ドラゴンクエストⅪ 魔法戦士の男、恋をする   作:サムハル

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93.ラースの過去

デルカダール城下町 上層

 

 

 

イレブン「この先どうしようか」

 

 

 

 

ベロニカ「大樹の苗木ねえ。他の人達にも聞きながら世界を回るしかないかしら」

 

 

 

その時、誰かが話しかけてきた

 

 

 

???「やっと見つけましたわ!」

 

 

 

 

マルティナ「あら?あのご婦人、こっちにくるわ」

 

 

 

 

ラース「!?」

 

 

 

 

婦人「見つけましたわ、グラン。お前が世界を救った勇者様の仲間の一人と聞いて探し回りましたわ」

 

 

 

 

イレブン「すみません、僕らの仲間にグランという人はいないんですが」

 

 

 

 

婦人「まあ勇者様、すみませんね。愚息子が世話になって。グランはこれですわ」

 

 

 

婦人はラースを引っ張った

 

 

 

ラース「.....今更何の御用ですか、母上」

 

 

 

 

全員「ラース!?」

 

 

 

 

ラースの母「お前が勇者様の仲間と聞いて、これは家に戻さなきゃとお父様と話していたの。だから家に戻りなさい。必ずよ」

 

 

 

そう言いラースの母は帰って行った

 

 

 

ラース「.......」

 

 

 

ラースは下を向いている

 

 

 

マルティナ「どういう事、ラース。グランって?」

 

 

 

 

ラース「すまない、皆。別に隠してた訳じゃないんだ。....グランという名は捨てたんだ。それで終わりのはずだったんだ。家には、俺一人で行く。皆はそのまま旅を続けてくれ。俺も必ず追いつく」

 

 

 

ラースはゆっくりと下を向いたまま話している

 

 

 

マルティナ「ダメよ」

 

 

 

 

ラース「マルティナ、どうして...」

 

 

 

ラースはマルティナを見る

 

 

 

マルティナ「ラース、あなた今自分がどんな顔してるかわかってる?」

 

 

 

 

ラース「え?」

 

 

 

 

シルビア「あなたとってもつらそうな顔してるわ。今にも泣き出してしまいそうよ」

 

 

 

 

マルティナ「あなたにそんな顔をさせる場所に一人でなんて行かせない。私も行くわ」

 

 

 

 

イレブン「うん、僕もラースにつらい思いをさせる場所に一人で行かせたくない。僕も行くよ」

 

 

 

 

シルビア「それじゃあ皆で向かいましょう。その方がラースちゃんも楽になるんじゃないかしら」

 

 

 

 

ラース「....俺は、あの家には弱い俺がいる。皆に、弱い俺は見せたくない」

 

 

 

ラースは悔しそうに唇を噛み締めている

 

 

 

ベロニカ「大丈夫よ、ラース。人なんて誰もが弱い所はあるわ。私達はあなたのそんな所を見たって嫌いになんかなりゃしないわ」

 

 

 

 

マルティナ「そうよ、それに皆の前では無理でも、私の前だけでも弱いあなたは出していいのよ。全部受け止めてあげるわ」

 

 

 

 

セーニャ「マルティナ様、かっこいいですわ」

 

 

 

 

ラース「はは、ありがとな。それじゃあ案内する。こっちだ」

 

 

 

ラースは皆を案内するが、歩幅はいつもより小さかった

 

 

 

貴族階層

 

 

 

ラース「この家だ...」

 

 

 

ラースの前には大きな屋敷が立っている

 

 

 

カミュ「ここって貴族の住む場所だぞ。ラースってデルカダールの貴族の生まれだったのか」

 

 

 

 

ラース「そうなるな...。よし」

 

 

 

ガチャ

 

 

 

ラース「ただいま、帰りました。ラ....グランです」

 

 

 

 

???「グラン坊っちゃま!!」

 

 

 

玄関を開けると、近くにいたメイドが駆け寄ってきた

 

 

 

ラース「あ、ミルさん。ただいま」

 

 

 

 

ミル「あああ、また生きてグラン坊っちゃまに会えるなんて....。私感激で涙が止まりません。しかも、勇者様のお仲間だなんて。ご立派になられて」

 

 

 

ミルはハンカチで流れる涙を拭っている

 

 

 

ラース「俺の部屋、まだある?」

 

