ドラゴンクエストⅪ 魔法戦士の男、恋をする   作:サムハル

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94.決別

ラース「俺はこの家にはもう帰ってこないものだと決めていたんだがな。運命って不思議だな」

 

 

 

 

カミュ「なあ皆、これ見ろよ。このペン、血がベットリついてやがる」

 

 

 

ラースの側に置いてあるペンをカミュが持っていた

 

 

 

ミル「あ、そんな所にまでついていたんですか。その机はラース坊っちゃまの血が酷くて、取るのには苦労したのですが、ペンにまで付いていましたか」

 

 

 

 

イレブン「血が出るほど努力したのに、誰にも見られなかったのか」

 

 

 

 

セーニャ「ラース様にとってこの家は、ほぼ全てが忌まわしい記憶なのかもしれませんね」

 

 

 

コンコン

 

 

 

ジルゴ「グラン、入るぞ。おや、勇者様方もいらっしゃったのですか。どうぞこゆっくり。グラン、貴様生きているとは思わなかったが、ここに帰ってきたという事はわかっているな?」

 

 

 

 

ラース「.....もう少ししたら稽古の時間です」

 

 

 

 

ジルゴ「そうだ、覚えているじゃないか。あんなに言っても魔法は覚えられなかったくせに。まあ、いい。練習場に来い。私が直々にどれだけ強くなったのか、見てやろう。まあ、この私に叶うわけがないのだがな。昔のようにおもちゃにしてやろう」

 

 

 

 

ラース「準備します」

 

 

 

バタン!

 

 

 

マルティナ「あいつがラースの父親。....完全に見下してるわね」

 

 

 

 

ラース「すまない、ベロニカ、セーニャ、シルビア、マルティナ。後ろを向いていてくれ。上を脱いで着替えるから」

 

 

 

ラースは椅子にかかっている服を着ようとしていた

 

 

 

3人「わかったわ」

 

 

 

 

シルビア「あらん、ラースちゃん。アタシも入れてくれるのね、そういうとこ好きよ」

 

 

 

 

ラース「......もう大丈夫だ」

 

 

 

 

セーニャ「あら?その服、不思議な感じがしますわね。何か魔法でもかかっているんでしょうか」

 

 

 

 

ミル「はい。こちらは来た者の魔力を下げる魔法がかかっております」

 

 

 

 

ロウ「何と!そんなものを来て幼いころは練習していたのか」

 

 

 

 

ミル「はい、ジルゴ様がこれ以外着るものはないと言われて」

 

 

 

 

マルティナ「ラース大丈夫?」

 

 

 

 

ラース「ああ、問題ない。練習場に案内する。ミルさんも離れた所で皆と見ていてくれ」

 

 

 

 

ミル「わかりました。どうかお気をつけを」

 

 

 

練習場

 

 

 

ジルゴ「ふん、体は立派になったな。だが、この家では何の意味も持たない。魔法が出来なければ結局は全て意味はないのだ」

 

 

 

 

ラース「.....」

 

 

 

 

ジルゴ「それでは始めよう。メラゾーマ!」

 

 

 

ラースに向かって炎の塊が飛んでくる

 

 

 

ラース「.......」

 

 

 

ラースは避けずにそのまま立っている

 

 

 

メラゾーマがラースに向かってくるが、ラースに当たる直前で消えた

 

 

 

ミル「避けないのですか、グラン坊っちゃま!」

 

 

 

 

ベロニカ「違うわ、ミルさん。あいつ今、当たる少し前にバギマでメラゾーマを消し去ったわ」

 

 

 

 

ミル「え?いつの間にそんな事を」

 

 

 

 

ロウ「ほぼ動かずにやったのう。流石じゃ、魔法のコントロールではパーティ内一番じゃからな」

 

 

 

 

ミル「あのグラン坊っちゃまが、そんなに強く....ああ、ギン様、見ていられますか?」

 

 

 

ミルはまたハンカチで涙を拭っている

 

 

 

ジルゴ「今何が起きた?ベギラゴン!」

 

 

 

ラースの全方位が炎に包み込まれる

 

 

 

ラース「......」

 

 

 

ラースは動かない

 

 

 

カミュ「今全方位にジバリアを使ったな」

 

 

 

 

ジルゴ「マヒャド!」

 

 

 

ラースの頭上に大きな氷の塊が落ちてくる

 

 

 

ラース「.......」

 

 

 

ラースは動かない

 

 

 

イレブン「今メラミ一発で消したね」

 

 

 

 

ミル「よ、よく皆様、わかりますね。流石勇者様です」

 

 

 

 

ロウ「指で発射しておるからのう。詠唱時間も普通より少ないから、集中してみないとわしらもわからんわい」

 

 

 

 

ジルゴ「くっ....バキクロス!」

 

 

 

ラースの周囲に竜巻が発生する

 

 

 

ラース「.....」

 

 

 

ラースは動かない

 

 

 

シルビア「バキクロスを打って相殺したわね」

 

 

 

 

ジルゴ「何故私の魔法が効かぬ!その服を来て何故!」

 

 

 

ジルゴは自分の魔法が効いていない事に憤りを隠しきれない

 

 

 

