ドールズフロントライン ゴルゴダの処刑人たち   作:島塚 雄一

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第四話 初任務

「目標地点まで残り5分!」

「お前ら聞いたな?各自、装備品の最終確認を行え!リューダ、コイーバ確認が終わり次第ドアガンについて警戒!オレンジ、ガーベラ着陸後はすぐに周囲のクリアリングができるよう用意してろ!」

「イエスメム!」

 

 幸いなことにセンサーによると周囲や着陸地点には敵影を認められない。このまま順調に行けば何ら問題なく目標地点に到達できるだろう。

 今回の作戦は屋内戦が予想されるため12インチのバレルを装備。マズルアクセサリはサプレッサーを装備。サブソニック弾は装填していないから消音効果はそこまで期待はできないがマズルフラッシュくらいは抑えられよう。オプティックは等倍のホロサイトと念の為の3倍ブースタ。その他アクセサリとしてはアングルドフォアグリップを装備。サイドアームはFN57。こっちにはマイクロダットサイトとレーザーサイトがつけてある。銃以外の携行品はブリーチング用のC4が1つとフラッシュバンが3つ。それとNVGがある。

 装備の確認も済ませ、最終確認として作戦指示書へと目を通しながら俺はBRFを想起していた。

 


 

 ペルシカの指示に従い、ラボから輸送機で移動すること数時間。グリフィン本社へと到着した俺達はすぐにBRFルームへと通された。

 BRFルームだという通された部屋には誰もおらずスクリーンとプロジェクターのみであった。

 

「誰もいないんだね…」

「仕方ないだろうオレンジ。さっき全員揃ったばかりなんだ。そんな部隊には人を寄越す訳ないだろう」

「すまないな、こちらとしても忙しくてな。まずは、小隊の結成を祝おう。おめでとう」

 

 そんなことを話していると天井より男の低い声が響いてきた。

 

「私はべレゾウィッチ・クルーガー。君たちの所属するG&KのCEOを務めている。早速だが君達への記念すべき初任務のBRFを開始する。各員、着席したまえ」

 

 それでは作戦内容を説明する。作戦目標はS04地区にて確認された反体制派の過激グループ、アルシャヒードのリーダーだ。

 本名、ブルコフ・スタリビル。二月ほど前に発生したS02地区での爆弾テロの首謀者であり、情報によるとS04地区でもなにかしらの計画を実行しようとしているようだ。彼は今S04地区の郊外の放棄された農家の家に潜伏している。諜報班によれば複数の武装したグループも確認されており、他にも以前より監視していた団体のメンバーが集結しつつあるようだ。以上より今回の事案への対処を決定。これらすべての脅威をこの機会で一掃する。

 本来であればミサイルで吹き飛ばすのだが、ここは能力確認も兼ねて君たちに任せたい。しかし、万が一彼に逃亡されたら次のテロを起こされかねない。よって本作戦には時間制限を設ける。指定時間が経過するまでに彼の殺害ができていなければ君たちごとミサイルで潜伏している施設を吹き飛ばす。なお、彼の死体を撮影しデータをこちらに送った時点で任務は完了。展開させているガンシップで撤退しろ。

 詳細としてはガンシップで潜伏予想地点の5km手前のLZへ移動。その後は徒歩で移動し民家へ侵入。内部にいる者は全て排除せよ。可能であればデータなどの収集も任せたい。

 作戦の説明は以上。君たちならば容易にできるはずの任務だ。検討を祈る。

 

 


 

そんなことで我ら407小隊は結成早々実戦に投入されているわけである。しかし、敵の根城は民家であるため、C4を使うことはないかもしれない。ブリーチングしようと思って扉をふっ飛ばしたら生き埋めになったなんてことは正直ゾッとしない。

 そんな訳でどうせ使わないのならとバックパックからC4を取り出そうと思い、手をかけたときブザーと共にパイロットの声がキャビンに響いた。

 

「まもなく目標地点!」

「いいかお前ら、絶対に任務を完了させるぞ!」

「「「了解!」」」

 

 メンバーに声をかけると大声での返答があった。士気は十分なようだ。

 着陸と同時にガーベラとオレンジが飛び出す。それに続いて俺が飛び出し、最後に周辺の脅威がないことを確認してからコイーバとリューダが飛び出すとヘリはすぐに離脱していった。…あのヘリがひょっとしたら俺たちを吹き飛ばすかもしれないのだと言うのだからぞっとする。

 5kmという距離は人間にしてみればそこそこの距離であるが、俺たち人形からしてみればそれまでの距離ではない。10分もあればつくような距離である。ここらへんも戦術人形が如何に人間よりも優れているかを示している。人間たちはEXOがなくてはできないことを俺たちは製造されてからすぐにでも行える。

 建物まで後400mといった所で俺は隊を停止させた。屋上に人影を確認したからである。

 