 

 

 

ミル「もちろんでございます。あの日からいつでも帰ってきていいように毎日お掃除していました」

 

 

 

グランの部屋

 

 

 

ラース「.....本当にあの時から何も変わってないや」

 

 

 

そこには簡単な本棚と机、布団しかなかった。

 

 

 

カミュ「....ここが、お前の部屋?貴族なのに、こんなの一般宅より何も無いじゃないか」

 

 

 

 

ミル「皆様、椅子の方になります。申し遅れました。私、この屋敷でメイドを務めているミルと申します。グラン様は幼少期から、私もお世話させていただいておりました」

 

 

 

 

ラース「すまない、ミルさん。俺の昔の事、皆に話してくれ。全部話してくれて構わない。俺は、思い出したく無いんだ」

 

 

 

ラースは机に伏せてしまった

 

 

 

ミル「わかりました。皆様はどこまでグラン坊っちゃまの事を知っておられますか?」

 

 

 

 

マルティナ「私達はラースがグランって呼ばれてるのはさっき初めて聞いたわ」

 

 

 

 

ミル「ラース?それが今のグラン坊っちゃまのお名前ですか?」

 

 

 

 

ベロニカ「ええ、そうよ」

 

 

 

 

ミル「なるほど、それでは皆様の前では、ラース坊っちゃまと呼ばせていただきますね。ラース坊っちゃまは、このダナー一家の長男として生まれました。ラース坊っちゃまの本名はダナー・グランでございます。

 

 

 

この家は、ラース坊っちゃまが生まれる前までは祖父のギン様がトップに君臨していたのですが、ご年齢により今のラース坊っちゃまの父である、ジルゴ様がトップになられました」

 

 

 

 

セーニャ「どうして家にトップというのがあるのですか?」

 

 

 

 

ミル「この家は、トップに立つ方の言うことは基本的に絶対です。そのため、トップに立つ方は慎重に選ばなければならないのです。ジルゴ様は魔法の腕はとてもよいのですが、この家を魔法で支配してしまったのです」

 

 

 

 

シルビア「魔法で支配?」

 

 

 

 

ミル「はい。この家の中では、魔法の力が絶対になりました。魔力を持たざる者に権限などないのです。そんな時にラース坊っちゃまが生まれました。ラース坊っちゃまは生まれながらにかなりの魔力を持っており、家族の期待も高かったのです。そのせいか、ジルゴ様は4歳の頃からラース坊っちゃまに魔法の勉強をさせました」

 

 

 

 

ベロニカ「4歳!?いくらなんでも早すぎよ。字だってそこまで読めないのに、魔導書なんて読めるわけないわよ!」

 

 

 

 

ミル「しかし、ジルゴ様はラース坊っちゃまにここが読めなければ今日のご飯はないと仰り、ラース坊っちゃまは必死に読もうとするのですが、当たり前ですが読めないのです。そうして、ジルゴ様は本当にラース坊っちゃまのご飯を無くしてしまうのです」

 

 

 

 

セーニャ「そんな....読めないものを読ませた上でそんな罰まで」

 

 

 

 

ミル「それだけ、ジルゴ様の期待は大きかったのです。ですが、ラース坊っちゃまは一向に魔法が上達せず半年が経ち、弟であるクリフ様が生まれました。

 

 

 

そのクリフ様が4歳になる頃、ラース坊っちゃまは8歳。その頃にはメラを使えるようになっていました。ですが、クリフ様はわずか4歳にしてメラを使えたのです」

 

 

 

 

ベロニカ「どうして!?4歳じゃあまともに魔導書を読むこともできないわ」

 

 

 

 

ミル「才能だったのでしょう。まるでわかっているかのように炎を出せたのです。それを知ったジルゴ様は、クリフ様の指導に夢中になりました。

 

 

 

そしていつからかラース坊っちゃまは相手にされなくなり、名前を呼ばれなくなり、さらにはゴミ、クズなどと呼ばれて過ごしていました」

 

 

 

 

ロウ「自分の息子になんて言葉を....」

 

 

 

 

ミル「居場所がなくなったラース坊っちゃまは、祖父のギン様のもとへよく訪れていました。そこで、ギン様に魔法や人の心について教わっておりました。ギン様はクリフ様よりもラース坊っちゃまの事を大変気に入り、可愛がっておりました。

