イーディス(主人)と臨むアンダーワールド   作:粗茶Returnees

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 過去話でロリなイーディス見たかった。


20話 現実世界

 

 意識を浮上させる。機械が置かれた部屋。極秘裏に行われているプロジェクトに関わるものだ。アンダーワールドに行くための装置。これじゃなくても行くことは可能だが、初期に関わっていた俺はこれを使ってる。

 

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 暇つぶしのためにアンダーワールドに行ったことは覚えている。ダイブ前の記憶ならある。そして今戻ってきた。だが間の記憶は一切ない。

 

「やぁおかえり。気分はどうだい?」

 

「たった今胸糞悪くなったな」

 

「それは大変だ。エチケット袋を用意させよう」

 

「いらねーよ。俺の記憶を消すってのは聞いてなかったんだが?」

 

 柳井。ラースの一員。メガネーズの1人。個人的にあまり好きじゃない男だ。無神経に俺の前でランやユウキの名前を出すからな。海面に叩き落としてやりたい。

 俺が億劫な視線を向けると、柳井はやれやれと首を振った。クソうざいな。メガネクイッまでやったら叩き割ってやる。

 

「機密情報だからね」

 

「俺が流すとでも?」

 

「無いとは思うけど念の為さ」

 

「あっそ」

 

「おやどこに行くんだい?」

 

「ヒガのバカのとこだよ」

 

 どうせ俺のログぐらいは取ってんだろ。あとお前とは会話もしたくない。吐きそうだ。その胡散臭い仮面の下から酷く腐った臭いがする。菊岡の奴、よくこんな奴を加えたな。腕だけで選ぶなよ。

 適当にぶらつき、すれ違った職員にヒガの居場所を教えてもらう。道も聞いてその通りに行き、いかにも機械オタクっぽいヒガが好きそうな部屋に入った。薄暗いんだよ照明の光度上げろ。

 

「僕のバーガーが!」

 

「腹減ったから貰った。金は菊岡の給料から引いてくれ」

 

「いろいろと最低だ! というか戻ったんすね」

 

「機密保持とかのせいで記憶はパァだけどな」

 

「へー。それでここに来たんすね」

 

「そういうこと。どうせ俺のログ取ってただろ」

 

「そうっすよ。あとキリトくんのも」

 

「キリトも来てたのか」

 

「たしか中で一度だけ接触してるっす」

 

「へー」

 

 野郎とのマッチングなんて死ぬほど興味がねぇな。キリトの情報はいらん。自分の情報だけでいい。

 ログを確認し、中での生活のほとんどを同じ箇所で過ごしていたことが発覚。全然満喫できてねぇじゃん。俺らしくない。何かあったんだろう。

 

「キリトのやつの記憶は?」

 

「もちろん消去っす。君はグレーゾーンっすけど、彼は完全に外部の人間なので」

 

「妥当だな」

 

 俺の記憶を消してキリトのは消さないってなったら話の筋が通らないからな。さてさて、あとは俺の記憶を消すように誰かが指示したのか。それとも柳井の独断なのか。そこをはっきりさせないとな。いや菊岡とかに消されるならまだ抑えるけど。

 単純な話。嫌いなやつに記憶を消されたら疑いたくなるってもんだ。

 

「俺の記憶を消すように指示したのは誰だ」

 

「さぁ。僕は何も聞いてないっすからね」

 

「菊岡に聞くのが手っ取り早いか」

 

「ちょうど今日本当に戻るって話なんで、同乗させてもらって聞くことをオススメするっす」

 

「サンキュ。そうするわ」

 

 バーガーを食べ終わり、包装紙を小さく潰してゴミ箱に捨てる。ヒガに礼を言って俺は菊岡の元へと足を運んだ。

 

 

 

 

「それで君が同乗してるわけか」

 

「どのみち一旦戻る予定だしな。行くとこあるし」

 

「……そうだね」

 

 ヘリの中に乗り込み、向かい合わせで座っている。久しぶりに感じる海を眺めながら、そこに反射される太陽光を眩しく感じる。汚れた海も増えたというのに、離れて見るとまだ青く綺麗なものだと思えてしまう。詐欺と同じか。 

 そいつに踏み込まないと見えない部分もある。人の本性なんて、離れてちゃ分からないものばかりだ。

 

「あんたに聞くことは1つだけ。俺の記憶を消すように指示したのか?」

 

「してないよ」

 

「あ?」

 

「僕以外の誰かが指示したのか。それとも独断か。機密保持のためだし、咎められるものでもない」

 

「俺は半分部外者だからか」

 

「そういうことになるね」

 

 間違ってるわけじゃない。柳井のやったことは、組織的に見ても咎められるようなことじゃない。けれど何か引っかかる。

 

「あいつ臭いんだよな」

 

「臭いは人が一番傷つくことだよ。やめてあげてくれ」

 

「そっちじゃねぇ。オタクみたいな臭いはするけどさ」

 

