転生オリ主は祝いたい   作:昨日辛雪

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 中の人のファンは王国民だし、魔力光はピンクだし良いよね?


覇道の始まり(上)

 「新暦65年4月。普通の小学生高町なのは、彼女には魔王にして次元の覇者・オーマナノハとなる未来が待っていた。不思議な声に導かれ槙原動物病院を訪れた高町なのは。彼女はそこでジゲンドライバーを手にする。仮面ウィッチナノハに変身した彼女は、見事ジュエルシードを封印し魔王への第一歩を踏み出すのだった。おっと、先まで読みすぎましたか」

 

◆◇◆◇

 

 ユーノ・スクライアは遺跡発掘を生業にしている。そんな折、ある古い遺跡で発見したのが、ロストロギア:ジュエルシードだ。ジュエルシードは願いを叶える力があるとまでいわれる莫大な力を秘めているものの、些細な切っ掛けで暴走し、使用者を求めて暴れまわることもある危険なエネルギー結晶体であった。

 その危険性をいち早く見抜いたユーノは、管理局にジュエルシードの保護を依頼。次元船の手配もして、後は無事に受け渡しが終了したという報告を待つだけあった。それなのに…… 。

 

「どういう事なんですか! ? ジュエルシードの行方が分からなくなったって! 」

 

 バンッと机に手をついて、ユーノ・スクライアは詰問した。通信用のデバイスからホログラムのように照射されたディスプレイ、その向こうで男が恐縮している。

「あれは危険なモノなんですよ! 発動も不安定で、近くに人や動物がいれば取り込んで暴走する可能性だって-- 」

 ギリッと歯を軋ませ、握りしめた拳は小刻みに震えている。

「あっ、いや…… 恐らく次元船に何らかのトラブルがあったのではないかと…… 、我々も第97管理外世界付近までは航行を確認できていたのですが…… 」

 たとたどしく答える男を尻目にデバイスで検索する。

 

(あった。第97管理外世界、現地名称地球。まずい、魔法技術が確立されていない世界だ。こんなところで暴走されたら甚大な被害がでかねない)

 

 男からの報告によれば、次元船の消失から既に1日以上経過しているという。一刻の猶予もない。

「第97管理外世界ですね、ありがとうございます」

 ユーノはそれだけ言うと、モゴモゴと何かを言っている男を無視して通信を切断。以前、遺跡から発掘したデバイス:レイジングハートにジュエルシードを封印するための術式をプログラミングすると、再び通信端末を起動させた。

「次元船を一機お借りしたいのですが…… 空きがない? 急ぎなんです、貨物船でもかまいません。第97管理外世界の付近を通る時そこで降ろしてもらえれば…… はい、はい、ありがとうございます。それでは失礼します」 

 

 そして、地球へとやって来たユーノは発動前のジュエルシードを1つ封印。残りのジュエルシードを捜索していたところ、森の中の公園でジュエルシードの異相体と遭遇した。巨大な雲の塊が手足のように触手をくねらせる怪物。その異相体が突っ込んできてーー そこでユーノは目を覚ました。

「夢…… か、それにしてもここは…… 」

 おそらく誰かが傷ついた自分を保護してくれたのだろう、ユーノはケージの中で毛布にくるまれて寝かされていた。

 鼻につく独特の薬品の匂いで、自分がいるのが医療関係の施設であることがわかる。近くの大きな窓から月明かりが射し込んでいた。それが、あの戦いからもう24時間近く経ってしまったことを物語っている。既にジュエルシードの暴走は始まっており、今のユーノは封印処理をこなせないほどに消耗してしまっている。

 事ここに至ってはどうしようもない、ユーノは魔導師だけが感じ取れる魔力を介したテレパシー:念話で一縷の望みを懸けて助けを求めた。

 

『ボクの声が聞こえる方、お願いです…… 力を貸してください』

 だが、時は待ってはくれない。窓の外から昨晩の異相体がユーノを見つめていた。しかも首が3つに増えている。新しいジュエルシードを取り込んだのだ。異相体は奇声を上げながら、窓を突き破りユーノに向かって一直線に迫ってくる。ユーノは人的被害を軽減するために、広域結界を発動し、魔導師以外を一定領域から閉め出す閉鎖空間を作り上げた。

 狭い室内では満足に逃げ回ることも出来ない。外に飛び出したユーノは、茶色い髪をツーサイドアップにした少女と眼があった。

 

