この素晴らしい正統派ウィザードに祝福を!(旧:不器用な2人)   作:柴犬360

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はい ダスリン自給自足2作目です。

気がついたら前作の倍近い文量になっていて驚きました。

それではどうかお付き合いくださいませ。

※愚か者6巻読了推奨(必須)

時系列的には愚か者時空のWeb版後ぐらいです


ダストの姫とラインの姫

「何これ?招待状?」

 

ある日の午後、宿で休んでいたあたしの元にブライダル王国の執事長が手紙を届けに来た。

 

「左様でございます。

魔王討伐の影響により姫様の結婚が延期となりましたので、姫様たっての希望により貴方様を城へと招待する運びとなりました。」

 

うーん… 多分だけどこれ拒否権ないんだよね。

それにあの時はリオノール姫に会うことなく屋敷から出ちゃったから1度リオノール姫に会ってみたいってのもあるし、行ってみようかな。

 

「わかりました。ちなみにそれはいつの話なのですか?」

 

「今から1週間後の正午からとなります。

テレポート屋に話をつけておきますのでこちらの手形を係のものへお見せ下さい。

それと服装は普段のものと同じで構いませんのでそう固くならずにお越しください。」

 

執事長そう告げると恭しく例をして退出して行った。

 

(リオノール姫かー…

入れ替わり騒動の時は結局会えなかったし、ダストのことで聞きたいこともあったし、あの時お世話になったメイドさんたちにも会うのが楽しみかも。

でもなんであたしを城に呼んだんだろ…)

 

考えていても仕方がないとばかりに宿を出たあたしは、お昼を食べにギルドへと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1週間後のお昼前、テレポート屋に向かったあたしは係の人に手形を渡し、無事にブライドル王国の王城まで来ることが出来た。

 

来たはいいけどここからどうしたらいいんだろう…

門番さんに招待状を見せればなんとかなるのかな?

 

「すみませーん。

私はリオノール姫に招待されたリーンという冒険者なんですけど…」

 

私がそう言って招待状を見せると、門番さんたちは快く門を開けてくれた。

 

「これはこれは、ベルゼルクからようこそお越しくださいました。

執事長から話は伺っていましたが本当に姫様に似ておられるのですね。

それでは、執事長を呼んでまいりますので少々お待ちください。」

 

門番さんたちがビシッと敬礼してくれるのを見ると否が応でも緊張感が高まってくる。

 

そんな居心地の悪さを感じながら待っていると、懐かしの執事長が出迎えにやってきた。

 

「ようこそお越しくださいました。

では、こちらへどうぞ。

リオノール姫がお待ちしております。」

 

そういって歩きだした執事長の後ろについていくと、突然後ろから声をかけられた。

 

「お久しぶりですね。リーンさん。

あれからお変わりありませんでしたか?」

 

あたしがギョッとして振り返るとあの時のメイドさんが無表情な顔でそこに立っている。

 

「お久しぶりです!

お陰様で元気に暮らしていますよ!!」

 

メイドさんとそんな話をしながら歩いていくと、どうやら目的の部屋についたらしい。

 

「ではこちらへどうぞ、中でリオノール姫がお待ちです。」

 

そう言って扉を開けた執事長と共に中に入ると、そこには髪色と胸部以外はあたしにそっくりな1人の女性が待っていた。

 

「初めまして。

あたしがこのブライドル王国の第1王女ことリオノールでございます。

リーン様、この度は遠路はるばるようこそお越しくださいました。」

 

リオノール姫はそう言って王女に相応しい礼をしてみせた。

 

なんだ、礼儀正しい王女様じゃない。

破天荒とワガママとずる賢いを足して2をかけたような人とか聞いてたけど全然そんな感じは…

 

「なーんてねっ!

身代わりになってもらった時はどうもありがとう!

それとここではいつも通りの口調で構わないし、あたしのことはリオノールと呼んでくれていいわよ!!」

 

あぁ… 確かにこの人は聞いていた通りの人だと確信した。

 

しかし一国の王女を呼び捨てとか許されるのだろうか?

