オーバーロード  ~新参の堕天使~   作:初心者騎空士

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神としての君臨

(どうしてこうなった………)

 

 平伏し、敬意を通り越して信仰を向けてくる村人たちを前に、エンリとネムを連れて戻ったモモンガは内心頭を抱える。

 モモンガだけでなく、村に集まったギルメンも同様。大体、超位魔法による大規模な死者蘇生をやったラプチャーが悪い。彼が漆黒の十二枚羽を見せた上で大規模な死者蘇生をしたせいで、神と誤認されたせいで、こうなっているのだ。

 

「神よ、感謝致します!」

(どうしてこうなった!?)

「………面を上げよ!」

 

 こういう時ばかりは、種族特性のお陰で強い感情が沈静化されるのがありがたい。

 

「は、ははっ!」

「我らはこの地に降り立って久しい。故に、この近辺が今どうなっているかを、お前たちの口から話すがいい」

 

 支配者ロールのお陰か、古い付き合いの面々すら別人と錯覚するほどに見事な神様ロールをして見せ、村人から情報を引き出すことを画策。お陰で、この周辺国家に関する情報を得る事ができた。

 

(えーっと、ここがリ・エスティーゼ王国で、東にバハルス帝国、南にスレイン法国………騎士はバハルス帝国のって言ってたけど、スレインの偽装工作の可能性も………)

「偽装工作の可能性アリか………しまったな」

 

 レベル的に無理だろう、というのに加え。ディザスター版パラダイス・ロストの追加効果には、その攻撃で死亡判定を受けたプレイヤーのアイテム、魔法による蘇生を封じる効果があるのだ。弱点を引かなければ全快からの即死は無いとはいえ、鬼畜スキルとされた理由の一つでもある。

 

 要は、どうあがいても蘇生からの尋問が出来ない、という事だ。

 

「どっちでもいいでしょ?大丈夫ですよ、皆さんはあたしたちが護りますから!」

「そそ。子供を殺そうとするような奴に、正義がある訳ねぇし!」

 

 燃える茶釜ペロロン姉弟の背後に転移門(ゲート)が出現し、ダークエルフの双子と赤鎧の吸血鬼、漆黒の鎧の騎士が飛び出す。

 

「「茶釜様ぁっ!」」

「ペロロンチーノ様っ!大丈夫ですか?お怪我は!?」

「タブラ様、モモンガ様ッ!皆様、供を付けずの外出はお控えください………ッ!」

 

 アウラとマーレ、そしてシャルティアとアルベドだ。

 

「お前たちか」

「も、モモンガ様方のお知り合いでしたか………!」

 

 村人たちが改めて平伏する中、主が心配ですっ飛んできたNPCたちはその様にご満悦の様子。

 

 このことが、後に広がるアインズ・ウール・ゴウン教誕生のきっかけとなることを、今の彼らは知らない。

 

「そう!あたしたちの自慢の子たちなのだ~!」

「ちゃ、茶釜様ぁ………」

「は、恥ずかしいです………」

 

 自慢げに抱き締められ、アウラとマーレが顔を赤く染める。そんな二人と異なり、シャルティアはペロロンチーノにべったり、アルベドはそんな三人を正常に戻すべく、両手を叩いた。

 

「しゃんとなさい!御方々とその威光を知る者たちの前よ!」

 

 三人がその顔を引き締まった者へと変え、慌てて平伏する村人たちを見下ろした。

 

「えっと、ペロロンチーノ様。こいつらはどうなさいますかえ?」

「護るよ。敵が来るなら全力で迎え撃つ」

「ならば、私は御身のご意志のままに」

 

 ペロロンチーノの意思に従い、シャルティアがスポイトランスを手に笑う。その顔は、まさしく『総合力最強』に相応しいモノだ。

 

「茶釜さまはどうしますか?」

「あたしも護るよ。けど、あたしだけだと護るしか出来ないから、二人の力を貸して欲しいな」

「………ず、ズルいです、茶釜様」

「そんなこと言われたら、あたしたちも断れませんよ」

 

 二人が嬉しそうに顔を歪め、やる気を出す。ナザリックのNPCたちは性質上、至高の御方に求められることに滅法弱いのだ。

 

「モモンガ様、タブラ様、如何なさいますか?」

 

 それは、アルベドも同じ。こちらの場合、設定の書き換えが無かった為、創造主への忠誠がそのままであることに加え、最後まで残ったモモンガに対しても、それ以上の忠誠と愛を向けている。

