そこからカップ数とか計算できるサイトに飛べば、大体中学時代のサイズも逆算できるはずなので。
つーか、奏さん、でか過ぎっす……
勉強会も無事?終わり、その先に控えていた期末試験も無事終了した。
試験が終わっても学校は続くわけで、試験以外にも色々あった。
具体的には、とある授業だったりするのだけれど……
『「「「……な、なにが……!?」」」』
操緒や杏を中心に愕然としていた女子多数
「「「「ウオオオーーー!!」」」」
樋口を中心とした叫びながら興奮していた男子数名
「「ううう……」」
奏が中心の――一番は奏(何がとは言わないが)――恥じらっている女子数名
「「「…………………」」」
チラチラ
時々視線をその奏たちのとある部分――あくまで“とある”――に向けている大多数の男子
「「「うわーー」」」
そんな男子を見てドン引きしている佐伯を中心とした女子数名
「「はー……」」
そんな興奮したり、落胆したり、恥じらったりなどの微妙な空気を察して溜息をついている教師や僕が含まれているその他の男女数名
現在、僕ら学生が着ているのは、男子は紺色のボックス型の水着、女子は全体が紺色のワンピース型の水着(俗に言う旧スク)で、男女両方に一応名札が付いている(男子は水着の右上、女子は胸部)。
奏は普段は後ろで一括りにしてある髪を結い上げて後頭部の部分で纏めている。
操緒は水着――何故か紺ではなく白――に変わっただけで髪型に変化はない。
まぁ、特に泳ぐ訳でもないのだから、そもそも着替えた意味自体分からないんだが……
杏はいつも通りだ。
特に変化はないが、普段しているヘアバンドを外している。
佐伯は奏とは髪の質が違うのかやけに厳重に後頭部で髪を纏めている。
……確かにかなり癖のある髪質だとは思うけど……
女子の髪型は一旦措いておくとして、そんな学生のある種の暴走によって混沌と化した水泳の授業は、高校とは違い男女共同で行われていた。
ちなみに、体育の授業は2クラス合同で行われている。
そのため、樋口や佐伯も一緒なのだ。
妙に異性のことを意識し始める思春期の中学生だけのことはあり、普段は見ることがほぼ不可能と言っても良い同級生の水着姿に――特に男子から女子――やたらと反応していた。
反応するなというのがまず不可能な話なので何も言わないし、言うつもりもない。
そもそも、僕だって一男子生徒なのだ。
段々そっちの方向に頭が向いていきそうになるのを、必死に押さえつけ、授業に集中することで無理矢理視線を逸らしているに過ぎない。
とはいえ、視線を逸らすための肝心のその授業も、一度だけ50mのタイムを計ったら、後は自由時間というかなり適当なものだった。
おかげで、生徒間――主に男女間――の雰囲気が常に何とも言えない微妙なもののままである。
更にその空気に拍車をかけたのは、
「よーし、水中ドッジやるぞ!!」
「「「おーー!!」」」
と、樋口の奴が言い出した事にある。
授業の課題も終わっているから、特別反対する奴もいなかったからやることになったのだけれど、そこで意外な問題が生じた。
あまり深くないから足が付くとはいえ、水面は大体胸元まである場合が多い。
身長が高い奴ならあまり問題はないのだけど、大半は体の半分以上が水中にあるわけで……
つまり、何が言いたいのかというと……
揺れるのだ
態々何がとは言わないけど、女子のある部分が揺れる。
ついでに言えば、制服や体操服じゃなくて、着ているのは水着である。
普段の体育の授業なんかとは比べ物にならないほどにそういった部分とか、紺色の水着からすらりと伸びた手足がどうしたって目に飛び込んできて、どうしたっていつも以上に同級生の女性らしさが強調される。
さらに、やっている競技も問題だ。
球を投げる時に水中に体の大半があるので碌な勢いがつかない。
それを回避するにはそれなりに走って体の勢いをつけるか、水の抵抗をなくすしかないので良く動く。
しかもその動きが横の動きじゃなくて、水中からジャンプして飛び出るという縦の動きなのだ。
非常によく揺れる。
さらに奏は相手チームだ
