闇と炎の相剋者   作:黒鋼

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修正しながらふと思うのは、この作品完結まで持って行けるのだろうかという不安。
だってこれだけ書いても原作に追いついてないんですから。
どうなるのか自分でも分からないです。


29回 月と鳥

冬琉さんたちが正体不明の――今のところ未確定なため――使い魔(ドウター)とやり合ってから早5日。

取り合えず(戦闘での)大きな傷もなく二人と合流できたのは良かったのだが、それ以降敵の方が何かをしてきたという話を全く聞いておらず、事件の解決に向けての大きな進展はない。

今は学生連盟や悪魔の家々が毎日のように動き回り、敵の組織の物と思わしき建物を潰して回っている。

それでも、あちらは何の動きも見せようとしないのだ。

徹底して必要な物を隠しているのか、それとも何か大規模な犯罪の準備をしているのか……いずれにせよ、何も判明しないからか不安は募るばかり。

 

「……はぁ」

 

自然、溜息が出てくる。

僕らも、学生連盟や嵩月組に協力して毎日空いた時間は調査に回っているからか、余計に焦りが出てくる。

焦っても良い結果は出ない、と頭では分かっていても感情は別だ。

敵の拠点だった場所に行って調査を手伝う度に自身の無力感に苛まれる。

まぁ、何にせよ結局僕らがやれるのは地道に市内の怪しい場所に足を運ぶことぐらいなのだ。

……学校側にばれると非常に面倒な事になるので、そう言うところに行く時は出来るだけ学生連盟の大人、或いはパッと見はカタギの人間に見える嵩月組の構成員の方と行くようにしている。

こういう時に、学生連盟に学校が所属していないという不便さを感じてしまうが……仕方ない。

公立の中学なのだから、所属していたら所属していたで問題はあるのだろうし。

ただ、その捜査の結果もあまり芳しいものではない。

元々あまり期待はしていないが、それでも捜査に進展がないとやる気がかなりの勢いで削がれていくから、多少なりとも何か見つかって欲しいのだが……

そんな状態の中で異様にやる気が高いのは、何故か冬琉さんだったりする。

普段の彼女のGDとしての仕事ぶりがどうだったのかは分からないが、今の冬琉さんはワーカーホリック気味に思えるほど忙しなく動き回っていた。

だがまぁ、それだけならば特別異様だとは思わない。

今回の事件では美呂ちゃん――つまりは自身の身内……と言ったら言い過ぎかもしれないが、或いは友人、仲間――が攫われており、これまでの仕事以上にやる気が出て熱心になるのも特別おかしいことではないのだから。

事実、僕や奏、それに氷羽子さんは3人とも睡眠不足気味だし、雪原さんに至ってはここ数日目の下から隈が消えた日はない。

なので、ワーカーホリック気味になるのはある種当然の事だった。

……それが良いことなのか、悪いことなのか聞かれると、判断に困るところではあるが……いずれにせよ、冬琉さんが疲れていても特別思うところなどはない。

……まぁ、体の調子が大丈夫かどうかという不安はあるけれど、それにしたって捜査を行っている人全員に共通して言えることだ。

冬琉さんのみを態々特別視する理由にはならない。

 

問題なのは、冬琉さんの捜査に臨む態度。

 

ここ数日で何度か捜査中に顔を合わせることがあったのだけれど、いつも彼女はどこか鬼気迫る表情で捜査を行っていたのだ。

まぁ、その事自体はおかしなことではないかもしれない。

前述したように、美呂ちゃんが攫われているのだし、焦る気持ちは分かる。

ただ不思議なのは、僕たちを急かすようなことはせず、むしろもっとゆっくりと捜査をした方が良い、と促してくるのだ。

直接その様に言われたのではない。

ただ、遠回しに遠ざけられている様な気がしてならない。

そのくせ、冬琉さん自身は率先して調査を行っており、自身が僕らに向けて言っていることと実際の行動に差があり過ぎる。

雪原さんや秋希さんに聞いたところによると、学校が終わるとすぐに八條さんの入院している病室へ向かっているそうだが……その事と何か関係があったりするのだろうか?

