オーバーロード  ~新参の堕天使~   作:初心者騎空士

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定められた滅び

 突然戻ってきたペロロンチーノは、速攻姉に捕まりシバき倒された。

 

「ごべんなざい」

 

 大盾二枚でボコボコにされたペロロンチーノ、渾身の土下座である。

 

「ごめんで済むか馬鹿野郎!………で?」

 

 ぶくぶく茶釜の視線が、彼に抱えられていたみすぼらしい服装のエルフたちに向く。特徴的なその耳は半ばから切り落とされている上、全身に少なくない傷が見え隠れしている。

 

「何処で拾った?」

「拾った、って………南の平野で。ヘンな野郎に捨て駒にされてるっぽかったから、ソイツ針鼠にしてかっさらってきた。いや、だって可哀そうじゃん?ロリじゃないけど」

「最後で台無しだこの馬鹿ッ!」

 

 大盾フルスイングが、鳥頭に直撃。見事に横にすっ飛んでいく。

 

「えーっと………これ、マジで………あ、気絶してる」

「左から叩き込まれて、右から壁に衝突の衝撃が来るからな………脳震盪も起こすだろうさ」

 

 ペロロンチーノの走り書きは、ゲーム時代と違って―――とはいえ、ゲームでも手書き文字をシステムが補整する関係上、時折起きていたが―――非常に読み難い。手書き、且つ走り書きの為仕方ないと言えばそれまでだが。

 

「えーっと?南の大森林、エルフの王、女兵士の捕虜は奴隷………潰すか」

「なんで読めるんですか?あ、ボクは異議なしで」

「異議は無い、が………動くにしても、アレが起きてからにするべきだろう」

 

 即決でエルフの国の滅びが確定するが、一応ガチプレイヤーだけあって有利な条件下ではとことん強いペロロンチーノが起きるまで待つことをラプチャーが提案。そして、それまでに準備を整える事も。

 

「森となれば、相応に動きが制限されるだろう。それに、ええっと………13、は読めるが」

「………まさか、十三英雄?」

「エルフに居た、とあった以上、恐らくは………となれば、アウラは控えるべきだな。魔獣による集団戦も悪くはないだろうが、超位魔法やワールドアイテムで分断されては危うい。同じ理由でマーレも控えた方がいいだろう。シャルティアも、ランスという得物は森の中では不利になりかねん」

 

 つらつらと欠点を挙げ、選出すべきシモベを絞っていくラプチャー。しっかりと口頭で発話している為、意識のある二人やペロロンチーノと共に震えていたシャルティアにもしっかりと届いている。

 

「あの、森を焼き払ってはいかんのでありんすかえ?」

「………俺たちの目的は?」

「「エルフたちの救助!」」

「と、いうことだ。焼き払うでは無差別に被害が拡大しかねん以上、却下だ。コキュートスも同じ理由で無理だな。ナザリックを手薄に出来ん以上、アルベドも残さねばならん………となれば、デミウルゴス、セバス辺りが妥当か」

「デミウルゴス、でありんすか?戦力として見るには、その………些か」

「いや、デミウルゴスなら大丈夫だと思うよ」

 

 シャルティアが疑問を呈する中、復活したらしいペロロンチーノが声を上げる。

 

「うわ、キモ………なんでフツーにしてんのお前」

「ひでぇ!?え?そんな経ってないの?」

「ええ、まあ………ボクたち、本格的に異形化してますねぇ~」

 

 ラプチャーが妙に納得している中、ペロロンチーノが話を戻す。

 

「っと、そうじゃなくて!ほら、俺ってウルベルトさんと仲良かったろ?んで、デミウルゴスについても色々聞いてんのよ」

 

 曰く、第三形態こと魔神形態であれば、デカい上に相応にステータスも上がるらしい。ウルベルトは『魔王といえば形態変化が醍醐味だろ?』と得意げだったとのこと………魔王と聞き、常に微笑み、怒り狂っていようが笑みを崩さず、声の調子一つ変えない美女を思い出したラプチャーは、無意識に身震いしていた。

 

「成程、本気で暴れればある程度遠くからもわかる、と」

「つーか、俺が直ぐにわかる。だって、空こそ俺の領域!だし」

「………アンタ、ゲイ・ボウは使えねぇぞ?森焼いちゃうから」

「べ、別に、『太陽落とし』だけが取り柄じゃねえし………じゃねえし!」

「あー、ハイハイ。それじゃあ、こっちはアルベドに任せて………でいいですかね?」

「ああ。プレアデスも、万一を考えると行かせられんな」

「ですね。強い子を創る為なら誰彼構わず手段問わずらしいし、プレアデスに万一のことがあっ?!」

 

