ドールズフロントライン ゴルゴダの処刑人たち   作:島塚 雄一

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第三話 小隊

「ここが小隊所属の人形の待機部屋。あと、貴女が最後だから」

 

 身動きすら封じられ殺風景な廊下をただただ歩くこと数分。気づけばパネルに407の数字と十字架に二本の槍が組み合わされた紋章があしらわれた扉の前へと着いた。

 扉が開き、部屋へと入る。内装は至ってシンプルなモノとなっており、壁紙類は無く、家具と言えるものは扉がわが開くように設置されたコの字がたのソファとその間に設置された机のみである。

 中には既に4種の人形がソファに座っており、壁際には彼らのダミーであろう、ソファに座っている人形と同じ種類のが計16体立っていた。…残念なことに俺はコアの発達度が足りないためダミーは一体もいない。五人も居れば一種のみでも十分過ぎる戦力なので、早くなりたいものである。

 

「あ、ペルシカ!その娘が私たちの!?」

「そうだよ、45。この娘が君たちの言わば、指揮官だ」

「おいおい、俺は人形だぞ。指揮官は人間がするものじゃないのか」

「HK417が指揮官となるのはTF407の計画段階から決められている。君が承諾しようがしまいが関係なく、君は彼女らの指揮官なんだよ」

「そうか…じゃあ人事ファイルをよこしてくれ。名前や経歴も知らない相手は指揮できない」

「これだよ、分かってるだろうけど…」

「全部見終わったら処分すればいいんだろ?ライターも渡せ」

「別にシュレッダーでもいいと思うんだけど」

「細切れにしても最悪回復してくるやつが稀にいる。燃やして灰にしたほうが誰にも割れない」

「…流石にここに潜入しているやつでそんな悠長なことするやついないと思うんだけど」

 

 そう言いながらもライターとファイルを渡してくれると彼女は仕事があるからとすぐに外へと出ていってしまった。

 しかしまあ。初対面ということもあり、部屋はどことなく重たい空気が満たされていた。この空気にしているのは自分であるという自覚ぐらいはあるので部屋から出ようと思ったときであった。

 

「あ、あの!とりあえず自己紹介、しませんか?」

「そ、そうだね!MP7の言う通り自己紹介しようよ!だって、ほら、417って私達のこと知らないんでしょ?」

「いや、書類を見ればわかるんだが…」

「それでも!こっちのほうが親睦が深められていいでしょ!」

 

 そんな空気の中、口火を切ったのはMP7と呼ばれた赤い髪の少女。そして、それに同調したのはこれまた赤毛の先ほど45と呼ばれた少女だった。

 

「では、私からさせてもらいましょう」

 

 そして真っ先に名乗り出たのは銀髪の少女。…体の全面が開いた服装をしており、扇情的でかつ、伏せるときはどうするのだろうと、不安になってしまう。

 

「私はPSG1。DMRです。TF407ではライフルマンのポジションを努めています。」

「…さっきから薄々感づいてはいたが、もしかしてお前らは自分の銃の名前で呼び合っているのか?」

「はい、そうですが…?」

 

 さも当たり前かのようにPSG1は返してきた。他の面々も不思議そうに子首を傾げている。

 

「おいおい、そんなんじゃ呼ぶとき不便だろ?それに、お前らは人形だ。銃なんかじゃないだろう。だったら別個に名前をつけた方が良いだろ」

「そんなこと言う人形初めて見たよ…」

「でも面白そうだよ?作っちゃおうよ!」

「そうは言っても何て名前つけるの?人形(私たち)に人間みたいな名前つけても他の指揮官が混乱しちゃうんじゃない?」

「だったら俺が適当なのつけてやる。丁度ここにお前らの資料もあることだしな」

 

 ファイルを開くとアルファベット順に並んでおり最初の人形は…HK433か。俺とは別のAR。演算能力が高く、副官に用いることも可能、とのことだ。

 容姿は髪は黒に黄緑のメッシュが入っており目を引く。全体的に赤と黒の服であり、腹部は大胆にも露出している。…戦術人形のデザインを務めているものに小一時間ほど話を聞きたくなってきた。

 

