イーディス(主人)と臨むアンダーワールド   作:粗茶Returnees

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 鎧脱いだイーディスの服ってエッチだなと最近思いました。


5話 小さな出会い

 

 イーディスの飛竜に乗っての移動。名前は忘れたけど、この飛竜での移動がこの世界での最速の移動手段らしい。飛竜の中にももちろん個体差があって、体力だったり飛行能力の違いがあるのだとか。そんなことを言われても、俺はイーディスの飛竜でしか移動したことがないから他のことは分からん。

 というか。今更ながらに気づいたんだけど、俺まだ人界の大地踏みしめてないな。人界の外にダイブして、なんやかんやでイーディスに連行されてからは塔の中での生活だったし。

 

「そいやイーディス。ダークテリトリーには飛竜いないのか?」

 

「いるわよ。この子たちと遜色ない飛竜たちが。見た目は色違いってぐらいね」

 

「遜色ないって、飛竜の軍団で来られたりしたら終わりだな」

 

「それだけの数がいればの話よ。飛竜は希少な存在で数が少ないの。たぶんそれは向こうも同じこと。ダークテリトリーはソースが薄いから、育てるのに苦労するんじゃないかしら」

 

 飛竜が希少な存在だっていうのには納得だ。人界だと整合騎士しか従えていないようだし、ダークテリトリーの土地の問題もあるだろう。ただ、それで全部納得というわけでもない。引っかかることは当然ある。

 

「それ以外にも理由はあるんじゃないのか?」

 

「へ?」

 

「ダークテリトリーの土地が資源に乏しいのは、イーディスと会う前に軽く見てる。けど、ダークテリトリーに住むやつらは何万といるんだろ? つまり、乏しいだけで生活は可能だ。そして、土地の大きさの問題を抜きに人界より数が多いなら、比例して飛竜が多くてもおかしくない」

 

「……そうだね。だから、四方で警備してる騎士たちは、飛竜に乗って暗黒騎士が来たときに飛竜も殺すことが多いよ」

 

「だろうな」

 

 飛竜という存在自体は希少。生物の生存本能とでも言うべきか、子孫を残すことはどんな生物であれ行う。そしてそれは弱い生物ほど多くの子を生むわけで。反対に強い生物ってのはたいてい生む子が少ない。食物連鎖のバランスはそこでも保たれてる。

 そうなってくると、飛竜なんておそらく最強である生物は、もちろん生む()も少ないわけだ。だけど、ダークテリトリーって土地も広いし、人界より数が多いと考えるのが自然。だから殺してるんだろうな。

 

「危険因子は残せないから」

 

「警戒心が強い騎士は、だろ? イーディスは飛竜を殺してない」

 

「知ったふうな口だね」

 

「今イーディスが言ったことだろ。『警備してる騎士たちは飛竜も殺すことが多い』って。『あたしたちは』とは言わなかった」

 

「言葉の綾だよ。私たちは人界を護ることが使命なんだから」

 

 頑固なやつ。それも要は、人界に危害を加えない飛竜は対象にはならないってだけの話だろ。

 なんて思いはするけれど、俺の思い込みの可能性だって捨てきれない。昔からの性分ってやつかな。どんな年齢であれ、どういう存在であれ。女性にはそういう事をしてほしくないし、させたくない。

 茅場がやってくれちゃったSAOじゃあそうも言ってられなかったんだけどな。ヤンデレバーサークヒーラー様とか最前線にいた女性の一人だし。

 

「イーディス。あのデッカい樹はなんだ」

 

「さぁ? あたしも詳しくは知らないわよ。あたし達はそれを知る必要はないし、民との交流も許されてないから聞くわけにもいかないの」

 

「つまんねー人生だな~」

 

「長く生きてるとたしかに刺激は欲しくなるけどね。つまらないとは思わないかな」

 

 刺激か。たしかに似たような日々がずっと続いていると刺激は欲しくなるな。安定した平和の継続は、場合によっては人を怠惰に落としてしまう。かつてのローマとかその手の話で一番有名だ。『パンとサーカス』ってな。

