ダンジョンで赤龍を追うのは間違っているだろうか   作:たーなひ

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ツィツィヤックは肉質柔らかくて気持ちいい

「ウチはロキ。団員を助けてくれたみたいやな。主神として礼を言うわ。ありがとうな!」

 

彼女はロキと名乗った。

なるほど、彼女が神か。確かに独特の雰囲気というか威圧感というかがある。

 

「いや、こちらも困っていたのでな。お互い様だ。

クラウド・ベロキシナムだ。よろしく」

 

「よろしくな。フィンが勧誘してたみたいやけど主神としてはどこの馬の骨とも知れんやつをホイホイファミリアに入れる訳にはいかんのや。とは言っても団員を助けてくれた恩もあるから、まあ簡単な面談やな。それでええか?フィン。」

 

「あぁ、構わないよ。」

 

「ほな、面談始めよか!」

 

 

 

 

 

 

ロキが質問形式の面談を始める。

 

「まず、あんたの名前はクラウド・ベロキシナム。間違い無いな?」

 

「あぁ。」

 

「出身は?」

 

「オラリオの外だ。」

 

ロキが少し眉を潜める。

 

「…どの辺りなんや?」

 

「さあ、どうやって来たのかもあまり分かってないんだ。」

 

「どんな所なんや?」

 

「結構な田舎でな。ほとんど人と関わる事もなかったからこの世界のことも全然わかってなかったんだ。」

 

「……今回現れたモンスターの事知ってたみたいやけど、オラリオの外のモンスターやったんか?」

 

「あぁ。独特な生態系の所だったみたいだな。ここに来る途中では故郷のモンスターが全然出なかったしな。」

 

「ふーん、どこのファミリアにも入ってなんやんな?」

 

「ああ。」

 

「恩恵も無い人間がどうやって14階層まで行ったんや?」

 

「どう…と言われても普通に下に降りただけなんだが…。」

 

「ダンジョンにはギルドの許可がないと入れんのにどうやって入ったんや?」

 

「え、許可なんかいるのか?」

 

「なんや、知らんかったんか?」

 

「ああ。」

 

ロキが少し考えこむ様子を見せる。

 

「なるほどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンタ、何を隠してるんや?」

 

ロキが細い目を薄く開いて威圧感を放ちながら問うてくる。

 

何故バレた?別におかしなことはどこにも無かったはずだ。辻褄も合っていたはず。カマをかけているのか?

 

「隠す?何のことだ?」

 

「しらばっくれんでええ。アンタが嘘をついてるのは分かっとる。」

 

カマをかけているというよりは確信しているように見える。

 

「別に嘘をついていないぞ。」

 

「アンタが嘘をついてないのは名前とどうやってここに来たのかとココへ来た方法とギルドの許可がないと入れんのを知らんかったとこだけや。そうやろ?」

 

合ってる…。何故だ、何故分かった。表情には特に出ていないはずだ。

 

「なんで分かったか不思議やろ?正解を教えたる。

ウチら神はな、魂の色を見ることが出来るんや。魂の揺らぎで、下界の子供たちが嘘をついたかどうかを見分けることができる。

アンタは上手いこと隠してたつもりやろうけど神にそれは通じひんゆうこっちゃな。」

 

「…………そう……だったのか。」

 

「さ、何を隠してるのか白状して貰おか。」

 

どうする?嘘が分かるなんて想定外だ。

こうなれば正直に話した方が得策か?だが信じてもらえない以前に狂人扱いされる可能性もある…。

信頼を築いてから打ち明ける方向でいこうと思ってたんだが……

 

「なんや?答えられんのか?」

 

 

いや、待てよ。神は嘘を見分けれると言う事は、つまり俺が話した事が事実だと認めざるを得ないということ。

ことの経緯を説明すれば分かって貰える可能性はある。

 

幸いこちらには情報がある。もし仮にテツカブラのような彼方のモンスターが現れた際に俺の持つ情報は貴重なはず。

それに俺がここにいるということはあのゼノ・ジーヴァの成体がこの世界にいる可能性がある。あの化け物を何も知らないオラリオの冒険者が倒せるとは思えない。

 

