GATE 不屈の艦 彼の地にて斯く戦えり 作:aroma moko
炎龍がコダ村避難民を襲撃する少し前…
UNSC海軍 スピリットオブファイア所属
レッドチーム ジェローム.ダグラス.アリス
コールサイン:シエラ092.シエラ042.シエラ130
現在位置.....不明
現在時刻...世界標準時.13:34
作戦目標:未確認惑星の捜索
全身を緑の装甲に覆われた長身の兵士達はワートホグと呼ばれる車両に乗り、
眼下に広がる避難民の列を眺めていた。
この未確認惑星に我々が出現してから3時間で周囲に偵察を出し、我々が
初めて遭遇した生物は…人間だった
『レッドチーム、応答を』
スーツのCOMリンクから現在全ての指示を出している人物。スピリットオブファイア艦長のジェームズ・G・カッター艦長が問いかけてくる。
「こちらレッドチーム、シエラ092」
『ジェロームか、至急報告したい事があると聞いたが』
「はい…HUDの映像を送信します」
口で伝えるよりも、現在の状況を映像で伝える方が速い、すぐにHUDに映っている光景をSoFに送信する。
『……人間か?』
「はい、どうしましょうか。接触しますか?観察しますか?」
『ふむ』
しばらくどうするのかを考えていたようだったが答えを決め、口を開こうとした瞬間。チーム間の無線にアリスから警告が入った。
『接触しろ、そして「ジェローム!方位217より未確認生物接近!大きい!」』
艦長との通信を一時遮断し、周囲を確認する。ヘルメットに内蔵されているズーム機能を使い確認する。
「あれは…」
赤い巨大な身体、大きく羽ばたいている翼、長く鋭い尻尾…ドラゴン現実には存在しない架空の生物が目の前で飛翔していた。
「いつから俺たちはファンタジー小説の中に入ったんだ?あんな生き物どこのアウターコロニーに居るってんだ」
運転席に座るダグラスが茶化す様にドラゴンを指差す。その間もドラゴンは目下に居る避難民達に近づき火炎や尻尾などで破壊と虐殺の限りを尽くしていた。
「どうするリーダー?射程内よ、何時でも射撃できる」
銃座に立ちガトリングを構えているアリスが銃座を指向し聞いてくる。
「射撃は待て、艦長に指示を仰ぐ……艦長」
『突如通信が途絶えたが、状況を説明しろ』
「問題発生です。先程報告した民間人の車列に現地生物の飛行生物が攻撃を開始、現地の警備部隊を交戦状態に入っています。』
『…状況は分かった、すぐに民間人の保護と現地部隊の救援を行え、こちらも艦と援軍を向かわせる』
『援軍のETAは?』
『…6分、艦は25分だ』
「了解、民間人の保護と現地部隊に対する救援を行います…アリス、ダグラス行くぞ」
HUDの左上にある2人の状況ライトが2回点滅し、ダグラスはエンジンを、アリスはガトリングの安全装置を外す。準備は万端だ。
「行くぞ」
この声が合図となり崖をワートホグが駆け降りていく。下手をすれば空中に放り出される様な揺れの中、ダグラスは非常に安定した運転で崖を下り降りてすぐさま降りきった。
「アリス、射撃開始。民間人に当てるなよ」
「当たり前でしょ、射撃開始!」
モーター音を響かせながら12.7mmの弾丸をドラゴンに向けて叩きつけていく。装填されているのはシュレッダー弾と言われる弾薬で、非装甲目標を一瞬で切り裂く程の威力を秘めているにもかかわらず、ドラゴンの装甲は全ての弾丸弾き続けている。
自らが手に持つライフルも射撃するが、一切装甲を貫徹する様子はない。
隣を疾走している現地部隊の車両も射撃しているが有効打は見受けられない。
しかしそれで良い、向こうの指揮官も同じ考えなのかどうかは知らないが、我々が発砲し続ける限り、あのドラゴンはこっちを狙う筈だ。ならば民間人の保護に繋がる。
「アリス、そのまま撃ち続けろ、ダグラスは民間人を轢かないように注意しつつドラゴンの周りを走れ、俺は教授に映像を送信する。」
『了解』
ヘルメットの視界をそのままスピリットオブファイアに送信して20秒程経った時、視界の左上に女性の姿が現れた。
『映像を確認しているわ…学者としては研究したいけど、それどころじゃ無い
のは分かってる、こちらから分析できた事を情報として送るわね』
すぐにHUDに推測されたデータが送られてきた、それを他の2人に添付する。
…軽く目を通したが、現有の装備で殺し切るのは少々難しそうだ。
『私はまだ分析を続けるからまた何かわかったら知らせるわ』
教授から送られたデータをざっと見た限りだと、コヴナント軍のスカラベが
空を飛ぶ様なモノだった。
だが倒せるはずだ、相手は生物なのだから。
我々に出来ることは時間を稼ぎスピリットオブファイアの火力で敵を倒すことだけだ。あのサイズの生物でもアーチャーミサイルを食らえばタダでは済まない筈だ。