「来てくれたの? 」

「ええと…… あの、なんなの!? 何が起きてるのー! 」

 自分を抱き止めた少女は目の前のことに理解が追い付いていないようだった。無理もない。突っ込んだ拍子に建物の瓦礫に埋もれ、抜けだそうともがく怪物も、喋るフェレットと化した自分も、彼女にとっては非日常そのものであるのだから。

 それでも、現状を切り抜けるためには彼女にジュエルシードの異相体と戦い、封印してもらわなければならない。心苦しくはあれど、それしか手がないのも事実であった。

 

「ボクに少しだけ力を貸して、お礼は必ずしますから」

 瓦礫を吹き飛ばし雄叫びをあげた暴走体から逃げるように少女は駆けだす。

「お礼とかそんな場合じゃないでしょ!? 」

「今のボクの魔力じゃアレを止められない、けどあなたなら…… ! 」

 ユーノの言葉に少女は足を止め、怪物へと向き直る。足は震えているが、それでも視線は真っ直ぐに異相体を見据えている。

 

「どうすればいいの?」

 

 少女とて分かっていた。あの怪物を放っておいたら取り返しのつかない未来が訪れるということを。これ以上被害を出さないために自分にも何かできるのなら、自分にしか出来ないことがあるのならと、少女は覚悟を決めたのだ。

 ユーノは彼女の覚悟に応えるべく、自身のデバイスを託そうとする。しかし、そこではたと気づく、首に掛けていたはずのレイジングハートがなくなっていることに…… しまったとユーノは歯噛みした。

「ボクがアレを引き付けます、あなたは先ほどの建物の中へ」

「どうして!? 」

 少女の声が上擦る。

「そこに赤い宝石が付いたペンダントがあるはずです。多分、治療の過程ではずされたんだと思うんだけど、その宝石はデバイスと言って魔法を使うのに必要な道具なんだ。それがあればあなたも戦えます。だから…… ! 」

 しかし、少女はユーノの言葉を頭を振って否定する。

「あっあのっ、キミを最初に見つけたのはわたしなの。でもっ、でもね、その時からキミは()()()()()()()()()()()()の」

 

 ユーノは二の句が継げなくなった。それでは、自分は頼みの綱であるデバイスを昨日の戦いで紛失してしまったということか。最悪だ。これでは少女をいたずらに死地に導いてしまっただけではないか。

 その後悔がいけなかった。ユーノが意識を逸らした一瞬の隙をついて怪物がなのはに襲いかかったのだ。万事休すか、ユーノの頭が悔恨の念で埋め尽くされたその時、少女の前にピンク色の壁が出現し異相体を弾きとばした。

 

◆◇◆◇

 

「なにが起こったの…… ? 」

 高町なのはは驚きと安堵で腰を抜かしてしまい、へなへなとその場に座りこんだ。

 助けを求める不思議な声に導かれて、槙原動物病院へと足を運んだなのは。彼女はそこで言葉を話す魔法使いのフェレットと出会い、3つの首を持つ雲の塊のような怪物に襲われた。

 自分に迫りくる怪物に思わず手をかざしたその時、不思議な事が起こった。突如、波紋のようなピンク色の光の壁が出現し、なのはを守ったのだ。

「えっと、これは、なに? 」

 不思議な事は他にもある。先ほどまで何もなかった筈のなのはの手には時計のようなものが握られていた。これが、自分を助けてくれたのだろうか。

 見れば、蒼い本体の上に被さるようにしてピンクの装飾が施された白いアタッチメントが付いている。表面の上下には銀杏(いちょう)型のスリットが入っており、そこには液晶パネルのようなものが見える。上の部分には円状の魔方陣が、下の部分にはリリカルなのはという文字が表示されていた。

 

 安心したのも束の間、怪物はうめき声を上げながら再び姿を見せる。こわばるなのはと怪物との間を遮るように、1つの影が躍り出た。

「フッ! ハッ!! なのは、なぜ変身しない!? 」 

 それは、白銀の鎧を纏ったなのはと同じ歳位の少年。青白い光を放つ剣で怪物に果敢に挑みかかる。

 なんでわたしの名前を知ってるの? とか、あなたも魔法使いなの? とか、怒涛のように押し寄せる疑問の波に頭がついて行かず、目を回してしまうなのはであったが、フェレットの言葉にハッとする。

