転生オリ主は祝いたい   作:昨日辛雪

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 管理局の白い悪魔と言われて久しい我らのなのはさんですが、映画で新たな力を手にしたことですし、称号もランクアップさせても良いのではないかと思い投稿しました。
 もちろん、この呼称は賛否別れるものですので、ネタとして割りきれる方のみご覧ください。


序章

 転生者、とりわけ神様転生した者は究極のエゴイストであると言える。そうでなければ、ただ死を回避するのではなく、神の甘言に乗って、自我を保ったまま、創作物、所謂2次元の世界へ産まれなおすなどと言う選択をしようはずがない。あまつさえ、見た目も才能も環境も特典の名のもとに自らコーディネートしてだ。これをエゴと言わずなんと言う。

 

 エゴの塊である転生者は規模の大小、内容の正邪こそ変われど、「原作に関わらずに生きていきたい」「原作で不幸になったキャラクターを救いたい」「ハーレムを築きたい」などと強い願いを抱いて転生する。

 かくいう私もその1人。私の介入によって生前愛してやまなかった「魔法少女リリカルなのは」の世界が崩れてしまう事への不安はもちろんある。だがしかし、この欲求を胸に留めたままで終わるつもりは毛頭ない。なぜなら、私は転生者。究極のエゴイストなのだから…… 

 

◆◇◆◇

 

 眼下に広がるのは朝焼けが照らす海鳴の街。高層ビルが立ち並ぶこの街の中でも、ひときわ高いビルの屋上。遮蔽物の無いこの場所からは海鳴市全体を一望することができる。落下防止用に設けられたフェンスの欄干の上に立ち私は朝日を浴びていた。

 高所だけあってさすがに風が強い。身の丈ほどもある黒いフードストールが大きくたなびく。それでバランスを崩すことも動揺することもなく、私は目的の場所を探す。

 手がかりは「森」「池」「壊れた(はしけ)」だ。見つけるのは簡単だった。平和な街並みの中に浮かび上がる生々しい破壊の痕跡、その異様さがわざわざ目を凝らすまでもなくハッキリと存在を主張している。

 ともあれ場所さえわかってしまえばこちらのもの。特典として入手したタブレット型のデバイスを起動して座標を割り出す。

 リリカルなのはの世界では魔法と科学は地続きであり、デバイス:「魔導端末」とは魔法の行使をサポートする機械とでも思ってもらえればいい。

 私が手に入れた特典の中の1つである把握している座標の元へと瞬時に移動できる能力を発動する。

 すると、フードストールがとぐろを巻くように私の体全体を覆い、視界を黒く塗りつぶす。次に視界が開けた時、私は件の艀の側に立っていた。

 

 艀だけでなく、近くに停めてあった木製のボートも、そのボートを貸し出す商いをしていたであろう小屋も、無惨に破壊されてしまっている。普通であれば怖気が走る光景だが、私の心は昂っていた。

 何故なら、この破壊痕は魔法使いの少年ユーノ・スクライアとロストロギアと呼ばれる危険な古代遺産:ジュエルシードの異相体による戦闘によってもたらされたものだからだ。これが意味する事は1つ、そう原作の始まりである。

 昨晩、本来地球人が使うことの出来ない魔力の脈動を感じとっていたから予測はしていたが、実際に自身の目で見るとやはり心踊るものがある。逸ってはいけない、1度深呼吸して興奮を落ち着かせる。

 

 この場に来た本来の目的はユーノ・スクライア。正確には現在は彼が所持している主人公専用の武器となるデバイス:レイジングハートの回収だ。

 主人公である高町なのはが彼を発見するのは放課後。時間的な余裕は十分にあるが、他の転生者の存在もある。「リリカルなのは」は二次創作界隈においてオリ主の転生先として人気の作品だ。この世界に転生したのが、私だけだとたかをくくっていては足元をすくわれかねない。慢心から計画を台無しにしてしまっては、この世界に転生した意義を無為にしてしまうたというものだ。

 私は昨日の戦いで吹き飛ばされ、付近で気絶しているであろうユーノの捜索を始めた。

 

 微弱な魔力の反応と原作での描写を頼りに森の中を探していると、少し開けた草むらで、傷付き横たわっているフェレットを発見した。首には赤い宝玉をつけたペンダントをしている。当たりだ。

 今のユーノは魔力の枯渇と怪我による消耗、加えて慣れない地球環境下での負荷を軽くするため、フェレットの姿をしている。

 私は彼のもとへと歩み寄ると、目を覚まされないように注意をしながら、赤い宝玉がついたペンダントを拝借した。この宝玉こそが魔導端末の中でも意思を持ち自律的な判断を行うことができるインテリジェントデバイス:レイジングハートだ。

