転生オリ主は祝いたい   作:昨日辛雪

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タイトルはヴァイスのクライマックスから。

拙作に高評価をくださった方々、本当に有り難うございます。皆様のお陰でランキングにも見切れることが出来ました。モチベーションも大いに上がるというものです。

また、誤字報告をしてくださった皆様にも、この場をかりてお礼申し上げます。誠に有り難うございました。




激戦の攻防(上)

「この動画によれば、普通の小学生・高町なのは。彼女には魔王にして次元の覇者・オーマナノハになる未来が待っていた。金色の魔導師・フェイト。その瞳の奥に隠された秘密に気付いたナノハは、再び彼女と相対する決意を固めた。二人の魔導師による衝突は、ジュエルシードを暴走させ、次元震を引き起こすこととなる。そう私はこの動画で視聴したのですが…… 」

 

◆◇◆◇

 

 夜の海鳴市。ユーノはなのはと共に、ジュエルシードの探索をしていた。なのはが繁華街を、ユーノが裏路地を。

 ユーノはジュエルシードの気配を探りつつ、なのはの変化に思いを馳せる。ここ最近、暗く翳っていたなのはの表情は、憑き物が落ちたかのように晴れやかであった。

 理由はきっと、友達との(わだかま)りが解けたからであろう。ユーノは夕暮れ時のやり取りを思い出す。

 

「ユーノ君、ごめんなさい! 」

 なのはからいきなりの謝罪を受けてユーノは困惑していた。

 今日、なのはは普段より帰りが遅かった。最初は、それで心配させたことかと思ったが、勢い良く頭を下げるなのはの様子から、違うなと考えを改める。

「なのは、先ずは顔を上げて。それじゃ、話も出来ないし。ボクとしても何が何やら…… 」

 ふと、ユーノの頭をよぎったのは、なのはがジュエルシード集めを辞めたいと言う可能性だ。

 それは、頭の片隅でユーノが常に考えていたものでもある。以前の戦闘では危険な目に合わせてしまったし、近頃は思い詰めた(かお)をすることが多くなったなのはを見て来た。

 だからその時が来ても、なのはを引き止めたりはしまいと考えていた。元より無関係ななのはを、己の事情に付き合わせていたのだ。寂しさこそあれど、彼女を日常に帰せる安堵の方が勝っている。 

 覚悟を決めたユーノを待っていたのは、想像していたものとは180度違うなのはの言葉だった。

 

「あのね、アリサちゃんとすずかちゃんに魔法のこと打ち明けたんだ」

「えぇっ! あっ、いや…… それは構わないんだけど、2人は信じてくれたの? 」

 想定外のことに声を上げてしまうユーノであったが、直ぐにあることに思い至る。

 この世界の住人にとって、魔法なんて所詮は空想上の産物。なのはが何を思い、彼女達にソレを話したのかユーノには分からない。ただ、もし2人の理解を得られなかったならば、なのはが深く傷付いてしまうのではないか…… それだけがユーノは気がかりだった。

 しかし、ユーノの懸念など杞憂でしかないと、なのはの表情が告げている。

 

「にゃはは、やっぱり驚いてた。けどね、『なのはの言うことだから』って言ってくれたの」

「そっか、素敵な友達を持ったね。なのは」

「うん!! 」

 ああ、良かったと、破顔するなのはに、ユーノは心から思う。やはり、彼女には笑顔でいて欲しい。

「それとね、2人ともユーノ君にもまた会いたいって」

 ピキリと全身が強張るのが分かる。魔法について話すということは、当然自分のことも話題のあがる訳で………

 背中が嫌な汗をかいている。ー マズイ、マズイ、マズイー 例の旅行の時、ユーノは彼女達と温泉に浸かっているのだ。そんな2人に正体が知られたら……

「なっなのはさん…… ボクのことは…… その、なんて伝えたのですか……? 」

 人間だとバレた日のなのはを想起し、総毛立つ思いがした。彼女はニコニコしている、その瞳そ除いて。それもあの日と一緒……

 

「変なユーノくん。急に敬語になったりして」 

 大丈夫だよ、なのは。変なのはボクが一番自覚しているから。

 滝ように、汗が流れ落ちる。

 そんなユーノを見て、なのはがクスッと笑う。

「安心していいよ、そこはちゃんとボカしておいたから」

 ユーノはホッと胸を撫で下ろした。「淫獣」などという不名誉な呼ばれ方をするのは1度で十分だ。

 

「あのね、ユーノくん。わたしやりたいことが出来たんだ」

 なのはの言葉には強い意志が込められていた。先程までの茶化すような雰囲気はもう無い。彼女にとって、ジュエルシード集めは《やるべき事》なのであろう。ならば、《やりたいこと》とは一体何なのか。

