転生オリ主は祝いたい   作:昨日辛雪

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 今回は試験的に空行を多くしてみました。少しは読みやすくなったでしょうか。
 なお、今後デバイスなど機器類の音声は〈 〉で統一しようと思います。


激突する転生者

 夜が深まる時分、橋梁の上には2つの影。1つは少年。白銀の鎧を身に纏い、眉間に皺を寄せ、青白い光の剣を正眼にかまえている。

 1つは青年。海風に黒いストールをはためかせ、自然体で不敵な笑みを浮かべている。日中は車が行き交う往来のド真ん中で、2人は対峙していた。うん。我ながら画になる光景だ。

 

 今、私は非常に満足していた。我が魔王の初変身を祝うことが出来たし、「ウォズ」という呼び名も手に入れた。そういう意味では目の前の少年に感謝せねばなるまい。

 正直なところ、《祝う者》として「ウォズ」と呼ばれたい欲求はある。しかし、パチモンでしかない私が自らウォズと名乗るのは抵抗があった。だから、我が魔王に名前を尋ねられたら観念して本名を教えようと考えていた。

 

 そんな時だ。彼が私を「ウォズ」と呼び、我が魔王もそう私にそう呼びかけた。ここでイエスともノーとも言わずにそれっぽい顔をすれば、ワンチャン勘違いしてくれるのでは? と魔が差して実行したわけだが、思いがけず成功してしまい先ほどからずっと笑いが止まらない。

 これでは完全に不審者だな。

 

 ただ、実際のところ、私の容貌は渡邊佳祐さんとはあまり似ていない。神から転生先での見た目の希望を聞かれた際、ウォズムーヴをしたいと考えていた私は「ミステリアスなイケメン」と回答した。

 結果として格好よくはなれたのだが、なんというか「HUGっと! プリキュア」のジョージ・クライと「スパイラル推理の絆」の鳴海清隆を足して2で割ったような見た目になってしまったのだ。

 最初こそ落胆したが、美男子には違いないと気持ちを切り替えて、服装や髪型だけでも完璧にしてウォズのロールプレイをしたことが功を奏したのだろう。今までの地味な努力が報われた気分だ。

 

 改めて、鋭い視線で私を射ぬいてくる少年を見る。白銀の鎧に青い装束。容姿も含め、完全に青白い光の剣を持った、Fateのプロトアーサー黒髪黒目エディションだ。もっと友好的であれば、見た目をそっちの神は具体的に決めさせてくれたのか? とか聞いてみたいのだが、どうもそういう雰囲気ではない。

 まぁ、目的の物を奪われて、いきなり橋の上に転移させられたのだから当然か。

 

 本当なら、敵意むき出しで今にも襲いかかって来そうな少年など放ってさっさと帰りたいのだが、私にはまだ確かめなければならない事がある。それは、彼の転生者としてのスタンスだ。転生者には様々なタイプがいる。

 例えば、私のような適度に原作を引っ掻き回す愉快犯型の転生者。彼がこのタイプなら仲良く出来るかもしれない。

 例えば、女の子を囲ってチヤホヤされたいハーレム願望型の転生者。彼がこのタイプなら邪魔をするつもりはない、お手並み拝見といこう。

 例えば、原作に関わらず平穏な日々を過ごしたい日常固執型の転生者。彼がこのタイプなら…… そもそもジュエルシードを狙って乱入などしないか。

 転生者の例はこれだけではないが、私にとって厄介なのが原作の悲劇を回避して、端から誰も彼も見境なく助け出す救世主型の転生者だ。もし、彼がこのタイプなら私は…… 

 

