修正作業が終わった話から順次投稿していこうと思うので、よろしくお願い致します。
プロローグ
どことも知れない空間をどこまでも果てしなく落ちていく感覚、以前鋼に飛ばされた時とは違い、しっかりと自分の意思で僕は世界を越えていく。僕たちを守っているのは、機械仕掛けの悪魔の発する漆黒の重力壁。世界の境界を切り裂き、僕たちがいるべき本来の世界への道を作っているのは、その悪魔が右手に持った巨大な剣。剣の描く軌跡は虹色の道となり、僕に安心をもたらしてくれる。
だが、永遠に続くかと思えた落下感はいきなり止まった。
「二巡目に戻れたのか……?」
そう思って、周囲を見るも自分のいる世界は未だに昏い。自分たちが止まってしまっているのだ。
「――黑鐵ッ!」
不安になり、自分たちを守っている機械仕掛けの悪魔の名を叫んでも変化は無い。
「アニア、どういうことだか分かるか……?」
疑問に思い、黑鐵の腕の中にいる金髪の悪魔に聞いてみるも、
「私にも分からん……というか、何故私に聞くのだ!?」
逆切れ気味に回答を返される。その勢いに押されつつ、こちらも困惑気味ながら返事を返す。
「いや、アニアなら分かるんじゃないかと思ったんだけど……」
「世界間の移動など一巡目に飛ばされた時だけだというのに、私が分かるわけ無いだろう!!
そもそも、そっち方面は直貴が担当だ!!
……大方お前の操っている黑鐵に何か問題でもあるんじゃないのか!?」
そんな口論を繰り広げていた僕とアニアの両方の顔色が段々と悪くなっていく。二人揃って気付いてしまったのだ。嘘であって欲しいと思う。
だけど、
「…なぁ、アニア…」
「…何だ、智春…」
二人揃って、声が震えている。
「…このまま黑鐵が止まったままだとどうなる…?」
「……いずれ、魔力が尽きて、どことも知れない空間に墜ちていくだろうな……
どこかの世界に一人でも流れつければ良い方だ」
やっぱりか……って、
「どうすんだよ!?
こんな訳の分かんない空間で死ぬのは流石にごめんだぞ!」
「えぇい、私だって抜けれるものならとっくに抜けているわ!!」
ギャーギャー騒ぐ僕とアニア、解決策も浮かばず、ただ此処で死んでしまうことへの不安で押しつぶされそうになり始めた。
そんな最中、
ズンッ!!!
「えっ!?」
突然目の前の空間が揺らいだ。何が起きたのか分からない。こんな世界の狭間に干渉できる存在なんて、それこそ最強の
茫然としている僕らの前で、そいつは眩い光と共に現れた。
巨大な腕
機械仕掛けの人形の腕
世界を歪め、ねじ曲げ、へし折り、滅ぼそうとしていた圧倒的な“力”の権化
「デ、
「…っ、馬鹿な…!!」
何でこんな時に僕らの前に…!!
驚愕して固まったまま動けない僕らと同じように、デウスも出現したままの状態で動こうとしない。
いや、動く必要が無いだけだった。
「…グッ!!」
突然アニアが呻き声を漏らした。
「…アニア、どうし…ッ!!」
僕がアニアの方を見ると、彼女の体が段々と透け始め、その体から砂のような透明の粒が流れ落ち出していた。
「…な、何で…!?」
いきなり非在化するなんてありえない!!それこそ、嵩月みたいに発作が起きていた訳でもない。なのにどうして!?
「…と、智春……黑鐵を!!」
非在化が起きていて、苦しいにも拘らずアニアが僕に声をかけてくる。その声が耳に届くと、僕はすぐさま考えもなしに行動していた。
「――黑鐵!!」
自分たちを護っている機械仕掛けの悪魔を、デウスに向ける。世界の移動で僕たちを護っている重力壁はそのままに、新しい重力球を生みだしデウスに向けて放つ。発射された重力球は、黑鐵の腕の前に現れた幾つもの魔法陣を通って加速する。
だけど、
「…な…!!」
「…う、嘘だろ…!?」
デウスに当たる直前に消滅してしまった。
くそっ、どうすればいい!?世界の移動はただでさえ莫大な魔力が必要になる。その最中にこれ以上の力を使ったら、もう、操緒がもたない。だけど、黑鐵を使う以外に、僕たちが助かる方法も思いつかない!!