 こんな計画に加担してる時点で、こいつらどこかしらネジのいかれたオタクだらけだ。俺も人のことは言えないけど。たとえどれだけのデータを集めようと、ランが生き返るわけじゃない。ランなら間違いなく俺を殴り飛ばすな。赤ゲージギリギリまで滅多刺しにするかも。

 

「あれはラフコフにいた小物みたいな臭いだ」

 

「ラフコフ……たしかSAOにあったギルドの1つだったね」

 

 ラフィンコフィン。ゲーム攻略などに興味はなく、人を殺すことを楽しんでいた狂気の集団。討伐戦の時、姿を現さなかったメンバーもいたか。今もどこかで生きてるわけだ。

 

「そこのメンバーと同じ臭いか」

 

「裏を探ることをオススメする。もっとも、一回それをすり抜けて加入してる可能性もあるが」

 

「もしそうなら耳の痛い話だ」

 

 菊岡が本当にそう動くかは分からない。俺の直感でしかないし、俺が柳井を嫌ってることも知られてる。記憶を消されたことの腹いせと思われても仕方ない。

 実際腹いせもあるけどな。どん底に落としてやりたいけどな!

 

「キリトくんには会うのかい?」

 

「どうすっかな。どうせあいつも記憶が飛んでるんだしな」

 

 ま、キリトなら何かしら掴んでそうだけど。とはいえ、計画を知ってる俺が得られる情報があるとも思えないんだよな。

 

「用事が済んだらアンダーワールドにダイブする」

 

「えぇーー」

 

「嫌そうだなテメ」

 

「まぁダイブくらい構わないんだけど、他にやることないの?」

 

「お前のメガネを割る以外はないな」

 

「高いんだからやめてくれ」

 

 金には困ってないだろうに。スペアを持ってるの知ってるぞ。なんたらルーペを複数個持ってるの知ってるんだからな! お前CM出たもんなぁ!

 実際問題、やることがないのは確かだ。学校には単位ギリギリの出席でしか行ってないし、計算上まだ問題ない。シウネーとかは学校行けって言うけど。あんたをオカンにした覚えはないんだ。今はもう、学校での話をする相手もいないんだから。

 

「ああそうだ。君にこれを渡しておこう」

 

「小遣いかよ」

 

「それで花を買うといい。生憎と僕はなかなか行けないからね」

 

「……そうかよ」

 

 菊岡から渡された札を財布にしまう。明らかに釣りが出る額なんだが、それは貰うとしようか。こんなものでは借りとも思わないぞ。お前らがやってることの口止め料にも足りてない。話さないけども。

 いや、そういう事か。釣りはやるから、考えてること話せってことか。その程度なら確かに釣り合うわ。俺としてもこれで協力を仰げるなら申し分ない。

 

「俺の次のダイブで、記憶は消さないように周知しろ。その時の反応が手がかりになるかもしれない」

 

「その程度で釣れたら宝くじで大儲けだ」  

 

「バカなら釣られる。そうならんだろうけど、俺を餌として使えばいい」

 

「やれやれ。僕なら躊躇わないだろって目で見られるのも困りものだ」

 

「信用の証だ」

 

「信用がない証とも取れるね」

 

 そんな風に言うが、こいつはどの道そうする。仮に不穏因子があるとしたら、俺という餌は使いやすいんだから。俺が()()()()()()余計な情報を掴んでしまうのは、よくあることなのだから。

 

「最悪の場合、死ぬかもしれないんだよ?」

 

「ははっ、そしたらランのところに行けるな」

 

「君は……いや、いい。周知はせず、君のダイブは僕の管理だと皆に言っておこう」

 

「やり方は任せるよ。俺は炙り出したいだけだから」

 

 柳井がいったい誰と繋がっているのかをな。

 

 

 

 そんな物騒な話をした菊岡と別れ、俺は貰った金を使って花屋で花を買う。それを片手に電車を乗り継ぎ、なんやかんやで1時間ほどかけてきた場所は、紺野家が眠る場所。

 わりと新しい花が備えられている。数日前に誰か来たんだろ。たぶん倉っち先生あたりが。まだ枯れてないところを見ると、入れ替えるのも勿体なく感じる。水を新しくして、頑張って買った花をねじ込むとしよう。きっとランは笑って見逃してくれる。

 

「綺麗にできたらいいんだけどな。その手の用具は持ってきてないんだ」

 

 買ったのは花と清涼水と線香。最低限のものしかない。次来る時はちゃんと綺麗にするから。

 

「ランより綺麗にはできないけどさ」

 

 この世界で、ランより綺麗な存在はあり得ない。彼女を超える人も物もない。俺基準ならそこが絶対なんだ。

 

「これだと、新しい彼女とか無理だな。まずそんな相手は見つからないか」

 

 俺の心でランが生き続けているから。求める気持ちはないんだよ。となると生涯童貞か。大賢者か。

 

「ランに新しい世界の話したかったんだけどさ。機密情報だからって忘れさせられちゃったわ。ごめんな」

 