 それにしても気になる発言があった。長く生きてるってなんだ。イーディスはどう見ても同世代だ。もしかしたら若いやつが「よっこらしょ」とか言うアレなのかもしれない。長く生きてるっていう最高司祭をひと目で見れてみたら、どうなのか判断がつくかもしれない。

 

「なぁイーディス」

 

「なに?」

 

「刺激的なことやってやるよ」

 

「何する気!?」

 

 イーディスが身を固める。別にイーディスに直接何かしようなんて思っていない。見当違いもいいところだ。

 飛竜の背で立ち上がり、イーディスに渡していた毛布を回収して自分の服へと変換する。

 

「カイル?」

 

「ちょっと行ってくるわ!」

 

「は?」

 

 巨大な樹のちょうど真上に来た時に飛び降りる。イーディスが何か騒いでるけどそれは聞き取れない。聞こえてくるのは風の音だけ。

 いくら樹がデカイからと言って、飛竜がその真上を通ったとしても、優に10メートル単位で距離は開いている。落下位置を調整し、頂点ではなくその横に逸れていく。

 

「いでっ! がっ! ぬぁっ!」

 

 枝にぶつかることで落下速度が緩くなっていくものの、枝に当たった衝撃で何度も弾かれて落ちていく。天命がゴリゴリ削れていってる気がするのだが、それを確認してる余裕もない。ぼんやりと地面が見えてきて、枝も一番低いところが見えたら気合でその枝にぶら下がる。

 一番低い枝のはずなんだが、地面までまた10メートル単位の距離だ。飛び降りるとか自殺行為。

 

「よっと!」

 

 そんなわけで幹目掛けて思いっきり飛ぶ。反動もつけたかいがあった。幹に到達することはできた。

 

「っととと! こえぇぇ!」

 

 さながらボードで滑るかのごとく幹を滑り落ちる。摩擦でスピードは気持ち緩やかだ。地面に激突する寸前に幹を蹴って、地面を転がることで衝撃を逃していく。

 

「……さすがに死ぬかと思った」

 

「当たり前よ!」

 

「ん?」

 

 ひとり言のつもりが言葉が返ってくる。声のした方を見ると、太陽の光で煌めく鮮やかな金髪をした少女が、腰に手を当てて立っていた。仁王立ちとはさてはこの少女強気な女の子だな。丸い目も今は釣り上がっている。青空よりも澄んだ瞳だな。

 瞳の色に近い青いワンピース。白いエプロンをつけていて、これまた白いリボンがをつけていた。将来有望そうだな。ミスコン優勝間違い無しだよ。

 

「空から降ってくるなんて聞いたことないわ!」

 

「悪いな空から落ちてきたのが女の子じゃなくて」

 

「どうでもいいわよそんなこと! ちょっとそこに直りなさい!」

 

「えぇー」

 

「文句があるのかしら?」

 

「ないな」

 

 癖で変な返しをしてしまうのが悲しい。怖い笑顔を浮かべられてしまった。その年でそんなことを覚えなくていいと思うのにな。どうしてそうなってしまったのか。

 正座すると少女が神聖術で天命を回復してくれた。まだ簡単な術しか使えないから、とか言ってるけど気持ちだけでもありがたい話だ。

 

「優しいんだね」

 

「これくらい当然のことよ」

 

 当たり前だと言いのけられた。その気前の良さからして、女性人気も高くなると思います。辺境の田舎だけど。

 

「それで? なんで空から落ちてきたの?」

 

「なんで君はこんな場所にいるんだい? ここは村から少し離れてるよね?」

 

 たしか近くに集落があった。飛竜の上からそれは確認してる。

 質問に質問で返したせいか、少女の目が鋭くなった。たしかに先に質問したのは向こうだ。質問に答えよう。

 

「スリリングなことがしたくてね」

 

「すりり……なんて?」

 

「おーーい! アリス~!」

 

 イーディスのときもそうだったけど、やっぱり英語とかは通用しないらしい。日本語だけが通じるわけか。神聖語というやつは英語なんだけど、馴染みがないんだろうな。

 聞きなれない言葉に少女が戸惑い、割って入るように遠くから少年の声が響いてきた。そっちに目を向けると少年が2人いた。見たところ3人の年齢は同じなのかな。というか1人だけ見知った顔だぞ。黒髪黒目のバリバリ日本人童顔少年よ。

