ガラッシュの村
ベロニカ「ここも、世界が崩壊した影響で前よりも荒れてるわね」
セーニャ「ここやユグノアに来ると、どうしても切ない気持ちになりますわ」
マルティナ「この感じ、ラースの気配だわ!ラース!どこにいるの?」
マルティナは急いで村の中に走っていった
ガラッシュの村 奥地
イレブン「あ、あのお墓の前に立ってる人。あの姿は!」
マルティナ「ラース!!」
村の人達の墓がある場所にはラースが立っていた
ラース「よお、マルティナ、皆。やっぱり生きていてくれたか」
シルビア「ラースちゃん!あなたもよかったわ、無事でいてくれて」
ラース「グレイグもいるんだな。それに、どうやって俺がここにいるってわかったんだ?」
ベロニカ「マルティナさんがラースはここにいる気がするって言ったのよ。流石恋人同士ね、何となくでもわかるものなのね」
マルティナ「ベロニカ、恥ずかしいからやめて」
ラース「ハハハ!流石マルティナだな」
マルティナ「ふふ。それにしても、皆で無事だったなんてきっと奇跡ね。.....ねえ、ラース。私、ずっと会いたかったわ」
マルティナはラースにゆっくりと近づいていく。その顔は安心したような優しい顔をしている
ラース「......悪いな、マルティナ。少し待ってくれないか」
マルティナ「え?」
ラース「俺は待っていたんだ。イレブンが、皆が全員揃ってくれる事をな。真実を伝えるために」
マルティナ「待っていた?真実?何の話よ、ラース」
ラース「なあ、イレブン。勇者の紋章が光ってるだろ?それで俺の事をかざしてみてくれよ」
イレブン「え?.....あ、本当だ。わかった」
イレブンの勇者の紋章はなぜか光っており、イレブンはラースの言う通りにかざした。すると、全員の頭の中に映像が流れ込んできた
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あの時の大樹内
ラース「ぐっ.....みん.....な....」
周りは仲間達が気絶し倒れている
ラース「はぁ、はぁ。俺が.....何とかしねえと.....このままじゃ.....世界は....」
大樹はもう闇の力により、爆発しそうになっていた
ラースはゆっくり立ち上がり、足元に白い魔法陣が描かれる
ラース「はあっ!」
ラースは魔力で仲間達を包むと一人ずつ浮かせていく
ラース「くっ!魔力の消費量がすげえ....」
5人ほど浮かせた後
ラース「がっ.....くっ、やっぱ俺の全魔力じゃ足りないか.....なら!」
ラースは膝をつくが、ある呪文を唱え始める
すると、足元に光る魔法陣が赤黒く変色していく
ラース「じいちゃん、ごめんなさい。絶対にしてはいけない禁忌を俺はやります。どうか、許して」
ラース「はあああああ!!人体魔力置換!」
すると、ラースの足先が段々と光の粒になり、消えていった
ラース「グアアア!!!.....なんて痛みだ」
ラースの体にまるで足や腕を無理矢理引きちぎられるような強烈な痛みが襲う
ラース「でも、皆を.....守るためなら.....こんな痛み!......何ともねえ!!」
全員浮かし終わる頃には、ラースの足は無くなり、肘から先も無くなっていた
ラース「.......これで......全員、だよな。よし!バシルーラ!!」
そう唱えると、浮いた仲間達はどこかバラバラに飛んでいった
残ったのはラースだけ
ラース「へ.....へへ。俺でもできた。今まで何も守れなかったけど、今度こそ俺は誰かを守れたんだな」
ラースはその場に倒れ込んだ
大樹が闇の光に包まれていく
ラース「皆、絶対に生き残れよな。皆なら世界が崩壊しても、きっと強い希望でこの世界を照らしていける。魔王なんかに負けるな。頑張れよ、皆。
.......マルティナ。俺が死んだって知ったら、お前はなんて言うかな。怒るだろうな、悲しむだろうな、恨むだろうな。たくさんの約束を破っちまうしな。
でも、俺は.....君に出会えて、君に恋をした。.....あの日々はかけがえのない一生の宝物だ。君が俺を愛してくれた事も絶対に忘れない。.....光が強くなってきたな。
イレブン!カミュ!ベロニカ!セーニャ!シルビア!ロウ!そして、愛して愛してやまないマルティナ!!
