また、構成に迷いまくった結果、本話は最初っからクライマックス(比喩にあらず)で行きます。投稿話数を間違えたとかではございません。
あくまで拙作は我が魔王の活躍がメインなので、そこに至るまでの経緯は是非映画が名作なのでそちらを御覧ください。私は何も知らない状態で上記の映画を友人に見せられ、そこから沼にはまりました。
ちなみに作中では歴代のプリキュアをレジェンドプリキュアと表現しています。私がライダー脳なので、どうかご容赦を
なのはの眼前に広がっているのは、まさしく地獄であった。
キュアエールこと野々はなさんによって、てるてる坊主の異形・ミデンの心は救われ戦いは終わる。そう思っていたのに……
大地は裂けマグマが吹き出し、噴煙に覆われた空は溶岩によって灼灼と赤く照らされていた。ミデンの体は漆黒に染まり、怨嗟の呻きを上げながら、その目に映るモノ全てを破壊せんと、黒炎を纏う肥大化した両腕を振るっている。
以前のミデンは掌やカメラのしぼりの様な瞳から青白い光線を出して、プリキュア達の思い出を奪い子供に変えてしまっていた。しかし、今の彼が血の色に染まった眼と言葉を失った口から放つのは、高濃度に圧縮されたことで黒い炎に見えるトゲパワワ(絶望エネルギー)の砲撃だ。
こんなものに焼かれたら、どんな素敵な記憶も真っ黒に塗り替えられてしまう。事実、エールの仲間であるハムスター? のハリハム・ハリーが「プリキュア達! あの攻撃から皆の思い出を守るんやー! 」と警鐘を鳴らしている。
レジェンドプリキュア達が応戦しているが、今のミデンの力は凄まじく、人々の記憶でできた結晶を守りながらでは、流石の彼女達でも防戦に専念せざるを得ない。
「そんな…… どうして? ミデンに何が起こったの!? 」
傷だらけで片膝を着いた姿のエールが呆然としている。彼女はミデンの精神世界で彼と語り合った。ボロボロになりながらも、ミデンと心を通わせ、彼を孤独から救いだしたのだ。だからこそ、ミデンの変貌が信じられないのだろう。
「あの、ウォズさん。ミデン君はどうしちゃったの? 」
ウォズはこの世界についても訳知り顔で、なのは達に教えてくれていた。彼ならば何か知っているかもしれない。
なのはの問いに、ウォズは「あくまでも推測の域をでないが、それでも構わないかい? 」と前置きした上で、語りだす。
「ミデン君が奪ったプリキュア達の『キラキラな思い出』は既に取り戻した。彼の心に降り続いていた悲しみの雨は、エール君が晴らした。ならば、彼の中に残っているのは何なのか…… ミデン君はこの場を作る際、日本中の人間から手当たり次第に思い出をかき集めた」
そうだ、なのは達がいるのはミデンが人々から略奪した記憶で作られた場所だ。雲をも越え隆起した天空の渓谷。至るところで色とりどりに耀く結晶が突き出ており、中央には花弁状の巨大な天蓋を有する結晶塔が聳えてる。
今でこそ煉獄さながらの有り様だが、それはそれは綺麗な所だった。
「私も含めて美しい景観を見ていたから誰も気付かなかったが、当然ながら人の思い出の中には怒り、嫉妬、怨み、憎しみ…… そう言った暗い焔を燻らせているモノも決して少ないくはない」
エールは両手で体を抱きしめながら、唇を噛んでいる。なのはとて、そういった思い出とは無縁ではない。
人は誰しも痛みを伴う記憶を抱えて生きている。それでも、世界は其れだけじゃないと知っているから、『キラキラな思い出』があるから、前を向いて歩いていける。そうか、ミデンにはそれがないんだ……
「君達から奪った思い出の輝きと、彼の根底にあった深い悲しみ。その2つで封じられてきたドス黒い人々の記憶が、どちらの栓も抜かれたことで溢れ出だした。寂しさしか知らなかったミデン君は、抗うことも出来ずにソレに呑まれてしまったのではないかな…… 私はそう考えているよ」
ウォズの推論を聞いたエールが怪我を押して立ち上がった。
「だったら、ミデンを助けなきゃ!!」
「無理ですエール! そんな体で戦うなんて!? 」
よろけて倒れそうになる彼女をなのはが抱き止める。
「ありがとう、高町さん。でも、ここで諦めたらカッコ悪い。そんなの、
