デルカダール城下町
マルティナ「皆さん、焦らずに!はぐれないように手を繋いでね!避難はあっちです!」
マルティナは城下町で声を張り上げながら逃げる民達を誘導しながら走り回っていた
ガク「マルティナ様!こちらの区画は全員避難完了しました!」
ジャス「こちらも避難完了です!」
一部の兵士達も避難やはぐれた人達がいないか探していた
マルティナ「ありがとう、ガク、ジャス。私もこの区画がもう少ししたら終わりそうだから先に行って皆を落ち着かせてて」
二人「は!」
ガクとジャスは敬礼した後避難先に向かって走っていった
マルティナ「ラース......大丈夫よね」
城門付近から聞こえる激しい戦闘音にマルティナは冷や汗を流す
エド「あ!マルティナー!さ、様ー!!ちょっと手伝ってくんねー!?」
遠くからエドの声がしてそっちを見ると、エドやテルマ達がなんとか頑張ってビルとマドリーを引っ張っていた
マルティナ「どうしたの!?早く逃げなさい!」
テルマ「それが、ビルさん達が意地でもこの店から離れないって言ってて!」
ビル「マルティナ様!このおぞましい強大な力はマズイですよ!デルカダールが消し飛んでしまいます!!」
マドリー「私達は魔物よ!死んだって困らないの!テルマ君、エド君、あなた達人間は早く逃げて!私達はこのお店を守るから!」
ビルとマドリーはしがみつくようにグラジーに張り付こうとしている
マルティナ「ビル、マドリー。グラジーの思い出が大事なのはわかるけど、あなた達がいなきゃグラジーは成り立たないわ。ビルもマドリーも魔物だけどもう大事な仲間なの。だから安全な場所に行きましょう」
マルティナが優しく宥めようとしていると
チャム「あれ?お兄ちゃん、白いものが降ってきたわ」
オロオロしていたチャムが空を見上げてそう言った
全員「え?」
今の時期は夏。そんな季節外れの事があるかと思い全員で空を見ると
ふわ、ふわ
空を舞うように白いものが落ちてきている
テルマ「本当だ。これが、雪?」
テルマがそばに落ちてきた白いものに触ろうと手を出すと
エド「ダメだ、テルマ!!それに触れるな!!」
テルマ「え?」
顔を白くしたエドに叫ばれるもテルマの手に白い羽根のようなものが触れた瞬間
パキン
テルマの身体がビクンと跳ねた
マルティナ「なに!?」
マドリー「これ、雪なんかじゃないです!!なにかとてつもなく嫌な力を感じます!!」
ビル「テルマ!!」
マルティナは焦った声を出し、ビルとマドリーもエドと同じく恐れるような顔をしている
テルマは持っていた剣に手をかけて鞘から抜いた
テルマ「え?え!?なんで、身体が勝手に!」
テルマはびっくりしながらも剣を一番近くにいたチャムに向ける
チャム「キャッ!お、お兄ちゃん?」
テルマ「なんで!?やめろ、チャム逃げろ!!」
チャム「え、ええ!?」
テルマの必死の叫びでチャムは転びそうになりながらもテルマ達から離れていく
その時
チャム「あ!」
チャムの頭にも落ちてきた白い羽根が触れてチャムの体もビクンと跳ねた
エド「ヤバい!!」
チャム「え、え!?待って、身体が言う事聞かない!!やだやだ!!」
チャムは嫌がる声を出しながらテルマの方へと歩いて戻っていく
テルマもチャムに向かって剣を振り上げてチャムの方へ進んでいく
テルマ「逃げろ、チャム!!」
チャム「嫌ー!!助けて、お兄ちゃん!!」
二人を止めようとビルとマドリーが押さえつけようとする
ビル「ぐっ、な!?力つっよい!」
マドリー「ふんぬぬぬ、ダメ!止まらないわ!!」
しかし、幼い体とは思えない力にビルとマドリーごとテルマとチャムは近づいていく
エド「この羽根のせいだろ!きっと!」
エドは原因となっているであろう羽根を取ろうとチャムの頭に付いている羽根を握ると
エド「いって!!」
握った手に切り傷がついた。ガラスの破片のようにとがっているのである
マルティナ「取れないの!?」
エド「なんかめちゃくちゃとがってんだよ!手が切れる!」
マルティナ「そんな!?」
テルマ「やめろーーー!!!」
チャム「いやーーー!!!」
テルマはチャムの目の前で剣を振り落とそうとしている。二人は涙を流して大声をあげている
その時
コロ「ガルル!」
コロが飛びかかり、チャムの頭の羽根を爪で砕いた
パリン!
ブレイブ「ガウ!!」
ブレイブもやってきてテルマの手を噛んで羽根を噛み砕いた
パリン!
