剣心は黒死牟の長刀に視線を送る。その長刀は歪な形をしており釜の様にも見える命を刈り取る釜の様に静かに警戒を強めて行く。
「月の呼吸、漆ノ型、厄鏡・月映え」
複数の斬撃が地を這いながら剣心へと迫る。更に、その斬撃にも殺傷力のある細かな斬撃が伴っている。
「龍の呼吸、陸ノ型、土龍閃」
剣心もまた地を這う斬撃を飛ばし相殺させ黒死牟との距離を詰めようとする。
(長刀ならば普通振るう速度は僅かではあるが落ちるものだ。だがこいつの場合は速度が上がっている)
「月の呼吸、捌ノ型、月龍輪尾」
「龍の呼吸、漆ノ型、龍巻閃・凩」
黒死牟が放つ横薙ぎの一閃、そこから産み出される壱ノ型とは比にならない範囲で剣心へと放つ。剣心は回転速度を上げそのまま斬撃を放ちながら距離を更に詰める。
「流石だ………………怯む事無く即座に距離を詰めてくる」
「刀は振らせん、龍の呼吸、伍ノ型、龍巣閃」
連続で斬撃を放つが全てを長刀を上手く使い防ぐ。
「距離を詰めすぎだ……………月の呼吸、拾ノ型、穿面斬・蘿月」
回転鋸の様な歪な形状の斬撃を複数横に並べて放ち、剣心は即座に上空へと翔ぶ。
「かかったな…………………………月の呼吸、捌ノ型、月龍輪尾」
上空へと翔ばせる事が黒死牟の狙いだった、空中では普通は回避する方法は無いからだ。
「龍の呼吸、拾ノ型、疾空龍頭閃」
剣心は全身の力と刀の遠心力を上手く使い空中ではあるが、その場から加速し黒死牟の間合いを詰め左肩を斬り落とし返す刀で頸を狙うも惜しくも避けられてしまう。
「どうした?その長刀は見せかけか?」
「くだらん………挑発だ……………月の呼吸、拾参ノ型、偃月・暁月夜」
半月状の斬撃を複数個剣心に向かって放つが、剣心は軌道を即座に見切り躱しながら再度前進する。
無一郎と玄弥は離れた所で、固唾を飲んで剣心と黒死牟との闘いを見守っていた。
「どっちも凄すぎてやべぇ」
「剣心が負けるもんか、悔しいよね今俺達が行っても邪魔にしかならない」
「無一郎さん、見守りましょうそれしかねぇよ俺達が出来る事は」
三度剣心は黒死牟との間合いを詰めながら、斬撃を躱して行き黒死牟の一瞬の隙を付く。
「龍の呼吸、拾壱ノ型、戦乱龍撃閃」
加速した状態で技を放ち剣心の刀が黒死牟に届こうとしていた。
黒死牟はこの一瞬にも満たない状況の中で、ある夜の事を思い出していた。
赤い月が空に浮かぶ夜黒死牟は信じられぬ物を見た。
「馬鹿な………………何故お前が生きている?…………………痣を持っている者は死ぬ筈……………」
「お労しや兄上」
かつて弟だった存在は俺を見て静かに涙を流していた、俺はかつての憎悪が一気に爆発し涙を流す弟に有無を言わさず斬りかかろうとした、だが。
「参る」
弟はそう静かに言うと俺の視界から消えた、瞬間俺の頸は斬られた反応すら出来なかった頸は本の僅か繋がっている状態だった弟が次に動けば確実に殺されるだが次の斬撃は来なかった弟は立ったまま死んでいた。
この鬼狩りの歴史で最も優れた剣士が死んだ今誇り高い死が来ることは無いその筈だった。
(この男もまた今私の頸を斬ろうとしている、もう二度とあんな屈辱はごめんだ)
黒死牟は雄叫びを上げると同時に脇腹から歪な斬撃を放つ。剣心は不意を付かれ腕と脇腹を斬られる。
(何だ?予想外の所から、斬撃が飛んできた?)