「聞かせて、なのは。ボクにも、力になれることがあるかもしれない」

 一拍間を置いて、なのはは言う。

「わたし、あの子と話したい。知りたいんだ、戦ってでもジュエルシードを集めたい。その理由を…… 」

 森で遭遇した、金色の魔導師のことであろうか。

「『フェイト』って呼ばれていた、あの子のこと?」

 ユーノの問いに、なのはは頷く。

「うん。あの子ね、なんだかとても寂しそうな目をしていたの。すごく強くて冷たい感じもするのに、どこか優しそうで…… なのに、ひどく悲しそうなの」

「また、ぶつかり合うことになるかもしれないよ」

 なのはの安全を考えれば、もうあの子達とは出会わない方が望ましい。「それでも」となのはは言う

 

「わたし、やっぱりフェイトちゃんのことが気になるの。放っておけないんだ。だって、あの子はわたしと同じだから」

 ユーノには、なのはの言うことろの「私と同じ」が示す意味が正確には分からない。ただ、それが孤独の痛みを指しているのだろうとは、なんとなく推し量ることが出来た。

 ユーノは両親の顔も知らずに育った。だから、1人ぼっちの辛さなら理解できる。でも、自分にはスクライアの一族がいた。寄りかかれる場所があった。甘えられる人達がいた。おそらく、なのはにもそんな居場所があったのだろう。

 だが、あの子は違う。ユーノの目から見ても、彼女はどうしようもなく独りだった。

「わかった。なのはが望むなら、ボクは全力でサポートするよ。どのみち、ジュエルシードを集めるうえで、避けては通れない問題だしね」

「ありがとう、ユーノくん。今日は塾もないから、晩御飯までジュエルシード探しをしよう! 」

 

 そして、今に至るというわけだ。周辺からジュエルシード気配は感じるものの、正確な位置までは、まだ特定できない。

 時間はもう19時半を過ぎている。なのはを家に返し、自分はもう少し捜索を続けようとしたその時だった。人が大勢いる街中に、突如魔力流が撃ち込まれたのだ。夜空を覆う稲光から、あの子の魔力反応を感じ取る。

 こんな所で、強制発動だなんて…… ユーノは憤りを押し殺し、広域結界を発動した。

 

◆◇◆◇

「変身! 」

 ユーノが結界を張った事を感知したなのはは、走りながら構えをとって変身すると、その勢いのまま大通りを一直線に飛ぶ。

『なのは、ジュエルシードが見える?』

『見えるよ、すぐ近く! 』

 目指すは、交差点の中央で立ち上る光る柱、ジュエルシードだ。

『暴走を始める前に、封印いけるっ!? 』

 ユーノからの要請に、なのはは『その必要はないよ』と返す。

 近くにあの子の反応を感じる。ジュエルシードを狙っている彼女なら、必ず封印を施すはず。

 なのはは封印砲を放つ時、1度足を止めざるを得ない。スピードは相手の方が上、位置関係も不明瞭。仮にわたしが封印しても、ジュエルシードを奪われてしまっては意味がない。

 だったら限界まで近付いて、彼女がジュエルシードを封印した直後にそれを確保する!

❮Spark Smasher❯

 紫電を纏った金色の砲撃がなのはの対角線上から放たれ、眼前でジュエルシードに直撃する。やっぱり来た。なのはは封印されたばかりのジュエルシードに手を伸ばした。

 

「させるかぁー!! 」

 なのはの掌がジュエルシードを掴みとる寸前。額に宝石を付け、長いオレンジ色の髪をした女性が3時の方向から急速接近、なのはに拳を振りかざす。

 有視界外からの奇襲速攻。確かに有効な戦術だ。…… だが、そのパターンは前に1度経験している!!

 なのはは左足を後ろに引き、全身を大きく沈み込ませて攻撃を躱すと、レイジングハートを持っていない右手に魔力弾を生成。頭上で、無防備に晒されている彼女の腹部に、掌底打ち要領で押し込み、0距離で炸裂させた。

 上空に打ち上げられた女性は、姿を狼を彷彿とさせる大型な犬種の獣に姿を変え、再びなのはに襲いかかる。彼女はアルフ、フェイトの使い魔だ。

「なのは、危ない! 」

 なのはの背後から躍り出たユーノが、障壁を張り攻撃を防ぐ。

「こっちはボクに任せて、なのはは彼女を……! 」

 ユーノの言葉を受け振り返ると、歩道橋の欄干の上に降り立ち、武器を此方に向けるあの子の姿があった。

 

◆◇◆◇

 

 夜の摩天楼を金とピンク、2つの光が螺旋を描きながら飛び交っている。フェイトはジュエルシードを巡り、仮面の魔導師とドッグファイトを繰り広げていた。

 手強い……! フェイトは素直にそう思う。この短期間で、実力をここまで詰めてきた。それが、フェイトの癇に触る。

 それに、先程の彼女の言葉が、何度振り払おうとしてもフェイトの脳裏から離れない。心の奥底に眠っていた何かを揺り動かされる感覚。フェイトが忘れていた…… 忘れようとしていた大切で苦しい何か……

「この間は自己紹介出来なかったけど…… わたし、なのは。高町なのは。私立聖祥大付属小学校3年生。あなたはフェイトちゃん…… だよね? 」

 真っ直ぐ自分に向けられた言葉に、思わず「フェイト、フェイト・テスタロッサ」と口走ってしまった。

 眼下では、彼女の使い魔とおぼしきフェレットがアルフと互角に戦っている。ついこの間まで、素人同然だった相手が此処までの実力を持つ使い魔を従えている。そのことも、フェイトを苛立たせた。

 不愉快だ! あの子の成長も! 心を揺さぶられる言葉も! 閉ざした扉の隙間から射し込むような温かさも! 全部! 全部! 全部っ!! 