母「お父様!ゴミはきっと不正をしてますわ!」

 

 

 

 

クリフ「そうだよ、父上!ゴミがこんなに強いわけない!」

 

 

 

それを見ているラースの母と弟も大きな声で反対の声をあげている

 

 

 

ラース「......」ザッザッザッ

 

 

 

ラースはジルゴに近づいていく

 

 

 

ジルゴ「こ、こっちに来るな!お前などこの家にいらないんだ。消えろ!邪魔だ!失せろ!お前らは悪魔の子だったんだろうが!グラン共々きっと魔物に魂を売った連中どもだな!」

 

 

 

ジルゴはラースに恐怖を感じ、壁に下がっていく

 

 

 

ラースはジルゴの目の前まで来た

 

 

 

ラース「父上。母上。私をこの世界に産んでくださった事は大変感謝しております。ですが、それ以外の感情はあなた方に持ち合わせておりません。私の事はどれだけ罵ろうとかまいません。しかし、

 

 

 

 

 

 

仲間達の事を馬鹿にするのは絶対に許しません!!」

 

 

 

 

ラースはそう叫ぶと同時に横方向に全力でバキクロスを発動し、ジルゴは声を上げる暇もなく、吹っ飛んでいった

 

 

 

ジルゴは壁を突き破り、動かなくなった

 

 

 

母「あ、ああ、うそ...」

 

 

 

 

ラース「母上、クリフ、見ていましたね?私はトップを倒したのであなた方に命令します。

 

 

 

 

 

二度と俺と関わるな。お前らは俺の視界にいるだけで不愉快だ。そして、グランと呼ぶな。俺はじいちゃんからもらった大切な名前がある。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、ガラッシュの村のラース!!二度とグランなどと呼ばないように」

 

 

 

そう言うと、ラースは着ていた服を破り捨てた

 

 

 

ラース「お前らとは決別だ!」

 

 

 

グランの部屋

 

 

 

ガチャ!

 

 

 

カミュ「おい、ラース!かっこよかったぜ!」

 

 

 

 

ベロニカ「本当よ!私、あの男が吹っ飛んで行った時スカッとしたわ!って!早く服を着なさい!」

 

 

 

 

ラース「いや、いきなり入ってきたのはそっちだろうが」

 

 

 

その後

 

 

 

ミル「うう、ううっ....グラ...ラース坊っちゃま。やはり行ってしまわれるのですね」

 

 

 

玄関前ではミルが見送りにきていた

 

 

 

ラース「うん、ごめんね、ミルさん。あとミルさんは俺の事、グランって呼んでも大丈夫だ。ミルさんもここじゃないとこでメイドやってもいいんじゃないか?」

 

 

 

 

ミル「ありがとうございます、グラン坊っちゃま。ですが、この場所にはグラン坊っちゃまとの思い出やギン様との思い出もあります。私はここで最後まで働き続けます。それと、こちらをお持ちください」

 

 

 

ミルはラースに厚い本を渡した

 

 

 

ラース「これは...?本?」

 

 

 

 

ミル「ギン様から、グラン様への贈り物です。フォースの秘伝書と聞いております。心の強さや優しさを力にするものらしいです。ギン様はグラン様ならこれを使えるはずだったと仰っておりました。どうか、これからの旅にお役立てください」

 

 

 

 

ラース「フォース....。ありがとう、ミルさん。俺、負けねえよ」

 

 

 

 

ミル「はい。このメイド、ミルは勇者様方々を、そしてラース様をいつも応援しております。どうか、頑張ってください」

 

 

 

ミルはイレブン達に深く頭を下げている

 

 

 

イレブン「はい、色々ありがとうございました」

 

 

 

デルカダール城下町 広場

 

 

 

ラース「皆!色々迷惑かけてすまなかった!」

 

 

 

ラースは頭を下げている

 

 

 

グレイグ「いや、何も迷惑などかかっていない。ラースはあの家にいた自分を弱いと言ったが、お前はあの苛烈な環境の中でも決して諦めなかった。俺なら諦めてしまうような環境でも、挫けずにいたお前を俺は尊敬する。ラースは決して弱くない」

 

 

 

 

マルティナ「そうよ。それに、あの家は確かに私も帰りたくないわね」

 

 

 

 

ラース「....ただ、俺はマルティナやグレイグが愛しているこの街を俺は同じ目で見る事はできない。どうしてもこの街はその記憶が蘇ってきてしまうからな。一緒にいるのに申し訳ない」

 

 

 

 

マルティナ「そんなの気にしないで。一緒にいるからって同じ考えを持てなんて絶対言わないわ。人の考えなんて人それぞれ。たくさんあるからこそ、私達は私達らしくいれるのよ」

 

 

 

 

ロウ「姫よ、いい事を言うではないか」

 

 

 

 

シルビア「そうよ、マルティナちゃん。今の一言、すっごくよかったわ!」

 

 

 

 

マルティナ「そ、そうかしら?思ったままを言っただけなのに」

 

 

 

 

ラース「ははは!ありがとな、マルティナ!少し元気出てきたみたいだ。皆、これからも俺は強くなる。邪神にだって俺は絶対負けねえ!これからもよろしくな!」

 

 

 

 

 

 


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