 

そう言えば、八條さんの様子もおかしいと言えばおかしい。

 

事件に対しての態度もそうだけれど、冬琉さんへの態度もおかしい。

事件に対しては、前回大怪我の身をおして参戦していたというのに、ここしばらくは全く実行しようとしない。

前回で懲りたのか、或いは冬琉さんに何か言われたのか、とも考えたけれど、それにしては大人しすぎる。

まぁ、まだ5日程度しか経っていないのだから特別不思議な事ではないのかもしれないが……

僕が知っている八條和斉という雄型悪魔はもっと行動的だと思っていたが。

というか、こういう思考に陥っている時点で、僕も大概橘高道場の考え方に汚染されてるよなー、と思う。

本来、あれだけの重傷を負った人間――この場合悪魔――が病院を抜け出してまで捜査をするのは、まず、考えられないことだ。

だけど、あの道場の面々ならいくらでも方法があると思ってしまうから困る。

……本当の理由は、5日前の件で魔力封じの結界でも病室や病院一帯に張られているのかもしれないが……

まぁ、下手に動かれて余計な心配が発生するよりはマシだから全然今のままで構わないんだけど、どこか不気味な物を感じてしまうのは僕だけだろうか……?

 

それから、八條さんの冬琉さんに対する接し方が妙にぎこちない。

ぎこちないと言っても、喧嘩をした後のあの気まずい接し方ではなく――というか、この二人が喧嘩するのはしょっちゅうだから今更ぎこちないもない――何と言うか、その、変に甘酸っぱい空気なのだ。

前述した冬琉さんの行動からも分かるように、冬琉さんはここ数日、毎日病院に通っている。

だから、冬琉さんが避けるような関係ではないはずなのだけれど……

なんというか、今迄妙にストイックに生きてきた男性が、初めて女性をデートに誘った時のような、とでも言えば良いのか、或いは、付き合いだしたばかりで互いに気を使い合っている初なカップルの空気、とでも言えば良いのか……

要は、とても周囲にいる人間にはむず痒い空気なわけで……

 

『ああ、夏目たちか……今は入らない方が良いぞ』

 

なんて部屋の外にいる秋希さんに忠告されるほど。

その忠告を無視して部屋に入った僕と奏は、非常に居心地の悪い気分を味わうこととなった、とだけ言っておこう。

まぁ、二人の関係が進展したのだろうから、深くは聞かない。

というか、聞けるわけがない。

多分、5日前に二人でいた時に何かあったのだろうが……特に問題がある訳でもないし、構わない。

むしろ、これで塔貴也さんが“仮に”暴走したとしても、冬琉さんは協力しない可能性が高くなった。

秋希さんを消滅させるつもりはないが、また一つ未来が変えられたと思う。

後は、一先ず、この事件を解決して、秋希さんや蹴策、それに美呂ちゃんのの無事を確保すれば一安心だ。

……あ、真日和のこともあったっけ……

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

「……状況は逼迫しかけとる」

 

とある料亭の一室で嵩月父が重々しく口を開く。

対面式の座席で、こちら側には嵩月父を筆頭に八伎さん、や嵩月組の幹部の方々。

そして、何故か僕と奏。

 

「こちらもそれは重々承知している。

 現に、先刻華島が明らかな敵対行動を示してきた」

 

それに答えるのは、向かい側に座っている鳳島家の当主

彼の横――つまりは僕たちの正面にはあちらの家の幹部の方々。

そして、いつも以上に冷たい雰囲気を漂わせている氷羽子さん。

蹴策は……いない。

 

「……ふむ……風斎はいつも通りとして……問題は八條、か」

 

「あちらは放っておいてもよろしいのではないでしょうか。

 今のところ、我々に不利になるような行動を起こすとは考えにくいかと思われます」

 

現在行われているのは、嵩月、鳳島両家の当主による会談だ。

例によって操緒は姿を消している。

今回の事件における両家の対応は一致しており、互いの家やそれぞれの傘下である下部組織にも被害が出ている以上放っておくことは出来なくなったのだ。

被害は日本国内、或いは近場である韓国や台湾などの国外にも広まっていたため、本来であれば以前行った会合の様な形式で問題の解決に臨むのが望ましいのだが、残念ながら今回は無理なのだ。