マズイ
中学1年生とは思えない、学年1ともいえるであろう“その部分”に僕たちのチームのみならず、授業を受けている男子の大半が目を奪われる。
その所為でボールに当たって、外野に回ることになる男子が続出するも、
「「「……はぁ……」」」
撃墜された面々は、非常に満ち足りた表情をして外野であるプールの外へと泳いで向って行った。
……彼女がいる男子だったら、ばれたら凄い修羅場になりそうだ。
そんなことを彼らの後ろ姿を眺めながら気楽に思っていたが、僕も正直そろそろきつい。
球を避けることだとか、人数が減って狙われやすくなっていることだとか、その部分にどうしても向いてしまう眼だとか、反応しそうになってる自分自身を頑張って押さえることだとか上げればきりがないけれど、一番きついのは奏が他の男子からそう言った視線を向けられているということだったりする。
男子の気持ち?(習性)は自分も同じだから分かるし、理解できる。
それでも、ばらしていないとはいえ自身の彼女が他の男子からそういった気持で見られるのは非常にイライラする。
普段だったらそんな場面からは無理にでも奏を連れ出すのだが、授業中だから変に途中で抜けるのも難しい。
「はぁ」
結局最後までやるしかないのか。
そう思いながら溜息を洩らした。
瞬間
ドガッ!!
「ブッ!?」
顔面にボールが直撃し、大きな水音と水飛沫を立てて体が水中に倒れ込む。
「やりぃ!!
夏目撃墜!!」
相手チームの男子が僕を狙って投げたボールだったらしい。
今回のルールでは水面から出ている部分は全て対象になっているから、顔面でもアウトだ。
「……はぁ……」
起き上がりざまに、意図せずさっきとは別の意味で溜息が洩れる。
いくらなんでも気を抜き過ぎだ。
頭を振り、意識をはっきりさせながら僕は外野に向かって泳いで行った。
……結果は、奏たちのチームの圧勝だった。
P.S:水泳の授業後、奏は杏たち発展途上組――奏もそうじゃないかと思うのだが――に囲まれ、色々聞かれたらしい。
操緒も放課後に嵩月組で奏や嵩月母たちに色々聞いていたようだが、はたしてこっちの世界で彼女は以前の世界より成長することができるだろうか……?
早めに気付いたという点では、前回の世界よりも成長する可能性は有るのかもしれないが。
少なくとも、今のままだったら変わらないだろう。
だけど、早く気づいたからか努力しようとはしている。
してはいるんだけど……
『ほら、トモ。
唐揚げ唐揚げ!!
あとは、このFカップクッキーとか、バストアップ体操を……!!』
「僕がやっても意味ないだろ!?」
『やってみないと分からないじゃない!!』
その思いつくのを僕がやっても効果がないだろうが……!!
しかも、僕は男だよ!!
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
さて、授業も終わって夏休みが始まって早1週間。
僕はようやく夏休みの宿題を終了させていた。
部活とかで忙しい訳ではないから、普通の学生だったら喜んで夏休みの残りの時間を遊びに充てるのだろうけれど、残念ながらそう言う訳にもいかない。
残り日数のほぼ毎日が道場での練習となっている。
僕個人としては、一応受験生である秋希さんや冬琉さんのことも心配だったのだけれど、その事を聞いたら、
「「もう決まっているから大丈夫だ(よ)」」
と、非常に心強い――期待外れの――返事が返ってきた。
洛高はこんなに早くから受験をやってはいなかったように思ったのだが、秋希さんや冬琉さん、それに塔貴也さんは特別枠で確定しているらしい。
後見人?的な立場にいるのは橘高姉妹が関東学生連盟で、塔貴也さんは王立科学狂会(ロイヤル・ダーク・ソサエティ)。
確かに、橘高姉妹ほどの手練を学生連盟が放っておくとも思えないし、塔貴也さんほどの技術者なら王立科学狂会(ロイヤル・ダーク・ソサエティ)は咽から手が出るほど欲しいだろう。
……だからあれだけ余裕があったのか……
普段の彼女たちの勉強に対する態度を思い出し、素直に羨ましく思う。
正直言って、ずるい。
