イーディス(主人)と臨むアンダーワールド   作:粗茶Returnees

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 新規のイーディスの太腿がえっち? 違うそうじゃない。よく見たらあの絵の服だけお腹も見えてそこにえっちポイントを感じました。
 胸元見えてお腹見えて太腿見える。……タオル一枚よりえっちでは?
 (新規イラストがこの作品の更新の原動力です)


27話 動く世界Ⅱ

 

 このセントラル=カセドラルは、教会の権威の象徴だ。長い年月をかけて、段々と高くなっていき、今の高さになったのだという。それはそのまま、アドミニストレータの存在が、どれほど高貴なものとして扱われているのかを表している。

 実際すごいもんだ。世界の真実を知り、寿命という概念を限りなく薄くする術を見つけ出し、それを実際にやり遂げたのだから。

 

 個人的には表彰したいくらいだ。絶賛できる。

 たとえ整合騎士という存在を作り出していようとも、そもそもこの世界を作り出すのに携わった俺に、最高司祭を糾弾する筋合いはない。

 

「なんだか真剣な様子ですね」

 

「イリナにはバレるよなぁ。それとも顔に出てた?」

 

「目に出てました」

 

「目か。……目?」

 

 目は口ほどに物を言うってか。

 

「それにしても、最近は出てきてなかったけどどうかした?」

 

「カイルが人間関係を広げるので、私にかけてくれる時間が減って拗ねてました」

 

「え……ごめん」

 

「なので、今から甘えますね」

 

 拒否権はないやつだ。というかこっちの反応すら見てない。あぐらをかいて座る俺の上に乗られて、背中をそのまま預けてくる。この手のこと、随分と積極的になったものだ。

 

「カイルの中にいるのは、それはそれでいいのですが」

 

 両手を取られて前に回せさせられる。抱きしめろということらしい。

 

「こうして肌で感じるのも好きです」

 

「そっか」

 

「らしさが出てきてますか?」

 

「うん出てるよ。個性すら感じる」

 

 そうなってくれていることが嬉しい。

 近くにアリスとイーディスがいるから口にはしない。小っ恥ずかしいし。でもイリナには言葉にしなくても伝わる。便利っちゃ便利だ。

 

「私は言葉にしてもらう方が嬉しいですよ」

 

「んぐっ……。イリナの変化が嬉しいよ」

 

「ふふっ、はい!」

 

 俺とは違う存在。あちら側の人間ではなく、こちら側の人間というわけでもない。特異点とも言えるのがイリナだ。初めから意図して作られたユイとも違う。

 それでも、イリナは人間と変わらない。過去に普通に生きられていれば、こういう子だったんだろう。

 

「私にとっては今が全てですよ。カイルの力になれる。それが私の幸せだと思ってます」

 

「はは……そっか」

 

 全部理解した上で、それでも尚そう言ってくれるのか。

 

「カイルの隣に永久就職です!」

 

「なんか意味変わってきてないか!?」

 

「よくわかんないけどそれだけはあたし見逃さないからね!?」

 

「今のイーディスは相手になりません。気づきを得てから突っかかってください」

 

「もしかして当て馬扱いされてる?」

 

「貴方方はすぐに騒々しくなりますね……」

 

 剣のリソースを回復させているアリスが、迷惑そうに半目でこっちを見てきた。

 賑やかさとか関係ないだろ。剣の耐久度の回復にかかる時間なんて早まらん。ひょっとしたら、なんか神聖術であるかもしれないけど。

 

「固っ苦しいよりは、こっちのほうが息できると思うけどな。生きてんだし、余裕を持とうぜ? ()()()()()()()()()()?」

 

 部屋の扉が開く前に声をかけた。そこまで来てるってことはイリナから伝達されてたから。動かずに察知できるとか、この子とことんチートみたいになってるな。

 

「……なんでここにいるんだ」

 