 

「であるならば、我々が対処に当たるのは華島に属している家々と、件の組織のみということで良いのか?」

 

「いや、この機に乗じて法王庁が動く可能性もある。

 そちらの警戒も必要だろう」

 

何故無理なのかというと、今回の事件の組織が行っている活動によって利益を得ている家々も存在するからだ。

嵩月や鳳島は違うが、華島は利益を得ている家々の代表格と言ってもいい。

前回の機巧魔神(アスラ・マキーナ)取得に失敗した華島家が次に戦力増強の手段として選んだのが、何故か外の組織と手を組み、自身の味方となって闘う戦闘員を増やすという手段だった。

……正直言って、どうしてそんな手段に走ったのか僕には分からないが、それによって華島家は“ほぼ”完全に嵩月、鳳島の両名家と敵対することとなった。

“ほぼ”というのは、あちらの家も一枚岩という訳ではなく、当然の様に反対している一派もあるのだ。

それは、自身の娘が実際に攫われた家々であったり、単純に現当主のやり方を是としない家々であったり、と合計すればそれなりの数になる。

表だって本家に逆らおう、と意思を示している家は少ないが、ある程度いるのも事実。

あちらは、そういった家々も抑えなければならないのだが……何故か、先程明確な敵対行動を鳳島家に示したのだそうだ。

四名家の内の二つを明確に敵に回して、そこまでの自信がどうして湧いてくるのか僕には全く理解できないのだけれど……そんなにあちらの組織は強いのだろうか……?

 

「……ふむ。

 となると、学生連盟側の動向も気になるところじゃが……その辺りはどうなっとる、夏目」

 

「はい。

 学生連盟側もGDをほぼ全員投入し、ここ数日敵方の拠点を潰して回っているようです。

ですが、未だに芳しい情報は得られていないようです。

 今のところ、悪魔の家々を警戒する動きは見受けられませんが、今回の華島の動き次第によっては……方針の転換も有り得るかと」

 

嵩月父に振られた言葉に、普段社長に向けている態度とは違う畏まった調子で答えを返す。

今、この会合における僕の役割は、嵩月組内での学生連盟との取次役みたいなものだ。

そういった役割でもないとこの場にはいられないから仕方ないにしろ、

 

「ふふふ」

 

氷羽子さんの生温かい視線が何ともいえず、

 

「……ううう」

 

微妙に居心地が悪かったりする。

更には、

 

「……むー」

 

その視線を(何故か)勘違いした奏の機嫌が悪くなったりして……

真面目な話し合いの場面だから普段のノリで行けるはずもなし、足の痺れと重なって結構苦痛だったりする。

が、それでも表には出さず、しっかりと当主二人の会話に耳を傾ける。

 

「……ふむ。

 その辺りは任せるが、学生連盟の面々に我々は敵対する意図が無いよう、しっかりと伝えておけや」

 

「はい」

 

社長からの言葉に頭を下げてしっかりと返事を返す。

 

「……氷羽子、お前も任せたぞ」

 

「分かりましたわ、お父様」

 

あちらはあちらで氷羽子さんが学生連盟への対応の担当らしく、父親――鳳島家当主――に命じられ、畏まった様子になりながら返事を返していた。

普段、道場では中々見れる姿ではないので中々新鮮だったりする。

そんな風に珍しい光景に、心中で楽しんでいると、

 

「では、どの程度の人数を華島や法王庁らの対策に充てるかですが……」

 

八伎さんの言葉を皮切りに、具体的な人員や対応策を決める話し合いが始まった。

……ううう、早く終わってくれないかな。

あ、脚が、そろそろ限界……!!