 

「2人とも天職は?」

 

「午前の分は終わったからアリスを追いかけてきたんだよ。その人は?」

 

「おいおい君たち。初対面の相手にはまず自己紹介と教わらなかったのかね? 礼儀というものだよ」

 

「それもそうですね。すみません、僕は──」

「俺の名はカイル。諸事情で空から落下してきて削れた天命をついさっきこの子に癒やしてもらったところだ」

 

「キリト。僕今初めて反射的に叩きそうになったよ」

 

「奇遇だなユージオ。俺もだ」

 

 金髪少女はアリス。薄い茶色の毛の少年はユージオで、黒髪ブラッキーはやっぱりキリトだったのか。

 

「お前女体化の次はショタか。その次は人外でも目指す気か?」

 

「何言ってんだあんた」

 

「キリト知り合いなの? 空から降ってくるような頭のおかしいこの人と?」

 

「アリスちゃん直球で言うんだね! 俺は驚いたよ!」

 

「いや俺も初対面だぞ!?」

 

 ふむ? キリトという名前とこの見た目。間違いなく俺が知ってるキリトのはずなんだけどな。あ、いや、ショタ化したキリトは間違いなく初対面ではあったな。

 そんなことはいいとして、ダイブしてる癖に向こうの記憶がないのか。俺とは違うパターン。俺は単なる暇つぶしだし、元からこの計画に加担してるから記憶はそのままで、キリトは部外者で一時的な協力者であると。だから向こうの記憶がないのか。

 

「君たち天職とか言ってたけど、もう働いてるのかい?」

 

「当たり前だろ? 俺とユージオの天職はこいつだよ」

 

 キリトが指差したのは、異質な巨大さを誇る樹。

 

「木登りか」

 

「違う! 刻み手だ!」

 

「このギガシスダーの木を切ることが、僕とキリトの天職なんです」

 

「これ切れるのか?」

 

「いつかは切れると思いますよ。何代かかるかは知らないですけど」

 

「……代? え、もしかして先祖代々これやってんの?」

 

「はい」

 

 クソゲーだわぁぁ! 何だその仕事! いやたしかに俺はリアルの方での仕事面倒くせーなとか思ってたけども! 絶対に自分の代では切り倒せない木を切ることが仕事とかやり甲斐も何もあったものじゃない!

 まぁでもそんな仕事があるのがこの世界だし。それが当たり前なこととして受け入れられてるのか。嫌な顔一つしないで、淡々と答えてるのが薄ら寒い。

 

「アリスは……いいや」

 

「なんでよ! 私のことだけ放置って何よ!」

 

「いや分かるよ。サボりたいお年頃なんだよな」

 

「サボりじゃないわよ! 決めつけないでほしいわね! 私は──」

「ところで君たち昼休憩か何かでは? ご飯食べなよ」

 

「このっ!」

 

「アリス落ち着いて! 相手は仮にも年上の人だよ!」

 

「放しなさいユージオ!」

 

 これぐらいの年頃の子は、そうやって元気に遊んでるのがいいよ。その年齢から仕事とか息が詰まるというもの。

 アリスが暴れそうなのをユージオがなんとか止めて、不機嫌になったアリスが持ってきた弁当をシートの上で広げる。さながらピクニックだ。周りには木しかないけど、空が見えるだけまだましか。

 

「あなたの分はないわよ。申し訳ないけど」

 

「逆にあったら怖いよ。お腹も別に空いてないし、気にせず食べたまえ」

 

 気の優しそうなユージオが、持っているサンドイッチとこちらをチラチラ見てくる。気持ちは本当に嬉しいのだが、今は本当に求めてないんだ。そう伝えるとキリトが遠慮なく食べ始め、アリスがそれに続くとユージオも食べ始めた。

 いくら仕事をしているとはいえ、それ以外の時間はやっぱり子どもらしい。聞こえてくる会話も年相応のことばかりだ。

 

「そうだ君たち。近くにある村って最北の村だよね?」

 

「ええそうよ。村に行きたいの? それなら休憩終わりに私村に帰るし、一緒に行くわよ。衛士さんに話を通せるし」

 

