オーバーロード  ~新参の堕天使~   作:初心者騎空士

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建国への一歩・レイドボス討伐

 玉座の間に集うNPCたちに、一同は今後の計画を告げる。

 

「―――以上の計画を以て、我らが座す『アインズ・ウール・ゴウン』の建国に向けたものだ。異論がある者はいるか?」

「では、私より一つ」

 

 デミウルゴスが口を開いた瞬間、ラプチャー以外のプレイヤーに緊張が走る。それをどう判断したのか、デミウルゴスが唇を噛み俯き、しかし名乗り出たからには、と問うべき事を問う。

 

「トブの大森林には、様々な亜人の集落があると思われますが、如何なさるおつもりでしょうか?」

「牙を剥くのであれば、相応の対処をするまでだ。尤も、遅かれ早かれ降参するのであれば、必要以上に手を下しはせんがな」

(………って、答えておけばいいよな………?)

 

 内心ビクビクのモモンガだが、その回答一つに満足したらしいデミウルゴスが引き下がる。お眼鏡に叶ったと微かな安堵を零し、モモンガは立ち上がる。

 

「決行は明日以降となる。各々、準備を始めよ!なお、ナザリックにおける業務に問題が生じた際は、こちらに残るタブラさんに問い合わせるように」

『ハッ!』

 

 至高の御方々の威光を知らしめる第一歩だけあり、その多くが大役を仰せつかっている守護者たちの気合は人一倍だ。そして、それに関与することが難しい他のNPCたちが浮かべる悔恨もまた、人一倍であり………

 

「………皆さん、ちょっと相談が」

「わかってますよ」

「流石にあそこまで落ち込まれると、心が痛いわ………」

「ボクも出かける訳ですからね………どうしましょう?」

 

 無人となった玉座の間で、プレイヤー一同が顔を突き合わせる。

 

「………都市開発でもするか」

 

 そこで最初に案を出せる辺り、ラプチャーは考えてさえいれば、本当に有能である。

 

「え?ナザリック周りを、ですか?」

「国家として成立させるなら、相応の首都が必要だろう?そこをナザリック近郊にするしないに関わらず、彼女らの言う『威光』を知らしめるに足り、且つそこに住まう者の利便性もしっかり考慮に入れた、大規模な都市開発計画の草案作成………悪くないのではないか?」

「非戦闘系が多いですし、アリかもですね」

「………けど、利便性って意味じゃ結構難題じゃないっすか?みんなナザリック至上主義だし」

「寧ろ難題だからこそ、護衛とか補佐みたいな重要な仕事って認識になるんじゃない?」

 

 そして、意外と好評だった。

 

「………あ、これ私が集計するパターンですか?」

「いや、流石にこれは後程皆で審議すべき案件だからな。あくまで草案を作成させるだけだ」

 

 責任重大では?と微かに震えるタブラに助け舟を出しつつ、ラプチャーは微かに思案する。

 

「………とはいえ、建築方面には疎いからな。最古図書館にあるその手の資料を片手に審議する羽目になるだろうな」

『あー………』

「デミウルゴス………も、今回は無理か」

 

 住人の利便性、となるとNPCは参考にならないだろう、というのが共通の認識だ。それくらい、ナザリック外部への意識に問題がある………とはいえ、これも悪の組織とその幹部風設定で楽しんでいた彼らの、身から出た錆なのだが。

 

「………ボクはやりますよ」

「俺も」

「私も、微力ながら。こっちにいる間に図書館を漁っときます」

「タブラさん、よろしくね」

「俺たちも、森の方が済み次第手伝うんで」

 

 気遣いを忘れない、いい上司たちである。ブラック企業の平社員が大半であったお陰で、他の者にあんな地獄を味わって欲しくない、という優しさからくる好待遇………

 

「とはいえ、準備の前にアレですね………場所も決めませんと。立地次第で色々条件も変わりますし」

「凡そ二つに絞れているから、草案を二つ作らせればいい。ナザリックを中心とするか、やや離れた南方のエリアにするか。理由は………今はいいか。それより、準備に移ろう」

「いや、理由も重要じゃ………」

「そうか?………ならまあ、話すべきか」

 

 ラプチャーが首都となり得る土地の選出で考慮したのは、『神』というネームバリューだという。

 