 俺を見た瞬間キリトの目が見開いた。1ミリも想像してなかったんだろうな。

 俺がこの世界にいることを。そして、整合騎士の隣りにいることを。

 

「成り行き。お前こそ、自分がここに来た経緯を分かってるのか? あっちで救急搬送されたって聞いてるんだが」

 

「待ってカイル。なんの話? なんで知り合いなの?」

 

「訳ありー。で、隣にいるのがユージオか。でっかくなったなー。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は? カイルは何を言って……」

 

 イーディスの話を流し、アリスのことを話題に出すとそれぞれ反応があった。イーディスは頬を膨らませ、アリスは怪訝そうに。俺のことを覚えていたらしいユージオは、たいそう驚いてる。

 

「やはりあなたはあの時の……! なぜここに!」

 

「待て待て待て待て! カイル! 場がめちゃくちゃ混乱してるぞ! てかユージオとも知り合いだったのか!?」

 

「はははは! まぁな! さてと、積もる話は後回し。これからやる事は明白だな」

 

 俺とイリナ以外混乱してるが、話を進めよう。やることをやろう。仕事はこなすタイプなんでね。

 あちらの目的は上にたどり着くことだろう。ユージオがいるし、アリスのことも目的かな。

 こちらがやることはそれの阻止。捕まえてまた牢屋に戻すか、最高司祭に投げ出すか。そこは俺の仕事じゃないな。騎士長帰ってきてるし、丸投げするとしよう。

 

「……これだけは確認させてくれ。カイルは()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 俺がどういう人間かよくわかってる奴は切り替えが早い。イーディスは静かに剣に手を添えてるし、キリトも意識を切り替えてる。

 

「全部ってのがどの範囲のことかは知らんが、ここのことならほぼ把握してる。その上で俺はここで立ち塞がるさ」

 

「なっ……! なんでお前がそうするんだ!」

 

「俺がここに携わったからだ。生みの親が否定するわけにもいかんだろ。いやまぁ、実際どうなんだと首を傾げたりしたし、これは違うなと思ったりもしたぞ? でも、責任の一端は俺にもあるんだ」

 

「だったらなおさら!」

 

「だからこそだ。だからこそ俺はこの世界の行き着く末を見届ける」

 

 結末を見届けないといけない。作ったメンバーの1人として、せっかく内側にいるのだから。

 

「イリナ」

 

「はい」

 

 イリナに退いてもらい立ち上がる。イーディスも続いて立ち上がり、キリトたちは剣を抜いた。察しの良さがありがたい。話が早くていい。

 

「他のことはあとで全部話してもらうぞ、カイル!」

 

「おっけー」

 

「がくっ、力抜けるな……」

 

「アリスはどうする? こっちでやっとこうか?」

 

 静かにギリギリまで回復させていたアリスが、そよ風に揺らされるように首を横に振った。立ち上がり、金木犀を剣に変えて構える。

 

「いえ、私も戦います。捕らえたのは私ですし、彼らの脱走を予想しておきながら防げなかった責任もありますから」

 

「真面目だな。んじゃ、アリスは黒髪の方よろしく」

 

「? てっきりそちらをカイルが相対すると思っていたのですが」

 

「相性悪くてね。()()()()()アリスに任せたいんだ」

 

「……そうですか」

 

「アリスは照れてますね」

 

「かーわいい~」

 

「照れてません! イーディス殿も黙ってください!」

 

 今から戦うとは思えない雰囲気。俺とかイーディスは一瞬で切り替えられるけど、アリスには悪影響だな。向こう側は、ユージオの方がアリスに近いか。こっちのやり取りを見て困惑してる。

 

「あ、イーディスは待機で」

 

「えー」

 

「相手の実力見たいからさ。それに、イーディスが傷つくの嫌だし」

 

「んっ……。わかったわよ。でもカイルも怪我しないで。あなたすぐ無茶するんだから」

 

「了解」

 

