デルカコスタ地方
デルカダール地方から聞こえる激しい戦いや地鳴りの音が聞こえる中、デルカコスタ地方にグレイグと兵士達はやってきた
ロベルト「おい、マーズ。大丈夫か?ずっと震えてるぞ」
マーズ「......わ、悪い。さっきのやつの恐ろしい魔力に、あてられちまった...みたいなんだ。ここも異様な魔力がする」
グレイグ「そのようだな。なんだ、この木は。何が起こっている」
グレイグ達の前には空を覆い尽くすほどの量の木々が生い茂っていた。まるで意思があるかのように木の枝が揺らめいて動き、空からの光を遮っている
バン「うげぇ、なんか気持ちわりぃ...」
バンも嫌そうに顔を顰めた時
チェン「おやおや、ようやくお出ましか」
木々のざわめきと共に謎の声が響くように聞こえてきた
全員「!?」
グレイグ「誰だ、どこにいる。姿を現せ!」
グレイグのその声に目の前に一枚の木の葉が落ちてきた
パキピキペキッ!
一枚の木の葉が異様な音をたてて小さな木の姿になる
チェン「感じるその強さ、お前があの勇者の仲間の一人だな。わざわざ名乗る必要は感じないが、我らがグスタフ様は礼儀を重んじる方。仕方あるまい。私はチェン。見ての通り、古から生きる樹を司る者です」
兵士達の膝より小さいくらいの子どもほどしかない背丈の木の魔物が喋って細い腕で軽く会釈をした。しかし、その赤い目からは悪意がしっかりと感じられる
兵士達「ちっさ」
兵士達の少し気の抜けたような声にチェンは呆れたように返した
チェン「ふん、大きさだけでそんな反応をするなど小物だというのがなんとわかりやすい事。勇者の仲間ともあろう人がそんな小物をわらわらと連れているとは。やはり人間は群れてなければいけないのか」
グレイグ「侮るな、お前達。この魔力、異様な森から発せられる物と似ている。樹を司る......お前が何かしたのだな」
チェン「ほう、堅物そうな見た目をして中々鋭い。ご名答。少しばかり手を加えさせてもらった。さて、勇者の仲間がお相手してくれるのだろう?楽しみだ。絶望の前に歪んでくれたまえ」
怪しく笑うチェンにグレイグは鼻で笑った
グレイグ「俺は勇者の盾!希望がこの世界にある限り、俺は絶望になど決して屈指はしない!消え失せろ、悪しき魔物め!」
グレイグが大きく踏み込んでチェンへ斬りかかる
グレイグ「でやあああ!!!」
チェン「おお、いい気迫だ。それ」
チェンは腕を前に出すと地表から木の太い根っこが波のようにいくつもグレイグに向かっていく
グレイグ「そんなもの効かぬ!!はあああ!!」
グレイグの振るう大剣で木々の根っこが切り裂かれていく
チェン「うんうん、それくらいはね」
バン「俺達もいくぞ!」
全員「ああ!」
兵士達も一斉にチェンへと動き出す
チェン「君達も来るの?なら、遊んであげよう」
チェンはつまらなそうにして目を光らせた。その瞬間
バババババ!
頭上から木の葉が鋭く尖った形で雨のように降り注ぐ。更にその隙間を縫うように木の枝がヘビのように伸びて迫ってくる
兵士達「!?」
グレイグ「貴様の相手は俺だ!天下無双!」
グレイグがチェンへ飛びかかる
チェン「ええ、もちろんだとも!!」
チェンは怪しく笑い、グレイグの目の前に分厚い木の壁を作り出した
ガアアァァン!!
激しい音が鳴ると同時に
ベキベキベキッ!
グレイグの連続攻撃で木の壁が崩れる
グレイグ「!?」
グレイグは崩れた瞬間に顔を横に逸らす。グレイグの頬を鋭い木の枝が掠めた
グレイグ「はあ!!」
グレイグは横に大剣を振るうと
チェン「はっ!」
バギィッ!
チェンの声と共に木が吹き飛んでいく
グレイグ「っ!?」
吹き飛んだ瞬間、グレイグの足を木の根が絡みついてバランスを崩した
チェン「はあ!」
後ろに回り飛んだチェンが体勢を崩したグレイグに無数の木の葉の雨を降らせる
グレイグ「舐めるな!」
グレイグは崩れた体勢から体を捻って素早く地面を滑るように避けていく。グレイグのいた場所には鋭い木の葉が無数に突き刺さり、地面に穴があいた
チェン「ふむ、その図体でよくそんな動きができたものだ」
グレイグ「体術なら死ぬ程体に刻まれているからな」
チェン「そのパワー、身のこなし。やはり勇者の仲間ならこれくらいやってもらわなければ。では更にエネルギーを使わせてもらうとするか!」
チェンが黒いオーラを身に纏う
グレイグ「ならばこちらも勇者の盾の力を見せる時だ!スカラ!マジックバリア!」
グレイグも自身に皮膚硬化と魔法免化の魔法をかける
チェン「さあ第二ステージだ!」
チェンがそう言った瞬間、無数の木の葉と木の枝、地面から無数の根っこがやってくる。先程の比ではない量に地面も空も根っこや葉で埋めつくされる
グレイグ「効かん!!!」
グレイグは更にゾーンへと入り、青いオーラを纏った。そこから大剣を振り、木の根っこや枝を振り払う。威力と風圧で全て吹き飛ばされていく。木の葉は鋼鉄のようなグレイグの体に当たってもカンカンと音がするだけでグレイグは気にしてもいない
チェン「素晴らしい。ならば我が下僕よ、いきなさい」
チェンのその言葉にグレイグの周りから巨大な木が人の形をして何体も現れる
チェン「ウッドフール」
グレイグ「ゴーレムのようなものか。あまりにもデカイがな」
人形「おおお!」
巨大な木の人形達はグレイグを潰そうと木の腕を振り下ろす
グレイグ「鈍い!」
グレイグは後ろに飛んで避ける。大きな木の腕は地面に当たり大きな音をたてる。そこから更にシュルシュルと瞬時に腕が伸びてグレイグに向かっていく
グレイグ「!?」
グレイグに再び迫ってくる木の腕を今度は大剣で切り落とした
ズバン!
