「まぁ、正確に言うと父さんも亡くなってるがな」
「やっぱり....そうだったんだ」
俺がそう言うと、二乃は納得したような表情になった。
「やっぱりってどういうことだ」
「花火大会の時、私に携帯を貸したでしょ? その時に、胡蝶君の携帯には
ご両親の電話番号が無かったから」
「なるほどな....」
そう言いながら、俺は携帯を取り出し一枚の写真を見せた。
「....これは?」
「俺の父さんと母さんだ」
「そう....すごく優しそうな人ね」
「....実際すごく優しかった。だからこそ、俺が今生きていられるのかもな」
「どういう事?」
「....五年前、俺の誕生日の七月七日に父さんと母さんと花火大会を見に行ったんだ。
その帰り道、父さんと母さんは車に轢かれて、そのまま亡くなった....」
「っ!」
「今でも覚えてる。轢かれる瞬間、父さんと母さんが俺を抱きしめて守ってくれた事....
そして、父さんと母さんが冷たくなっていく感触も....」
「....ご両親を轢いた人は?」
「逃げたよ。轢き逃げだ。だけど、警察には事故って事で処理された」
「嘘でしょ....」
二乃はありえないと思ったような声でそう言った。
「本当の事だ。近くの監視カメラにも轢いた瞬間は映ってなかったし、目撃者も
いなかったからそうなったらしい」
「酷い....そんな事って....」
「....俺も当時は諦めたさ。だけど、父さんと母さんの学生時代の友人の人が犯人を
探してくれるって言ってな。それを聞いて、俺も自分なりに犯人を探してる」
「そうなんだ....」
すると、二乃は不思議そうに聞いてきた。
「じゃあ、胡蝶君は今一人暮らしなの?」
「いや、父さんと母さんの親友だった人に引き取られた。二人が亡くなってから
ずっと世話になりっぱなしだ」
「そうなのね....」
「....さてと、これで終わって良いか? あまりこの話はしたくからな....」
「えぇ。聞かせてくれてありがとう」
そう言っていると店員が二乃のデザートを持ってきた。
「さて、さっさと食って買い物の続きに行こうぜ」
「そうね」
〜〜〜〜
その後、昼飯を食べた俺は二乃の買い物に再び付き合った。
そして今、俺は二乃とある所に向かっていた。
「胡蝶君、これどこに向かっているの?」
「着いてからのお楽しみ、というかもう着いてるんだけどな」
そう言って、俺はある店の前で止まった。
「ここって....」
「“胡蝶の夢”。聞いた事はないか?」
「そんな事あるわけないじゃない。この街で超有名なケーキ屋さんでしょ」
「その通り。ま、とりあえず入るぞ」
そう言って俺は店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ! って、カシラ!」
店に入ると、店の制服を着た黄色のドックタグを付けた男がそう言った。
「聖吉....店の中で大声で叫ぶな」
「す、すいません....」
「....まぁ良い。次から気をつけろよ」
「は、はい....それよりも、隣にいる人は?」
聖吉は二乃の方を見てそう聞いてきた。
「俺の友人だ。土産にケーキでも買ってやろうと思ってな」
「そうなんすね。じゃあこっちに来てください」
そう言って聖吉はショーケースの方に案内した。
「じゃあ俺は戻りますね」
「おう」
聖吉は元の場所に戻っていった。
「胡蝶君、今の人は?」
「学校の後輩だ。何でかわからんがカシラって呼ばれててな」
「そ、そうなのね....」
「あぁ。さて、二乃。好きなの選んで持って帰ってくれ。俺が代金を払うから」
「良いの?」
「あぁ」
「ありがとう。それじゃあ....」
二乃は五つのケーキを選んだ。
「この五つだな。すいませーん!」
俺は厨房の方に向かって店員を呼んだ。
「はいはーい! って、おかえりなさい一海君!」
「甘奈さん」
出てきたのは店長の甘奈さんだった。
「思ったより早かった....」
甘奈さんは二乃の方を見ると固まった。
「甘奈さん?」
「っ! な、何かな?」
「あの、土産にケーキを渡したいんで今から言うケーキを箱に入れてください」
そう言って、俺は二乃が選んだケーキを言った。
「わかったよ。ちょっと待ってね」
甘奈さんはすぐにケーキを持ち帰りの箱に入れてくれた。
「あ、代金は俺の給料から引いておいてください」
「わかったよ」
「じゃあ俺は家まで送って来ます」
そう言ってケーキの入った箱を受け取って外に出ようとしたら....