「直近であればあるほど、神のお膝元というネームバリューが力を持つ。それがあれば、相応に人も物も集まりやすくなるだろう。更に言えば、この近郊にあるエ・ランテルが交易拠点としても栄えている事から、その座を奪い取る、或いは並び立つことも不可能では無いだろうな。そして何より、俺たちには大きな利点がある」

 

 取り出したのは、『豊穣の神角(コルヌー・コーピアエ)』………それが意味する事を察した一同は、成程と頷いた。

 

「ユグドラシルアイテム!確かに、ソレがあれば量産は割と簡単ですもんね」

「そうだ。上質な物品を、程々の値段で適度に売り捌く。悪くは無いだろう?加えて、ナザリックを首都の中枢区画、或いは王城の類として整備しておけば、不用意な侵入も困難にできる」

「ホント考えてますね………四六時中それじゃダメなんですか?」

「………頭が良すぎるのも考え物だぞ?他人が同じ人間に思えなくなるからな」

 

 酷い物言いだが、この世界にも似たような人間がいる為、間違いとは言い切れない。

 

「お陰で、リアルでは周りの連中の何もかもが理解できなくてな………富裕層というより腐敗層だったよ、アレらは………全く」

「………その、すみません」

 

 うんざりしたように吐き捨てるラプチャーを前に、皆が揃って確信した。

 『地雷踏んだ』、と………

 

「低賃金で酷使するより、程よい賃金でやる気を出させた方が格段に効率も上がると、過去の資料を漁ればいくらでも出てくるというのに………そんなんだから年々出生率の激減に加え、各方面で人手不足が起こっているというのに、連中は………」

「ストップ、ストップ!俺が悪かったですから、ね?ね?」

 

 ………なまじ頭がよかったせいで、学ぶ余裕のある裕福な環境に生まれたせいで、彼は気付いてしまった。

 それを改善する為にあらゆる資料をかき集め、提示し、それすらも一蹴され………それを幾度と繰り返した末に、彼は諦め、その頭脳を使うことを放棄した。ユグドラシルに入れ込んでいたのは、頭を空っぽにできる数少ない環境だったからか、偶然にも彼に並び得る頭脳の持ち主と出会えたからか………

 

「………すまないな。嫌なことを思い出していた」

「いや、こっちも思い出させちゃってすみません………」

 

 なんとも言えない沈黙による重苦しい空気の中、ラプチャーは溜息一つ零したかと思うと

 

「まあ、要は『遊び』が欲しいから頭を使わないだけだ。最適解だけ選ぶ、近道ばかりするより、多少遠回りをした方が楽しいだろう?」

 

 頭を使う、使わない談義と同一視していいかは微妙ではあるが。その例は、ゲーマーであり割と遊びを交えたキャラクタービルドの彼らにはよく刺さった。

 

「まあ、そういうことだ。話を戻すが―――――」

 

―――――

 

 轟音と共に、大樹が荒れ狂う。その光景を前に、ダークエルフを下がらせ絶望のオーラⅠを放つモモンガ。そんな彼の頭上には、十二枚羽を広げるラプチャーの姿。

 

「でっか………」

「目測で………50は軽く超えていくか。さて、どう動く?」

 

 恐怖を覚えることなく荒れ狂う大樹から、モモンガが大きく距離を置き、迫る鋭利な根による攻撃をラプチャーが切り伏せる。

 

「ふむ、恐慌は無効か」

「期待はしてませんでしたがね」

「では、そうだな―――――万雷の撃滅(コール・グレーター・サンダー)ッ!」

 

 雷轟を叩きつければ、巨大樹は絶叫と共に怯む。遠方からの攻撃に怯んだらしい巨大樹が無数の触手を地中から覗かせ、眼前の敵を殲滅すべく解き放つ。それに対し、ラプチャーは剣を手放し、スキルを発動。

 

暁の神撃(ポースポロス)

 

 ひとりでに振り下ろされるは、神聖属性と光、炎属性を宿す斬撃。その一撃の手応えと相手の上げる絶叫から、ラプチャーは凡そのダメージ量、そしてそこからレベル差を推定。その間に、モモンガもまた攻撃魔法を叩き込んでいる。

 

「問題は無いか」

「ええ、多分………使うまでもないですね」

「ああ。だが、数少ない優秀なサンドバッグだ、試せることは試すに越した事は無い」

 

 一度武器を手放し、その手を大きく払うようにして振り抜く。

 