 イーディスが一歩下がり、俺とアリスが一歩ずつ前に出る。キリトたちも剣を構え直して戦闘態勢に入った。

 

「イリナよろしく」

 

「あなたの心のままに」

 

 伸ばした手が重なり合う。イリナが光に包まれ、やがてそれは2丁の銃へと変化した。久方ぶりにこれで戦うことになるけれど、腕が衰えることはない。イリナのサポートもあることだし。

 

「あの武器はいったい……」

 

「気をつけろユージオ。あれは飛び道具だ!」

 

「え?」

 

「見せたほうが早いよな」

 

 1発だけ撃った。初見のユージオが反応できるわけもなく、横から飛びついたキリトのおかげで躱せている。キリトの方は背中を掠ったみたいだけど。

 

「キリト!」

 

「掠り傷だ。あれは直線に飛ぶ。弓矢以上の速さと威力って思っててくれ」

 

「なっ! ……わかった」

 

「行くぞ!」

 

 同時に駆け出してくる。けれど射撃を警戒している分ユージオの方が慎重だ。キリトのことだし、自分で引き受けようと思ってるんだろうな。GGOでも弾斬ってたし。

 

「アリス」

 

「分かっています」

 

 けれどこちらも1人じゃない。2人の速度に差があるおかげで、アリスを突出させても同時に狙われる心配がない。だからアリスにはキリトに突っ込んでもらう。事前に担当を決めてたしな。

 

「タイマンと行こうぜ。……俺は2人か」

 

[2人で1人ですから無問題です!]

 

[フォローありがとう]

 

 キリトを援護しようとするユージオに牽制射撃。こちらに注意を引きつける。

 仮にもユージオはここまで上がってきた実力がある。キリトの相棒を務めている。その実力が如何なるものか、しかと見極めさせてもらおうか。

 

「整合騎士だったのですか」

 

 こちらの銃を警戒しながらユージオが言葉を発する。疑問を投げるような、独り言のような言い方だ。

 ひとまずは付き合うことにしよう。聞きたいこともあるし。

 

「正確にはその従者だ。四旋剣とはまた違うけどな。それより、修道女みたいな少女2人に会わなかったか?」

 

 あの2人、変に手を出してそうだ。

 

「……短剣を携えて毒を使う子なら」

 

「そいつらどうした?」

 

「本人たちの毒で動きを封じたよ。キリトがやったことだけど」

 

「くくっ、なるほどね。うん、死んでないなら良かったよかった」

 

 一安心できたところで、ユージオとの戦闘をまともに始めよう。あっちはアリスが圧倒してるし、これは適当にやると小言を言われそうだ。

 ユージオを観察する。その足はいつでも駆けられるように踵を浮かせ、指先に力を入れている。その目は銃を、より正確には俺の手を見ている。射撃に合わせて動くつもりだな。

 

「なら、お望み通り撃ってやろう」

 

「……っ!」

 

 右で1発撃つ。射線を馬鹿正直に向けてたから回避された。ユージオは距離を詰めるために走ってくる。今度は左で腹を狙う。これもステップを踏まれて躱された。軽やかな足取りだ。とても初見とは思えない。

 

「そうこないとな!」

 

 もう一度右の銃を構えた。

 

(武器の穴は僕の腿に向いてる。機動力を削ぐ狙いか)

 

 引き金を引く。それに合わせてユージオが進行を変える。また躱すために。

 だが、この武器は普通じゃない。イリナの力はこの程度じゃない。

 

(音が……!)

