ダンジョンで赤龍を追うのは間違っているだろうか 作:たーなひ
尻尾大回転を放って赤熱化した尻尾に兜割を放って特殊納刀から尻尾叩きつけに対して居合抜刀鬼刃を決める。
あの後から普通に一人で戦っていた。もともとずっとソロで戦っていたんだから手数が減ってもなんの問題もない。
しばらく斬っているうちにティオナが戦線に復帰してきた。傷は塞がっているのでリヴェリア達が直したんだろう。
「やったなー!このやろー!」
笑顔で顔面に攻撃を叩き込む美少女。拳で。
と、思ったら俺の蓄積ダメージと合わさって喉が暴発したらしい。大チャンスなのでまだ赤熱化している尻尾を狙う。
そこでベートとフィンも戦線に復帰した。
無事だったようで何よりだ。
また兜割を決めると尻尾を切断した。うーん。柔らかくてきもちよし。
尻尾を斬られた痛みからか、咆哮をあげて怒り状態になる。
戦線に復帰したガレスも合流した。
ティオナに聞けば、アイズもティオネも無事だそうだ。
心置きなく集中できる。
ブレスを横に回避して、既に突撃したベートにつづいて斬りつける。
他の3人の連携もあり怯んだのでクラッチのチャンスだが、怒っていて壁当ては出来ないので普通に殴る。
そこですぐにディノバルドはまた居合の構えを取り始めた。先程の失敗から学んだ者達は距離を取る。
俺は突きから特殊納刀で構える。
そして刹那に合わせて居合抜刀鬼刃斬りをぶち込んだ。
すると、みんな驚いたようにこちらを見ている。
なんだ?確かに神業であったかもしれないがそこまで驚くこともないだろう。
なに?俺じゃない?うしろ?
その瞬間、俺の数メートル上を一体の飛龍が通過して、ディノバルドに突撃した。
赤い鱗を持った飛龍。"火竜"リオレウスである。
二体の喧嘩を眺めていると、フィンに声をかけられる。
「手を出さなくて良いのかい?」
「問題ないだろう。むしろ勝手に削りあってくれるなら好都合だ。あのリオレウス相当怒っているらしい。」
まぁ妻殺されたらぶちぎれるよな。
「怒る?なんでだい?」
「リオレイアとリオレウスは雌雄なんだ。恐らくあの2匹は番だったんだろう。」
「なるほどね。仇を討つべく喧嘩を始めたと…。」
「どっちが強いんじゃ?」
「どちらも危険度は同じぐらいだからなんとも言えないな。」
体感ではディノバルドの方が戦いにくいが、それは恐らく慣れなどもあるのだろう。閃光で落ちさえすればリオレウスはただのサンドバッグと化す。
だが、思っていたより一方的なようだ。
俺達との疲労もあったのか、ディノバルドは押し負けてしまいマウントを取られてしまった。
上からボコボコにされている。恐らくこのまま勝負がついてしまうだろうが、ディノバルドを残しておいても得はないのでそのまま倒させる。
結局、そのまま倒されてしまい、リオレウスが勝利の咆哮をあげる。
「フィン、どうするんじゃ?」
「野放しにしているわけにもいかないだろう。倒そう。」
「俺達の獲物を横取りしやがったんだ。ぶっ殺してやる!」
どうやら倒す方向て行くようだ。
向こうもやる気らしい。
初手のブレスをかわして距離を詰める。
さて、危険度はディノバルドと同等だが、リオレウスの方が明らかにラクである。
その理由は前述したように、閃光でハメ殺せるからだ。
飛んだ際に閃光を喰らわせることで驚いて体勢を崩して地面に落ちてしまうので、殆ど飛んで攻撃するリオレウスはまさにどカモなのである。
とはいえ、個体によって閃光の耐性などがついて地面に落ちなくなることもあるのだが。
加えて、ディノバルドに比べて肉質が柔らかい。胴体を除けば大体の部位が柔らかいので、かなり狩りやすいのである。
今回も、閃光ハメをするべくスリンガーに閃光弾をセットする。
何度か攻撃するうちに飛び始めたので、スリンガーを構える。
「と、飛んだ!?」
「まずいな…一旦下がるぞ!」
「いや、必要ない。全員、目を塞げ!」
目を塞ぐように注意を促して、スリンガー閃光弾を発射する。
地面に落ちたので、そのまま追撃。
「ありがとう、助かったよ。」
「気にするな。」
問題は、耐性がどれくらいでつくか…だな。
1番肉質の柔らかい頭部を斬っていたが、どうやら怒ったようだ。怒った後はバックジャンプブレスをしがちなのでスリンガーの用意をする。
案の定やってきたので、咆哮を見切り斬りして大回転斬りまでしたあとスリンガーを構えて撃つ。
だが……
「落ちない…か。これは手強いな。」