「彼も魔導師なのか!? それに、それはデバイス…… 」

 デバイス、その単語になのはは食いついた。

「デバイスってことは、これがあればわたしも魔法を使えるんだよね? 」

 フェレットは少し俊巡して、ためらいがちに口を開く。

「そうだけど、何だかよくわからないものを使うのは危険だ。ここはーー 」

 ひとまず彼に任せて、そう続くはずだった言葉に男の声が割って入った。

 

「そう、魔法を使って頂かねば。ナノハの力は史上最強、その力を使えば次元世界はおろか、過去も未来も望みのまま…… 」

 

 なのはの心臓が早鐘を打つ。聞き間違える筈がない、今日の放課後に出会った、時間を止める怪しい男の声だ。男が姿を見せる。やはりそうだ。

 男はなのはの前に立つとゆっくりとフードを取った。顔立ちはかなり整っている、しかし滲み出る胡散臭さが全てを台無しにしていた。

 男はなのはの前に跪き、金の刺繍が施された赤いクッションをスッと差し出す。その上には謎の機械が置かれていた。

 中央のディスプレイを上下から挟むようにデバイスと同じ装飾の白いアタッチメントが付いており、左右からレールのようなものが伸びている。

 

「我が魔王、これを。使い方はご存知のはず」

 そんな事はないと、なのはは男の言葉を否定しようとして出来なかった。見たこともないはずのその()()()()()を見た瞬間、使い方が自然と思い出されたのだ。

 聞きたいことは山ほどある。現状に納得など到底できない。そもそもわたしは魔王じゃないし。

 様々な葛藤を飲みこんでなのははドライバーを手にする。1人で怪物と戦っている少年が気がかりだし、なにより目の前で困っている誰かの存在をなのはは放っておけなかった。

 

 なのはが腰にドライバーをかざすと〈ジゲンドライバー〉と音が鳴り、両端から留め具が伸びて、ベルトのように固定される。ドライバーはさしずめバックルのようだった。

 さらに右手に時計のようなデバイス、いやナノハマギアウォッチを掲げ白い部分を回転させると、〈ナノハ〉の音声と共に時計の文字盤にカタカナのマギアの文字が大きく張り付けられた様な顔が浮かぶ。

 男の笑みが深まるのを無視して、なのははドライバーの右側のレールにウォッチをセットした。すると、なのはの後方にマギアの巨大文字と共に円形のピンク色の光を放つ魔方陣が出現。さらに、なのはを中心に天球儀のリングのような帯状の魔方陣が対角線を描くように2本出現し回転し始める。彼女は左手を高く掲げた。知らず、言葉がこぼれる。

 

「風は空に、星は天に、不屈の心はこの胸に、この手に魔法を…… 変身!! 」

 

 なのはが左手を降りおろし、ベルトを一回転させると、〈magic on time カメンウィッチ〉の電子音と音楽が鳴り響き、なのはの姿が変わっていく。服装はどこか彼女が通う私立聖祥大付属小学校の制服を思わせる、白をベースに黒のインナーと蒼いプロテクターを纏った姿に、顔には時計の文字盤のような仮面が張り付き、10時10分を示す巨大化した秒針は角の様にも見えた。最後に魔方陣から飛び出したマギアの文字が顔面に張り付き複眼となる。

「なっ、これは…… 」

「え…… えええええええっ!? 」

 フェレットは瞠目し、なのはは驚愕に声を上げた。自身の変わりようにもそうだが、ファンシーな服装と厳つい仮面がなんともミスマッチで可愛くないのだ。

 ペタペタと顔や体を触り、変身に戸惑う彼女をよそに歓喜に震える胡散臭い男がこの時を待っていとばかりに声を張り上げる。

 

「祝え!! 全魔法少女の力を受け継ぎ、次元を超え、過去と未来をしろしめす魔導の覇者。その名も仮面ウィッチナノハ。まさに生誕の瞬間である」

 

 皆が困惑するなかで、男がただ1人、いっそ清々しいほどに今この瞬間を思う存分満喫していた。

 

 

 

 




 ジゲンドライバーはピンクの装飾が入ったジクウドライバーを、仮面ウィッチナノハはライダーからマギアの文字に複眼が変わったジオウの仮面を被り、腰にジゲンドライバーをくっつけたバリアッジャケット状態のなのはをイメージしていただければ結構です。
 ちなみにマギアはラテン語での魔法で、ゼロワンの敵とは関係ありません。

追記:仮面マギアから仮面ウィッチに修正
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