 

「はぁぁぁぁあっ!! 」

 フェイトは身を翻し、自分に追い縋る仮面の魔導師に向け、遠心力を加えた大鎌の斬撃を見舞う。しかし、今のフェイトの攻撃には感情的が乗りすぎている。

 そんな、見え透いた攻撃では相手を捉えることが出来ず、デバイスは虚しく空を切った。

 斜め上方向に跳躍し、フェイトの攻撃を回避した魔導師が周囲に6つの光球を出現させ、フェイトへと射出する。

 誘導弾!!

 複雑な軌道はしない。だが、的確にフェイトの動線を塞ぐように高速で放たれたそれを、フェイトは最小限の動きをすることでギリギリ掻い潜る。

 大丈夫。掠りこそしたけど、直撃は免れた。

 一息つくのも、束の間。

❮Finish Time ナノハスレスレシューティング❯

 デバイスの電子音に驚き、顔を上げると、ピンク色の光が凄まじい勢いで集束している。

 

 あれは…… マズい!!

 咄嗟に回避行動をとろうとしたフェイトだったが、そこでハッとする。光の射線上、丁度自分と重なる位置にアルフがいるのだ。

 しまった! さっきの誘導弾はわたしをこの場に縫い付けるための布石……!!

 フェイトは魔法防壁を幾重にも展開し、迎撃体制を取った。

 怒濤の如く放たれた力の奔流が、防壁を突き破りながらフェイトに迫る。

 最後の一枚。これに全ての魔力を懸ける。

 あわやフェイトに届くかという所で、ピンク色の光は霧散した。

 なんとか、防ぎ切った。肩で息をしているのが分かる。でも、それは相手も同じこと……

 

 フェイトの見つめる先で、仮面の魔導師はゆっくりと武器を下ろす。

「目的があるなら、ぶつかり合ったり、競い合ったりするのは、仕方がないのかもしれない。だけど…… 何も分からないまま、ぶつかり合うのは嫌だ! わたしも言うよ、だから教えて…… なんで、どうしてジュエルシードが必要なのか」

 フェイトは彼女から目を離せないでいた。

「わたしは…… 」

 戦かわなくちゃ、あの子は敵なのに…… そんなフェイトの意志とは裏腹に、零れ出たのは今にも消え入りそうな声。

「フェイト! 答えなくていい! ジュエルシードを持って帰るんだろっ!」

 アルフの言葉でフェイトは我に帰った。そうだ、わたしの目的はあの子を倒すことじゃない。ジュエルシードを()()()に届けること!!

 フェイトは仮面の魔導師を無視して、ジュエルシードへと直行する。

 ジュエルシードを回収しようとするフェイトのデバイスと、それを阻止しようとする仮面の魔導師のデバイスが同時ににジュエルシードを挟み込む。

 

 刹那、眩いばかりの閃光と衝撃が迸る。その勢いで吹き飛ばされたフェイトは、直ちにカバーに入ったアルフに抱き留められる。

「大丈夫かい? フェイト」

「ありがとう、アルフ。わたしは平気だよ」

 ギシギシ言う音の先を見れば、自身のデバイス:バルディッシュが破損していた。

 相手の魔導師は、アスファルトを抉りながらもその場に踏みとどまっている。そして、不気味な鼓動を刻むジェルシード……

 次の瞬間、ジュエルシードの周囲に紫色の魔法陣が展開される。

「母さん!?」

 暴走状態のジュエルシードを、指向性を持って扱うことは至難の業だ。だが、稀代の大魔導師と呼ばれる母ならば……

『あなた達は邪魔なの、消えなさい』

 聞こえる筈のない母の声が、魔法から思念となってフェイトに伝わる。

 その直後、仮面の魔導師の足元の空間が崩壊。彼女を助けに入った使い魔と、飛び込んできたもう1つの影をも呑み込んで、次元の裂け目は閉ざされた。

 今ので力を使い果たしたのだろうか、ジュエルシードが光を収め、コロンと地面に落ちる。

 それを拾い上げたフェイトは、唇を固く結び、爪が食い込むくらい拳を握り締め、アルフとその場を後にするのだった。

 




なのは「逆だったかもしれねぇ」
ユーノ「一人ぼっちは寂しいもんな」
フェイト「えぇ」

アルフがいるから、フェイトは孤独じゃないじゃん? と思うかもしれないですけど、彼女にとってアルフは妹の様な比護対象であり、自身の弱さを見せられない存在だと個人的に思ってます。

だからこそ、子供が感じる寂しさを満たすことは出来なかったのかなと……

今後は、アーマータイムの予習と仕事が多忙な時期になりますので、投稿ペースは落ちますが、瞬瞬必筆をモットーに続けいく所存ですので、楽しんでいただけたら幸いです。
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