できるなら、両作品の魅力を少しでも感じて貰えるような文章を綴っていきたいですね。
温泉でユーノの正体が明かされてから、なのはは彼との間に壁のようなものを感じている。あれ以来、ユーノは居間で寝るようになったし、会話も減り、毎朝の訓練時のやり取りも事務的なものになってしまった。ここ数日は放課後のジュエルシード探索も別行動だ。
ちょっと言いすぎちゃったかな。あの場では、キツイ物言いをしてしまったなのはだが、別にユーノの事を「淫獣」などとは思っていない。確かに恥ずかしかったが、あの時なのはが怒ったのも主にユーノが嘘をついて誤魔化そうとしたことに対してであった。
わたしは仕方ないにしても、アリサちゃんやすずかちゃんの裸を見たのはダメだよね。そう思考を切り替えた時だった。
なのは魔力の脈動を感じた、これはもしかして……!
『ユーノくん! 』
『うん、なのは。この反応はジュエルシード!! 』
やはりそうか。どうやらユーノも察知していたらしい。
「レイジングハート、この反応はどこから? 」
近い、発生源は学校の裏手にある山からだ。なのはは、踵を返すとジュエルシードを封印するために駆けだした。夕暮れの街。家路向かう人々の間を縫ぬって、息を切らせながら走る。
『なのは、なのは! 駄目だよ、ボクが行くまで待って! 』
ユーノの提案をなのはは受け入れることが出来なかった。手をこまねいている間に、人や生き物が巻き込まれてしまうかもしれない。なにより、森の入口にあたる階段は既に目と鼻の先だ。こんなに近くにいるのに、ただ見ているだけだなんて、なのはにはとても耐えられなかった。
『この間はちゃんとできた、魔法だってユーノくんといっぱい練習した。今日もレイジングハートが一緒! だから、なんか行ける気がするの』
最後の一段を登り終えたなのはの視線の先では、山の奥から幾条もの光の柱が天を衝いている。事は既に始まっているようだ、なのははジゲンドライバーを取り出し、腰に据える。
「レイジングハート、これから努力して経験つんでくよ。だから教えて、どうすればいいか」
<全力にて、承ります>
なのははマギアウォッチを掲げ、ドライバーにセット。
「変身」
<magic on time カメンウィッチ>
姿を変えたなのはは高く飛びあがった。
「見つけた」
上空から索敵していたなのはが発見したのは、大きな翼を生やしたネコ科の猛獣であった。狙いを定めたなのははカノンモードのレイジングハートを構え流星の如く、一直線に突撃した。
猛獣を貫いたなのはは、その勢いのまま地面に着弾。激しく土埃があがる。猛獣の半身は地中に埋没し、身動きが取れないでいる。今なら……
なのはがゼロ距離で封印砲を放とうとした刹那、猛獣は下半身を捨て、巨大な骨髄を剥き出しにしたまま、上半身だけで逃げ出した。
しまったと、なのはが思ったちょうどその時。
「ジュエルシード、封印!! 」
突如頭上から聞こえてきた声に、なのはがハッと顔を上げると、1人の少女が魔法を発動する。雷が一閃し、猛獣を切り裂き爆散。ジュエルシードは封印された。
なのはの目の前には、魔法使いと思しき少女。彼女は金色の長い髪をツインテールにしており、漆黒のマントを羽織っている。手には巨大な鎌を彷彿とさせる雷の刃を纏ったデバイス、黒のレオタードにベルトで固定されたスカートという出で立ちだ。ただし、仮面は着けていない。
こちらを警戒しつつ、ジュエルシードを持ち去ろうとする少女をなのはは呼びとめた。
対する少女は無言で、刃が消え戦斧へと変形したデバイスをなのはへと向ける。彼女は周囲はバチバチと音を立てる、雷のスフィアを出現させた。明らかに友好的ではない。
なのはは意を決して少女と同じ高さまで飛翔。真正面から彼女と向き合う。