そんな風に考えていた僕の体にも異変が起きていた。
「ぐ、ぐあああっ!!」
「智春!!」
何だこの感じ!?
体が熱い、燃えるように熱い!!
だけど、それは僕という存在の外側が燃やされているだけで、中身は急速に冷え切っていく。そして、燃焼と冷凍が混ざり合った部分が消えていく感覚。自身の存在が、世界のどこにも感じられなくなっていく。自分自身を世界に繋ぎとめられなくなっていく。
これが、
「非在化!!」
一巡目の世界で悪魔になっているから、考えなかった訳じゃない。
だけど、自分が男だから、雄型の悪魔だから、嵩月のことを、操緒のことをずっと忘れないでいれば非在化しないんだと思っていた。
だけど、違った。いや、心のどこかで、忘れていた、思い出さないようにしていたんだ。
あいつは、一巡目の僕は悪魔でありながら
なら、僕もそうならないという保証がどこにあった!?寧ろ、そうなる可能性の方が高い。僕も、悪魔でありながら演操者なのだから。
「おい、しっかりしろ智春!!」
アニアが自分も非在化が進行しているのに、僕に向かって声をかけてくれる。どうやら、僕の方が非在化の進行が激しいらしい。何とか、アニアの方に顔を向けるが喋る余裕はない。
「があああっ!!」
「くそっ、どうすれば!?」
体が崩壊していく感覚から抜け出せない。僕が消えたら、アニアは?操緒は?嵩月はどうなる。黑鐵が止まったら、この世界の狭間から抜けられずどうしようもなくなってしまう。
なら、僕は消えない!!
消える訳にはいかない!!
こんな所で皆を終わらせる訳にはいかない!!
そんな時、頭に声が響いてきた。
『――だいじょうぶ、トモには操緒がついてるよ』
「…え…?」
操、緒…?
体の崩壊感も忘れて戸惑う僕。そんな僕だったが、すぐに意識がもとに戻った。
何故なら、
「「「え?」」」
僕の、いや僕らの目には不可解な状況が映っていた。非在化していく僕とアニアの体、目を閉じカプセルの中に漂っている嵩月。そして、それらの三人に向けて力を行使している黑鐵。その光景を見ている、僕と嵩月とアニア。そんな僕たち全員が、どことなく透けている。
「いったい、何がどうなってるんだ…?」
疑問の声をアニアがあげるも、僕たち二人も訳が分からないのだから答えようがない。
そんな僕たちの前に、
『ふふ~ん、皆の体から魂だけを抜き取ってみました』
操緒が姿を現した。
「な!どういうことだよ、それ!?」
『簡単だよ、今のままじゃ皆“あいつ”に消されちゃうから、魂だけでも別の世界に送って、生き残ってもらいます』
「なんで、そんなことできるんだよ…?」
『う~ん、良く分かんないけど出来ちゃったんだから良いじゃん』
いいのか、それで?
確かに全員助かるのかもしれないけど…
「あの、操緒さんは…?」
「そうだ、操緒、お前はどうなる」
『……私は、残るよ。
黑鐵を動かさなきゃいけないんだから』
な!!
それじゃあ、意味ないじゃないか!!
「やめろよ操緒、そんなこと!!」
「そうです!!
どうして、そんなことするんですか!?」
「………………」
三人がそれぞれの態度で反対するも、操緒は力の行使をやめない。
『もう、決めたんだ。ほとんど、魂も残ってないけど、今なら皆を助けられる。
だから、助ける』
操緒がそう言いきった瞬間、黑鐵から濃密な魔力が溢れだす。
『じゃあね、トモ。今度の世界の私と仲良くね…』
儚げに笑い、僕たちに手を振る操緒。
「やめろ!!やめろよ、操緒ーーーー!!」
必死に手を伸ばして操緒を掴もうとする僕と嵩月。だけど、僕たちの意識はそこで途切れてしまった。
修正作業をしていると、昔の自分の文章の下手さに泣きそうになってきます。