俺は皆に出会えて、旅が出来て、幸せでした。皆!後は任せたぞ!
......ありがとう」
ラースの言葉を最後に大樹は闇の爆発に覆われ、世界を包むほどの巨大な衝撃が走りわたっていった
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全員「.........」
今の光景に誰も反応できず、しばらく沈黙が続いた
マルティナ「.....え?......何よ、今の。だって......ラースは、今ここに....」
マルティナがそう言ってラースに手を伸ばし、体に触れると
キラキラキラキラ.....
全員「!!!」
ラースは光の粒になって消えていった
マルティナ「......え?.....ラ、ラース?どこ行ったのよ。ねえ!ねえ!!ラース!!」
マルティナは周りを必死に見回している
イレブン「.......う.....そ.....」
カミュ「.......くそっ!」
ベロニカ「あ.....あああ、私は.....何て事を....」
セーニャ「......ラース....様?」
シルビア「......そんな。....嘘よ、ダメ、そんな事ってあんまりだわ」
ロウ「.....ラース、お主まで.....なぜ、皆してこんな老いぼれを」
グレイグ「.....俺は、あの場所にいながら.....何も....」
マルティナ「嘘よ.....だって.....だって、だって!!!さっきまで、目の前にいたわ!!話もしたわ!!皆だって見たでしょ!!」
グレイグ「......姫様....」
マルティナ「ラース......ずっと隣にいてくれるって.....約束したじゃない。
連携技もやろうって言ったじゃない.....。
ダーハルーネで一緒にスイーツを食べるって約束も.....。
私にピアノを聴かせてくれるって約束も。
........どうしてよ!!ラース!!!」
マルティナは両手で顔を押さえながらその場に崩れ落ちる
シルビア「マルティナちゃん....」
マルティナの目からは涙が溢れている
マルティナ「わたし....は、何を.......今まで、皆が、無事でいるなんて。あの爆発の中、皆がどうして生き残ったのか、深く考えもしなかった!
.....勇者の奇跡なんだと.....勝手に信じてた!そんな訳ないのに!!!あの時のイレブンはそんな事できる状態じゃなかったのに!!
普通に考えればわかる事だったのに.....ラースが.....私の愛する人が.....全てを犠牲にしてまで守ってくれたのに.....私はこの数ヶ月.....簡単に考えて.....私は.....魔物なんかに操られて.......一体何をしていたの。
大切なものを守るために強くなったと思ってた.....でも!そんな事なかった!!私は.....16年前と何もかも同じ!!!この手は!何も守れない!!
私は.....弱い!!弱すぎる!!!誰かに守ってもらわなきゃ、何もできない!!」
マルティナは手を血が滲むほど握りしめ、石でできた床を殴り続ける。石が割れ、大地にヒビが入ろうとも殴り続ける。手はどんどんボロボロになっていき、血が辺りに飛び散る
ロウ「姫よ!もうやめるのじゃ!!」
グレイグ「姫様!おやめ下さい!手が使えなくなってしまいます!!」
2人の声は届かず、マルティナは止まらない。
怒り、悲しみ、憎悪、絶望。これらが全て混じったような状態に陥った今のマルティナには、全ての声が届かない
ロウ「すまぬ、姫よ。眠っていてくれ。ラリホー」
マルティナ「うっ....」
ドサ
ロウがマルティナの背中に静かに魔力をこめた指で触り、眠らせた
全員「.......」
グレイグ「......一旦外のキャンプ場へ行こう。俺も皆も、心の整理が出来ていないだろう。ここにいると、頭が真っ白になってしまう....」
グレイグは静かにマルティナを抱くと、顔を伏せたまま皆に声をかけた
イレブン「うん......そうだね」
イレブン達もまた、暗く重たい表情でゆっくり村から出ていった