そう思って執事長のほうに目を向けると、”構わない”といいたげな目線を向けられた。

 

「わかったわよ…

それで、リオノールはどうしてあたしを城に呼んだの?」

 

あたしは1週間前からずっと考えていた疑問を口にした。

 

「ああそれはね、リーンちゃんに代わってもらったときに"報酬はダストの昔の話をする"って約束したのにその約束をまだ果たしてないじゃない?

だからその約束を果たそうと思って呼んだってわけよ!」

 

ああなるほどね、確かにその約束は果たされてなかったな…

でも…

 

「そんなこと気にしなくても良かったのに。

それに、昔の話ならダストが話してくれたから大丈夫よ。」

 

あたしがそう答えると、リオノール姫は"そんなことは想定内"といった感じの笑みを浮かべた。

 

「うんうん!

ダストとは順調そうで何よりだわ!!

そーれーで?

ダストとはどうなのよ。もう、やっちゃった?」

 

「がっ ゲホッゴホッ! い、いきなり何言ってんのよ!」

 

当然妙なことを口にしたリオノールの所為でむせ込んでしまった。

 

「その反応… もしかしてまだなの?

キスはしたんでしょ?デートぐらいは行ったわよね?

ちょっと、なんでそんな寂しそうな顔するのよ。

私の調べによるとギルドで愛を叫んでたらしいじゃない。」

 

私の調べって…

リオノールの情報収集力に驚いていると、表情から察したのか、

 

「私にかかれば国の諜報機関を使って調べあげることなんて簡単よ!」

 

国の諜報機関…

さらっと恐ろしいこと言うわねこの姫様…

しかし、このままじゃあたしが一方的に不利だし何とかしないと…

 

「あ、あたしのことよりリオノールはどうなのよ。

ダスト… ラインのことをどう思ってたの?」

 

あたしが反撃のつもりでこう言うと、リオノールは顔色ひとつ変えることなく、

 

「好きだったわよ。」

 

と言い切ってきた。

 

「え、あ、そうなんだ…」

 

やっぱりそうだったのか…

でも今はどうなんだろ…

正直あたしじゃリオノールには勝てそうもないし…

 

あたしがそんなことを考えて表情を曇らせていると、リオノールが弾けるような笑顔でこう続けた。

 

「でも、今はもう吹っ切れてるから安心してよね!

今のダストの好きな人はリーンちゃんなんだしさ。」

 

ほらやっぱり今も…

って、えぇ!?

 

「だからほら!そんな顔しないの!

せっかく私に似た可愛い顔してるんだから!

ほら!私を見習って、にーっと笑いなさい!」

 

「わ、わかった、わかったわよ!」

 

あたしが顔を真っ赤にしながらそう言うとリオノールは満足そうに笑った。

 

「うんうん、やっぱりリーンちゃん可愛いわねー。

ダストが夢中になっちゃうのも納得だわ。

ねえねえ、私は話したんだからさ、今度はリーンちゃんがダストのことどう思ってるのか話してよ。」

 

なんというか… 凄くグイグイ来るわねこのお姫様…

ダストが手玉に取られてた理由がわかった気がするわね…

恥ずかしいけど… しょうがないか、リオノールだって話してくれたんだしね。

 

「ダストのことは… す… 嫌いじゃないわよ!」

 

…やっぱり断言は出来そうにない。

好き と言おうとした瞬間、全身の血液が沸騰したんじゃないかってぐらい全身が熱くなった。

 

「またまたー

そんなツンデレみたいなこと言わなくってもいいわよ? なんたって王女様は全部お見通しなんだからさ!」

 

これは… 覚悟を決めるしか無さそうだ…

 

「ダストのことは… 好きよ…

自分でもいつからかなんてわからないけどね。」

 

うぅ… 穴があったら入りたい…

なんでこんな目に遭うのよ…

 

「うんうん! やっぱりリーンちゃん可愛い!ダストなんかには勿体ないぐらいだわ。

それでそれで、ダストのどこを好きになったのよ?」

 

…もう開き直るしかないか。

 

「最初はただのどうしようも無いチンピラだと思っていたわ… 直ぐに問題起こして捕まるし、借金は作ってくるし。」

 