 ペロロンチーノの肩に、二つの粘塊が触れ、その顔を極限まで近づける。

 

「そ・れ・を・さ・き・に・い・えッ!」

「ウチのソリュシャンとかメイドたちに何かあったらどうする責任取る気だったんですか?ええ!?」

「わ、わるかった!悪かったから落ち着いてーッ!」

 

 プレアデスに、一般メイドに、そしてアウラに………万一の想像をしたのか、二人から怯えと怒りが噴出する。

 

「ぶっ潰すッ!アウラたちの安全の為にもッ!」

「久し振りに本気で頭に来ましたね………!」

 

 二人は思い立ったが吉日、とばかりに招集をシャルティアへと依頼し、その怒りを理解できるペロロンチーノは、シャルティアを軽く抱き締める。

 

「それじゃ、行ってくるよ。シャルティアを疑う訳じゃないけど、万一のことがあったら、さ」

「ぺ、ペロロンチーノ様ぁ………!」

(………相手の情報が足りなすぎる、が………仕方ない)

 

 手持ちの金貨でどの程度のモンスターを召喚するべきか思考しながら、ラプチャーは準備の為その場を離れた。

 

―――――

 

 そして、表層。そこに集うのは、無数の高位悪魔である《魔将》モンスターと、召集されたデミウルゴス、セバス、そして招集した側の四人のプレイヤー。

 

「―――っつーわけで!俺らはやまいこさんの妹の同族、エルフの国の暴君をぶっ潰しに行く!」

「セバスの役割は兵とされているエルフたちの無力化、及び捕虜エルフの救助だ。間違えても殺すなよ」

「ハッ」

「デミウルゴスは魔将を指揮して、戦争中の人間勢力を殺すことなく追い出せ。お前の姿が見られないのがベストだが、無理そうならば即座に魔神形態になれ。あまりにかけ離れていれば、今の姿のお前との関連は疑われなくなる」

「畏まりましたッ!」

 

 二人は、お互いが抱く嫌悪をそのままに、『敗けられない』と、『失敗は許されない』と決意を固める。特に、彼を前に失態を演じたと考えるデミウルゴスは尚更。

 

「ヘロヘロ」

「ええ、地図と情報があって助かりましたよ―――――首都、確認しました!ってか、情報防御皆無ですね!」

「………ここまで普通の都市なら、コキュートスも来れるか………招集を」

 

 ヘロヘロが操作していた鏡には、広大な湖の畔に広がる都市と、その深奥の城が映し出される。ここまでしっかりと視えていれば、転移も容易い。

 ラプチャーの指示でコキュートスも呼び出され、より驚異的な攻撃力を有する事となった。そして、奇しくも招集された面々は、創造主が戻らなかった守護者たちでもある。

 

「よし―――――いこうぜ!昔の俺たち(虐げられてる奴ら)を助けに!」

 

 ペロロンチーノの言葉の真意を理解した姉が、友人が、一瞬きょとんとした様子を見せ、続けて笑みを浮かべる。セバスとデミウルゴスは理解は出来なかったようだが、これは仕方のない事だろう。ラプチャーが嬉しそうな笑みを浮かべていたのは、彼らの理念をモモンガに聞かされていたからか。

 ナインズ・オウン・ゴール時代からの………『異形種狩り』に遭い、誰もが助けられ、共に冒険を繰り広げていたからこそ、理解できることだ。アインズ・ウール・ゴウンになってからは、ノリで悪役を演じてはいたが………彼らがその信念を忘れたことは、一度として無かったのだから。

 

「ああ、了解した―――行くとしよう、お前たちの理想の為に」

 

 明確な喜の感情を滲ませ、ラプチャーが転移門(ゲート)を展開。一行がその身を沈めて行く。降り立つ先は、質素な木造建築の立ち並ぶ、エルフの王都―――その城に存在する、バルコニーだ。

 

「ッ!?」

「………転移対策すらしていないとは」

「「「いやいや、何直で来てんの!?」」」

 

 三人からの総ツッコミを受けながら、ラプチャーは目前の男を見据える。白髪に、白と黒と対照的な色のオッドアイを持つエルフの男。年若く見えるが、それはアバターから成長していないだけなのか、それとも別の理由か………

 

「貴様らは………ッ」

「おっと、逃がしませんよ―――次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)

 

 驚愕の形相を浮かべた王に対し、デミウルゴスがスキルを発動。転移を封じた。

 