「いや確認したかっただけだよ。村に行きたいわけじゃない」

 

「確認ってどういうことですか?」

 

「最北の村なら、北の山脈にある洞窟のことを何か知ってるかなって」

 

「少しは知ってますけど、行かないほうがいいと思いますよ。《掟》にも抵触すると思いますし」

 

 洞窟に行くだけでそうなるのだろうか。その可能性はあるか。整合騎士だけが例外なら、人界とダークテリトリーが行き来できる場所に近づかせることも避けるかもしれない。

 

「それは少し違うわユージオ」

 

「え?」

「違うのかよ」

 

 少しってことなら、大方似てる話にはなるんだろうけども。

 

「たしか、ダークテリトリーとの境界を超えてはならないって感じじゃなかったか?」

 

「キリトは正解ね。北の山脈はダークテリトリーとの境界の一つ。洞窟自体は問題ないのよ。そこに入ることは禁忌目録に禁じられていない」

 

「洞窟を進んだらその境界を越えるかもしれないって話か」

 

「そうなの。私たちも行ったことはないから、どこまで進めるかも知らないわ」

 

 なるほどね。有益な情報を手に入れることができた。初めから例外なイーディスならまだしも、外からの来訪者である俺がこの世界のルールに違反したらどうなるのか。その検証をしてると楽なものだが、面倒事はごめんって話だ。警戒するに超したことはない。

 一番最初だって、初めからダークテリトリーにいたから禁忌目録とやらに引っかからなかったのかもしれないしな。

 

「まさかとは思うけど、洞窟に行こうとしてるのかしら?」

 

「そのまさかだよ。あいにくと気ままに動き回るのが俺だからね。ここにも戻らないし、村にも寄らないよ」

 

「えー! 洞窟の中がどんなだったかとか教えてくれねぇのかよー!」

 

「はっはっは! 好奇心の塊だなキリト少年。そういうのは自分の目で確かめたほうが楽しめるぞ」

 

「うぐっ、納得できてしまう……」

 

「いやしないでよ」

 

「なんだよユージオだって気になるだろー」

 

 ユージオは真面目な性格でもあるのか。キリトと相性良さそうだな。そのまとめ役がアリスなのかな。バランスが整ってる3人組ってやつか。

 2人が話し合いしている間に立ち上がり、颯爽とその場を離れていく。後ろからなんか言われてるけど気にしない。イーディスがいるであろう方向、つまりは北へと進んでいく。森に突入してるけど、真っ直ぐ進めばいいだろう。

 

「その前に。アリスは戻りなさい」

 

「あら、私があなたの言うことを聞く必要があるかしら? それに私はあなたの傷を癒やした恩人よ。何も返さずにいなくなるのは筋が通らないと思うのだけど、カイルさんはそういう人なのかしら」

 

「痛いところをついてくるね……。少し恩着せがましい感じもするけど」

 

「こういうのは最大限に使うものでしょ?」

 

「賢い子だね。でもそれが災いに転じることもあるから気をつけるといい」

 

「?」

 

「君は賢い。勇気も持ってる。人を思う優しさもある。だけど、それがすべて良い方向に進むとは限らない。一応忠告しとくけど、たぶん君は北の洞窟に行かないほうがいいよ」

 

「何を言ってるのかいまいち掴めないわね。だけど忠告は一応受け取るわ。危険を犯すなって話だと思うし」

 

 本当に賢い子だ。今はこの年だから俺がこうやって言えてるけど、10年もしないうちにこの子は俺を軽々と超えた存在になるんだろうな。現実では数日での話だろうけど、その時が来るのは少し楽しみだ。

 サラサラとした触り心地のいい髪を撫でる。年頃だろうな。恥ずかしそうにしてすぐに払い除けられた。ちょっとショックだけど、そういえば女の子は髪を触られるの嫌がるほうが多いって聞いたことあったな。彼女の妹が人懐っこくてその事を忘れてたわ。

 

「じゃあなアリス。恩は返せる時が来たら返すよ。キリトとユージオにもよろしく」

 

「はぁ。期待しないで待ってるわ。気をつけて行くのよ」

 

「ははっ、りょーかい」

 

 

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