あたしの言葉をリオノールは真面目な顔で聞いていた。

 

「でも、いざ冒険に出れば、あたしの事を何かと守ってくれて…

多分、あたしの見た目がリオノールに似てたからほっとけなかったんだと思うけど…

でね、その時のダストは普段のチンピラじみた姿からはかけ離れたような底知れない何かを感じて、不覚にもカッコイイって思っちゃったのよね。

その時ぐらいからダストの隠している何かを、あたしを助けてくれた時の底知れない何かを知りたいと思うようになったの。

今思えば、その頃からあたしはダストのことが好きだったのかもしれない…」

 

ここまで話してリオノールの方を見ると、リオノールは続きを促すような目で見つめてきた。

 

「それでね、しばらくして、ロリコン貴族に雇われたロリコン盗賊団にあたしが狙われる事があったの。

その時のダストは色々やらかして別行動をしてたんだけど、あたしが危ないと知って駆けつけてくれた。

そしてロリコン盗賊団を撃退してくれた。

 

その日の夜、ロリコン貴族が雇ったプロの仕事人みたいな人が襲ってきて、その人とダストの闘う姿を見ることができたの。

 

…まあダストはあたし達に見られたくなくて、あたし達が寝静まってからそいつを誘き出したんだけどね。

 

そこで初めて、ダストが槍を使う姿を見たの。

その時のダストは、普段のチンピラな雰囲気とも剣士の雰囲気とも違う、まるで騎士みたいな雰囲気を醸し出していて…

あたしはそれを見て、ダストの過去を知りたいと強く思ったわ。

そしてそれと同時にダストのことが好きなんだと実感したの。」

 

ここまで話して、あたしは自分が今までにないぐらいの笑顔になっていることに気がついた。

 

黙って話を聞いてくれていたリオノールは「そっか… 槍を使ったのか…」と小さな… ほんとに小さな声で寂しそうに呟いた。

そして突然笑顔になったかと思うと

 

「うん! 可愛い可愛いリーンちゃんにこんなにも想われて、ダストも幸せ者ね!

でもそんなに想っているならどうして付き合わなかったのよ?さっさと告っちゃえば良かったじゃない。」

 

と心底疑問といった調子で尋ねてきた。

 

そんなリオノールの言葉を聞いて、あたしはまた表情を曇らせた。

 

「だって… ダストはあの英雄譚に出てくるドラゴンナイト本人で、アクセルの街を魔王軍から守った英雄で、ブライドル王国の元貴族で…

 

それに比べてあたしは英雄でもないし、地位もない…

紅魔族でもないしアークウィザードでもない上に上級魔法も使いこなせない…

こんなあたしじゃダストの隣に立つ資格なんてないんじゃないかって…

リオノールやゆんゆんのほうがダストにお似合いなんじゃないかって…

ダストはあたしのことなんか見てくれてないんじゃないかって…

そんなことを考えると本当に怖くて… 今の関係を手離したくないの…」

 

気がついたらあたしの頬には涙が伝っていた。

 

そしてリオノール姫が心配するような、それでいて呆れたような顔をして、

 

「バカねぇ、ひとついいことを教えてあげるわ。」

 

と言ってきた。

 

なんだろう、とあたしが考えていると、

 

「ダストは今、剣を使ってないのよね?」

 

ダストは魔王討伐に向かうカズマに剣を渡していた。

帰ってきたカズマはダストに剣を返そうとしたんだけど、ダストが

「それはお前がロリっ子を守るために使え」

って言って押し付けていたはずだ。

 

あたしがリオノールの言葉に無言で頷くと、リオノール満足そうに続けた。

 

「なら大丈夫よ!

あの剣は元々私がラインに渡したものなの。

そしてそのときに『私か、私以外のあなたが本当に守りたい人以外には槍じゃなくてこの剣で戦いなさい』って言ってあるの。」

 

その事実を初めて知ったあたしが驚いているのを知って知らずかリオノールは更に続ける。

 

「現にダストはずっと槍は使ってなかったんでしょう?