「しかし、これでは魔将の軍も役に立たんな………やれやれ、もう少し用心すべきだろうに」

 

 淡々とした声と共に、剣が抜き放たれる。それを合図にしたわけでもあるまいが、茶釜がラプチャーの前に、ヘロヘロが隣に躍り出ると共に、ペロロンチーノが弓を構える。

 

「さ、選ぶといい。全てを明け渡すか―――――」

「は、ハハハハハッ!」

 

 ラプチャーの言葉を遮り、王が笑う。義憤に燃える三人が首を傾げる中、エルフの王は一行に手を差し伸べた。

 

「まあ待て。貴様らアインズ・ウール・ゴウンなら、悪のギルドなら、もっと重要なことがあるだろう?」

「はぁ?」

 

 ぶくぶく茶釜が本気で意味を掴みかねている中、エルフの王は嬉々と語り始める。

 

「世界征服だよ!竜王(ドラゴンロード)は鬱陶しい事この上ないが、俺たちプレイヤーの敵じゃない。数がいれば尚更だ!どうだ?俺と手を組み、この世界を―――――」

「だ、そうだが?………貴方たちに聞きたいが」

 

 ここでラプチャーは、対等なギルドメンバーとしてではなく、あくまで部外者に近い者として、彼らに問うた。問おうと、した。

 

「聞かれるまでもねぇ。俺たちはな、ノリで悪役やってたけどさ」

 

 ペロロンチーノが素早く放った矢が、エルフの王の耳を吹っ飛ばす。完全な不意打ちであると共に、これ以上無い決裂の意思表示である。

 そもそも、貧困層で虐げられ………憎悪を燃やす男の親友の一人が、この国の現状を前に、素直に首を縦に振る筈が無いのだ。たとえ変質していたとしても、彼がその胸に宿る想いのままにそうしたであろうように、このバードマンもまた、叫ぶように断言した。

 

「俺たちにゃな、俺たちなりの正義があんだよ!んで、テメェは俺たちにしてみりゃ、どうしようもねえ、クソみてぇな悪党でしかねぇんだ!ウルベルトさんとたっちさんがいたなら、あの二人も肩を並べて、テメェをぶっ潰しにかかったろうぜ!」

「ハッ!異形の化物が、正義を騙るかッ!」

 

 吼え、エルフの王が素早く―――何かしらのアイテムのショートカットか―――その身に武具を纏い、続く矢を打ち払う。その間にセバス、ラプチャーが先行、セバスが高い敏捷を以て退路を断ち、ラプチャーの攻撃により、ぶくぶく茶釜の方へと吹き飛ばされる。

 

「ぐぅっ!?」

「たっち・みー様ガソウサレルノナラバ、武人武御雷様モソウサレタノダロウ」

 

 記憶の中の創造主が、厳かに頷く姿を幻視した。

 蟲王(ヴァーミンロード)の振う大太刀が、ハルバードが迫る。剣と盾を以て何とか凌ぐも、続けて迫る武具を捌くには手が足りない。

 

「………ナラバ、我ガ成スベキハ、一ツッ!」

 

 火花が散る。大太刀が、ハルバードが、剣が、盾が火花を散らし、その中でライトブルーの巨躯が吼える。

 

「アノオ方ガソウサレタヨウニ、我モマタ貴様ヲ、忌ムベキ敵トシテ討ツッ!」

「ちぃ………ッ」

「コキュートス、下がれ!」

 

 コキュートスが指示に従い下がれば、声の主とは異なる方向から、無数の光線が放たれる。

 

「が、ああああああああ!?!」

 

 人間種の特徴は、専用職の存在と種族レベル分も職業に配分可能な利点と、耐性に乏しい欠点。弱点が多くない反面、耐性も少ない為、完全なカバーは不可能であり、専ら状態異常耐性だけで殆どが埋まる。

 そこに降り注いだのは、天使種の攻撃スキル。炎、光、神聖属性複合の攻撃が鎧を貫き、その身を焼く。そして、敵への害と同時に放たれるは、味方への祝福。赤みを帯びた羽根の舞う中で発揮されるその効果は―――――次に放たれる炎属性ダメージの、増幅。

 

「『太陽落とし』………喜びな。テメェが新世界初の、体験者だ―――――ッ!!!」

 

 その咆哮と共に放たれた獄炎が、玉座を呑み込んだ。




あっさり死亡したワーカーがいるらしい。
剣士が弓兵からの不意打ちに対応できる訳ねえだろ!
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