ドラゴンクエストⅪ 魔法戦士の男、恋をする   作:サムハル

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59.冥界

宮殿前

 

 

 

そこではサンポと数人の修行僧達が話していた

 

 

 

サンポ「それで、修行者の安否は?」

 

 

 

 

修行僧A「申し訳ありません。山道の魔物は我々の手に負えず、修行者を発見する事はできませんでした」

 

 

 

 

サンポ「そうですか.....」

 

 

 

 

グレイグ「サンポ大僧正、何か困りごとでも?」

 

 

 

 

サンポ「ああイレブンさん、グレイグさん。実は半月ほど前、一人の修行者が郷を訪れ、ドゥーランダ山頂へ向かったのです」

 

 

 

 

グレイグ「たった一人で.....なにゆえそのような事を」

 

 

 

 

イレブン「確かに。今外は危ない状況なのに」

 

 

 

 

サンポ「わかりません。ただその修行者は、郷の者からニマ大師が亡くなった事を聞くと何も言わずに山頂へ向かったそうです。

 

 

 

山には魔王の影響で凶暴な魔物が住み着いているため、救出の為に僧兵を派遣したのですが、この通り怪我をして戻ってくる始末。それでどうしたものか思案していたのです」

 

 

 

 

グレイグ「では、我々がその修行者の救出に向かうのはどうだろう?」

 

 

 

 

イレブン「うん、僕もその人の事心配だよ」

 

 

 

 

サンポ「申し出はありがたいのですが、大切な使命がある方に迷惑はかけられません」

 

 

 

 

グレイグ「ここには一宿一飯の恩もある。イレブンも心配しているし、向かっても大丈夫だ」

 

 

 

 

サンポ「わかりました。ですが、ご厚意に甘えてばかりもいられません。私も連れて行ってください。ドゥーランダの山頂は郷を出て、東の道から行く事ができます」

 

 

 

ドゥーランダ山頂

 

 

 

道中の険しい山道を登った先にある山頂には、道中以上の雪が積もっており凍えるような冷たい風も吹きつけている。そこにある祠にはほとんど骨と皮だけになった人が座っていた

 

 

 

グレイグ「くっ.....こいつは見るに耐えんな。もしや、これが一人で山頂に向かったという修行者なのか?」

 

 

 

 

サンポ「きっとそうに違いありません。しっかり座禅を組んで生き絶えた所を見るに、この者は覚悟の死を決めたのでしょう。しかしこの姿、どこかで見覚えが」

 

 

 

その時、グレイグがその修行者の近くに何かが落ちているのを発見する

 

 

 

グレイグ「む?.....これは、数あるムフフ本の中でも最高と名高いピチピチ☆バニーではないか!......はっ!」

 

 

 

 

二人「........」

 

 

 

イレブンとサンポはジッとグレイグを見つめている

 

 

 

グレイグ「ゴホンッ!不幸中の幸いとはこのこと。この修行者、哀れな最後ではあったが、きっと幸福に包まれ天に召されたに違いない。

 

 

 

む....?これはユグノア王家の者が持つ首飾り。何故この修行者が....」

 

 

 

それを聞いたイレブンはハッとしたように言う

 

 

 

イレブン「そんな!?おじいちゃん!!」

 

 

 

 

グレイグ「そうか、ロウ様はニマ大師の愛弟子。ニマ大師が亡くなった事を知り、世を儚んで安らかな死を選んだのだろう」

 

 

 

 

サンポ「待ってください!まだ息があります」

 

 

 

 

イレブン「ほんと!?よかった」

 

 

 

 

サンポ「おそらく今ロウ様の御霊は生と死を彷徨っておられます。ですが、このままだと死。救出するには、イレブンさんが生と死の狭間の世界、冥界に行きロウ様を救出して戻ってくるのです」

 

 

 

 

グレイグ「冥界に行くだと?だがどうやって?」

 

 

 

 

サンポ「実はドゥーランダ山頂にあるこの御堂は、古来より冥界と繋がる霊感あらたかな場所だと伝えられています。私がイレブンさんに郷に伝わる分霊の儀式を行い、肉体から魂を離脱させれば冥界に入ることができます。

 

 

 

ですが、冥界は生と死が揺らめく世界。生者が行けば、二度と帰ってこられないかもしれません。それでも行きますか?」

 

 

 

 

イレブン「もちろんだよ。おじいちゃんをこのまま見捨てるなんて、僕には絶対できない」

 

 

 

 

サンポ「わかりました。それではイレブンさんを冥界に送ります」

 

 

 

そう言うとサンポはイレブンの前で不思議な踊りを始めた

 

 

 

グレイグ「おい、何だその変な踊りは?本当に大丈夫なのか?」

 

 

 

イレブンは意識を飛ばした

 

 

 

冥界

 

 

 