でも今はリーンちゃんの為に槍を使っている。

これはリーンちゃんのことを私以上に大切な人だって認めてる証なのよ。」

 

そして突然立ち上がったリオノールはおもむろにカーテンへと近づくと、

 

「そうでしょう?ダスト。」

 

と言って笑いながらカーテンを開け放った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

<ダスト視点>

 

「ダストさんに手紙が届いてますよ。」

 

俺がギルドへ顔を出すと、ルナがそんなことを言いながら一通の手紙を差し出してきた。

 

「ありがとよ、それでこれは誰からなんだ?」

 

「それがよく分からないのですよ。

気がついたらギルドのカウンターにそれが置かれていまして。

誰も気づかないなんて不思議なこともあるものですね。」

 

そう言いながら立ち去ったルナの後ろ姿を目で追いかけながら手紙に目を落とした。

 

「しっかし誰からなんだよこれ。

…ん? 裏になにか書いて…」

 

"ダスト様へ"そう書かれた文字をみた瞬間、身体中の毛が逆立つのを感じた。

忘れるわけが無い。この筆跡はリオノール姫のものだ。

 

俺は動揺を悟られないようにギルドを出ると、早足で自分の宿へと向かった。

 

「いったいあの人妻姫が俺に何の用だって言うんだよ…」

 

部屋についた俺は慎重に封筒を開けた。

 

『親愛なるダスト様

魔王も討伐され平和になった今日この頃 いかがお過ごしですか?

 

…なーんてねっ!

魔王が討伐されたお陰で国全体がバタバタしたから結婚が延期になったのよ。

暇だから城まで遊びに来なさい。

お父様には話をつけてあるから国外追放の件もフェイトフォーちゃんの事も大丈夫だから安心してちょうだい。

来るのはフェイトフォーちゃんに乗れば簡単よね?

というわけで1週間後の10時ごろに城で待ってるわ。

 

それと、断ったりしたらこの写真をリーンちゃんに見せるからね。』

 

「この写真?」

 

手紙を読んだことで生じためまいに耐えながらもリオノール姫のいう写真を確認すると…

 

そこには裸のリオノール姫と上半身裸の俺がベットに横たわる写真が入っていた。

 

「ひぃぃぃめぇぇええええ!!!!!!」

 

やられた!

あの姫様のことだ、魔道カメラを使って状況証拠の確保ぐらいはやっていて当然だ。

しかし自分一人で起用に撮ったものだと怒りを通り越して感心する。

 

「はぁ… こんなものをリーンに見られる訳にもいかないし、城に行くしかないか…」

 

俺はそう呟くとやけくそ気味にベットに飛び込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1週間後の朝、俺はフェイトフォーに乗りブライドル王国へと飛んだ。

 

久しぶりに立ち入る母国は当時と余り変わらないように見えた。

 

王の許しがあるとはいえ、国民に騒がれたら面倒なので帽子を目深に被る。

 

…着いた。 本当に… 本当に久しぶりの王城だ。

 

俺は帽子を外すと門番をしていた後輩に挨拶をした。

 

「お久しぶりです。

リオノール姫より招集されたのですが門を開けていただけますか?」

 

…この口調も今や使いにくいものとなった。

自分でも使っていて寒気がしてくる。

 

「はい、王からお聞きしています。

それではライン先輩、こちらへどうぞ。」

 

「ありがとう。

それとおr… 私はもうラインではなくダストです。

先輩でもなんでもないのですから畏まらなくても大丈夫ですよ。」

 

「何を言うのですか!

先輩はいつまでも私の誇れる先輩です!!

それではこれからはダスト先輩と呼ばせていただきます。」

 

そう食い気味に言われてしまっては訂正する気も失せるというものだ。

仕方が無いので後輩と別れ、門をくぐることにした。

 

「お久しぶりですダスト様。

さあこちらへどうぞ、姫様がお待ちです。」

 

すると執事長が俺を出迎えに来た。軽く挨拶をして後ろをついていく。

 

「この中で姫様がお待ちです。」

 

執事長が開けた扉の中に入る。

 

「よく来たわね!ダスト!!