 

「無論、守るさ」

「モモンガさんに同じ。貰うだけ貰って、ってのは社会人として、ねえ?」

「それ言われると、ボクも反対は出来ないなぁ………するつもりもありませんけど」

 

 ヘロヘロが笑い、皆の間に和やかな空気が流れる。

 

「先ずは、復興からですね。ペロロンさん、ラプチャーさんはシャルティアと一緒に空から監視を。俺は適当なアンデッドを労働力代わりに工面しますんで」

「んじゃ、私とアルベド、ヘロヘロさんと茶釜さんで地上を巡回しましょう」

「マーレ、村の周りに適当でいいから樹木なり土砂なりでバリケードを作れ。アウラは索敵能力の高い飛行系の魔獣を中心にバリケード沿いに散らせ。そうすれば、万一敵が来てもバリケードで多少の足止めが出来るだろう」

「は、はいっ!」

「了解です!」

 

 役割を分担し、行動を開始。ラプチャー、ペロロンチーノ、シャルティアが空高く舞い上がり、モモンガがラプチャー作の兵士の死体からアンデッドを作成し、壊れた家屋の修復に向かう。

 マーレは茶釜が指輪でナザリックに繋げたゲートから呼び出された魔獣に乗り、アウラと茶釜、ヘロヘロペアと共に村の外へと出て、続けてアルベド、タブラペアが別方向から村を出る。

 

 本来ならば恐怖しか覚えないだろう光景は、しかし彼らを神と誤認している今では、ただただ有難い光景でしか無かった。

 

―――――

 

「やり過ぎだよぉ、マーレぇ………」

「ご、ごご、ごめんなさいっ!」

 

 ぶくぶく茶釜の半ば呆然とした言葉に、マーレが蒼褪め震える。

 というのも、構築されたのはバリケードというより最早天然の城壁であり、丘陵の半ばから垂直に切り立った崖のようになっている上、その下には深い堀が広がり………その底には、無数の樹木が槍の如く乱立しているのだ。えげつない初見殺しである。

 

「………すまん、言葉が足りなかった………とりあえず、村の復興が終わった以上、このまま維持する旨味も少ない。すまないが、戻して貰っていいか?」

 

 ラプチャーは、彼のやる気を少々甘く見ていた事を後悔した。ここまでがっつりとしたモノを作成されるのは、正直想定外であった。

 

「ご、ごめんなさい………」

「いや、謝る必要はないさ。お陰で、今後こういった場合はマーレが適している、と知る事ができたのだからな」

 

 ガタガタ震える彼に、モモンガが優しい言葉をかける。

 

「そうだよ、マーレ。お前のバリケードがあったから、モモンガさんたちも村の人たちも、安心して動けてたんだ」

「大丈夫、マーレはよくやってくれたよ!………ただ、これからはもうちょっと手抜きを覚えよっか?」

「う………で、でも………」

 

 御方の手前、手を抜くなど言語道断。そんな思考が、マーレが首を縦に振ることを阻んでいた。

 

「では、後片付けは俺がやっておこう」

「いや、ラプチャーさんにはMP温存して貰いませんと。私がやっときますよ、多分威力なら貴方の次なんで」

 

 タブラがアルベドと共に村を出るのを見届け、モモンガらは日が傾き始めた空の下で顔を突き合わせる。

 

「アンデッドは村の自衛戦力として残そうと思いますが、どうしますか?」

「悪くはないが、今後を考えるならもう少し隠しやすい方がいいだろう。森の中に高レベルの魔獣では駄目か?」

「んー………アウラにあげた子たちだから、あんまりねー………」

 

 ラプチャーの提案は、村が国境付近らしい為、戦争中の王国に目をつけられないよう配慮した案を出す。が、こちらの場合魔獣がアウラの私物になっていることから、茶釜が難色を示した。

 

「んー………じゃあ折衝案で、魔獣っぽいアンデッドを隠しておくってことで!」

「そのアンデッドですけど、さっきは死体から作ってましたよね?………死体を使わないのは、長時間持つんですかね?」

「あ………っ」

「愚弟にしては鋭いね」

「ほっといてくれ」

 

 モモンガが考え込み、姉弟の間に微妙な空気が流れる。

 

「なら、プレアデスでも置く?」

「いや、こっちの平均レベルが不明瞭な時点でそれは………」

「ソリュシャンもそうですけど、彼女の姉妹たちも、危ない目には遭わせたくないですしね」

 