 

 

 

9歳になる頃、ラース坊っちゃまにまともな食事は与えられず、別の部屋の隅で、椅子に僅かなご飯と、骨しかないような魚と、具がないスープをのせ、冷えた状態で食べておりました。そんな食事でさえ与えられない日も珍しくなかったようです。私達は、どんどん痩せていくラース坊っちゃまを見ていられず、自分達の食事を少し隠れながら分けてあげていたのです」

 

 

 

 

マルティナ「許せない...」

 

 

 

 

ミル「そして、10歳になりラース坊っちゃまはメラとイオを使いこなせるようになりました。しかし、ギン様と私以外、それを知る者はいませんでした。

 

 

 

そんなある日、ご家族でダーハルーネへ行くことになりました。私やギン様は家に残り、ラース坊っちゃまは旅行へ行かれました。しかしその数日後、帰ってくるとラース坊っちゃまの姿はありませんでした。

 

 

 

話を聞いてみても死んだ、としか返してくれず。その日からラース坊っちゃまは帰ってこなくなったのです」

 

 

 

 

グレイグ「その日に何かがあったという事か....。しかし、酷い親だ。我が子に対してなんたる仕打ちを」

 

 

 

ラースは起き上がった

 

 

 

ラース「....全部話したみたいだな。ここからは俺の話だ。旅行に行った日、俺は馬車の中の隅っこに座って、視界の邪魔にならないように小さくなっていたんだ。どれだけ馬鹿にされたって構わなかったさ。

 

 

 

ただ、その馬車が魔物に襲われ、乗っていた馬車が2つに割れたんだ。魔物の方に落ちていきそうな方にはクリフが乗っていた。それを見た父上は俺とクリフを掴み、入れ替えたんだ。俺はもちろん魔物の群れの中に落ちた。

 

 

 

そして、お前などいなくても誰も困らない!いい気味だと言い残し、馬車で置いて行ったんだ。俺は、そこで捨てられたのさ。

 

 

 

俺は魔物に囲まれて、イオとメラで対抗しても、たかが子どもの魔法。一瞬でボロボロさ。俺は血だらけになり腕も折れて、自分の血の中で体温が下がっていくのを感じ、どんどん眠くなっていったんだ」

 

 

 

 

ロウ「それは....もう死ぬ手前じゃ」

 

 

 

 

ラース「だけどその時、騒ぎを聞いたじいちゃんが来て、俺に回復魔法を使ってギリギリ命をつなぎ止めたんだ。じいちゃんは格闘技と魔法で魔物を倒して、俺を担ぎ、ガラッシュの村まで連れて帰ったんだ。

 

 

 

そこで初めて貰って食べたパンが旨くてな。今思うと何でもないただのパンだったんだが、暖かくて、優しくて初めてあんな物を食べた。今でもはっきりと覚えている。その後、帰れないならこの村にわしの息子として住まないか?と誘われて、俺はガラッシュの村に住む事になったんだ」

 

 

 

 

ミル「ラース坊っちゃまはガラッシュの村?という場所で、この様に逞しく育ったのですね」

 

 

 

 

ラース「そういえば、お爺さまはお元気ですか?」

 

 

 

 

ミル「ギン様は....一昨年亡くなられました。ギン様は最後まで、ラース坊っちゃまの事を心配していましたよ」

 

 

 

 

ラース「....そうだったのか、わかった」

 

 

 

 

ベロニカ「それにしても!ラースの親って何てやつなの!私許せないわ!さっき初めて会った時も嫌な感じしたのよ。まるで決定したかの様な感じでさ!」

 

 

 

 

セーニャ「ラース様の事もお前やこれ呼ばわりしていましたね。私もいい印象は受けませんでした」

 

 

 

 

イレブン「でも、どうして急に連れ戻そうとしてるの?」

 

 

 

 

ミル「おそらく、ラース坊っちゃまが生きていて、さらに世界を救った勇者様の仲間だと知った日に、家族で話し合いをされたのでしょう。先日の集まりで、グラン様のお金やこの家の知名度を上げる話をしておりました。ラース坊っちゃまのお金さえあれば、おそらく本人は用済みとされると思います」

 

 

 

 

シルビア「許せない、まるで物みたいな扱いだわ。ラースちゃんはこんなにもいい子なのに」

 

 

 

 

 

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