以前の世界で僕が洛高に合格するためにどれだけ必死で勉強したかを思えば、3人の方法は(以前の僕から見ると)反則そのものに思える。
生徒会が複数在って、悪魔やら演操者(ハンドラー)たちが裏で色々やってたりと色々滅茶苦茶な高校だけど、表向きの洛高はそれなりに有名なミッション系の進学校だ。
当然、試験の倍率は地元の公立の高校に比べると非常に高い。
そんな高校に、条件があるとはいえ(実質)試験なしで入学できるのは非常に羨ましい。
とはいえ、その方法が可能なのは洛高だからであり、他の高校だったら中々出来ないだろう。
関東学生連盟関係なら学生連盟に所属している高校であれば可能だろうが、王立科学狂会(ロイヤル・ダーク・ソサエティ)も一緒だとなると洛高ぐらいしかないだろうし……
まぁそんなこんなで、僕の2回目の中学1年生の夏休みは、前回の世界以上に濃密なものになるだろうことが確定した。
自分で選んだこととはいえ、どうしても気が滅入ってしまうのは仕方ない。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「山か海、どちらがいい?」
『「……はい……?」』
いつものような休日日程の道場での鍛錬の合間。
昼の休憩時間の橘高家の食卓で、秋希さんがこれまたいつものように唐突に口を開いた。
その唐突さに慣れてきたとはいえ、少々呆ける僕と操緒。
食卓に座っているのは、僕と操緒、それに秋希さんを除けば、八條さん、冬琉さん、塔貴也さんの3人。
八條さんと塔貴也さんは、『我関せず』と黙々と箸を進めている。
冬琉さんは、一応話に参加するつもりがあるのか視線だけは僕たちの方に向いている。
因みに、本日の昼食――嵩月祖母の様に丁寧に言うのならば昼餉――は親子丼、副菜には冷奴、汁物でインスタントの味噌汁だ。
作ったのは秋希さん
休日の道場での昼食は、弁当を持ってきたり、出前を頼んだりすることがない限りは基本的に橘高家の食卓で食べることになる。
とは言っても、社会人や大学生の人たちは午前中だけだったり、午後から来るような人たちばかりなので、一日中道場にいるのは僕や八條さん、それに用事がない場合の橘高姉妹の4人だ。
最近では、昼食時にはその面々に塔貴也さんが加わることもある。
実験やら、開発やらでほとんどあのプレハブに籠りっ放しだけれど、たまに出てきて昼食に参加するのだ。
まぁ、出てこないことの方が多いので、そういう時は秋希さんが甲斐甲斐しく――一巡目の様に――昼食を運んだり、実験や開発の手伝いをしたりと、世話をしている。
だから、この世界で僕が塔貴也さんと初めてちゃんとした会話をしたのは、ちょうど夏休みに入る1週間ぐらい前の休日だったりする。
ちなみに、その際の会話は、
『はじめまして。
君が夏目くんかい?
秋希や冬琉から話は聞いてるよ』
『……はじめまして……え、と……?』
『ああ、ごめんごめん、自己紹介が遅れたね。
僕は炫塔貴也。
秋希と冬琉の幼馴染で、秋希の彼氏だよ。
だから、君のことも彼女たちから聞いてはいるんだ』
『はぁ、そうですか……
因みに、どんな話を……?』
『………………君も大変だな……』
『いや、いきなりそんな同情の視線を向けられても訳が分からないんですけど……』
『僕に協力できることがあったら、何でも言ってくれ、可能な範囲で協力するよ』
『ありがとうございます?』
というようなもので、何だか分かるような、よく分からないようなおかしなものだった。
まぁ、変に意識して全く話さないよりは自然な感じだったと思う。
ただ、会話の後色々不安に思ってしまったのは何故だろう?
だから、塔貴也さんとも会話はする。
今迄の会話を通して塔貴也さんに覚えた印象は、
誰だこの爽やか好青年!?
というぐらい、僕の知っている部長と同一人物とは思えないぐらいしっかりとした人間だった。
だらしない部分もそれなりにあるけれど、秋希さんの前だからか基本的にしっかりしているし、割と明るく気さくな性格をしていた。
趣味が被っていることが唯一の共通点だろうか?