真っ暗な空間が広がっており、まるでこの世の終わりを感じさせるような場所に一つ、場違いな場所があった。白い床に大きな門がある場所にイレブンは降りた。そこに一人の女性が現れた

 

 

 

???「あらあら、よるべなくさまよう哀れな魂がまた一つ、この世の果てに流れ着いたようだね。顔を見てみりゃまだ若い。こんな子が冥府に落ちるなんて、ほんと神も仏もありゃしないよ。あんた随分呆けた顔してるけど、これからどんな運命を辿るかわかってるのかい?」

 

 

 

その謎の女性はオレンジのローブを着て、ベージュの長い髪をしていた。また、まるでイレブンを見透かしたかのような問いを投げかけてきた

 

 

 

イレブン「そこは覚悟してる。大丈夫だよ」

 

 

 

 

???「そうかい?そんな顔には見えなかったけどね。まあ、見ての通りこの世界には何もない。ここは無の世界さ。

 

 

 

本来、冥府に誘われた魂は新しい命として再生するために大樹へ向かうんだけどね、魔王によって大樹が失われた今、冥府は完全な無の世界さ。だからあんたの魂はもうすぐこの虚無の中で消えちまうんだよ。

 

 

 

大樹による命の循環は絶たれ、やがて全ての命は消え去る運命にある。魔王がいる限りこれは変えられない。魔王に敵うやつなんていない。諦めな。でもね、そんな魔王に抗うやつはまだいる。ほんと諦めの悪いやつだよ」シュン!

 

 

 

シュン!

 

 

 

女性の姿は無くなった

 

 

 

イレブン「あれ?消えた」

 

 

 

奥地

 

 

 

先に進むとそこではロウが踊っているかのように動いている

 

 

 

ロウ「はっ!ほっ!よおっ!」

 

 

 

 

イレブン「あれ?おじいちゃん!」

 

 

 

イレブンは声をあげたが、ロウには聞こえていないのか集中しているのか動きをやめなかった。イレブンの隣には再び先程の女性が立っていた

 

 

 

ニマ「ロウが、この世を儚んで死んだとでも思ったかい?その逆さ。あいつは諦めてなんかいないよ。魔王をぶちのめすことをね。あんたのじいさんは郷の奥義を習得するために、決死の覚悟で死んだあたしに会いに来たんだ。

 

 

 

あたしが誰だかわかっただろう?ロウの師匠のニマさ。あの魔法陣が見えるかい?ロウは魔力を纏って舞い踊り、大樹の模様を魔法陣に描いてるのさ。

 

 

 

それが奥義習得の修行さ。ここに来てからやつはずっと踊り続けてる。身体が自由に動く年でもないのに、ほんと無茶するよ。見てな。あの魔法陣が完成した時、ロウは奥義を会得するよ」

 

 

 

 

ロウ「ふんぬあああ。おんどりゃああああ!」

 

 

 

ロウの足下にはどんどん魔法陣が描かれていき、ついにその魔法陣が光り出した

 

 

 

ドゥン!ゴウウウ!

 

 

 

ロウの足下にあった紋章が完成し、力を空に放つと十字型の大きな攻撃となった

 

 

 

イレブン「おおー!」

 

 

 

 

ニマ「あのやろう、やりやがったね。たまにはかっこいい姿見せんじゃないか」

 

 

 

 

ロウ「うひゃひゃー。大師様ついにやりましたぞ。わしの勇姿、見ておられましたか?」

 

 

 

ロウは奥義を打てた事を確認するやいなや、すぐさまニマの元に走ってきた

 

 

 

ニマ「根性なしのあんたにしちゃ頑張ったしゃないか。しょうがないから、褒めてあげるよ」

 

 

 

 

ロウ「な、なな、何と!大師様、今わしの事褒めましたねえ!?うひょひょーい。大師様に褒められるとは何十年ぶりか!その言葉だけでご飯10杯はいけますぞ!」

 

 

 

 

ニマ「はあ。あんた調子に乗りすぎて大事なもの見落としてるんじゃないかい?隣をみてごらん」

 

 

 

 

イレブン「おじいちゃん!かっこよかったよ!」

 

 

 

 

ロウ「お、おぬしは、イレブン!!おおイレブンよ。死んでしまうとは何事じゃ」

 

 

 

 

ニマ「落ち着きな、ロウ。早とちりするのはあんたの悪いクセだよ。イレブンは生きてる」

 

 

 

 

ロウ「何ですと!?イレブンは生きてる!」

 

 

 

 

ニマ「イレブンはあんたが死んだと思って、現世から助けにやってきたんだよ」

 

 

 

 

ロウ「そうか、そうか。まったく危険な事をしおって。わしならもう大丈夫じゃ。さあ行こう。奥義を会得したわしと、勇者のお主がいれば恐れるものはない。現世に戻って憎き魔王をぶちのめすのじゃ」

 

 

 

 

 


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