なのはの両肩に手を添えて、胸から離れたエールは、真っ直ぐなのはの目を見て決意を伝えた。「わたしのなりたい野々はなじゃない」、それは彼女と出会った公園でも聞いたセリフだ。その言葉がなのはに突き刺さる。
思えば、この世界に来てからなのははずっと無力だった。公園でミデンを退けたのも、力を取り戻したプリキュア達で、なのはではない。
ミデンの攻撃を防ぐことは出来た、動きを止めることも出来た。でも、攻撃は一切通じなかった。ウォズが言うには「ここはプリキュアの世界。この世界の敵にダメージを与えるにはプリキュアの力が必要」らしい。
それでも、何か出来ることがある筈だと、ここまで来たものの、所詮は足止めが精一杯。今は魔力も使い果たして、見ている事しか出来ないでいる。ユーノ君はわたしとは対照的にキュアテンツァーへと覚醒して、レジェンドプリキュア達と共に戦場に身をおいている。それなのに……
ユーノと出会って、なのはは魔法の力を得た。もう、無力なわたしじゃない。そう思っていた。だが、結局何も変わってはいなかった。プリキュアに変身することさえ出来ない、あの頃と同じ役立たず。それが、惨めで、悔しくて……
思わずこぼれ落ちた涙をエールの指がすくう。
「高町さん。ううん、なのはちゃん。あなたはいったいどうしたい? 教えて、あなたのなりたい高町なのはを」
わたしのなりたい高町なのは…… 思い出すのは、初めて魔法を使った日のこと。その日は将来について考える授業があって、ハッキリとしたビジョンを持っていた2人の親友とは裏腹に、なのはは明確な未来図を描けずにいた。やりたい事は何かあるのだけれど、それを言葉に出来ないモヤモヤとした感覚。それが、魔導師になってから、朧気だが形を帯びてきた気がしていた。
今こそ、答を出す時だとでも言うのだろうか。しかし、依然として未来のわたしの姿は朧気だ。足りないピースを埋めるため、なのはの意識はさらに過去へと遡る。
それは、なのはにとってのビギンズナイト。独りの寂しさに、枕を濡らした幼い日の夜。
父の怪我の原因を誰かに求め、憎むのは簡単だった。だが、相手を呪ったところで起きてしまった事象は覆らない。そう気付いてしまうほど、なのはは年齢に似合わず聡かった…… いや、聡すぎたのだ。
だから、寝る間も惜しんで考えた。考えに考え抜いてなのはが得た結論は、
まだだ、まだ足りない。今のわたしは何のために魔法を使っているの? ユーノくんを助けるため? 勿論それもある。でも、一番はフェイトちゃんと友達になりたいから。
それは何故? フェイトちゃんが昔のわたしと同じで,とても寂しそうな瞳をしているから。私はアリサちゃんとすずかちゃんに出会って救われた。だから、友達になって辛いことも嬉しいことも分け合えれば、きっと彼女も笑顔に……
そこまで考えて、なのはの脳内に点在していた
そうだよね。誰に笑われたっていい。わたしが見つけた夢なんだから、ちゃんと認めてあげなくちゃ。ユーノ君も変身した時に言ってたじゃないか「なんとなくだけど、分かるんだ。きっと、なりたい自分こそがプリキュアなんじゃないかな」って。
「わっ、わたしの…… わたしのなりたい高町なのはは…… 」
最後まで言い切れずに、なのはは言葉に詰まってしまう。
「なんでもなれる! なんでもできる! フレフレなのはちゃん! 」
今一つ自信を持てないなのはを、今度はエールが優しく抱きしめる。彼女の応援が、なのはの背中を押した。
顔を上げたなのはは、今度こそ不条理だらけの世界に向けて、キッパリと言い放つ。そこにはもう恥じらいも迷いも無い。ただ、明日を創る強い意志だけが燃えている。
「わたしの夢は、世界をもっと良くしたい、みんな笑顔でいて欲しい。ウォズさんはわたしが未来で魔王になるって言っていたの。だったら、わたしはただの魔王じゃない。
◆◇◆◇
ああ、目頭が熱い。まさか、我が魔王の口から
なのはが高らかに宣言すると。彼女の体から虹色に煌めく光の粒子が溢れだし、それがブランクマギアウォッチに吸収されていく。
