
ちょっと困惑するベグルをおいてベタヤールはまた草原へと寝転がる。広い空を泳ぐ雲がよく見える
ベタヤール「そういう信念ってのがあるの憧れる!俺には......わからない。夢とかはあるけどよ、それも......夢物語みたいなものだ」
ベタヤールのその発言にベグルはゆっくりとベタヤールの傍により、座り込んだ
べグル「夢....か。夢があるのはいい事だ、俺は夢を持つ事を諦めたからな。俺もお前みたいな夢を持ってる人達が少し羨ましいぜ」
ベタヤール「そうなのか?互いに似た事を思ってるんだな。ベグル、お前いい奴だな。気に入ったさ」
ベグル「俺も、ベタヤールの事少し気に入ったぜ。その夢の話、聞いてもいいか?笑わねえからよ」
ベタヤール「ああ。俺は、国を作りたいんだ。皆が幸せになれるような、そんな国だ」
ベグル「国か。かなり大きな夢だな、でもいいじゃないか。いろんな人の幸せを願うなんて中々できた事じゃない」
ベタヤール「.....でも、どうしたらいいかわからない。そもそも幸せって?俺には俺の、ベグルにはベグルの幸せがあるように、たくさんの幸せがある。俺には、大勢を幸せに出来る力なんてない」
ベグル「.....難しい事だな。でも、そう思いながら動いているベタヤールの行動はきっと間違ってないはずだぜ。幸せを目指してるんだから、きっと相手にもそれが伝わるさ」
ベグルはベタヤールを見ながら穏やかな笑顔をみせた
ベタヤール「ベグル.....。あー、その、なんだ......。ほら、み、見回りするんだったよな?早く行こうぜ」
ベタヤールは焦ったように立ち上がると、ベグルをおいて歩き始めた。その耳は少し赤くなっている
ベグル「...はは、わかりやすいやつ。ああ、もっと進んでいくか」