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

「し、死ぬ……」

 

足を伸ばし、両腕を後ろへと思いっきり伸ばして体が倒れないように支える。

隣で奏がどう対処したものかとおろおろと困っているが、残念ながら今の僕にはそちらに反応できる程体が回復していない。

出来ても精々顔を向ける程度だ。

 

「ふふふ、夏目さん。

だらしない、ですわよ」

 

座布団の上に“正座”している氷羽子さんが奏とは対照的に、やたらと優雅にお茶を飲みながらこちらに声をかけてくる。

その顔に浮かんでいるのはどこか勝ち誇っているかのような笑みが浮かんでいる。

ううう、これでも以前に比べれば大分マシになってるはずなんだけどなぁー

だけど、それを認めるのは癪なので、

 

「……ほっといてください」

 

顔を背け、軽く拒絶の意を示しておく。

すると、

 

「あら、嵩月組の構成員風情が、今私にそんな態度を取って良いと思っているのですか……?」

 

「へ!?」

 

「ひ、氷羽子ちゃん……?」

 

突然顔を強張らせ、態度を硬化させる氷姫。

さ、さっきまでの普段の調子で話しかけてきてた姿はいったいどこへ!?

奏も友人の突然の豹変振りに戸惑っている。

 

「……これは嵩月家との付き合いを考え直さなければなりませんか……」

 

「ちょっ、い、いきなりどうしたのさ!?

 あ、いや、ど、どうされたんですか?」

 

ここで鳳島家との関係が悪化するのはマズイ。

個人的にも、嵩月組の一員としても。

僕が悪かったなら謝りますから!!

 

「ふふ、冗談ですわよ。

 以前にも言いましたでしょう。

 そちらがお兄様に手を出さない限り、私は貴方たちの敵になるつもりはない、と」

 

そう言い放ち、硬化させていた顔を和らげ、顔を綻ばせる氷羽子さん。

……綻ばせるといっても、その笑みは相変らずゾッとする冷たいものだ。

 

「……心臓に悪いんでそんな冗談はやめてください……」

 

コクコク

 

一先ず冗談と分かって安堵し、奏共々氷羽子さんのブラックジョークに文句をつけるが、

 

「ですが、夏目さんのその態度はあまり褒められたものでないことも事実。

 今部屋にいるのは私や奏だけですから構いませんが、鳳島(こちら)の幹部勢に見られたらさっき言ったことが現実になりかねませんわ。

 ご用心を」

 

「ううう、分かりました」

 

改めて態度を指摘される。

今度は真面目なものだったので、流石に拒否する様な事はせず、呻きながら同意しておく。

 

「頑張りましょう、智春くん」

 

奏が横から励ましてくれるが、

 

「う、うん」

 

弱々しい返事しか返せなかった。

うう、自分が情けない。

 

ツン

 

「ひっ!?」

 

自身の情けなさに落ち込んでいると、突然氷羽子さんに足先を突かれる。

まだ痺れは抜けていないというのになんてことを!!

咄嗟に足を引っ込めようとするも、

 

「逃げちゃ駄目、ですよ」

 

「へ!?

 か、奏?」

 

何故か奏が僕の身体を全身を使って抑え込む。

しかも、今迄見たことが無いぐらい良い笑顔で。

 

「ふふふ、脚の痺れを治すには脚の血行を良くするのが一番ですから、揉、ん、で、差し上げますわ」

 

こちらも凄くいい笑顔で脚に手を伸ばしてくる氷羽子さん。

って、笑いながら指をやたらと動かすの止めてもらえませんか!!

 

「いっ!?

 け、結構です。

 時間が経てば治りますから、遠慮しますっ!!

 だから、奏も放して!!」

 

「断ります」

 

笑い……いや、嗤いながら即答する僕の恋人。

ああ、奏。

君があのお祖母さんとかお母さんの娘だって今改めて納得したよ。

 

「嘘っ!?」

 

こんな予想外の場面で自身の契約悪魔に裏切られることになるとは!!

あっ、背中に何か二つの柔らかくて大きいものが……ってぇ!?

 

「だって……智春くんの、あんな反応、初めて見ました、から……可愛かった、ですよ?」

 

「…………ぐすん……」

 

背中に伝わる感触と、脚へと忍び寄ってくる悪魔の手に挟まれながら、必死に僕が逃げようとしていると、

 

「では、逝きますわよ!!」

 

「字が違うぅーーーーっ!!」

 

勢い良く氷羽子さんの細長くて白い指先が僕の足に絡まってきた。

 

「いやーーーーっ!!」

 