 学校の話をしていた時、ランが楽しそうに笑いながら聞いてくれた。どこへ行き、何を見聞きし、何を感じたか。俺を通してそれを体験したかのように楽しむ。そうしてくれると話す側としても嬉しくて、そういう話をするのが好きになった。

 ラン限定だが。

 だから、その手の話ができないことが申し訳なくなる。まず学校に行けって怒られそう。

 

「……お前学校はどうした」

 

「カイルに言われてもな」

 

 肩をすくめながら近づいてくるのはキリトだ。墓石の前まで来ると、静かに手を合わせて黙祷した。

 

「場所を移すか。話があるんだろ」

 

「悪いな。エギルの店でいいか?」

 

「構わねぇよ。あのオッサンに会うのも久しぶりだな」

 

「誰かさんが顔を出さないせいでな」

 

「エギルの奴め。付き合い悪いな」

 

「お前だよ!」

 

「いやだって俺はハーレム御一行に属してるわけじゃないし」

 

「ハーレムを築いた覚えはない」

 

 好意を寄せられてることぐらいは気づいてるだろ。さすがにな。告白もされてないから断る必要もなく、自然と今の形に収まったんだっけ。知らんけど。

 

「エギルとクラインもメンバーだもんな。ブラッキー先生は寛容さが違うぜ」

 

「なんでだよ! 仮にハーレムを作ったとしてもあの2人はメンバー外だろ! ただのオッサンだ!」

 

「クライン泣くぞ」

 

 あいつまだ20代なのに。いや結婚できそうでできない男ランキングNo.1だよな。風林火山で1人だけ残されそう。他の人たちチャッカリ結婚とかしちゃってそう。合コンとか行けばいいのに。マッチングアプリ活用したらいいのに。プライドかな。

 そういやエギルって何歳だっけな。いぶし銀野郎だから見た目と年齢が微妙にマッチしないんだよ。忘れた。まぁいいや。奥さんはいい人だ。

 

「キリトよ」

 

「ん?」

 

「俺はわりかしエイジの気持ちが分かるんだけどな」 

 

「……ああ。あの時あんま協力的じゃなかったもんな」

 

 オーディナルスケール。アレの一件の時、俺はあまり手を貸さなかった。狙いなんて調べたら簡単に分かるし、ラースに手を貸してた俺がそれを否定することもできなかったからな。

 

「たとえアレが成功したとして、それに抱くのは何か分かるか?」

 

「……リアルとの違和感とか?」

 

「それもあるが、正しくは虚無感だ。死者を蘇らせるのは人類がずっと抱く希望だけどさ、それがあり得ないことだとみんな分かってる。命の尊さを薄れさせてしまう行為に、意味が見いだせなくなるんだ」

 

 たとえどれだけそれを願っていても。

 たとえどれだけその人を愛おしんでいても。

 その人の尊さを軽んじてしまう自分に価値を見いだせなくなる。その行為の意味が、無意味で愚かなものだと思うようになるんだ。

 

「なんでその話を今?」

 

「お前がしたがってる話に繋がってくるんだよ。その辺りはエギルのとこに行ってからだが」

 

「急ぎじゃないし、ゆっくり待つよ」

 

「いや、近いうちにまた来るつもりだから大丈夫」

 

「ならいいんだけど」

 

「それじゃあ、また来るよラン」

 

 霊園を出てキリトのバイクが置かれている場所まで移動する。2人乗りことタンデムだやったな。野郎2人とか何も嬉しくないぜ。

 

「そういやキリト。後ろに女子を乗せるのもよくやるんだってな」

 

「ほとんどアスナだけど、たまにスグとかかな」

 

「なるほど巨乳」

 

「ばっ!? なんか邪推してないか!?」

 

「してないしてない。背中越しに胸を押し当てられてるのを楽しんでんだろうなぁとしか思ってない」

 

「邪推してんじゃねぇか!」

 

「事実だろ」

 

「うぐっ……。別に楽しんでるわけじゃない。自然とそうなるだけだからな」

 

 自転車の2人乗りと同じだ。重心が1箇所になる方がいい。バイクも、後ろに座る人間が重心を運転者に近づけた方が安定しやすいんだ。具体的には、腹の前とかに腕を回させたりとか。そうすると必然的に胸は当たる。アスナとかリーファみたいな巨乳なら間違いなく。

 クラインあたりに酒を飲ませてからこれを言ったら面白そうだな。今度そうするとしよう。

 

「安全運転で頼むぞ。事故って死んだらランに会えんからな」

 

「もちろん気をつけて運転するから、任せとけって」

 

 フラグを立てるな。子供ってのは親より先に死んだら地獄行き確定なんだよ。ランは天国にいるから、今俺が死んだら会えない。親は健在だからな。何しても死なない気がするけど。核とか投げ返しそう。

 

「うわぁ、安全運転でレディみたいに扱われるの気持ち悪~い」

 

「俺にどうしろってんだよ!?」

 

 そうやってふざけながらエギルの店を目指すのだった。

 

 

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