剣心は黒死牟へ視線を再び向けると、腕が何と六本になっていた。
人は命の危機が迫ると信じられない力を発揮する事がある、それは鬼もまた同じ鬼も元は人間だだからこそ鬼もまた信じらない力を発揮する。
「鬼は人間だったんだから、か」
剣心は炭治郎が言っていた言葉を思い出していた。
指揮をとっている輝利哉達は鴉をとうして剣心と黒死牟との闘いを見守っているが、全員顔は青ざめているその中くいなは輝利哉に声をかける。
「お館様どうされますか?援軍を向かわせますか?」
それにひなきも続く。
「我妻様、悲鳴嶼様が行けます。竈門様、冨岡様は雑魚鬼との戦闘中で、後は胡蝶様は不死川様の手当てをしている為動くのは難しく伊黒様と甘露寺様は上弦の肆と交戦中です」
二人の言葉を聞き輝利哉は顔を上げる、その表情は何かを決心した表情をしている。
「援軍はいい他の柱達は無惨の元へそれに上弦の壱を相手どれるのは鬼殺隊全体を見ても剣心しかいない」
輝利哉の話しを聞き頷く四人。
「私は剣心そして無一郎、玄弥が必ず上弦の壱を倒すと信じる」
「月の呼吸、拾陸ノ型、月虹・片割れ月」
六本の腕を振り下ろし無数の斬撃の柱を大広間全体に向かって放つ、剣心は技の隙間を見抜き辛うじて躱す。
(頸を狙うどころではないな攻撃を躱すのがやっとだ)
「私は………………………負けぬ!月の呼吸、拾漆ノ型、月暈・月宮殿」
(!)
黒死牟の放つ斬撃は無限城全体へと被害は及ぼして行く。
無惨の元へと急ぐ善逸と悲鳴嶼。
「行冥さん何か城全体が揺れてないですか?」
「嗚呼そのようだ善逸よ其処で止まれ」
「え?」
善逸が足を止めたと同時に目の前を斬撃が通り過ぎて行く。
「え?何なの?今の?俺死ぬの?」
「落ち着け善逸よ、恐らく緋村と上弦の壱との死闘の余波だろう」
「上弦の壱」
「急ぐぞ善逸」
「はい!」
斬撃が剣心に迫る瞬間柱が飛んできたその方向へ視線を向けると、玄弥が投げているのがわかった。
「野暮な事は言わないで下さいよ?、仲間がピンチ誰だって助けに行きますよ」
「玄弥、ありがとう」
剣心は玄弥に礼を言うと柱の上へと上がる。上へ上がると無一郎が黒死牟の懐へと入ろうとしていた。
(俺がほんの僅かでも隙を作れば剣心なら必ず)
「無一郎!!」
だが黒死牟はそうこちらが動くと読んでいた。
「一人が……………捨て身で突っ込んで来るのは必然………………さらば我が末裔」
「間に合え!」
「月の呼吸、拾伍ノ型、無月・回転千月」
体を回転させ竜巻を作り無一郎は竜巻によって上空へと打ち上げられ体を斬リ刻まれる。
(っぐ…………………………………………)
その様子を見た瞬間、剣心の中にある何かがキレた。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮と共に剣圧が黒死牟へと迫り壁へと吹き飛ばし、剣心は素早く無一郎を横抱きにし玄弥の元へと行き無一郎を預ける。
「剣心さん」
玄弥は無一郎がもう助からない事を悟ってしまった。
「剣心……………………ごめん何も出来なくて……………………信じてるから」
「あぁ玄弥と一緒に見ていてくれ終わらせてくる」
「うん」
剣心は静かに黒死牟と向かい合う。
黒死牟は気付く剣心の頬に龍の様な痣が浮かび上がっている事、そして持っている刀が赫く染まっている事に。
「貴様は………………………一体………………………」
「始めよう、黒死牟」
無一郎押しの皆様、すいません剣心を怒らせるにはこうするしかなかったので。