……………………………………その時のことは多くは語るまい。

ただ、脚に伝わってくる地獄の感触と、僕が暴れるたびに形を変え、背中に伝わってきた天国の感触とに挟まれた僕の精神は崩壊寸前まで“逝った”とだけ記述しておく。

……あ、結局この字で良いのか……

 

 

 

♦ ♦ ♦ ♦ ♦

 

 

 

智春が天国と地獄を両方同時に味わっている頃、

 

「ほれ、飲めや」

 

「ああ」

 

同じ料亭内のとある一室に二人の男がいた。

片方の男の手には徳利。

その口からもう片方の男が持つ盃へと透明な液体が注がれていく。

 

注いでいるのは嵩月家現当主

注がれているのは鳳島家現当主

 

「おまえも飲め」

 

「おう」

 

注ぐ方と、注がれる方が交代し、互いの盃に液体が入っているのを二人が確認すると、

 

「ほれ」

 

「………………」

 

チン

 

と、音を鳴らし互いに盃をぶつけ合う。

そして、

 

グイ

 

互いに一気に飲み干す。

そのまま注いで注がれてを繰り返し、黙って飲み続ける。

そうして、一本目の徳利の中身が空になった頃、

 

「……こんな形で顔を合わせることになるとはな……」

 

鳳島家の当主が口を開いた。

 

「……ああ、そうじゃな」

 

自身の盃の中身を眺めながら嵩月家の当主が返事を返す。

互いに先程の会合で見せ合っていたような威厳の有る姿ではない。

が、そこにいるのは確かに二人の(おとこ)だった。

 

「鳳島と嵩月、今迄決して相容れることのなかったこの二家が手を取り合うなど……

 

喋りながら鳳島の当主は盃を呷る。

 

 ……数年前までであれば考えられなかったことだというのに……」

 

言い切って、また一口。

それによって空になった盃へと隣から腕が伸び、再び液体が注がれる。

 

「……子供たちじゃ。

 儂らは何もしとらん」

 

「ふん、そんなことは言われずとも分かっている」

 

子供“たち”と言いながら二人の頭には一人の人物しか浮かんでいなかった。

それは、自身の娘でも、息子でもない――いや、ひょっとしたら義息になるかもしれないが――一人の少年。

彼が悪魔の家々――特に嵩月家――と関わり始めたことによって明らかな変化が表れていた。

彼自身は何もしていないと思うかもしれない。

だが、この二家の当主は彼自身が思っている上に少年のことを評価していた。

 

「“あいつ”がおらんかったら、今こうして酒を酌み交わすことなどなかったんじゃろうな……」

 

「そうだろうな。

 そう考えると存外、うちの馬鹿息子も役に立ったというものだ」

 

また一口、盃を呷る。

 

嵩月にしろ、鳳島にしろ、子供たちが出会っただけではここまですり寄ることは有り得なかっただろう。

有っても悪魔の家が集まった以前の会合の様な場所で意見を交換する程度。

だが、間に第三者――というと語弊があるかもしれないが――が一人入ることによってそれもかなり解消された。

そこに元々楽天的な鳳島家の長男が入ることにより、壁がほとんど消えたのだ。

……まぁ、実際は八條家の子供たちもいるのだが、この場では割愛させてもらう。

子供が仲良くなっていくからと言って、家同士の関係が良好になるという訳ではないが、一つの切掛けにはなる。

そこに更に両家にとって同一の被害者を抱えた問題が発生した結果が、現在の状況だ。

 

「……まぁ、たまにこうして酌み交わすぐらいなら」

 

「ああ、儂も構わん」

 

二人とも今更全面的に協力体制を取るつもりは更々ないが、

 

「………………」

 

「………………」

 

こうして二人揃って酒を飲むのは悪い気分ではなかった。

「……お父様」

 

氷姫の冷たい眼差し

 

「……お母様と、お祖母様に言わないと……」

 

巨乳巫女娘の呆れた溜息

 

「……社長」

 

演操者(ハンドラー)の少年の同情の視線

 

それらは全て、酔い潰れて顔を真っ赤に染め上げた二人の大人に向けられていた。

……そりゃあ、あれだけハイペースで日本酒を飲んでいればザルか、余程強くない限り普通は潰れるだろう。

その後二人の当主がどうなったかは、皆さんのご想像に任せます。

 

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