これらの手札を上手く使えばこの世界でも身の安全を確保できる可能性がある。

 

 

「………分かった。」

 

「話す気なったか?」

 

「あぁ。だがいくつか確認したい事がある。オラリオの外にもギルドと呼ばれる機関はあるのか?」

 

フィンが答える。

 

「いや、聞いたことはない。」

 

「ならドンドルマかバルバレという地名に聞き覚えは?」

 

ドンドルマは元の世界では誰もが知っている有名な街だったし、バルバレはドンドルマほどではないにしろ多少は有名だ。

これは確信を得るための確認作業。「俺、異世界から来たんだ。」って言って「オラリオの外探したら普通にありました〜」ってなると恥ずかしくて死ねる。だがどちらも聞いたことが無いとなると、ここは異世界で確定だろう。

 

「いや、無いはずだよ。ロキはあるかい?」

 

「無いな。で、その質問な何の意味があるんや?」

 

「俺は……

 

 

 

 

 

 

 

違う世界の人間なんだ……多分。」

 

 

 

「「はあ?」」

 

 

 

フィンがロキの方を向く。嘘を言っているかどうか知りたいのだろう。

 

「嘘ちゃう…わ……。」

 

まあ本当の事だからな。

 

「フィン達の言う新種モンスターは、俺の世界にいたモンスターだ。

ダンジョンの中に魔石を持たないモンスターが居て、それを俺が知っている。裏付ける証拠にはなっているはずだ。」

 

「待て待て待て、嘘ついてないのは分かるけどそれをウチらに信じろと?」

 

「だが、嘘を言ってない以上信用するしかないだろう?」

 

「………………仮にそうだとして、何故ダンジョンの中にいたんだい?オラリオの外から来たのが嘘ならオラリオに居たということになるけど。」

 

「いや、俺が目覚めたのはダンジョンの中だ。気付いたらダンジョンに居て、テツカブラの咆哮が聞こえたからそちらに向かってフィン達が戦っていた、という訳だ。」

 

「……………………ちょ〜〜っと待ってな〜」

 

(フィン、信じれるかこんなん?)

 

(嘘はついてないんだろう?信じるしかないんじゃないのか?)

 

(いや、まだコイツがただそう信じこんでるだけの可能性がある。)

 

 

 

ロキが咳払いをしてから聞いてくる。

 

「その前の世界っちゅうのがどんなとこやったか聞いてもええか?」

 

「あぁ。俺のいた世界には神も居なければ魔法もない。普通の人間が普通に生活している。

モンスターも居て、それらを依頼、クエストを受注して狩猟する稼業はハンターと呼ばれている。それらのクエストを斡旋するのは世界中に散らばるギルドの支部。まあこの世界の冒険者とギルドの関係と似たようなものだな。」

 

「うーん、嘘はついてないっていうのがなぁ〜。勘違いにしては深く掘り下げすぎな気がするしなぁ〜。」

 

「……信じるしかないようだね。」

 

「信じられないのも無理はない。俺だって正直信じきれてないさ。」

 

「……一応、この世界に来た経緯を説明して貰えるかい?」

 

 

俺は事の経緯を全て話した。

新大陸の事、調査の経緯、ゼノ・ジーヴァとその成体の事。

 

 

 

「は〜〜ん。そんで地面が崩落してそんまま落ちて気付いたらダンジョンで倒れてた…と。」

 

「そういうことだ。」

 

「凄まじいねそのモンスターは。ゼノ・ジーヴァの成体…赤い龍…"赤龍"とでも呼ぼうか。」

 

「問題は、俺が来たということはヤツも一緒に来てる可能性があるということだな。

アイツは龍脈を吸い上げるために深く潜っていっていた。まだ来ているとは確定していないがこの世界にいるのならダンジョンの下層か深層あたり辺りだろうな。」

 

「そうだね。環境を改変するほどのモンスターがいるとダンジョンに多大な影響を及ぼす。」

 

「そうなると大規模な調査が必要かもしれへんな。」

 

「だが、確定もしていない情報で他のファミリアに協力を仰げるのか?」

 