しかし
シュウウウ
瞬く間に切り落とされた木の腕は復活して再びグレイグを狙う
グレイグ「再生か!なんて面倒な!」
グレイグは人形本体を狙おうと伸びてくる腕を避けながら人形へとむかう
グレイグ「超はやぶさ斬り!」
駆けた勢いのまま人形を4つへと切り刻む。しかし
人形「ごごごご」
人形もまたしてもくっついていき更に大きくなった
グレイグ「な!?」
チェン「ふふふふ、さあ私の人形の中で愚かに踊ってくれよ。勇者の盾」
チェンはグレイグの様子を見て嘲笑っている。その時
バン「しんくうげり!」
チェンの後ろからバンが猛スピードで蹴りを放つ
バァァァン!!ピキピキッ!
蹴りは木の壁で防がれた。ヒビが大きく入るがチェンには傷一つない
バン「くっそ!」
チェン「さて、お前達はオマケなんだ。わざわざ本気で私が相手しなくても.........ん?んんん?」
チェンは気だるそうにバン達に振り返るが、ふとバンを見るとその表情が変わった
バン「な、なんだ!」
チェン「お前......か。ほー、なるほどなるほど」
チェンは少し目を開いた後面白そうにニヤニヤと笑う
バン「なにがおかしい!」
チェン「んー、別に。気が変わった。どんなものか見てやろう。さあ、いつでもかかってこい」
ギバ「(なんだ、こいつ。なんでバンに興味を示した?バンのあの赤い力と関係あんのか?)」
バン「なら全力で!!はあああ!!」
バンに続いて全員でチェンに向かっていく
チェン「そらよ」
チェンはまたしても木の根を波のように出していく
バン「そんなもの!」
バンは身軽に避けていく
べグル「おらあ!」
べグル達は武器で木の根を壊していく
チェン「あなたさえ知れれば他の者などどうでもよい。ウィロー!」
チェンは向かってくるバンに黒い緑の玉を放った
バン「ふっ!」
バンが玉を躱した瞬間
パァン!
玉は自然に爆発し、草木が出てきた。その草木が近くにいたバンに一瞬で絡みつく
バン「うぐっ!?」
草木がバンの体を締め上げる
バン「うぬうぅあ!!」
バンは草木を引きちぎった
ガザル「おい、この木の根っこ周りからもくるぞ!」
ギバ「うおっ!」
ガザルの声と同時にギバの壊した木の根が瞬時に復活して針のようにギバに襲いかかった
ロベルト「まずい、木の根に囲まれるぞ!」
マーズ「俺が何とかする!ギラグレイド!」
マーズが全員の周囲にオレンジの魔法陣を描き、炎の火柱をたてる
木の根は全部火柱で燃やされた
ガザル「ナイス、マーズ!」
べグル「!?まだだ!!」
炭となった木が落ちた場所が揺れ動き、べグル達の足下から巨大な木の幹が生えてきてべグル達を突き上げた
べグル達「うああああっっ!!!」
バン「超さみだれ突き!!」
チェン「スーロンド」
バンの槍の連撃をチェンはクルリと回ると木の葉が浮かび、その木の葉が槍を包むようにして連撃を防いでいく
チェン「なんだ、期待外れか」
バン「なんだと!?」
チェン「やつからの面白い報告は所詮その程度か。やれやれ」
バン「やつって誰だ」
チェン「さあな」
グレイグ「(これは、思っているよりマズイ。俺ではこいつらを倒せないというのか)」
グレイグの周りには既に増えた人形達が数十体といた。切っては治り、増え、大きくなる。次第にグレイグも無限とも言える腕を避けきれなくなっていた
グレイグ「.....?なんだ、あの木は」
チェン「それにそんな悠長にしてていのか?お仲間が大変な事になっているのに」
バン「なに!?な!?」
バンが振り返るとべグル達がいた場所に遥かに巨大な木ができていた。その枝の場所にはべグル達が巻き付けられている
べグル「ぐっ、はなっ、せ!」
ギバ「い、いて、いてえ!」
ロベルト「マズイ、力が」
マーズ「こいつらから、体力がとられる」
ガザル「あ、ああ!!」
バン「皆!!」
バンは一目散にその木へ向かう
チェン「さて、つまらなかったからもう終わりにしよう」
チェンがそう言うと、大樹にしがみついて登ろうとしているバンが大木に飲み込まれる
バン「!?」
チェン「さようなら、オマケ共」
大樹が光っていく。キィィィっと甲高い音が響いていく
チェン「テンドロン」
チェンがそう唱えた瞬間
ボガァァァン!!!
大樹は大爆発を起こし、吹き飛んだ。大地を割り、木々を折り振動でデルカコスタ地方が震えた
グレイグ「お前達ーーー!!!!」