俺が信じる道   作:アイリエッタ・ゼロス

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二乃の怒り

「....ぁ、はぁ、はぁ」

「(....? 何、この苦しそうな声....)」

 真夜中に、私は誰かの苦しそうな声で目が覚めた。その声は私のすぐ隣から

 聞こえてきた。

 

「(胡蝶君....?)」

 私は寝返りを打って胡蝶君の方を見ると、胡蝶君は身体を起こして顔を半分

 押さえていた。そして押さえていない方からキラリと光る何かが見えた。

 

「胡蝶君....?」

「っ!?」

 私が胡蝶君に声をかけた瞬間、胡蝶君は肩を震わせた。そして、胡蝶君は私の方を見てきた。

 その時、私は光ったものの正体がわかった。

 光ったものの正体は胡蝶君の涙だった。

 

「っ! 胡蝶君!」

 私は起き上がって胡蝶君に近づいた。

 

「どうしたの! 大丈夫?」

「っ、二乃か....悪い、起こしたか?」

「そんな事はどうでも良いわ。それよりも、急に泣き出してどうしたの?」

「....大丈夫だ。ちょっと夢見が悪かっただけだから」

 胡蝶君は普段と変わらない様な様子でそう言うが、その声は普段と比べ物にならないほど

 悲しそうで寂しそうな声だった。

 

「っ、そんな声で大丈夫なんて言わないでよ! ちょっと来て!」

「お、おい二乃....」

 私は胡蝶君の手を引いて部屋を出た。

 

 

 〜〜〜〜

 

「....水で良かった?」

「....あぁ。悪いな」

 私と胡蝶君は旅館の入り口の近くにある自販機の前で座っていた。

 胡蝶君は既に涙は止まっていたが、目は真っ赤に腫れていた。

 

「....本当に悪いな。こんな時間に起こして....」

 胡蝶君は申し訳なさそうに言ってきた。

 

「別に良いって言ったじゃない....それよりも、どうして泣いていたの?」

「....」

「それに、いつもとは想像できないような声をしてたけど....」

「....分かるものなのか」

「まぁね....」

「そうか....」

 胡蝶君がそう言ってからしばらく沈黙が続いた。そして....

 

「....夢を見るんだ」

「えっ....?」

 胡蝶君は不意にそう言った。

 

「一ヶ月に一回か二回な....父さんと母さんが死ぬ夢を」

「っ!?」

 胡蝶君の言葉に驚いて私は言葉を失った。

 

「車に轢かれて、二人は血だらけになって....俺はそれを近くで見てるのに何もできなくて....」

「....」

「それに、轢いた犯人の顔すら見えないんだ....すぐ近くなのに....!」

 胡蝶君は悔しそうに手を握りしめていた。

 

「....俺は自分が嫌いになるんだ。あの時、俺が何か出来ていれば父さんと母さんは

 生きていたんじゃないか。犯人は捕まっていたんじゃないかってな....」

「....」

「それに、あの時死んだのが俺だったら....」

「っ!」

 胡蝶君がそう言った瞬間、私は立ち上がって胡蝶君の頬を叩いていた。

 

「っ....!」

「やめてよ....そんな事言わないでよ!」

「二乃....」

「自分が死んだら良かったみたいな事言わないで! そんな事を言ったら、命がけで

 胡蝶君を守ったご両親が報われないわ!」

「....っ」

「それに、胡蝶君が死んでたら私はこうして胡蝶君と出会えなかった。私は、胡蝶君の

 お陰で色々と変われた気がするの。だから、そんな悲しい事言わないでよ....」ポロポロ

 私はそう言いながら、気づけば涙を流していた。

 

「....すまない。確かに、二乃の言ってる事は正しいな....」

「....私に謝る前に、ご両親に謝ってあげて」ポロポロ

「あぁ。林間学校が終わったら謝りに行ってくる」

 胡蝶君はそう言うと、私にハンカチを貸してくれた。

 

「あ、ありがとう....」

「礼を言うのは俺の方だ。....二乃のお陰で、少し気が楽になった」

 そう言った胡蝶君の声はいつもの様な声に戻っていた。

 

「そろそろ戻ろうか。寝ないと明日に響くからな....」

「そうね。じゃあ....」

 私は胡蝶君の前に手を出した。

 

「?」

「手、握って」

「えっ....」

「こんなに暗いと怖いから。だから....」

「....わかった」

 胡蝶君はそう言って私の手を握ってくれた。

 

「じゃあ行こうか」

「えぇ」

 そう言って、私達は部屋に向かって歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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