「他のファミリアに直接は難しいけどギルドからやったらいけるかもな。もし異変が起きてるならウラノスが把握してるやろうし、もし許可がでえへんようなら何にも起こってないってことやろ。」

 

「もう既に影響は出ているしね。ギルドとしても動かないわけにもいかないだろう。」

 

 

いつの間にか赤龍対策会議になっていた。

 

 

「なぁ、俺の面談がどうとかの話じゃ無かったか?」

 

「……そうやった!ど、どうしよ…。こんな爆弾みたいなん抱えるのもなぁ〜。でも他の神には渡したくないしなぁ…。」

 

「因みに君はウチに入団しても構わないと思っているんだね?」

 

「あぁ。もう洗いざらい話したし同じ話をわざわざ他の神にしないといけないとなると大変だ。」

 

「う〜ん……。」

 

ロキが出した結論は…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほな、恩恵刻むで〜。」

 

「あぁ。」

 

主神と団長からの了承を得た俺はめでたくロキファミリアに入団。

フィンはギルドに詳細な報告をしに行った。

その間に眷属になっちゃおうということで恩恵を刻むことに。

 

 

ロキが針で傷をつけ俺の背中に神血を垂らす。

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ〜〜〜!!!!?????」

ロキの大声が本拠に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィン!いるか!」

 

あの後フィンも帰ってきて、ファミリアについての詳しい説明を聞いていると、翡翠色の髪の女性が入ってきた。耳が尖っているのでエルフという種族だったはずだ。

 

「リヴェリア?どうしたんだい?」

 

彼女はリヴェリアと言うらしい。リヴェリアは確かここの幹部の一人だ。

 

「客人か?」

 

「いや、新規入団者だ。その前に用を聞いてもいいかい?」

 

「あぁ、ダンジョンの8階層で新種のモンスターが発見された。それでギルドからの討伐依頼を先程受け取った。」

 

フィンと顔を見合わせる。

 

「モンスターの特徴は?」

 

「報告に来た冒険者によれば、脚は二本。翼があり、トサカとクチバシのある鳥のようなモンスターで、全長は2メートルを超えるらしい。あと毒液を吐くみたいだ。」

 

「クラウド、心当たりは?」

 

「ゲリョスだな。ゴム質の皮を持っているが斬撃なら問題なく通る。少々厄介だがテツカブラ程の戦闘力は無い。」

 

「討伐は可能ということだね?」

 

「あぁ、全く問題ない。余裕だ。」

 

「よし、なら早速向かおう。リヴェリアはギルドに受けた旨と回収班を呼んでおいてくれ。僕は案内しないといけないから。じゃあよろしく!」

 

フィンが出て行ったのでさっさとついて行く。

 

 

 

取り残されたリヴェリアは展開の早さについて行けず固まっていた。

 

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リヴェリアは混乱していた。

なぜ新規入団者がフィンと話していたのか、なぜその新規入団者の彼がそのモンスターを知っているようだったのか、なぜ誰も連れて行かず2人で向かったのか、てかアイツだれよ。

 

疑問は尽きないがとりあえず言われた通りギルドに受注した事を伝えて回収班を呼んだ。

 

 

ひとまず言われた仕事は終えたが、どう考えても新種のモンスターにレベル6といえども油断は禁物だ。というか新規入団者ということはレベル1だろう。レベル3も被害にあっているようだし、レベル1でどうにかなるモンスターでもないはずだ。

冷静に考えてみるとマズい気がしてきた。

 

走ってダンジョンに向かう。

誰かアイズなりベートなりを連れて行きたかったが、それよりも早くダンジョンに向かいたかった。

 

 

ダンジョンに入って、最速で8階層へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。トサカが発光体だったんだね。」

 

「あぁ。壊せば厄介な閃光を防げるから最優先で狙いたい所だな。」

 

 

が、7階層の入り口付近で2人と出会った。

 

「フィン!」

 

「リヴェリア、どうしたんだい?」

 

「いや、どうもこうもないが…。見つからなかったのか?」

 

「いや、もう討伐したんだ。思ったより小さいから回収班を呼ぶまでもなかったね。」

 

いや、フィンが小さいとか言うのか…じゃなくて。

 

「…もう倒したのか?」

 

