ダンジョンで赤龍を追うのは間違っているだろうか   作:たーなひ

6 / 12
森林マップ遠征☆2ー1

ー24階層ー

 

 

「なんだこいつ!」

 

「に、逃げろ!急げっ…ぎゃあぁ!!」

 

「お、おい!くっそ!なんでこんなやつがい」

 

その場に残っていたのは一体のモンスターと4つの肉片だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

「指名依頼?」

 

団長のフィンがリヴェリアに聞き返す。

 

「あぁ。18階層から下に向かった冒険者が1人も帰っていないらしい。」

 

「1人も?」

 

「報告によれば、だがな。今はリヴィラの冒険者で通行止めにしているらしい。」

 

「その原因を調査してほしい…と。」

 

「……クラウド絡みだと思うか?」

 

「時期が時期だしね。闇派閥なんかの可能性も捨てきれないけど、そう考えている。」

 

「はぁ…。クラウドが入ってから忙しいな。あれからまだひと月だぞ?」

 

「ははは。小規模とはいえもう二度目の遠征だしね。」

 

「なんやなんや、おもろい話か?」

 

ロキが入ってきた。

 

「また遠征に行くことになりそうだよ。」

 

「なんやまたぁ?」

 

「そうだロキ、今度は少数に絞って行こうと思ってるんだ。」

 

「別にええけど、なんでなん?」

 

「この前戦った感じだと、多分レベル1じゃ太刀打ちできない。それに前衛が常に張り付いて注意を引いてないと後衛が援護できないから、大きな魔法を打ち込む隙がないんだ。前衛を巻き込んでしまうからね。

だから今度はサポーターを数人に絞って行くことにしようと思ってる。」

 

「なるほどなぁ。」

 

「それなら、連れて行くサポーターは誰にするんだ?」

 

「そうだね…とりあえずある程度動けるラウルは確定として…アキも連れて行こうか。」

 

「それなら、○○○も連れて行きたいな。今のうちに経験を積ませておきたい。」

 

「○○○も連れて行くなら△△△も連れて行こう。互いにいい刺激になるはずだ。」

 

「そういうことなら□□□もー……」

 

 

結局収拾がつかなくなったのでラウルとアキだけがついて行くことになった。

 

________________________________

 

俺達は二度目の遠征に来ていた。

 

今回はクエストだが目的は前回と同じく、調査の依頼だ。

まぁ…十中八九こちらのモンスターだよなぁ。

 

メンバーは前回の遠征で戦った6人にガレスとリヴェリア、サポーターにラウルとアキ。

少数に絞っているので、かなり早く進む事ができている。

 

 

22階層まで来たが、痕跡すらも見当たらない。

隅々まで確認したので、見落としは無いはずだ。

 

となると、これから行く23階層以下に異変があるということか。

だが、ここまで普通にモンスターが出てきた。

と、いうことはこちらのモンスターが原因では無いのか?

 

多少違和感を覚えながら、23階層に向かう階段を降りる。

 

 

降りた先に広がっていたのは青々とした森…

 

ではなく、辺り一面焼け焦げたり、へし折れたりしていて、散々な有様だった。

 

「なによコレ…」

 

「冒険者か…?」

 

「これほどの規模の魔法を使わないといけないモンスターがいたということか…。」

 

ティオネの呟きにベート、リヴェリアが返す。

 

「もしくはモンスターか。一先ず進もう。何かしらの痕跡が見つかるかもしれない。」

 

焦げ痕…炎か。リオレイアかリオレウスか…。

 

 

「ここは特にひどいね。」

 

木の一部が焼け焦げているのではなく、一面がほぼ更地になって焦げている。

 

「大規模な戦闘があったってことか?」

 

「これほどの威力の魔法を打てる冒険者がリヴィラに帰還していないとは考えられないがな…。」

 

「ってことはモンスターってこと?」

 

「23階層に火を使うモンスターなんていないはずでしょ?」

 

「……クラウド、心当たりはあるかい?」

 

「…炎を使うモンスターなら何体か。ただ多すぎて絞りきれない。決定的な痕跡があれば良いんだがな…。」

 

 

 

『ギャオオォォォォ!!!』

 

咆哮。おそらくこの階層から聞こえたものだろう。

今の咆哮は…

 

「フィン!今のは!」

 

リヴェリアがフィンに指示を促す。

 

「下の階層に降りる階層の方だね。行ってみよう。」

 

 

今の咆哮は昔から聞き馴染んだもの。

恐らくは

 

"雌火竜"リオレイア。

 