さあさあこっちに座りなさい!」

 

するとそこにはあの頃と全く変わらないテンションのリオノール姫が椅子に座って待っていた。

 

「わかりました。

お久しぶですね、姫。

お変わりありませんでしたか?」

 

俺がそう尋ねるとリオノール姫は明らかに期限を悪くして、

 

「もう私の騎士じゃないんだからその口調は止めてって言ったでしょ。

それに私のことはリオノールって呼んで。」

 

俺がどうしたものかと判断に困っていると執事長がそっと耳打ちしてきた。

 

「姫様の言う通りにしてあげてください。

我々もそれを咎めせんので。」

 

…なら俺は"ダスト"として振る舞うとするか。

 

「分かったよリオノール」

 

俺がそう応えるとリオノールは目に見えて上機嫌になった。

 

「それで今日俺を呼んだのはなんなんだよ。」

 

「あ、そうそう、それなんだけどね。

リーンちゃんとはどうなのよ?いい加減、やっちゃった?」

 

「ガッ ゴホッゴホッ

な、何を言うんですか!」

 

全くこの人は本当に…

 

「ほらほら口調が戻ってるわよ。

でもその反応はもしかしてまだなの? 私の調べではアクセルで2番目のバカップルだって聞いてるんだけど。」

 

また勝手に調べやがって…

てかアクセル2番目ってなんだよ…

1番目は絶対にあいつら(親友とロリっ子)じゃねぇか…

 

「大きなお世話だ、

てかなんだ、そんなことを言うために俺をわざわざ城まで呼んだのか?」

 

「そんなこととは何よ!乙女からしたら超重要なことなんだからね!

でもダスト、あなたもう剣を使ってないじゃない、なのになんでリーンちゃんに告ってないのよ。」

 

ほんと大きなお世話だ。

しかしこうなったリオノールはこっちが折れるまで引き下がらない、その事は身に染みてわかっている。

 

「そんなの決まってるだろ。

俺なんかにはリーンは勿体ないってことだよ。」

 

俺がそう言うとリオノールが目で続きを促してきた。

 

「よく考えてみろよ。

今の俺はただの中堅冒険者だ、借金も作るし警察にも捕まる、オマケに家がないから身元を証明できない、こんなやつにはリーンは勿体ないって話よ。」

 

俺の言葉を聞いてリオノールは不満げな顔を作る。

 

「じゃあ何、リーンちゃんのことはなんとも思ってないとでも言うの?

あたしの剣を手放したんだからそれなりに思っているはずよね?」

 

これは最後まで付き合うしかないか。

 

「そんなはずがないだろ。

俺にとってのリーンは槍を使って守りたい大事なやつだ。

だからこそ俺なんかのために不幸になって欲しくないんだよ。」

 

「じゃああんたはリーンちゃんのことが好きなのよね?」

 

くっ… これは言うしかないのか…

 

「ああそうだよ、この世の何よりも好きだ。

本当のことをいえば、リーンが他の男と話してるだけで気が狂いそうなほど嫉妬する。

でも俺にはあいつを幸せにする力がない。 だから今のままでいいんだよ。」

 

俺がしみじみとそういったところでリオノールが黒い笑みを浮かべた。

 

「よし、これで言質はとれたわね。

もうやっちゃっていいわよ。」

 

…は?

何が起きたのかを俺が理解するよりも早く、俺の体にワイヤーがキツく巻きついた。

 

「失礼します、ダスト様。」

 

気がつくとすぐ横に見覚えのあるメイドが1人立っていた。

 

「お、お前は確かあの時の…」

 

「はい、元盗賊にしてリオノール様専属メイドをしている者でございます。

この度は無礼をお許しくださいませ。」

 

俺が説明しろとばかりにリオノールを見ると、リオノールは黒い笑みを浮かべたまま、

 

「ちょっと大人しくしててもらうわね〜

『サイレント』」

 

俺は縛られたままカーテンの後ろに待機させられた。

 

すると執事長が別の客を連れてきたのか話し声が聞こえてきた。

 

『初めまして。

あたしがこのブライドル王国の第1王女ことリオノールでございます。

リーン様、この度は遠路はるばるようこそお越しくださいました。』

 

こんな状況になるとかえって冷静になるもので、あの人の猫被りの上手さに改めて感心した。

 

『なーんてねっ!