「HK433、おめでとう。君が最初だ」

「え、私が最初!?なんで!?そっか、アルファベット順なのか」

「何か希望は?」

「希望って言われても…433で慣れちゃったし」

「じゃあこちらで好きにつけさせてもらう。そうだな…よし、今日からお前はコイーバだ」

「コイーバ?」

「直感だ。お前との付き合いはかなり長くなりそうだなと感じたからな」

「なんかヘンな名前だけど…褒められてそうだし、まあいいや」

 

 コイーバといえば最高級葉巻の銘柄であるが…なぜ俺はこの名前にしたのだろうか。うーむ。我ながら不思議である。なんか、こう、引っかかるが…まあ、気にしたところで思い出せぬのなら無視する他あるまい。

 さて、次の人形であるが…HK45のようだ。部隊の目であるHGであり、口径はその名の通り45口径と大口径。服装は怪盗が着ていそうな服をアイドルが着ているようにデフォルメしたような感じである。頭髪は綺麗な赤髪で黒の帽子がよく似合っている。

 

「私のはとびっきり可愛いのにしてよね!私みたいにさ!」

「可愛い、か。ふむ。なかなかに難しいお題であるが…よし、お前は今日からオレンジだ」

「オレンジ?」

「WW3以前に人間がよく食べていた果物の一つだ」

「果物!?かわいい私にピッタリだね!」

 

 ちなみに、オレンジの花言葉は愛らしさ。彼女にはピッタリであろう。

 さて、次に入っていたのはMP7。彼女の装備しているMP7は4.6×30mm弾を使用するPDWで、ケブラー繊維製のアーマーなら容易く貫ける。部隊の盾となるSMGで運用する際は前列に配置することが推奨される。服装はワイシャツに赤いリボン。その上からフード付きのジャケットを少し着崩している。全体的には暗色であるが白黒のクマのアクセサリやリボンなどで可愛らしさをアピールしている。

 

「何か希望は?」

「隊長がつけてくれるなら、何でもいいよ」

「そうだな…では、ガーベラと名付けよう」

「ガーベラ?」

「美しい黄色の花だ。花言葉は常に前進。隊の槍であり盾でもあるお前にふさわしいと思ってな」

 

 因みにガーベラはもう一つ『希望』という花言葉がつけられている。小隊の盾であり、槍であり、かつ希望であってほしい。そんな思いも篭められている。

 さて、いよいよ最後である。ファイルに入っていたのは最初に名乗ってくれたDMRのPSG-1。バトルライフルであるG3の命中精度が特に優れたものに更に命中精度向上の改造を施したセミオートのDMRだ。

 

「最後はお前なわけだが、何か希望はあるか?」

「リューダとお呼び頂けないでしょうか」

「リューダ?別に良いが由来を聞いても?」

「小説の主人公です。実在していた人物がモデルらしいのですが、誰かは覚えてませんけど…」

「よし、リューダか。援護は頼むぞ」

 

 コイーバ、オレンジ、ガーベラ、リューダ。これで後は小隊を深く理解していけばいいわけだが、それは戦場や訓練でもできる。今急いでやる必要は無いだろう。それに、焦らずとも今の部隊の雰囲気は極めて良好だ。

 

「でも、隊長はなんと呼べば?」

「そうだよ!隊長だって決めようよ!」

「俺か?」

「そうそう、私達だって貴女を呼ぶとき困るでしょ?」

 

 しまった、予想していなかった。自分の呼び名など考えてすらいなかった。アイデアも何もない。

 

「あー、すまない。何も考えていなかった」

「では、私達で決めてもいいですか?」

「んー、どうしようか」

「あ、私いい?」

「HK…じゃなかった、コイーバ?」

「アングレカムってのは?」

「アングレカム?由来を教えてくれないか?」

「ラン科の花で、『祈り』と『いつまでもあなたと一緒』というのが花言葉なの」

「いいじゃん!さすがコイーバ!!」

「アングレカムか…いいな。気に入った」

 

 隊員全員と予想外であるが自分の名前が決まり特段伝えることもなかった為皆と談笑しているときであった。スピーカーより伝達を伝えるブザーが鳴った。

 

『あー、あー。こちらペルシカ。聴こえる?』

「ああ。聴こえるぞ。何の用だ?」

『君たち407小隊への任務があるらしいから早速だけどグリフィン本社に向かってね』

 




一週間遅刻しました。許してください、何でもしますから(何でもするとは言ってない)
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