ハメれるかと思ったが、一筋縄ではいかないらしい。
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リヴェリアに回復してもらってようやく戦線に復帰できるようになったティオネとアイズだったが、しばらく離脱していた間に大きく戦況が動いていた。
いつの間にかさっき戦っていたモンスターは死んでいるし、新たなモンスターと戦っている。
そのモンスターはワイバーンのようで空中から火球を飛ばして攻撃をしており、地上にいるフィン達は反撃できずにいた。
「どうなってるのよ…」
「とにかく行かないと…」
「ちょっと待ちなさいよ。」
合流しようとしたアイズをティオネが止める。
「下に合流したところでただ6人に増えるだけでなんの意味もないでしょう?」
今フィン達に合流しても5人が地上で敵の攻撃をかわしているのが6人に増えるだけでなんの援護にもならないでしょうと、そう言ってアイズを引き留めた。
「じゃあ…どうするの?」
「考えがあるわ。」
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フィンから見て、戦況は劣勢だった。
一度は閃光によって地に落とされたが、耐性がついたのか二度目以降は地に落ちることはなかった。
空を飛ぶモンスターに有効な攻撃を与えることも出来ず、向こうは火球を飛ばすことで攻撃できる。躱すことの出来るスピードだが、永遠にかわし続けられるわけでもない。
逆に向こうもスタミナが無尽蔵という訳でもないみたいなので体力勝負となりそうだ。
しかし、一手で状況は一気に好転することとなる。
スタミナ切れを狙うしかないと思われていたその時、
飛龍のさらの上に人影があった。
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「考え?」
アイズがティオネに聞いた。
「そう。団長達は今、モンスターが空中にいるせいで攻撃に転じる事ができずに攻撃を躱し続けてる。」
「うん。」
「恐らく団長の狙いはおそらくスタミナ切れ。無尽蔵に火球を飛ばしていられるわけでもないならいずれ降りてくる。そこを狙っているはずよ。」
「う、うん。」
アイズは戸惑っていた。いつもは団長団長言っている頭の悪そうな少女がここまで冷静で賢そうな雰囲気を醸し出しているのに戸惑っていた。
ティオネは元来冷静である。アマゾネス特有の荒々しさはあるが、妹のティオナの天真爛漫な性格とは反対にあった。フィンに惚れてしまったせいでバカそうに見えるが、ティオネ自身は聡明な少女だったのだ。
「つまり、あのモンスターを私たちが落とせば団長達は助かる。そうでしょ?」
「うん。」
「つまり!団長は私に感謝して、私に惚れる!モンスターを落として団長も落とす!!完璧な作戦よ!!」
「う、うん?」
2つの落とすには違う意味があるのはわかるのだが、フィンを落とすの意味がわからない。
まだ11歳のアイズには早いようだ。
「と、いう訳であのモンスターを落とすわよ!」
「どうするの?」
何が「という訳」なのかわからないが、問題は方法だ。
飛んでいるモンスターを落とすのには魔法か飛び道具が必要だ。しかし誰も飛び道具を所持していないし、リヴェリアの魔法は向いていないだろう。
「私が全力でアイズを上に投げ飛ばすわ。アイズはそのままあのモンスターの上から全力で攻撃をして撃ち落としてちょうだい。」
「うん。わかった。」
「テンペスト!」
飛龍の上をとったアイズが魔法で風を纏う。
「ふっ!!!」
レベル4の渾身の一撃で、飛龍は地面に叩きつけられたのだった。
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「あれは…アイズか?」
閃光も効かないのでスタミナ切れまで待つしかないかと思っていたが、そんなことはなかったらしい。
どうやったか知らないが、リオレウスの上から一撃を加えて叩き落とした。
「!!チャンスだ!ここで仕留めろ!!」
フィンの号令で一斉に飛びかかる。
「よくも好き勝手してくれたなあクソドラゴンがぁ!!!」
「ぬぅえぇぇい!!!!」
「とりゃぁー!!!」
今までのストレスを発散するかのように全力で攻撃する3人。
上から降ってきたアイズ、合流したティオネと共に、地面に落ちた哀れなリオレウスを袋叩きにした。
あのままリオレウスを倒すことが出来たので、リヴェリア達と合流して24階層を確認した後25階層に行くと、何人かの冒険者を発見した。