それに、まだ最大火力という訳でもない。このワートホグの各所に設けられたアクセスポイントにはM41ロケットランチャーが設置されている。車両が破壊された場合はこれを持って戦う。
ハンドルを右に切り、ドラゴンと正対すると同時に目の前に民間人の馬車が入り込んできた
「ッ!回避!」
「分かってる!!」
ダグラスは急いでブレーキを踏み急停止し、馬車を通した、そしてまた急発進した。急減速と急発進で身体が前後に激しく揺れるが問題はない。
が、止まったのが不味かったらしい。ドラゴンはこちらに向けて火炎を放っていた。一気に視界を覆う炎、一瞬の抵抗のうちに掻き消えるシールド…だがそれだけだ。ヘルメット内のHUDには300℃と出ているが、アーマー内部のジェル層がスーツの温度を保つ上に、アーマーの装甲はこの程度の熱では溶けない。
しかし、我々のアーマーが耐えられてもワートホグの方が耐えられなかった。フロントガラスはドロドロに溶け消え、エンジンは火を噴き出しコンソールは映らなくなった。
車両の状態を確認してすぐにアクセスポイントからランチャーを取り出し車外に飛び出る。我々が耐えられても車両が保たない、全員が同じ事を思い同時に飛び出した。
強く座席を蹴り飛び出した為、大きく転がる事になってしまったが。身体もスーツも武器も異常は無い。火達磨になったワートホグには目もくれず走り出す。
「俺は脚を撃つ」
『なら私は胴体』
『俺は頭部を』
HUD上部のシールド残量計がフルに貯まるのを待ち、攻撃を開始する。攻撃を合図したわけではないが、同時に射出されたロケット弾は狙い通りに飛翔する
このまま直進すれば命中する…筈だった。後方より投擲されたハルバードが地面に深く突き刺さり、辺り一面が陥没し。ドラゴンが体制を大きく崩したのだ。結果アリスの放った1発が翼膜、現地勢力のランチャー1発が左腕に被弾し左腕の欠損、翼膜に損傷を受けただけだった。
炎龍は大きな咆哮をあげ飛び去り。辺りには今までと違い静寂が訪れた。
『…こちらのレーダーで巨大な反応がそちらの地点から離れていくのを確認した、ご苦労だった。現在そちらに艦を向けているが、到着には20分かかる、増援部隊はあと3分で到着する』
「了解、LZを確保しておきます、ダグラス着陸地点の確保を頼む。アリスはワートホグから使える武装を回収して周辺の警戒を頼む。俺は上空を警戒する。」
「了解…使えるものなんて残ってるかしら?」
「頼むぜアリス。今の俺たちは武器なしだからな」
「はいはい」
しばらく周囲の上空を警戒していると、HUD左下のモーショントラッカーに
近付いてくる光点が3つ表示された。そちらに顔を向けると、現地部隊の兵士達が接近してきていた。
こちらも接触する為に近付いていく。そしてこちらが相手の顔を視認できる距離まで接近した時、相手が口を開いた。
「あー、自分は陸上自衛隊第3偵察隊隊長、伊丹耀司二等陸尉です、そちらの官姓名は?」
…驚いたな…自分の記憶が正しければ…日本語?だったか。ディジャに教わった事がある。
「UNSC海軍 スピリットオブファイア所属のレッドチームリーダーのジェローム092だ」
しかし…陸上自衛隊とは聞いたことのない部隊だな…アウターコロニーの
自警団か?なんにせよ、助かった。急ぎ地球か、リーチに帰還し、あの脅威を伝えなければならん。
「申し訳ありませんが我々はUNSCという組織を聞いた事がありませんが…」
「…すまないが何を言っているのか分からない、我々は急ぎリーチか地球に帰還し司令部に伝えなければならない情報があるんだ」
こちらの事情を説明しても目の前の男達はハッキリしない態度を取っている。先ほど名乗ったイタミと言う男が背後にいる部下達に何事かを聞いているが首を捻っている。
「UNSCってなんだ?」
「分かりません…UNとついているって事は国連関係なんでしょうが…門の向こうに国連関係者が入ったなんて聞いてませんよ」
「第1、門の向こう側って日本政府が独占中でしょ?外国の組織が入ってるって相当ヤバいんじゃ…」
耳を寄せ合って話し合っていたようだが、集音マイクで全て聞こえていた。
しかしどう言う事だ?どんなアウターコロニーでも統治組織の名前ぐらいは知っている筈だ。
「ダグラス、状況をカッター艦長へ伝えろ、妙な事になってきた」
『了解』
「アリス、アンダース教授に頼んでUNSCのデータベースに陸上自衛隊の記述がないか調べてもらってくれ」
『わかったわ』
「分かった、イタミ…二等陸尉とはどの程度の階級なのだ?」
突然話しかけると余程驚いたのか飛び上がりながらこちらに振り返る。
「へっ?……あ、あぁ。中尉です」
二等陸尉は中尉か
「では伊丹中尉、もうすぐ我々の仲間も到着する、到着次第情報を交換したい」
「…あー…訳分からん……くそ、わかりました、上に報告してみます」