身代わりになってもらった時はありがとうね!

それとここではいつも通りの口調で構わないし、あたしのことはリオノールと呼んでくれていいわよ!!』

 

身代わりになってもらった時…?

なんだか凄く嫌な予感がするんだが…

いや、あの人ならやりかねない。

 

『わかったわよ…

それで、リオノールはどうしてあたしを城に呼んだの?』

 

終わった。

リオノールの企みこそ読めないが、このカーテンの向こうにいるのはどうやらリーンらしい。

 

『ああそれはね、リーンちゃんに代わってもらったときに"報酬はダストの昔の話をする"って約束したのにその約束をまだ果たしてないじゃない?

だからその約束を果たそうと思って呼んだの!』

 

…? それなら俺に聞かせる必要なくないか?

相変わらずリオノールの考えはよく分からない。

とりあえずしばらく様子を伺うとするか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『こんなあたしじゃダストの隣に立つ資格なんてないんじゃないかって…

リオノールやゆんゆんのほうがダストにお似合いなんじゃないかって…

ダストはあたしのことなんか見てくれてないんじゃないかって…

そんなことを考えると本当に怖くて… 今の関係を手離したくないの…』

 

リーンのそんな言葉を聞いて俺は自分のことを情けなく感じていた。

リーンのことを大事に思うあまりリーンのことを傷つけてしまっていたらしい。

 

俺が自責の念に囚われていると、リオノールの気配が近づいてきた。

 

『そうでしょう?ダスト?』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

<リーン視点>

 

リオノールが開けたカーテンの裏には、何故か縛られたダストが立っていた。

 

リオノールはダストに巻かれたワイヤーを切ると、ダストをあたしの方へと突き飛ばした。

 

「ちょ、何のつもりだよリオノール!」

 

「それはねー、

私があなた達のことを調べてみたらお互いに拗らせてめんどくさい事になってたからさ、ここは私が一肌脱ぐしかないと思ったのよね。」

 

ダストとリオノールのやり取りを見ながら、あたしは状況を理解しようと現実逃避しようとする頭を必死に働かせていた。

 

「と、言うわけでダスト、

私とリーンちゃんの話はそこで聞いてたでしょう?

ちゃんとあんたの口からまた槍を使うようになった理由を話してあげなさい。」

 

しばらく2人きりにしてあげるから。

そう言い残してリオノールは部屋を出ていった。

 

え…? ちょっと!

今こんな状況でダストと2人きりにされたら色々と困るわよ!

いったいあたしはどうしたらいいのよ…

 

あたしが慌てているとダストがあたしの前にやってきた。

 

「リーン、すまん。」

 

あたしは一体なんのことか分からなかった。

 

「俺は… 俺なんかじゃリーンには釣り合わないと思っていたんだ。

だから身を引こうと思っていた。」

 

「でも、その結果としてリーンを傷つけちまった。

だから俺は、今からその責任をとろうとおもう。」

 

そう言うと、ダストは意を決したように深く息を吸い込んだ。

 

「リーン!好きだ!付き合ってくれ!!

チンピラで家もない、こんなどうしようもない俺だけど俺の姫はお前なんだ!リーン!!」

 

言い切ったダストはいつかのようにあたしに手を差し伸べてきた。

 

あの時は恥ずかしくて取れなかった手にあたしは飛びついた。

 

「あたしこそ… あたしなんかじゃ今のダストには相応しくないと思ってた。

でもあたしも… あたしもダストのことが好きなの!」

 

あたしの頬にはまた涙が伝っていた。

でもこの涙はさっき流した涙とは違う。

 

釣り合わないなら釣り合うよう頑張ればいい。

そうやってダストの隣りにたち続ければいい。

 

あたしはそんなことを考えながら幸せを噛み締めた。




ここまでお付き合いしてくださった皆様方 本当にありがとうございます。

リーンちゃんとリオノール姫って結局顔を合わせなかったんだよなー って発想から生まれたこの話でしたがいかがだったでしょうか。

それではまた次回もよろしくお願い致します。
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