聞けば、24階層ではモンスターが喧嘩していて通れなかったので、立ち往生していたそうだ。
他に生き残りがいないか確認して、彼らを回収してリヴィラに連れて帰った。
その後は、念のため25階層以下も調査するためにリヴィラに泊まって、今日は宿泊することになった。
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森の中を歩きながら考えていた。
ベート・ローガにとってクラウドという男はどこか怪しい男だった。
突然ダンジョンに現れ始めた新種のモンスター。
それと時同じくしてオラリオに現れ、ロキファミリアに入団したかと思えば、新種のモンスターの事をよく知っていた。
何故知っているのかと聞けば、オラリオの外のモンスターで出身地ではよく戦っていたからだと言う。
怪しい。
偶然にしては出来過ぎている。
クラウドが元凶だと言われても納得できるほどに、いや、むしろそうとしか思えないほどに。
しかし、幹部達は普通通りに接している。
俺達に伝えず幹部には伝えているのか、幹部が気付いている上で泳がせているのか。
口にしていないだけで、そう思っている団員は一定数いるだろう。
入団の際の説明にも、「どうしてダンジョンに外のモンスターが現れたのか」言及されることも無かった。
掘れば掘るほど怪しい点はいくらでも出てくるクラウドを信用しろと言うのも難しい。
フィンがなんの考えもなく入団させた訳がないとわかっていても、どうしても考えてしまう。
バカゾネス共はすっかり気を許しているようだが、そんなやつの気が知れない。
俺は簡単に気を許したりは「ベートか?」
「チッ」
クラウドが声をかけてきた。思わず舌打ちをしてしまう。
「どうしたんだ?こんな時間に。」
「テメェこそ一体なんのようだ?」
「採取だ。ダンジョンの中にも使えるものがあるかもしれないからな。」
全ての行動が怪しく見える。
胸の奥につっかえているものを我慢できずに…
「……………………テメェは…何もんだ?」
聞いてしまった。
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テメェは何もんだ?
と、ベートにそう聞かれた。
「俺はただの冒険者だ。」
ハンターと答えても良かったがややこしくなりそうなのでやめておいた。
「そうじゃねぇよ…ふざけてんのか?一体何処から来てなんだココにいんのかって事だよ。」
勘付いたのか?フィンが教えたということもないだろう。
だが、確かに俺が怪しまれるのは当然の事だ。
大体の辻褄は合わせたが、いくつか不可解な点が残ってしまう。
俺が来てから急に現れたダンジョンの変化は、俺が原因だと疑われるのに十分だ。
しかし、どうしたものか。
陰で疑われるだけならどうとでもなるが、こうして直接聞いて来た相手を無視することはできない。
「答えられねぇのか?」
どうする…。正直に話すか?だが信じてもらえるとも限らんし、余計に疑いが深まるかもしれない。
でも適当な嘘で誤魔化すのも得策とは思えない。疑いから入っている相手を騙すのは難しい。
…どちらにしても変わらない気がする。
しかし、おそらくこのベートは、俺の秘密を暴き立てたいわけではない。
雑な隠し事をしようとする怪しい新入を理解しようとしてくれているのだろう。ファミリアとして、家族として隠し事をして欲しくないと思っているのだろう。
となると、真実も話せず、嘘もつけない俺が取るべき行動は自ずと縛られる。
「すまないベート。まだ話せない。」
「あぁ?」
できるだけ誠実に話す。誠実なベートに、不誠実に返すことはできない。
「話しても信用してくれると思えない。突拍子もない話だからな。今話して、ベートが信じてくれて、お互いに信頼し合うようになるビジョンが見えない。だから、話せない。」
黙秘という選択肢を取った。
これが受け入れられないなら、もう正直に話すしかない。
「……………………チッ」
そう言って背を向けて歩き出してしまった。
「悪いな。いつか話すよ。必ずな。おやすみ。」
遠ざかる背中に向けてそう伝えた。
はい。
モンスター死ぬのはやくね?って思った方いると思うんですけど、そりゃお前レベル6おったら段違いに決まってるやんって事ですよ。4gとかでHR800越えとかが入って来たらめっちゃ心強いですよね。そんな感じです。
では。