 ペロロンチーノの提案はモモンガが躊躇い、ヘロヘロもまた難色を示す。レベル差というプレアデスの明確な弱みを提示されては弱いのか、ペロロンチーノは自らの提案を撤回。守護者の配置はナザリック防衛の観点から却下される中、ラプチャーは最善と考え得る案を提示した。

 

「なら、ルベドはどうだ?」

「「「るべど?」」」

「………ああ、タブラさんがワールドアイテム使って作った!」

「あー、そんなの居たなぁ………」

「やべっ、忘れてた」

 

 あまり知られていない様子にラプチャーが首を傾げるも、それも当然。

 何せ、1500人規模の討伐隊撃退後に、彼らがドロップしたワールドアイテムを使って作成したNPCであり、その頃には過疎化が始まりつつあり、彼らもログインがまばらになっていた為だ。モモンガも、稼ぎの為にわざわざ『封印』という設定で僻地に設定されたNPCに合う余裕は無く、すっかり忘れていたほど。

 

「実力的には適任でしょうけど………」

「お待たせ―………って、何の話ですか?」

「あ、お疲れ様です。実はですね………」

 

 アルベドがいない事が気になりながらも、モモンガは村の自衛戦力について話し合っていたことを告げる。そして、その案にルベドが挙がっていたことを告げると、タブラは笑いながらその案に許可を下した。

 

「あ、いいですよ。私も適当なあばら家でも作ってちょくちょく来るつもりでしたし、手綱握りなら任せてください」

『え?』

 

 まさかの発言に、揃って目を丸くする………目が判り難いのが約二名居るが。

 

「何?ネムちゃんの監視?」

「ぐーてーいー?」

「いやいや、この辺りにエンリちゃんの知り合いの薬師がよく来る、と聞きましてね。その理由は二つしかないでしょう?」

「………異性愛か、同性愛か、ったぁっ!?」

「ぐーてーいぃぃー?」

「その発想は無かった」

「タブラさん」

「んんっ!!!」

 

 姉に絞められるエロ野郎の発想に感心するも束の間、モモンガの目が据わるのを感じ取ったタブラが咳払いと共に空気を直し、理由を話す。

 

「要は、薬草が自生しているかもしれないってことですよ。自然のままの薬草でどの程度のグレードのポーションが作れるか、調べた方がいいでしょう?」

「確かに、ユグドラシルのアイテムの安定供給はあった方がいいな」

 

 錬金術師(アルケミスト)系職を中心に有するタブラは、モモンガ以上の火力を叩き出せるマジックキャスターであると共に、優秀なマジックアイテムの作成者でもある。ならば、現地産の素材が身近にあり、且つ村人から好意的に受け入れられるここに留まるのは悪くない話だろう。

 

「では、タブラさんと護衛のルベドを置く、ということで………けど、あばら家じゃNPCたちが納得しませんよね?」

「あー………」

「けど、豪邸だと変に目立ちますよねー………」

「そこら辺は、まあ、今後の課題かな?」

 

 ぶくぶく茶釜がいったん話題を打ち切り、続けて疑問を口にする。

 

「ところで、アルベドは?」

「ああ、そうでしたそうでした!実はですね―――――」

「す、すみません、皆さま」

 

 そこに、焦った様子で村長である老人が割り込む。顔は真っ青であるが、それは不興を買い罰せられることを恐れているのか、起きた事態を恐れているのか。

 

「何が起きた?」

 

 ただならぬ事態を察し、モモンガが率先して問う。

 

「そ、それが、アルベド様とお連れのマジックキャスターが、王国の方々と………」

「………タブラさん?」

「いやぁ、実はですね………って、あれ?!ラプチャーさんは!?」

 

 タブラが事情を説明しようとするも、ラプチャーの不在に気付き声を上げる。

 嫌な予感を覚えたモモンガらが大慌てで駆けて行くと、如何にも戦士といった服装の男と、如何にもマジックキャスターといった服装の男を相手に、翼を引っ込めたローブ姿で話を聞いていた。

 

「………俺たちは、引っ込んでた方が良さそうですね」

「さんせー」

「とりあえず、私はシャルティアたちを呼び戻しときますね」

 

 この中で一番人間に近い姿をしたラプチャーに凡そを任せる事に決めた一行は、争いの火種となり得るNPCたちを自分たちの傍に呼び戻すべく、こっそりと動き始めた。




ラプチャーのやらかしにより、神様として崇められる一行であった………
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