「あの…… あなたもそれ、ジュエルシードを捜しているの? 」
少女は冷たく「それ以上近づかないで」と切り捨てるが、なおもなのはは言葉を紡ぐ。
「あの、わたしはお話したいだけなの……! あなたも魔法使いなの? とか、なんでジュエルシードをとか…… 」
少女の表情に一瞬影が差す。次の瞬間、彼女は返答の代わりに周囲のスフィアを矢のように撃ち出した。
なのはは横に跳んで回避するが、その一瞬で少女はなのはの後ろに回りこみ、再び雷刃を出現させ斬りかかってくる。
なのはは迫りくる刃を、石突を跳ね上げて横から殴りつけると、そのままレイジングハートを半回転させ、少女のデバイスを支柱部分で押さえつける。そのまま、前へとスライドさせ、少女と顔を突き合わせた。
「待って! わたし、戦うつもりなんてない!! 」
「だったら、わたしとジュエルシードに関わらないで」
少女は一方的に要求をするばかりで、なのはの対話に応じる様子はない。
カメンウィッチに変身したなのはの力は強く、武器の拘束が解けないことに焦れた彼女は、デバイスを一旦待機状態に戻し、再び発動。自由を取り戻すだけでなく、なのはのバランスを崩すことにも成功した。
横薙ぎに振るわれた刃を、なのははシャフト部分でガードするも、不安定な姿勢であったため、弾き飛ばされてしまう。
<Arc saber>
少女は雷刃を三日月状のブーメランに変化させ、なのはを追撃する。
咄嗟にレイジングハートが<Protection>と防御魔法を発動し、なのはを守る。しかし……
<Saver explode>
受け止めていた刃が炸裂。凄まじい衝撃波がなのはを襲った。なのはは爆風に呑まれ、きりもみしながら堕ちていく。
巧い。一瞬の攻防で、なのはは少女が己よりもずっと優れた魔法技能を持っていることを悟った。
「だからって、諦めていい理由にはならない。そうだよね、レイジングハート! 」
<そのとおりです>
なのはは地面に向けて砲撃を撃ち、その反動を利用し無理やり体勢を立て直す。
「レイジングハート、アレ頼める? 」
<もちろん。あなたがそれを望むなら>
なのはの背後にピンク色の粒子が舞う。ベルトからの頼もしい言葉に、なのはは思わず笑みを浮かべた。そして、その場で光弾を4つ作り、内3つを少女へと放った。
軌道を幾重にも変え、少女に向かう光弾。今のなのはでは、その攻撃を素早く動く彼女に当てることはできない。
でも、それでいい。遠距離からの溜めを有する大技だけ潰せればかまわない。そうなれば、彼女は接近戦に切り替えてくるはず。
牽制用に残した1発もある。純粋な筋力で勝る自分に正面からの切り合いは不利なはず。幸い、最初のやり取りでその印象を残せた。ならば、彼女が仕掛けるのは……
なのはに突っ込ん出来た少女は激突する間際、フッとなのはの視界から消える。そして、なのはの背後に現れ、雷刃を振りかぶり…… そのままの状態で固定された。両手、両足を光の輪に束縛されている。
「これは…… バインド!! 」
少女の声に初めて焦りの色が見える。
「えへへ、まだこのタイミングでしか使えないんだけどね」
少女は今度こそ驚愕した。素人と断じた仮面の魔法使いが、この状況に自身を誘い込んだとでもいうのか。
「本当にお話したいだけなの。だから、教えて。どうしてジュエルシードが必要なのか。もし困っていることがあるなら、わたしでも-- 」
力になれるかもしれない。そう続くはずだったなのはの言葉は絶叫に掻き消される。
「フェイト-!! 」
無警戒だったなのはは、側面からの衝撃に為すすべもなく吹き飛ばされる。
視界の端に映る、少女の拘束を解いたオレンジ色の髪をした女性。彼女に蹴り飛ばされたのだ。