「貴様、さっきはよくも俺の邪魔者をしてくれたな」

 敵意を隠そうともせずに、少年が吐いてすてる。

「ゲイツくん。元よりジュエルシードは君のものではないだろう。他人の者を盗ってはいけないとママに習わなかったのかい? 」

 どの口が言うと毒づく彼を無視して続ける。

「君も原作を知っているならジュエルシードの危険性が分かるはずだ。ゲイツくん、あれは人には過ぎた力だ。諦めたまえ」

 少年の表情が自信ありげに変わった。

「見くびるなよ。俺は特典の内1つをロストロギアを制御する力を手に充てたんだ。俺は暴走など起こさない」

 そういうことか、だが本題はここからだ。

「ならば君は、その力で何を為す」

「そんなものは決まっている、助けるんだ。悲劇なんて起こさせやしない」

 最悪だ。私の問いに被せるようにして、彼が答えた内容は到底許容できるものではなかった。

「それは…… プレシアやリーンフォースをと…… いうことかい」

 私の顔からは笑みなど既に消えている。

「それだけじゃない。クイントやゼスト、()()()()だって救っみせる。()()()()()()!! 」

 少年は力強くハッキリと宣言した。

 

「許されない」

 

 自分でも驚くほどの底冷えのする声だ。だがそれも当然だろう、彼がやろうとすることは原作への冒涜に他ならない。

「”リリカルなのは“は出会いと別れの物語だ。君の言う悲劇を通して少女達の魂は磨かれ、より煌めきを増す。君はそれを阻もうと言うのか? 」

 理不尽さを演出するために、徒にキャラを殺す作品ならば構わない。救世主ごっこでも何でも勝手にやればいい。だが、「リリカルなのは」は違う。

 キャラクターの死。それは次の展開への布石であり、キャラクターを形づくる芯でもあり、血肉となって物語に還元され、作品に奥行きを与えている。悲しい別れを経験したからこそ、今ある小さな幸せを抱き締めて未来へと進んでいくキャラクター達。その叙情的な雰囲気が「リリカルなのは」の大きな魅力のはずだ。それを否定しようとでもいうのか…… 。

 

 私がデバイスを起動させると、A4用紙ほどの大きさで半透明の碧いデータ板が幾重にも出現。それらが回転しながらブーメランの様に少年へと殺到する。

「誰かを助けたいと思うことの何が悪いってんだ」

 迫り来る斬撃をある時は剣で弾き飛ばし、ある時は上体を低くして躱し、少年は巧みにいなした。彼の接近を防ぐべくデータ板を組み合わせ防壁を作ると、新たなデータ板を呼びだす。

 私のデータ板には原作の「魔法少女リリカルなのは」シリーズの出来事が漫画で記されている。今呼び出したページには主人公:高町なのはが戦闘する場面が描かれている。その中から「ディバインバスター」という魔法を放つシーンをタップすると〈Divine Buster〉の音声が鳴り、そのコマに描かれた絵が光となって霧散。するとホログラム状の高町なのはが出現し、少年に向けてピンク色の光の奔流を放った。

「本当に理解しているのか、君の目指すそれは《完全無欠のハッピーエンド》だ。そんなもの《リリカル》でも何でもない。君の行為は原作そのものをーー 」

 否定するものだ、と続くはずだった私の言葉は、間一髪、急加速で砲撃から逃れた少年の怒号に打ち消される。

 

「ふざけるな! さっきから聞いていれば()()だの()()()()()()だのと。俺達が生きている世界は紛れもなく現実だ。アニメじゃないんだよ。彼女達だって1人の人間として、この世界で生きてるんだ。それなのに、原作で起きる事だからと助けられる命を見捨てろだって…… 貴様、人の命を何だと思っている!! 」

 

 彼はその勢いのまま突進。肉薄する少年の刃を、私は硬化させたストールで受け止める。火花が散り、自然と額を付き合わせる形になった。

 瞳が交錯する。なるほど、どうやら彼の目に私は我が魔王達を架空の人物として扱い、その命を軽んじる人間に見えているらしい。それは誤解なのだが。

「命を何だと思っているかだって…… 、勿論かけがえのない大切なものさ。だからこそ『リリカルなのは』には欠かせないエッセンスなんだ。大切だから《意味のある死》を無駄にしてはならないんだよ」

 不思議と訴えかけるような口調になる。対する少年の声色もどこか己に言い聞かせるようなものであった。

「違う。貴様だって転生者だろう? 生きていてこそなんだ。生きていてこそ《命》の意味を探すことができる、そのはずなんだ」

 互いが互いを弾き飛ばし自ずと距離が生まれる。暫しの静寂。ああ、同じ転生者同士でも一度死んで得た答えたがこうも違うのか…… これ以上何を話しても平行線を辿るだけだろう。生きていることに意味があると説く少年と、どう終わりを迎えるかに価値を見出だす私とでは根本的に考え方が違っている。彼にもそれが分かったのであろう。先ほどまでの怒気を納め、静かに胸の前で剣を掲げた。