黙示の暗黒(アキシオン・アポカリプス)ッ!」

 

 職業、種族の組み合わせによる魔法攻撃スキル。ランダム属性の第十位階相当ダメージが放たれ、大きく勢いを失っていた巨大樹の触手を貫き、本体へと大打撃を叩き込む。業火が、聖光が、暴風がその身を焦がし、抉る中、それでも大樹は未だ健在。

 情報魔法を使っておくべきだったか、とモモンガが若干後悔する中、ラプチャーはマイペースだ。どうやら、大したことないという認識に落ち着いているらしい。

 

「体力はレイド級か………まあいい。存分に叩き潰すとしよう」

 

 蒼黒の炎へとその身を変貌させ、100時間に一度、10分間持続可能な堕天使の固有スキル『天の水門』を行使。味方全体へのHPMP回復量増加、超位魔法を除くすべてのリキャストタイム短縮、付与されたデバフの効果時間短縮を始めとした強力なバフをばら撒く。これにより、モモンガの魔法使用のペースが向上する。

 

魔法三重最強化(トリプレット・マキシマイズマジック)現断(リアリティ・スラッシュ)ッ!」

次元断切(ワールドブレイク)ッ!」

 

 最強クラスの攻撃を連続で叩き込まれ、巨大樹が絶叫を零す。その様子を陰から見つめ怯え竦む存在に気付くことなく、モモンガは魔法を、ラプチャーは魔法と物理攻撃を連続して叩き込んでいく。

 

魔法三重最強化(トリプレット・マキシマイズマジック)隕石落下(メテオフォール)!」

「ハァァァァッ!!!」

 

 隕石が轟音と共に激突し、ラプチャーの振う大鎌が業火と共に巨大樹の表皮を引き裂く。反撃として種子を撒き散らし反撃するが、ラプチャーは瞬時に軌道を割り出し、モモンガに直撃しかねないモノをスキルで破壊し、それ以外を巧みに回避。

 隙間を縫うように放たれる触手による刺突も、切り捨てられ、避けられ、受け流されで一撃として当たる事は無く、ダメージばかりが嵩んでいく。全力で頭脳を回転させながら行われる無駄の一切ない流れるような動きを前に、巨大樹は本能的に勝利を捨て、逃げを選択。だが、流れるような動きに隙を作り出す事は出来ず、時間だけが流れて行く。

 

「ッ、時間切れか!」

 

 しかし、ラプチャーの天の水門が途切れたことで、一瞬とはいえ流れが途切れる。リキャストタイムの短縮が消えたことで、次の手へのズレが生じたのだ。

 その間に逃亡すべく巨大樹が踵を返さんと大地を抉り鳴動する中、モモンガが叫ぶ。

 

「ラプチャーさん、12秒!」

「了解した!」

真なる死(トゥルー・デス)!スキル、The goal of all life is death(あらゆる生ある者の目指すところは死である)!」

 

 素早く対面へと回り込んだラプチャーは、二本の光属性を宿した剣による怒涛の連撃で巨大樹を足止め。そして、モモンガは背後に金時計を浮かび上がらせ、単体即死魔法を巨大樹へと放ち、時間の経過を待つ。

 

「チィッ!」

 

 そして、危険を察知した巨大樹の抵抗は相応に激しく、ラプチャーが予測するよりも早く、膨大な数の攻撃が迫ってくる。それを、課金拳使い相手でしか頼ったことの無い勘頼りで捌きつつ、耐え凌ぎながらも決して逃さぬよう押し留める。

 

「………時間だ」

 

 そして、時計の針が十二を指した瞬間。あれほど威勢良く暴れ狂っていた巨大樹はその動きを止め、凍り付いたかのように停止する。そして、その身は徐々に朽ち果てていき、やがて崩れ落ちる。天を衝くかのように聳え立っていた巨体は瞬く間に消え去り、後に残ったのは朽ち果てた木屑とも呼べない無数の細かな塵のみ。

 

「………は?」

「………え?」

「………なぁにこれぇ」

 

 モモンガ、ラプチャーが目の前の惨状に間抜けな声を零し、影から見ていた小さな影は理解を超えた現象の連続を前に目を回し、そのまま倒れた。




ラプチャ―の過去を軽く開示。
スキルは当然ダークラプチャーを元ネタとしております。
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