「ごめんね」
フェイトと呼ばれた少女は、なのはに向けて雷の矢を放つ。それに貫かれ、今度こそなのはは撃墜された。
体が痺れて上手く動かない。変身も解除されてしまった。
「今度は手加減できないかもしれない。ジュエルシードは諦めて」
少女はそれだけ、背中越しになのはに伝えると、ジュエルシードを回収して女性と共に去って行った。
「なのはッ! 」
ユーノくんだ。こちらを見つけると、急いで駆け寄る。
「なのは…… ごめん、大丈夫? 」
ユーノの声は悲鳴のようだった。視線は下をむき、瞳が揺れている。
「ごめん、なのは…… ボクのせいだ。ちゃんと、なのはに着いていなかったから…… 」
彼はまるで神に許しを乞う罪人のような表情をしている。そんな顔して欲しい訳じゃなかったんだけどな。
「わたしの方こそゴメンね。勝手な行動をして心配かけて」
ユーノはブンブンと頭を振る。
「違うんだ。あの日以来、なのはといるのが気まずくて逃げてたんだ。放課後だって、二手に別れた方が効率が良いって言い訳して…… 君を避けてた。ジュエルシードを狙う存在がいるかもしれないって、分かってたはずなのに! 」
悲痛な叫びをあげ懺悔を続けるユーノに、なのははそっと手を差し伸べた。
「じゃあ、おあいこだね、わたし達。また、ここから一緒にはじめよ? 」
ユーノは涙を拭い、なのはの手をとって、誓う。
「ボクがなのはを守る。もう誰にも傷つけさせたりしない」
なのはも、その手を握り返す。
「うん、頼りにしてる」
2人は顔を見合わせて笑いあった。だが、忘れてはいけない。この世界には空気を読む気などさらさら無い、イイ雰囲気を何食わぬ顔でブチ壊す輩がいるということを。
「雨降って地固まる、といったところかな。怪我の具合はどうだいン我が魔王」
そう、ウォズである。なのははもう慣れたもので「ああ、やっぱり来たか」くらいにしか思っていない。対して、ユーノは「うわっ、また出た」と心底いやそうな顔をする。
「ウォズ、あなたは今までなにをしていたんだ。なのはの臣下だっていうのなら彼女を守ってしかるべきじゃないのか」
自身の不甲斐無さへの苛立ちもあり、ユーノは強い口調でウォズに詰め寄った。だがそれも、ウォズには暖簾に腕押し。
「主の成長を促すのも臣下の務めというものだよ、ユーノ君」
そう嘯くと、彼はわざわざ屈んでユーノにデコピンする。そして、敢えて2人に見せつけるようにデバイスを起動した。
「この動画によれば、我が魔王にとってこの敗北は重要なファクターの1つ。それに君にとっても必要なことだったんじゃないのかな? 」
違うかい? と訳知り顔のウォズに腹はたったが、事実ではあるため、反論するわけにもいかずユーノは押し黙るしかない。
「それに遊んでいたと思われるのは心外だな。ゲイツ君があの戦いに介入しようとするのを防いでいたのは他ならぬ私だよ」
明光院ゲイツ、彼もまたジュエルシードを狙う少年だ。その存在をユーノも知っていた。知っていたのに、なのはを1人にさせてしまっていた。また1つ己の迂闊さをウォズに指摘されたユーノはもはやグウの音も出ない。
それを居た堪れなく思ったなのはは、ウォズに尋ねる。
「あの、それでウォズさんはどうしてここに? 」
「おっと、本題を忘れていたよン我が魔王。君は傷つた姿を家族に見られたくないと思っているね。ならば、それを叶えるのが臣下である私の役目」
ウォズがデバイスを操作すると、緑色の騎士服を纏った金髪の女性が投影される。彼女が指輪型のデバイスに口づけをすると、優しげな風がなのはを包みこみ、傷を癒していく。
「すごい」
これには、彼を毛嫌いしているユーノも素直に関心している。
「わぁ、ありがとうございますウォズさん!! 」