……秋希さんがいるといないでこれほど変わるとは、と感嘆したものだ。
と、塔貴也さんの話はこれぐらいにして、話を昼食のことに戻す。
橘高家の両親はあまり家に帰って来ないらしく、家事は秋希さんと冬琉さんのふたりが互いにこなしている。
それに、何故か炫家の両親も(橘高家ほどではないが)家を空けることが多いらしく、そちらの家事も姉妹がこなしているらしい。
(こなすといっても最低限のことだ)
だから、食事も大丈夫だと思っていたのだが……
これが予想外に酷かった。
別に食べられないわけじゃないし、バランスが偏っている訳でもない。
だが、いかんせん味が雑?だったり微妙だ。
異様に濃かったり薄かったり。
もしくは、明らかに下拵えの方法を間違えたであろう調理法で作った料理が出ることもある。
それでも、塔貴也さんに言わせれば、
「大分マシになった」
とのことらしい。
実際、今の料理の腕まで上達したのは三角関係勃発中の姉妹による料理対決の成果なのだ。
ということは、塔貴也さんはこれより酷いのを食べさせられていたわけで……
「お疲れさまでした」
そう思ったら自然に言葉が漏れていた。
八條さんも珍しく塔貴也さんの肩に手を伸ばして慰めていた。
塔貴也さんの目が潤んでいたのは気のせいではないだろう。
そんなわけだから、僕が通いだしてからしばらくして僕が自分から言い出して昼食の担当に変わっていた。
自分で言うのも何だけど、二人よりはまともな(奏や八伎さんほどではないが)食事を作れる自信がある。
結論だけいうと、僕たちの昼食事情はかなりの部分が改善された。
ただ、それではあまりにも2人(+塔貴也さん)の将来が不安なので、時間が残った場合には橘高姉妹の料理の練習に付き合っている。
その結果、なんとかちょっと独創的な味わいにまで引き上げることができた。
これなら大丈夫だ
と思ったので、再び昼食の担当に復帰してもらった。
とはいえ、まだまだ不安なのは確かなので月1のペースにしてもらっている。
今日はたまたまその日だったのだ。
おかげで、僕が担当している時以上に八條さんの顔が険しい。
なので、出来るだけそっちは見ないようにしている。
まぁ、そんなことはともかくとして……
「『山か海、どちらがいいか?』ですか……?」
「ああ」
ふむ、なんだって今その話題が出るのか分からないが……
まぁ、個人的に行くのなら、
「山、ですかね」
海はとりあえず今度奏と一緒に行くことにしているので、どうせなら山に行きたい。
登山とか修行とかじゃなくて普通のピクニック気分で行きたい。
その時はどうせだから奏とか樋口も誘ってみよう。
ああ、樋口はやめてペルセフォネを連れて行ってみようか。
あの子にも嵩月組以外の場所も見せてあげたいし。
でもそうなると八伎さんとかも付いて来そうな気も……
……流石にないと思いたい。
「……山、か……」
「山、ね」
何故か最終通告の様な雰囲気で僕に言葉を投げかける橘高姉妹。
「?はい」
とりあえず否定することではないので肯定しておく。
「ふむ」
そう言って考え込む秋希さんと冬琉さん。
『「?」』
僕と操緒には全くもって訳が分からない。
一先ず考え込んでいる二人を置いて親子丼を掻きこむ。
「う~ん、もうちょっと煮た方が良かったかも……」
秋希さん御手製の親子丼の評価を呟きながらも、箸を動かし続ける。
ちゃっちゃと食べないと時間が無くなってしまう。
少しでも食べてから休憩しないと、吐いてしまうから……
そんな風に急いで親子丼を食べている僕の耳には、先輩4人の不気味な呟きが聞こえなかった。
「今年は山か……熊鍋も上手いな……いや、ぼたん鍋も捨てがたい……」
「今年もあの場所なのね……
それに、虫も大量にいるし、この前食材を置いていったから、ひょっとしたら“ジョニーさん”も大量に発生してるかも……」
「またあそこか……
今年は飯に関しては心配しなくて良い分まだマシか……」
「……今年は何を手伝えばいいんだか……」
まぁ、聞こえてたら何かが変わったっていう訳じゃなかったんだろうけど……