「あぁ。コイツだ。」

 

新入が背負っているのを見せる。

 

確かに報告通りの特徴だ。

 

「話は後でも良いかい?先に地上に出てギルドに報告しておこう。」

 

「あ、あぁ。」

 

「それでな、トサカを壊せばメリットばかりという訳でもないんだ。」

 

「え、そうなのかい?」

 

「あぁ、最後死んだフリをしていただろう?その時にフリの時はトサカが点滅するんだがー……。」

 

 

リヴェリアはまたも展開の早さについていけないのだった。

 

 

 

 

 

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あの後すぐギルドに行ってそのままゲリョスを引き渡して特徴や倒し方なんかを報告した。

 

そしてホームに帰還してリヴェリアにも同じようにフィンの部屋で俺の説明をした。

 

当然全く信じて貰えなかったわけだが、途中からロキが入って来て「ホンマやで〜。」って言ってから一先ず理解はしたようだ。あまり納得はいってないようだが。

それからもう1人の幹部のガレスが入って来て全くおんなじ説明をすることになったのは大変だった。

 

 

 

 

「これ同じ説明ファミリア全員にするのか?」

 

「いや、それは流石にしんどいやろ。ここにいる奴以外誰も信じへんやろうしなぁ。」

 

「私は正直信じていないからな。」

 

「同じくじゃ。」

 

「まあそこは別に把握してさえいればいい。この事は僕らだけの機密しておこう。無用な混乱を招くからね。」

 

「お、そうだな。」

 

「じゃがそれほどの腕でレベル1なんじゃろ?実力の割にレベルがそこまで低いのは変なんじゃないか?」

 

「それならレベル3ぐらいということにしておいたほうがいいかな?」

 

「だが、オラリオならレベル3はそこそこ有名だぞ?バレるんじゃないのか?」

 

「それこそオラリオ外のファミリアにおったって事にしたらええやん。そんで向こうのモンスターを知ってるのは外のモンスターって事にしたらええやろ?」

 

「……とりあえず筋は通ってるね。」

 

「だが私のようなハイエルフや世界中を旅している神ヘルメスなんかならバレるんじゃないか?」

 

「あぁ〜ヘルメスかぁ〜。そうやなぁ〜……。まあ…なんとかなるやろ!」

 

「「「はぁ〜」」」

ロキの適当さに口から溜息が漏れるが、実際それ以外に特に良い案があるようにも思えない。

 

「ま、それぐらいでいいんじゃないか?どうせ隠し事なんかいずれバレる。」

 

「ほら、本人がこう言ってるんやしええやろ?」

 

「………じゃあ、それでいこうか。」

 

 

こうして、俺の表向きの顔が決まった。

 

 

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夕飯の時に全員にクラウドとの顔合わせを済ませて自己紹介もつつがなく終わった。

反応を見るに作った設定を信じ込んでくれていたし、上々だろう。

 

 

 

そして僕は今夕飯後にロキに呼び出されてロキの部屋にいる。

 

 

「何の用だい?ロキ。」

 

「…………クラウドのステータスについてや。」

 

やはり異常なところがあるのか?

 

「………何かあるのかい?」

 

「見たほうが早いやろ。ハイ。」

 

ロキが紙を渡してくる。

 

 

 

 

 

 

「??ロキ、これは……」

 

 

「『それ』がステータスや。」

 

 

!!!!!????

 

 

「……つまりこれは」

 

 

 

 

「……そういうことや。」

 

 

 

夜空では薄い雲が月をおぼろげにしていた。

 

 

 

 




ハイ。3話目ですね。
戦闘シーンめんどくて無しにしちゃいました。余裕で片付けれたよーみたいな感じ出すならこんな感じの方が良いかなって思ってこうしました。

あと入団承諾シーンで、ワ○ピースの
「俺の息子になれ」「ふざけんなァ!!!」ドサッ
って入れようと思ったんですけど、そこらへんを読んだ後エースが死ぬまで読んでもて3回ぐらい泣いちゃったので辞めました。

入団したのでステータス予想会でもしましょうか。どんな感じか当たった人がいれば心の中で拍手を送りますので、感想、誤字報告と共にお待ちしてます。

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