なのはに礼を言われてまんざらでもないのか、珍しくウォズが気のきいた提案をする。
「直に夜になる。せっかく傷を治したのに、それで君の家族を心配させてしまっては意味がない。私が送り届けよう」
ウォズのストールに覆われ、気がついたらなのはは自宅の前に立っていた。今日は本当に色々なことがあった。ユーノくんと仲直りして、もう一人の魔法少女と出会った。
フェイトちゃんって言ったっけ。彼女の綺麗な赤い瞳。ただ、それだけじゃない。瞳の奥で訴えかけてくる何か。
その正体は今のなのはにはハッキリとは言葉にできない。でも、それが何故だかなのはには気になってならなかった。
◆◇◆◇
「邪魔ね」
胸元が大きく空いた紫色のドレスを召した、長い黒髪の妙齢の女性。プレシア・テスタロッサは独りごちる。
思えば、初めから上手くいかなかった。ジュエルシードを乗せた船に次元跳躍魔法で攻撃したのはプレシアだ。彼女の計画では運行に支障がでた次元船が、補修のため管理外世界に不時着したところでジュエルシードを奪う手筈だった。その船が無人という調べもついていた。
しかし、実際はどうだ。船は加減した魔法でさえ轟沈してしまうような粗末なモノ。おかげで、ジュエルシードは散り散りになり、回収に
彼女は玉座に腰を下ろし、魔法で投射されたディスプレイに目を向ける。そこには今日行われた戦闘が映し出されていた。彼女の目は鋭く細められている。
最初は戯れのつもりだった。リニスが仕上げた人形の出来栄えを確認するためだけの作業。そのはずだった……
あの仮面の魔導師、今はまだ粗削りだが、素材は1級品。このまま成長すれば人形にも匹敵する実力を身につけるかもしれない。それに大魔導師と呼ばれたこともあるプレシアでさえ見たこともないデバイス。まぁ、それはいい。厄介ではあるがいくらでもやり様はある。
だが、アレはだめだ。ストールを巻いた男、ヤツは理解の範疇を超えている。プレシアはある目的のため、全てを擲って魔法の研究に没頭してきた。だからこそ分かる。アレは異常だ、レアスキルなどと言う生易しいものではない。
映像の中では、ストール男と鎧の少年が交戦している。ヤツは少年の斬撃を最小限の動きで躱し、カウンターを叩き込む。
プレシアの目から見ても少年の技量は決して低くない。それが一方的に
拳を振り抜いた体勢のままま、ヤツは別の場所に現れ絶え間く技を繰り出している。だから、少年はされるがままだ。
耐えかねた少年が全身から魔力を放出、自身を中心としたエネルギーの球体生み出して距離をとる。そこから反撃に繋げようとするが、ヤツが手をかざした途端、不自然に動きが停まり、しまいにはストールに巻かれて何処へと跳ばされてしまった。
なんとかしなければ、プレシアの中で焦燥感が募る。ただでさえ時間が無いのだ。最初で最後かもしれない好機、絶対に逃す訳にはいかない。
待っていてアリシア…… 必ずアレらを排除するから。そう、誰にも邪魔はさせない。ヤツにも仮面の魔導師にも、プレシアは1人暗い炎を燃やすのであった。
◆◇◆◇
「かくして、我が魔王は敗北を経験し、決意を新たにした。歴史は着実にオーマナノハに向かっている。おや、我が魔王にまた試練が訪れるようだ。しかし、この人物は…… 彼女が我が魔王であるのなら、彼の存在は必然なのかもしれませんね」
なのはとフェイトが対決した山を、拙作では聖祥の裏にあると勝手に設定しました。海鳴市の地形はイマイチ分からないので、これで良いかなと……
ただ、下校中のなのはが走って行ける距離なので、学校からそこまで離れてはいないかと個人的には思っています。まぁ、ドラ○もんのを視ていたせいか「学校の裏山」という単語が刷り込まれていただけかもしれませんが。