「リューダ、来てくれ」

「こちらに」

「リューダ、前方の建物が見えるか?」

「はい、屋上に2人、門のところに3人歩哨が立っています」

「よし、まずは屋上を片付ける。俺が手前をやるからお前は奥を頼む」

「了解。合図はそちらが?」

「ああ。俺に合わせてくれ」

「了解。…準備完了。いつでもどうぞ」

「3…2…1…Go」

 

 くぐもった銃声が2つ、ほぼ同時に響く。と、2人の歩哨は倒れた。幸運にも下にいる連中には気取られなかったようだ。

 

「残りはどうします?」

「3人だからここから狙うのは少々危険だ。一気に突入してまるごと片付ける」

「了解」

 

 到着するとさして警備が強化された様子はなく、こちらの接近が気づかれた様子もなかった。正面を見ると門に4人の歩哨が立っている。…一人増えた。

 

(敵、正面。数4。各員スタンバイ。俺は一番左。コイーバはその隣、ガーベラは右から二番目、リューダは一番右だ)

(((了解)))

(ステイ…ゴー)

 

 くぐもった銃声4つと微かな光。それだけで我々は彼らからその命を奪った。

 

(正面建物に移動する。ガーベラ、先導しろ。他は周囲の警戒)

(了解)

 

 慎重に。しかし迅速に移動する。ガーベラを先頭に。それからコイーバ、俺、リューダ、オレンジの順に一列となり移動する。とはいえ、屋根の敵兵は排除してある。そこまでの脅威は無い。

 無事、建物の壁に取り付く。こっからが本番だ。

 

「リューダ、ガーベラと組んで逃走手段を封じろ。車、トンネル、見つけたものはこいつで何でも吹っ飛ばせ」

「イエスメム」

「オレンジ、コイーバ俺と一緒に突入してターゲットを探し出す。内部にいた者はすべて殺せ」

「イエスメム」

「行動開始」

 

 ドアに取り付きマスターキーで蝶番を吹き飛ばし蹴破る。間髪入れずにオレンジがフラッシュを投げ込み突入。

 正面はコイーバが左右を俺とオレンジが担当。

 

「コイーバ、クローゼットを探れ。オレンジはベッドを」

「イエスメム」

 

 周囲の捜索は部下に任せ、自分は上の階より敵が降りてくるであろう階段を警戒する。

 

「クリア」

「次の階に行く。オレンジ、先導して廊下を確保しろ。コイーバは最後に来い」

 

 くぐもった破裂音が2,3回ほどなるとクリアの声。俺たちはぞろぞろと階段を登り、目標がいるであろう階へとつく。

 

『アングレカム、こちらはリューダです。応答願います』

「こちらアングレカム。どうした」

『敵車両とゲートに爆薬を仕掛けました。合図で起爆できます』

「了解。こちらの突入を合図にしてくれ」

『了解、待機します』

「突入準備。コイーバは左を、オレンジは右を頼む。中央は俺が担当する」

「一応確認しますが、ターゲットはどうします?ちゃちゃっと倒しちまいます?」

「いや、足か何か負傷させて移動できないようにすればいい。情報が欲しいからな」

「了解、ターゲットは生け捕り」

 

 ドアの左右に付き、合図を待たせる。数秒後。

 

「オレンジ、制裁を下してやれ」

「アイアイ、マム」

 

 フラッシュバンを投げ込み、突入。

 相手からしてみれば刹那にも満たない瞬間だろう。戦闘用にチューニングされた人形の演算能力は前世紀に流行っていたFPSゲームのような突入を可能にした。平たく言えば、かの映画『マトリックス』の主人公の気分になれるわけだ。敵はフラッシュバンからの回復はおろか、驚愕の表情を浮かべることすらできずにこちらが引き金を引く度にバタバタと斃れていく。

 

「左クリア」

「中央クリア」

「右クリア。ターゲット確保」

『全ターゲット、爆破完了。敵の逃走経路はすべて絶ちました』

「OK。素晴らしい仕事振りだった。よくやったみんな。一度集まってきてくれ」

 

 全目標達成。あとは帰るだけ。ホット息をつく。

 

「アングレカム、こいつはどうします?ギャーギャーうるさくて(マイク)が壊れそうです…」

「確かにそうだな。ちゃっちゃと済ませちまおう。オレンジ、コイツを抑えててくれ」

 

 オレンジがターゲットを抑えてくれている間に俺は腰から一対の金属製の筒、つまりは深部記憶解析デバイスを取り出し側面についている赤いスイッチを押しデバイスのスパイクを展開。このデバイスは対象の頭にこのスパイクを深くまで刺し中身を読み取る、といった物である。対象はほぼ確実に処置後に息絶えるが、ほぼ確実に情報を抜き取れる。ターゲットはそもそも殺害予定だったから別に殺してしまっても構わないだろうと踏んだ俺は暴れる標的にまたがり、頭の両側面にぶっ指すのだった。

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