遠方でハリーが「なっ、なんちゅう量のアスパワワ(明日を創る希望の力)や!! 」と驚愕しているのを魔法で感知する。
光が収まっると、ブランクマギアウォッチは
ジオウ本編とは違い、継承だけでなく本人の覚醒でもマギアウォッチを生み出せるのか……
ジゲンドライバーにナノハマギアウォッチをセットしたなのはは仮面ウィッチナノハに変身、そして左手でプリキュアマギアウォッチを掲げ、親指でパステルピンクのアタッチメントを回転させた。
❮プリキュア❯
そして、浮かび上がるのはレジェンドプリキュアの誰とも一致しない少女の顔。私には分かるそれこそ、我が魔王がプリキュアとして覚醒したIFの姿なのだと。
「『やりたいこと』と『やるべきこと』が一致する時、世界の声が聞こえるってこういうことだったんだね。おじさん、わたしにもやっと聞こえたよ。変身!! 」
なのはがジゲンドライバーの空いている左側のレールにプリキュアマギアウォッチを取り付け、ドライバーを1回転させると、ベルトからプリキュアの文字を象ったモニュメントが射出される。
❮magic on time 仮面ウィッチナノハ❯
ナノハの前方にミライクリスタル(ハート型宝石を金で飾り付けたブローチの見た目をしたアスパワワの結晶、なのはの物はミライクリスタル・スカーレットで中央にウィッチーズクレストが刻まれている)が出現し、それが放つ光が集い、アーマーを形作る。アーマーは右手を高くかかげ、左手は腰に、右足をピンと伸ばして、左足を跳ね上げたポーズをとっていた。
アーマーの色はパールホワイトを基調としており、所々に蒼の差し色とフリルの意匠が見られる。スカートを模した腰布の背部には大きなリボンが、胸部には深紅に輝くハート型の宝石が飾付されていた。
肩アーマーは未来クリスタルをシンボライズしていて、四肢を覆う金色の手甲脚甲は肉弾戦を意識してか堅牢な作りをしている。
❮armor time ハートキラッと プリキュア❯
アーマーは一度分割され、自動でナノハに装着された。最後にティアラがデザインされた仮面にプリキュアの文字が複眼として張り付き変身は完了だ。
私が予定していたものとは異なるナノハのアーマータイム。より、本家に近い形式になった事への戸惑いはあるが、ここで祝わなければ、ウォズロールプレイヤー失格というもの!!
「祝わえ!! 全魔法少女の力を受け継ぎ、次元を超え、過去と未来をしろしめす魔導の覇者。その名も仮面ウィッチナノハ・プリキュアアーマー。まず1つ魔法少女の力を継承した瞬間である!! 」
◆◇◆◇
「すごいよ! なのはちゃん! メッチャいけてる!! 」
エールの誉め言葉が少し照れくさい。あんな大言壮語、彼女の応援がなければ吐けなかった。
「ありがとうございます、エール。後はわたしに任せて」
ミデンは今も苦しんでいる。それにこの姿は長くは保てないと直感が告げていた。だから、出し惜しみはなし。全力全開で終わらせる。ナノハは、マギアウォッチにつているプッシュボタンを押して、ドライバーを1回転させた。
❮finish time プリキュア❯
ナノハの体が炎の様な魔力とアスパワワが融合したオーラに包み込まれた。オーラの色は蒼、このアーマーではリンカーコアを通さずに大気中の魔力を使役できる。だから、自然と魔力は純粋な力の色となる。そう、ジュエルシードと同じ何処までも深い蒼。
1つ違いがあるのは、ナノハのオーラにはアスパワワが付加されていることだ。オーラの中で七色に輝く燐光が煌めいている。
ナノハは腰を沈ませ、左手を腰元で溜め、右手を下から掬うように前につき出すと、一層強くなったオーラを爆裂させ、地面を蹴って弾丸の如く一直線に飛び立つ。
マグマの海を越えて、ミデンの腹部にオーラを集中させた左の拳をめり込ませたナノハは、音よりも速く右腕を振り抜き、彼を猛烈な勢いでブッ飛ばす。すかさず、ナノハは追撃。全オーラを乗せた右の拳をミデンに叩き込み、サマーソルトキックで蹴り上げた。
ミデンの体内では、ナノハによって直接叩き込まれた莫大なオーラが暴れまわり、プラズマ状なって体外に放出されようとしている。それを、ナノハは両腕をクロスさせて突きだして抑え込む。オーラが臨界点を迎えたその時、ナノハはバッと腕を広げて、両手を高く振り上げた。