「ちょっと待って」
俺は甘奈さんに呼び止められた。
「あなた、名前はなんて言うの?」
甘奈さんは二乃の方を見てそう聞いてきた。
「な、中野 二乃です。胡蝶君とは仲良くさせて貰っていて....」
「....二乃さんね。私は胡蝶 甘奈。一海君と仲良くしてあげてね」
「は、はい!」
「一海君、ちゃんと送ってあげるんだよ」
「わかりました。行くぞ二乃」
そう言い、俺は二乃とともに外に出た。その時、俺は甘奈さんの呟きに
気づかなかった。
「あの子....まさか....」
〜〜〜〜
「今の人って....」
「俺の親代わり人だ。後、あの店は俺のバイト先兼家だ」
二乃の家に向かっている途中、二乃にそう言って話していた。
「そうなんだ。優しそうな人ね」
「まぁな」
「(だけど何だったんだ....二乃を見た時に驚いてたみたいだが....)」
俺は甘奈さんが二乃を見て驚いていた事に疑問を持った。
「なぁ二乃。甘奈さんとどこかで会ったことあるか?」
「あの店員さんと? 会ったこと無いと思うけど....」
「そうか....」
そう話していると、二乃の住むマンションに着いた。
「ここまでで良いわ」
「そうか?」
「えぇ。今日はありがとう。私の買い物に付き合ってくれて」
「別に良い。俺も楽しかったからな」
「....そう。だったら、また買い物に付き合ってくれる?」
「あぁ」
「ありがとう! じゃあまた明日!」
「おう。じゃあな」
そう言い、俺は家に向かって歩き出した。
〜〜〜〜
二乃side
「あ、二乃おかえり」
「おかえり〜。結構買ってきたね〜」
家の中に入ると、一花と三玖が出迎えてくれた。
「二人ともただいま。これお土産」
私は一花にケーキの入った箱を渡した。
「これは?」
「ケーキよ。胡蝶君がお土産で買ってくれたのよ」
「そうなんだ。後でお礼のメール送らないと」
「それよりも! カズミ君とはどうだったの? 何か進展はあった?」
「進展って....」
私は今日一日あった事を思い出そうとした。
「まぁ、服とか褒めてくれたわ。後、胡蝶君の事について少し知れたわ」
「えぇー、それだけ?」
「そうよ。何か文句でもあるの?」
「文句はないけどさぁ....もうちょっと面白い話を聞けると思って
期待してたんだけどなぁ〜」
「....あんた晩ご飯抜きにするわよ」
私は一花にそう言うと、一花は慌てていた。
「や、やだなぁ〜。冗談だって」
「はぁ....まぁいいわ。一旦私は部屋に戻るから」
そう言って、私は荷物を持って部屋に入った。
「(ふぅ、今日は楽しかったな....)」
私は自分の持っていた袋を見てそう思った。
「(それにしても、胡蝶君にあんな過去があったなんて....)」
私はお昼に聞いた胡蝶君の話を思い出していた。
「(....私達と同じ、か)」
そんな事を思いながら、私は部屋を出た。
三原 聖吉
胡蝶の夢でバイトをしている少年
一海の学校の後輩で一海に恩があり、カシラと呼んで慕っている
普段は一海と同じ学年の大山 勝と相河 修也と行動している
一海からは何でも真面目にする良いやつと思われている