しかし、不可解な点がある。

それは、この階層の惨状。

とてもじゃないがリオレイアだけではこれだけの被害を出すことは出来ない。

つまり、もう一体この惨状を生み出したモンスターがいるということである。

それはリオレウスなのか、またまたアンジャナフなのか、もしくは別の何かか…。

 

 

 

 

 

ついてみると、やはりそこにいたのはリオレイアだった。

 

「なんだあれ!」

 

「ワイバーン?」

 

「あれは?」

 

「リオレイアだな。炎を使うモンスターで、尻尾には毒があるから気を付けろ。」

 

「炎?ならこの階層はこいつか?」

 

ベートが聞いてくるが…

 

「いや、恐らく違う。こいつではここまではできないはずだ。

それに……何か妙だ。」

 

「妙?」

 

「あぁ…何かから…逃げてきたような…」

 

 

 

その瞬間、力尽きたようにリオレイアが地面に落ちた。

 

そしてそのまま動かなくなった。

 

 

「……しんだ…の?」

 

アイズが零す。

 

「どうなってやがる…。」

 

近づいて確認してみるが、間違いなく死んでいる。

 

「死んでる。」

 

「……さっきまで居なかったということは……下の階層から来たということか…。」

 

「恐らくそうだろうね。」

 

リヴェリアの疑問にフィンが答える。

 

 

よくリオレイアの死体を観察してみる。

剥がれた鱗や、焦げた鱗が所々にある。

 

そして、何より目を惹くのは切り傷。飛膜は切り裂かれてズタズタになっている。

 

裂傷の痕…牙…いや、爪か?

 

「どうじゃ?なにかわかりそうか?」

 

「……まだなんとも言えないな。」

 

「下に降りないとわからないということだね。」

 

「……こいつだとどれくらい強いの?」

 

アイズの質問に答える

 

「そうだな…前に戦った大きい二体、アイツらと危険度は同等…と言えばわかるか?」

 

「そんなに強いんだ…」

 

ティオナがそう言った。

 

「まぁかなり戦ってきたモンスターだからそれほど苦戦はしないがな…。」

 

「そのこいつがやられるということはそれ以上のモンスターがいるということか…。」

 

「……………行こう。」

 

フィンについて行き下に降りる階段に向かう。

 

さて、どんなモンスターがいるのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

と、下の階段から一体のモンスターが飛び出した。

 

 

二本の脚、大剣を思わせるような巨大な尻尾。

 

"斬竜"ディノバルドである。

 

 

 

「ディノバルド!!」

 

なるほど。納得がいった。

確かにこいつとリオレイアなら森を焼き尽くしながら戦闘してこの有様にもなるだろう。

戦闘しながら一度下まで降りたが、弱って逃げてきたというわけか。

 

「こいつが!??」

 

「そうみたいじゃの。」

 

ティオネの驚嘆にガレスが返す。

 

『オォォォォ!!!!!』

 

咆哮、どうやら俺達に狙いを定めたらしい。

 

「尻尾に気を付けろ。見た目以上に殺傷能力は高いぞ。」

 

「わかった。全員かかれ!ここで仕留める!リヴェリアは援護を頼む!」

 

「わかった!」

 

「!!くるぞ!」

 

初っ端は相手の飛びかかって尻尾叩きつけ。

 

俺の注意のおかげか誰一人被弾する事なくかわした。

俺は見切り斬りからの大回転斬りを尻尾に当てる。

赤熱状態になっていないので少し通りが悪いが、当てないよりマシだ。

 

「尻尾を狙え!」

 

尻尾はディノバルドの1番の武器だ。それを削げればかなりのアドバンテージとなる。

 

「オーケー!いっくよー!」

 

ティオナが大剣で斬りかかるのにアイズ、ベート、ティオネと続く。

 

「ガレスは上手く注意を引いてくれ!ベートは全員のフォローだ!」

 

「わかった!」

 

「了解。」

 

さて、俺も狩りますか。

 

怪力の種を飲んで少し力を上げて、戦線に参加した。

 

 

 

 

戦況はこちらが優勢だった。

 

7人でターゲット分散しながら着実に攻撃を与えている。

 

距離を取る動きをしようとも誰かが張り付き隙を作らない。

 

向こうも業を煮やしたのか、全体を巻き込むような攻撃が増えて予備動作が大きくなったので見切り斬りをしやすくなっていた。

 

 

 

しかし、戦況とはたった一手でも逆転することがある。

 

ディノバルドが尻尾を口にくわえた。

 

「っ!!まずい!全員離れろ!!」

 

俺が叫ぶが間に合わない。

 

 

 