伊丹中尉は胸元の無線機を握り
「おやっさん?ちょっと訳がわからないんだけど、国連の組織と遭遇しちゃったみたいでさぁ…そう…お願いします…」
イタミ中尉は無線機から手を離し次第大きなため息を吐いた。
『こちらキロ7-4、シエラ092着陸地点を指示してくれ』
「シエラ042のマーカーの位置だ」
『了解した』
空から重厚で静かなエンジン音が聞こえ、そちらに顔を向けると見慣れた降下艇が地表に向かって降下してきていた。
地面に機体が触れるか触れないかの所で機体が停止し、後部ランプから海兵隊…ではなくODSTが飛び出して来た。全身を黒い装備で固められた彼等は周囲に散らばり、周辺を警戒していた。さらに、後部ランプから降りて来た人物に対して俺は反射的に敬礼していた。
「大丈夫か?キャプテン・ジェローム」
「何も問題ありません、カッター艦長」
我々の母艦であるスピリットオブファイアの艦長が降り立っていた。
『ODST』
「Orbital Drop Shock Troopers」の頭文字を取った略称。
編成はSPARTANーⅡ達よりも昔で歴史も長く元々人類に統一された政府が誕生した事で各国特殊部隊をまとめて再編成した経緯がある。
ジェームズ・グレゴリー・カッター
スピリット・オブ・ファイアの艦長。
ジェームズ・グレゴリー・カッター艦長は軍の伝統と規律を重んじる指揮官だが、その一方で部下への配慮も欠かさない。
UNSCが誇る英雄の1人であるカッター艦長は、長く、輝かしい軍歴を誇るが、昇進よりも艦や乗員とともにあることを優先している。彼にとって乗員は部下というよりも家族に近く、その思いは乗員にも伝わっており、艦長の人間性とその決断には全員が絶大な信頼を寄せている。
エレン・アンダース教授
聡明にして恐れを知らない科学者。
エレン・アンダース教授は、スピリット・オブ・ファイアにとってなくてはならない人材である。専門は、地球外生命体の生態心理学から高エネルギー物理学までと、実に幅広い。フォアランナーのテクノロジーにも精通し、その制御システムを巧みに操作する様子はイザベルでさえ目を丸くするほどだ。
艦内での公式な立場はあくまでも「民間人コンサルタント」だが、実際はカッター艦長の右腕兼アドバイザーであり、戦場で彼女と苦楽を共にする兵士たちからも深い信頼を寄せられている。
アリス-130
アリスは、2511年頃に生まれた。彼女の遺伝子構造に、海軍情報局 とハルゼイ博士 は目をつけた。2517年にスパルタン-II計画 にふさわしい候補者として選ばれた後、彼女は誘拐され、リーチに送られた。そして彼女は特別訓練により、兵士となったのである。2525年、彼女と他の候補者達は 一連の強化措置を受けた。この処置で彼女は死亡することも身体障害もなく生き延びたのであった。
ダグラス-042
2517年,ダグラス-042は6歳の時に,キャサリン・ハルゼイ博士のスパルタンⅡ計画のために,誘拐・徴兵された。その後,人類の植民地であるリーチに連れて行かれ,他のスパルタン・チルドレンと共に,AIデジャとメンデス上級兵曹によって訓練を受ける。2525年,彼と他の候補者たちは能力を増強させる一連の措置を施される。その処置で,ダグラスは死ぬことも活動不能にもならず,生き残った。
スピリットオブファイア
ゲーム『HALO』シリーズに登場する架空の宇宙艦艇。UNSC所属のフェニックス級コロニー船の改造艦艇。 艦艇の登録コードは【CFV-88】 2473年に建造された旧式艦艇を海軍が徴用し武装を施し運用されている。 改修後は強襲揚陸艦として2531年頃ジェームズ・カーター大佐の指揮下でアルカディア攻防戦に参加後突如スリップスペースへ突入し人員を含めて2534年頃M.I.Aに登録された。継続戦闘能力が極めて高い。 格納庫の数でも事前に大量の兵器を搭載していたのが原因ではなくこの艦艇には設計図さえあれば独自に兵器を生産しさらにアップグレードやある程度なら新規開発も可能な兵器工場が存在する。 つまり艦艇が生き残り工場が無事なら資材と運用できる人員さえいれば延々と兵器を生産し続け戦う事を可能としている。
搭載されている既存の兵器も随時アップデートが繰り返され2531年までに生産された物でも常に最新型と見劣りしない物へと変貌させている。 ただしこの工場で生産した物はUNSCやメーカー純正とは言えないので異なる点が存在しいくつかの機能を省いたり手直しする事もある。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
評価、及び感想を下さった皆様、ありがとうございます!
大変励みになりますのでいっぱいください!
次回はUNSC側と陸上自衛隊幹部側との交流に
なります、次回をお楽しみに!