テルマ「あ......動く!体が動く!!」
チャム「あ、よ、よかった。うえーん!!怖かったよー、お兄ちゃん!!」
テルマ「すまん、チャム!!俺も絶対にあんなことしたくなかった!」
テルマとチャムは泣きながら抱きしめた
マルティナ「よかった!ありがとう、ブレイブ、コロ。お手柄よ」
ブレイブ「ガウ」
コロ「キャン!」
マルティナに吠えた後二匹は上空を見上げた
マルティナ「?あれは......」
マルティナも上を見ると、デルカダール城下町の空に白い体をしたハーピーがふわふわの天使のような羽根を丸めて浮かんでいた
???「ふぁ〜あ.....。ん〜っ、おかしいわね、美味しい絶望の声が途絶えちゃった」
退屈そうに身じろぎして丸まっていた姿勢を戻してこちらを見た
???「あら、バレちゃった」
マルティナ「!!」
マルティナと目が合いハーピーは少し嬉しそうにクスリと笑った。マルティナはゾクリと体温が低くなるのを感じながら構えた
マルティナ「皆。今すぐ逃げなさい。ここは戦場になるわ」
テルマ「は、はい!」
テルマとチャムは走って逃げていくが、ビル達は逃げようとしない
マルティナ「ビル達も!ブレイブとコロもよ!」
ビル「マルティナ様、戦力にはなりませんが俺達魔物にはあの羽根効かないようです」
マルティナ「そうなの?」
エド「ああ、さっきから羽根触ってたのに反応なかったからな。ただ、なんでマルティナにも効いてねえんだ?バンみたいな感じでもねえしよ」
マルティナ「.......ああ、多分コレのおかげね。ふっ!」
マルティナはエドの疑問に少し考えた後、デビルモードに変身した
マドリー「キャッ!マルティナ様がバニーに!?というか、その姿と力は!」
エド「えええ!?マルティナにそんな変身あったのかよ!魔物のような力感じるぜ!?」
マルティナ「なんでこれになれるのか記憶が曖昧だけど、強くなれるから構わないわ。まあいいわ、それならちょっと手を貸してちょうだい。ビル、マドリー、エド、コロ、ブレイブ!城下町を守るわよ!」
三人「はい!」
二匹「ガウ!」
???「えー、なんかあいつらやる気満々でわたしこわーい。早くわたしの下僕、作らないとね」
ハーピーはそう言うと白い羽根をふわっと大量に浮かび上がらせて城下町の奥の方へ飛ばしていく
マルティナ「!?マズイわ、あっちの貴族階層はまだ避難が済んでない!ビル、マドリー、コロ、テルマ!民達を守って!」
三人「はい!」
コロ「キャン!」
ビル達は羽根の飛んでいく方へと走っていく
マルティナ「ブレイブ、あなたは私と一緒にあいつを倒すわよ!」
ブレイブ「ガウ!」
マルティナはそのまま屋根へと登って高く飛び上がる。ブレイブも飛び上がってハーピーへと向かっていく
マルティナ「しんくうげり!」
???「キャー、わたし痛いのこわいー。えーいっ」
ハーピーがわざとらしくそう言うとマルティナとブレイブの前に大きな羽根の塊が現れた
マルティナ「!?」
ポフン
ブレイブ「ガウ!」
ブレイブはそれを足場に地上へと戻るがマルティナはその中に突っ込む。やわらかい羽毛の感覚と共に顔を腕で守る
マルティナ「(私じゃなかったらこれだけで気が狂っちゃうかもしれない恐ろしい技ね)はあ!」
マルティナは羽の塊を蹴り破った。マルティナはそのまま屋根へと降りた
???「えー、なんであなたは人間なのにわたしの下僕にならないのー?そんなのつまんないー」
ハーピーは不服そうに頬を膨らませている。ふわふわとした話し方や見た目から騙されそうだが、下僕などの言い方から人間を下に見ているのがよくわかる
マルティナ「残念な事に私にはそれは効かないのよ。さあ、ちゃんと戦う気になったかしら!」
???「んー、わたし戦うのキライなのよねー。それに....」
ハーピーはチラリと羽根を飛ばした方を見た
???「下僕も中々増やせてないみたいだし。あーあ、せっかくグスタフ様が面白そうな事するって聞いたからついてきたのに。こんなんじゃやだやだ」
ため息をつきながらきゅるきゅると可愛い子のように振る舞うハーピーにマルティナは少しいらだっていた
マルティナ「(なんなの、この子。戦闘力はそこまでないのかもしれないけど、今ここで倒さないと後々大きな被害が出る力を持ってる。私がしっかりしないと)」
???「つまんないだけなのはわたしキライだし......わたしあなたみたいな勇気リンリンな娘一番キライ」
冷たい目がマルティナを睨んだ。マルティナも構える
マルティナ「自分の手を汚さずに人間の涙や絶望を味わって嘲けるあなたの方こそ、私は嫌いだわ!」
???「そう、そこは気が合いそうね、わたし達。でもでもー、そんな気持ち悪い見た目でかっこいい事言ったってなーんも意味ないわよ。わたしみたいに可愛くならないとね」
ハーピーは羽根を広げた。舞い上がる羽根が形を成していき同じハーピーの姿へと変わっていく
マルティナ「!?」
ブレイブ「がうぅ」
チェシー「わたしはチェシー。古から人間より天使と呼ばれた者。頭が高いぞ、小娘、獣」