「ああ、それと…… 」

 ん? この期に及んでなお交わす言葉があるとでもいうのか。

「俺の名前は明光院ゲイツじゃない。いいか、俺は小山田聖騎士(パラディン)、貴様を倒す男の名だ。覚えておけ」

 キラキラネームじゃないか。自然と私も笑みを浮かべていた。

「いや、やはり君はゲイツ君さ。少なくとも、私に勝つまではね」

 

十三拘束解放(シール・サーティーン)ーー円卓議決開始(ディッション・スタート)

 やはりか、見た目通りと言えばそれまでだが、ゲイツ君の特典はプロト・アーサーに倣ったもののようだ。

「是は、己より強大な者との戦いである」〈ペディヴィエール承認〉

 彼の放つ魔力が爆発的に増加し、青白い魔力素の粒子が立ちのぼる。

「是は、一対一の戦いである」〈パロミデス承認〉

 彼を取り巻く魔力の粒子が、星の輝きへと変化した。

「是は、人道に背かぬ戦いである」〈ガヘリス承認〉

 瞳が青く染まり、髪の毛が金色の光を帯びる。どうやらゲイツ君の十三拘束は宝具だけではなく、彼自身の力も封印していたらしい。1つ拘束が解ける度に本家に見た目が近づき、加速度的にプレッシャーが増していく。

 強力な力だ。だが、今回は決定的に相性が悪かった。私も厄介な事になると分かっているのに、拘束が解けるのをただ待っているつもりはない。そう、ゲイツ君の言う通り()()()()()()()、敵が大人しくパワーアップを傍観するなどとは思わないことだ。

 

 私は時を停め動きを封じるると、ストールを伸ばし彼に巻き付ける。私のストールにはチート機能が幾つか備わっており、その1つが拘束した相手のレアスキルや魔法と言った超常の力を強制的にOFFにするというものだ。こうなってしまえば、いくらゲイツ君といえど抵抗は出来ない。現に髪や目は黒に戻り、服装はパーカーにジーンズといった普段着に変わっている。

 

 彼の無力化を確認し、再び時を動かした。

「どうやら今回は私の勝ちのようだね、ゲイツ君」

 彼はストールから逃れようと暫くジタバタしていたが、無理だと悟ったのか大人しくなった。

「けっ、最後までゲイツ君か。まぁいい、認めてやるよ今回は俺の負けだ。だけど、俺は諦めないからな」

「いつでも相手をしてあげよう、もっとも次も勝つのは私だがね」

 売り言葉に買い言葉だが、そこに初めのような刺々しさはない。それが何だか可笑しくて、ひとしきり笑った後、私は彼をストールで包み込み、適当な場所へ転送した。

 空は既に白みはじめ、水平線の彼方からオレンジ色の光が私を照らす。その曙光は未だ弱いものであったが、確かに暖かかった。

 

 

 




二人の転生者の簡単なキャラ紹介
1)ウォズ(仮)
 本作の主人公、本名不詳の転生者。ストールがチート。巻くだけで瞬間的移動できる他、包んだ人や物を任意の場所に転送できる。さらに巻き付けた相手の特殊能力を封じてしまう、まさにチート。オリ主の強さの半分以上はストールのおかげ。
 ストール巻き太郎とか言ってはいけない。因みに魔法で消費した漫画のコマは24時間後に復活する。

2)小山田聖騎士
 今後も恐らく誰からも本名では呼ばれない哀しき転生者。見た目は黒髪黒目のショタプーサー。
 拘束を6つまで解けば約束された勝利の剣をブッパできる。13の枷、全てが外れた状態だと魔導師ランクは陸戦SSS。この姿で約束された勝利の剣を放てば、オリ主を一発で蒸発させられる。もっとも奴は逃げるけど。あと、陸戦の字から分かるとおりに空は飛べない。
 名前をアーサー・平井にするか割りと最後まで悩んだ。
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