❮lyrical explosion❯
刹那、凄まじい爆発が轟音を響かせ、天を衝くは一条の蒼い光。
噴煙は祓われて頭上には星空が広がり、空から降り注いだ光の粒がひび割れた大地を癒し、草花が生い茂る。
その中で倒れ伏す、ミデンの元にナノハは変身を解除して走り寄た。レジェンドプリキュア達も、次々に集結。エールも青と黄色の2人のプリキュアに支えられながら、姿をみせた。
「やったんだね、なのは! 」
「素晴らしい、実に素晴らしい!! 常に私の予測を超えていく! ああっ! 流石は我が魔王!! 」
テンツァーと、何かヤバい顔でトリップしているウォズも、フラフラになっているなのはの側に寄って支えてくれる。
エールがミデンに寄り添い、そっと首輪を撫でる。
「奪われた記憶を取り戻すため。そして、ミデンが前に進むためにみんな力を貸して」
ウォズ意外の全員の胸元が光り、奇跡を起こす魔法のアイテム・ミラクルライトが出現した。それを、皆でミデンに向ける。
「プリキュア・レリーズ・シャイニングメモリー」
プリキュア達の記憶が周囲を満たし、人々の思い出によって作られた世界が、淡い光を放ちながら、蛍火のように空へと昇っていく。この光は元の記憶の持ち主へと還えるのだろう。エールがミデンへとかける言葉が、なのはの胸にも染み渡っていく。
「今日あなたと出会ったことも、色々あった辛いことも、きっとまた思い出になる。未来でわたし達に勇気をくれる。そう教えてくれたのは、ミデンあなただよ」
ミデンは潤んだ瞳から雫をこぼして、エールを見つめている。
「ミデンがみんなの思い出を繋いでくれたから、そう信じられる。ありがとう、ミデン」
幻想的な情景の中、涙で見送るエールに感謝の言葉を残し、ミデン自身も光の粒となって、風にさらわれるようのに消えていった。
後に残ったのは一台の古びたカメラ。エールはそれを大事そうに拾い上げて、暖かく抱擁した。
全てが終わったなのは達の前で、突如現れた銀のオーロラが揺らめく。
「どうやら、この世界で私達のすべきことは終わったようだね。何か言い残すことはないかい我が魔王、あのベールをくぐれば別の世界…… 彼女達とはもう会うこともないだろう」
ウォズの言葉を、なのはは首を振って否定する。
「ウォズさん。そんなこと分からないと思うの。だって、未来は無限の可能性を秘めているから。『なんでもできる! なんでもなれる! 』ですよ」
なのはの返答にウォズが面食らっている。彼、こんな顔もするんだな。なのははプリキュア達へと向き直った。
「エール、それからプリキュアのみなさん。ありがとうございました」
「こっちこそ、ありがとう。なのはちゃん」
エールとなのは、二人はどちらともなく手をとって、微笑み合う。後にくるのは「さよなら」ではなく、再会の約束。1つの言葉が2人の口から同時に紡がれた。
「またね」
そして、なのは達は沢山のプリキュア達に見送られながら、次の世界へと旅立つのだった。
◆◇◆◇
「かくして、我が魔王はプリキュアの力を得た。私が用意していたベルカマギアウォッチとフォーミュラマギアウォッチが無駄になってしまったが、まぁ良しとしよう。我が魔王力はどんどん増大している。この私でも推し量れないほどに…… 次なる世界で、我が魔王がどんなレジェンドと出会うのか。次回『私の、最高の魔王』ご期待ください」
かなり変則的な作りでお送りしましたが、いかがだったでしょうか。今回は我が魔王及びユース君の強化回です。
個人的に本話の作りをを覇穹構成と呼んでいます。由来はあの黒歴史アニメですが伝わりますかね?
ユーノ君が変身したキュアテンツァーはバッファー。ペルソナのスキルで例えるとヒートライザやランダマイザ、ハイアナライズ相当の技でサポートします。ただし、周囲に一定値以上のアスパワワが満ちてないと変身できない制限があります。
ちなみにテンツァーはドイツ語で踊り子。某ゲームのせいでバッファー=踊り子のイメージがついてしまった。ドイツ語なのは厨2病だからです。