居合が放たれ…

 

 

 

 

 

 

6つの人影が吹き飛んだ。

 

 

 

 

________________________________

 

 

「なんだ……今のは…!」

リヴェリアは戦況を見ていた。

 

圧倒的とは言わないまでも、このままいけば問題なく勝てる。

そう思えるほど有利な状況だった。

 

 

しかし、たった一手で状況が大きく変わった。

 

相手のモンスターの居合のような攻撃。

尻尾を大きく回転させ、あたりのものの殆どを吹き飛ばした。見ればダンジョンの壁すらも横一線に切り裂かれている。

 

だが、殆どと言ったのは、クラウドが吹き飛ばれていなかったからだ。

 

彼はこの攻撃が来ることを知っていたらしい。離れるように促していたが間に合わずみんな食らってしまった。

 

今は彼が注意を引いているが、いつ追撃に向かうかも定かではない。

 

「り、リヴェリアさん、団長たちが……!」

 

ラウルの狼狽た様子に努めて冷静を装って返す。

 

「…回復に向かうぞ。ハイポーションを惜しみなく使って構わん。最優先で回復させろ。私はあちらを。二人は向こうを頼む。」

 

「「は、はい!」」

 

 

 

 

 

まず最初に見つけたのはティオナだった。

 

左側の脇腹が大きく斬られており、出血がすごかった。

 

「う……り、リヴェリア?」

 

「しゃべるな…今回復させる。」

 

魔法で回復させる。

 

 

どうやら彼女は大剣であの攻撃を防いでいたらしい。

とは言っても完全には防げず、折れてしまい傷を負ったというわけだ。

 

しかし防御をしてこの状態とは。

一切防御する武器を持っていないティオネやベートが大丈夫なのか心配だ。

 

だが、今は一人ずつ治していくしか無い。

 

「無事でいてくれ……」

 

 

 

 

 

結論から言えば、幸いティオネとアイズは無事だった。残りの3人はサポーターの2人に任せた方が早いだろう。

 

2人とも重症だが、命に別状はなく、後遺症も残らないだろう。

 

先に回復が済んだティオナが戦線に復帰したのを見送り、安堵して一息吐いた。

 

 

 

 

 

 

ー24階層ー

〜ディノバルドが23階層に上がった頃〜

 

 

「上に上がった…?やった!乗り切った!!生き残ったぞ!!!」

 

1人の男は生きていた。仲間は全員化け物の争いに巻き込まれて死んだが、運良く生き残り、逃げ出す隙を狙っていた。

 

 

失敗は、二体で争う新種のモンスターに目が眩んでしまったことだった。

 

中層では見ることのないワイバーンと、巨大な剣をもつモンスター。

「倒せば英雄や!大儲けやー!」なんて思ってしまうのも仕方がないだろう。

 

ついつい魔法で二体のモンスターを攻撃してしまった。

だがこれが不味かった。

野生の猛獣は争いの際、邪魔する者を二体で協力して排除することもあるという。

生粋の猛獣であるモンスターはその例に漏れず、邪魔した冒険者を亡き者にしようと反撃をする。

 

そこからは蹂躙であった。火球はかわせないし、近寄れば尻尾の毒にやられる。

なす術なくぶった斬られ、肉片になる。

 

 

たまたま階段が近かったので降りて一安心かと思えば二体とも降りてきてしまったが、また喧嘩を始めてしまった。

しかし周りを巻き込む攻撃に動くことも出来ず、ただただ身を潜めていた。

 

 

しかし、一体が上に逃げたかと思えば、もう一体もそれを追って上に上がった。

 

歓喜した。ようやくこの地獄から抜け出せる!やった!と。

上の階層を通らねばならないことに気付かなかったのは幸運だったのだろうか。

 

ともかく、命の危機を脱した彼は歓喜した。

 

 

しかし、その男に影がさす。

 

恐る恐る顔を上げると、そこにいたのはワイバーン…だろうか。

先程の緑色とは違い赤色をしており、まさしくワイバーンという風貌だ。

 

 

空を見上げた彼は動けずに、ドラゴンから放たれる火球に焼き尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 




はい。リヴェリア扱いむずすぎる。魔法ってどないなんやろ。ムフェトぐらいまできたら使いやすいんやけどなぁ。レフィーヤちゃんのアルクス・レイぐらい弱ければ使えたんやけど……

そういえば誤字報告が最近無くて逆に心配なんですけど大丈夫ですかね?誤字報告といえば、誤字を直した時の日付とかって追記しておいた方がいいんですかね?良ければ教えて下さい。
では。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。