 

 誰も、1()()()()()()()()()()()()()()()()()

 フルオートにだってできるんだ。それに、こちとら避ける敵に狙いをつける技術くらい持ってる。

 

「がっ、はっ……」

 

「はいやり直し~」

 

「ユージオ!」

 

「彼を気にする余裕がありますか?」

 

「くそっ!」

 

 余所見したキリトをアリスが弾き飛ばす。追撃まではしていない。その戦い方は、実力差を見せつけるためか。

 やっぱアリス強いね。キリトを任せて正解だった。

 

「カイル()()()()()?」

 

 咳込みながらも立ち上がるユージオはイリナに見といてもらい、怪訝な目で見てくるイーディスに苦笑いを返した。

 

「挨拶代わり?」

 

「知り合いみたいだけど、手を抜くのかしら」

 

「まさか」

 

 仕事は仕事。きちんと果たすさ。

 

[カイル警戒を]

 

[ん。やっとその気になったか]

 

 心優しい男だ。顔見知りというだけで、迷いを生んでるんだから。俺がこちら側にいて、アリス奪還の障害になっているというのにな。

 ユージオが突っ込んでくる。銃という武器の特性上、近距離戦は弱いと見切ったようだ。

 その判断は正しい。今の一撃で、この銃がどういうものかも大まかに分かったんだろう。走りながらも左手の指先を光らせている。神聖術を盾代わりにぶつけてくる気か。

 

「足りるかな?」

 

 リソースの塊を放つのは、この武器の特徴ではない。千変万化。何にでもなれるイリナの力は、神聖術を放つことだって容易い。

 

「バーストエレメント!」

 

 ユージオが先手を打つ。放たれたのは巨大な水の塊。神聖術なんだから、濡れるだけってことはないな。

 

[大きいですが、圧縮されてます]

 

[巨大な砲弾ってわけか]

 

 狙いが思いの外いやらしい。

 俺とイーディスの関係性を踏まえた上で、イーディスが俺を信頼していると踏んで、ユージオはこの術を放っている。

 掠り傷では済まない威力。イーディスは避ける気がないようで、腕組みをして後方に立ってる。そうなると、俺も避けることはできない。ユージオにとっては、どっちに転んでも旨味があるな。

 

[乗ってやるしかないか]

 

[蒸発させます]

 

 2丁とも構えて同時に放った。水に対して火を使うのは自殺行為だが、火力が足りているのなら相殺が可能だ。尚且つ、その時に発生する蒸気が煙幕代わりになる。

 とはいえ、元々ユージオの術のせいで互いに姿は見えていない状態だ。それを望んで仕掛けてくるのなら。

 

「そこだよな」

 

「ハァぁぁ!!」

 

 煙幕を突き破るように、ユージオが右斜め下から飛び出してきた。あちらは坂を登っていたのだから、元から高低差がある。さらに右利き。剣を力強く振り上げるのなら、俺だってそうする。

 イリナに銃から剣へと変わってもらう。再形成が瞬時に終わるとはいえ、詰められてる状況だと防御はギリギリか。

 

「なっ!?」

 

 防がれたことへの驚きじゃないな。武器の形状が変わったこと。そっちに驚いてる。他に無いのだから当選だろう。

 

(……人がさっきの武器になってたんだし、剣に変わるのも可笑しくはない、のかな)

 

 驚いたのは僅かな時間。すぐに切り替えたユージオが、数合の切り合いの後()()()()に入った。

 

「この距離なら!!」

 

 外さないだろうな。

 なるほど。キリトが相棒に選ぶだけのことはある。……こいつは天才だ。

 単純な剣の才能なら、俺やキリトより高い。何よりも学習能力が高い。天職があるこの世界で、初めから剣士ではなかったはずのユージオが。数年でこの域に達しているのが何よりの証拠だ。

 切り合いの果て、剣を弾かれて腕を挙げさせられる。そのすきにユージオは氷のように美しい剣を地面に突き刺す。

 

[カイル!]

 

[大丈夫]

 

 珍しく焦るイリナを落ち着かせつつ、やってほしいことを伝える。動きかけたイーディスには視線を送った。何もしなくていいと。

 不安そうに瞳を揺らさせてるのは、申し訳ないな。

 

「エンハンスアーマメント!」

 

 俺が自嘲気味に笑ったのと、ユージオが武装完全支配術を使ったのは、全くの同時だった。

 

 

 

 

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