 

 このインテリジェントデバイスと主人公を始めとする各魔導師との絆も「リリカルなのは」の魅力の1つなのだ。それを自らの手で潰してしまうのは心苦しいが…… 夢の実現のためには仕方のないことか。

 これで必要なモノは手に入った。後はコイツを改造して、放課後、主人公である高町なのはに挨拶をすれば仕込みも終わる。これからの出来事に、思わず唇を吊り上げてしまいながら私はその場を後にするのだった。

 

◆◇◆◇

 

 高町なのはにとって、今日はなんの変哲もない1日であるはずだった。将来について考えさせられる授業こそ有ったものの、普段と違うことなどそれくらいで、いつものように親友であるアリサ・バニングスと月村すずかと共に談笑しながら帰路につくはずであった。本当に、ついさっきまではそう思っていたのだ。

 

 しかしどうであろう、それは突然の事であった。アリサが「あっこっち! 道は悪いんだけど、ここ通ると塾に行くのに近いの」と森を二つに別けたような裏道を指差した刹那、なのはの視界に映る景色にノイズが走る。

 驚いて隣を見ればアリサは道を指差したまま、すずかは感心したように手を口許に当てたまま動かない。親友の二人だけではない、すぐ側を通りがかった猫も、風に揺れる木々も、空をゆく雲さえも、なのは一人を残し世界全てが静止してしまっている。

 

 次の瞬間、なのはは驚愕で息をのんだ。先ほどまで誰もいなかった道の先に突然男が立っていたのだ。

 夕日を背に道に浮かび上がる様にして佇むその年若い男は、長身で濃いカーキ色のコートにフードと一体型の黒いストールを巻いた出で立ちをしている。容貌は深くフードを被っているためうかがい知れないが、唇が笑みを作っていることだけは、はっきりとわかる。それが、なのはのには不気味でならなかった。

 

 このおかしな現象の原因は目の前の男にある、そうなのはの本能が叫んでいる。喉がつまり、舌が上手く回らない中で、彼女はなんとか言葉を紡いだ。

「アリサちゃんとすずかちゃんに何をしたんですか? 二人に何かするつもりなら、わたしは-- ! 」 

 二人を庇うように一歩前へでたなのはの姿に男は笑みを更に深めて答える。

「この状況で先ず友人の心配とは、いやはや流石は我が魔王。期待以上だよ。安心したまえ、これは私が“時を止めた”だけさ、私が去れば全てが元どおり」

 怪しい男の言うことなど到底信用することは出来ないが、今のなのはには汗に濡れた拳を握りしめることくらいしか出来ない。魔王と呼ばれたことを気にする余裕など今の彼女には無かった。

「なぜ、こんな事をしたんですか? 」

 自分でも声が震えているのがわかる。対する男はこともなげに言う。

「邪魔をされたくなかったからさ、君との初めての邂逅をね」

 なのはは男の言うことが理解できなかった。ただ、自分と会うだけのために時を停めたとでも言うのか。なのはがゴクリと唾を飲むと男の姿は忽然と消えていた。

 

「おめでとう」

 

 不意に近くから声がする。なのはがギョッと目を剥くと直ぐ隣に男が立っている。

「今日は君にとって特別な1日になる。ただし、青い宝石には気を付けた方がいい」

 そう言って男はポンッとなのはの頭に手を置く。頭の中に何かが流れこんでくる不快感に、なのはは思わず膝をついてしまう。目眩がして息が荒くなる。

 しばらくして動機が収まると、今度こそ本当に男の姿は消えていた。時間が再び動き出すのがわかる。

「ちょっとなのは、あんた大丈夫なの」

「なのはちゃん、顔蒼いよ」

 自分を心配するアリサと気遣わしげに顔を覗いてくるすずかの姿に、なのはは日常への回帰を感じて浅く息をついた。

「にゃはは、大丈夫大丈夫。ちょっとクラッとしただけだから」

 なのはは先ほどの出来事を忘れるように頭を振ると、努めて明るく声をだした。「大丈夫って、あんたねぇ」となおも言い募るアリサの手をとって森中へと駆け出す。

 

 そこで彼女は助けを求める声を頼りに傷だらけのフェレットを発見し、動物病院へと連れていくこととなる。この出会いが彼女の運命を大きく変えることになるとは、今のなのはには知るよしもなかった。

 




 別作品の描写が薄っぺら過ぎるので、実験をかねて書いてみましたが読みにくくはなかったでしょうか? 少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
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