私は魂魄妖夢、冥界にある白玉楼の主の剣術指南役兼庭師をしている。
まあ大層な肩書を持ってはいるが実際はほとんどはここの主、西行寺幽々子様の近辺のお世話が大半だ。
無論、剣の修行は怠っていないし、この白玉楼の景観は手を掛けている私が誇れる立派なものだが。
今日も今日とて剣の修行をしていると幽々子様が私を呼ぶ声がした
「妖夢、私に剣術の指導をくれるかしら」
これは珍しい。今までなにかと理由をつけて断られていたのにまさか自分からお願いしてくださるとは。
「ええ、もちろんいいですよ。何から始めますか?」
「そうねえ、手合わせでもしてもらおうかしら」
「いきなりですか…、分かりました。では竹刀の準備をしてきます」
いきなり手合わせとは、最初は普通型のおさらいなどの軽いものから始めるものではないかとは思うが主の命には逆らえない。
竹刀を2本用意し、1本を幽々子様に手渡した。何だろう、竹刀を持つその姿は妙に様になっていて実力者の風格を感じる。
剣を構えてまずは軽く…、と発言しようとした瞬間普段見ない真剣な表情でこう言った。
「あなたが出せる全力で来なさい」
「全力、でですか?」
確かに幽々子様はかなりの実力者、真っ向勝負なんてしたら100回やって100回負けるのは明らかだ。しかしこれはあくまで剣での手合わせである。幽々子様が剣の修行をしたところなど見たことがないし、毎日稽古を積んでいる私は正直な所負けないと思う。しかしこの幽々子様の真剣な表情、何かあるかもしれないので一応全力で向かうことにした。
「では、行きますよ?」
「ええ、いつでも来なさい。」
幽々子様に斬りかかる、しかし竹刀は空を斬る。なんど斬りかかってもゆらゆらと躱されてしまう。焦りから太刀筋が単調になり余計に当たらない。剣筋が迷い、動きが鈍くなる。
瞬きをした刹那、私の竹刀は宙を舞っていた、その瞬間私は負けを悟った。
「参り、ました」
「妖夢、なぜあなたが負けたか分かるかしら」
分かっている、修行不足だ。まだまだ研鑽が足りていないのだ。
「もしただ修行不足と思っているならまだまだ半人前ね」
「修行不足だから負けたのではないのですか?」
「いい、あなたは実践の経験があまりにも足りなすぎるわ。慣れていないからこそ予想外のことが起きると焦り、迷う」
確かに、手合わせだって祖父と数えるほどしかしたことがないし、命の取り合いなんで一度も無い。
「そこであなたに課題を出すわ、その課題をクリアする頃にはあなたに足りないものが身につくことでしょう」
「課題、ですか?一体どういうものなのでしょうか」
「あなたにはある鬼を討伐しに外の世界に行ってもらうわ」
「鬼ですか、かなり強い種族と聞いたことがあります。」
「きっとあなたが想像しているのは普通の鬼でしょうね、あれらには今の妖夢では逆立ちしても勝てないわよ。課題の鬼は人が鬼になったまがい物の妖よ」
「しかし外の世界とは、どう行ったらよいのでしょうか?」
「それは私に任せなさい」
何も無い空間が割れ、出てきたのは幽々子様のご友人八雲紫様だった。
「私ならスキマを外の世界に繋ぐことなど造作もありませんわ」