次の日
♪〜♪〜♪〜♪〜
学校に向かっている途中、急に携帯が鳴った。
「....朝からなんだ、上杉」
『一海か! ちょっと相談があるんだが....』
「....何だよ」
『実はだな、家の借金問題が解決しそうなんだ』
「それはおめでとさん」
『それで、ここからが重要なんだが、雇い主が俺に出す給料が
相場の五倍なんだ』
「....マジか?」
俺はそれを聞いて耳を疑った。
『あぁ、マジだ』
「俺的には闇営業にしか思えないんだが....」
『俺もそう思ったんだが、雇い主は親父の知り合いだから
問題ないんだ。ただ、生徒に問題があってな....』
「不良か?」
『昨日、食堂で会った女だ』
「....成る程。つまり俺に仲を取り持って欲しいと」
『話が早くて助かる!』
「....はっきり言って、自業自得だと思うんだが」
『ぐっ!? それはごもっともなんだが....』
「一度謝ろうとしてみろ。それで無理だったら手伝ってやる」ピッ
俺はそう言って電話を切った。
「(....めんどくさい事に)」はぁ
そう思いながら、俺は学校に向かって歩き出した。
〜授業中〜
「(....アイツ、謝ったんだろうか)」
国語の授業中、出された課題のプリントを解きながら上杉の事を考えていた。
「(アイツ、コミニケーション能力に関しては皆無に等しいからな。
状況を悪くしないと良いんだが....)」
そうやって考えていると、誰かに肩を叩かれた。
見てみると、叩いてきたのは中野だった。
「ねぇ、ちょっと良い?」
「何だ」
「この問題ってどうやって解くの?」
中野が見せてきたのは、文章題の記述問題だった。
「あぁ、これはな....」
俺は問題と文章の所に線はいくつか引いた。
「まず、何を問われているかをよく見ろ。今回のだったら、
作者の考えを書かないといけないだろ?」
「えぇ」
「で、ここに“しかし”ってあるだろ。この逆接があると
だいたい次の文から作者の考えが始まる」
「なるほど....」
「後は必要な部分を抜き出して、字数に合うように書けば解けるはずだ」
「そうなのね。教えてくれてありがとう」
「別に良い....てか、言って悪いんだが遅すぎないか?」
中野に聞かれた問題は大問1の(3)だった。
「べ、勉強は苦手なのよ....」
「(苦手ってレベルじゃないだろ....)」
口には出さなかったが、俺は心の底からそう思った。
「(ちょっと手を貸してやるか....)」
「取り敢えず、中野。記述は飛ばして記号と漢字のところを先に
終わらせろ。記述で時間をかけて解けない方がもったいないからな。
それが解け終わったら記述のところをやれ。わからなかったら
ヒントは教えてやる」
「わ、わかったわ」
そう言って中野は漢字と記号問題の所を解き出した。
「(....俺もわかりやすい説明を考えるか)」
俺は自分のプリントに線や重要な所に丸を書き始めた。
〜昼休み〜
「ねぇ、胡蝶君。一緒にお昼食べない?」
「....はい?」
昼休みになり、俺は食堂に向かおうとしたら横から中野にそう言われた。
「国語の時間、教えてくれたお礼がしたいのよ。アレ、授業中に
終わらなかったら宿題になるんでしょ? 先生から聞いたわ」
「(あのおしゃべり教師め....いらんことを....)」
「....別に礼なんて要らないんだが」
俺は断ろうとしたが....
「いいから! 胡蝶君が気にしなくても私が気にするの!」
「....はぁ、わかった」
中野の圧に負けて断りきれなかった。
「じゃあ早く行きましょ! みんなも待ってるわ」
そう言って俺は腕を掴まれて食堂に歩き始めた。
その時に、クラスの男どもは恨めしそうに俺の方を見ていた。
その時、俺はある言葉が気になった。
「(みんな....?)」
〜食堂〜
「....あ」
「あ、こんにちは胡蝶君」
「五月、胡蝶君の事知ってるの?」
「はい。昨日一緒にお昼を食べた時に知り合ったんです」
「へぇ、そうだったのね」
「なぁ、二人は知り合いなのか?」
二人の会話に俺はついていけなかった。
「あ、ごめんね。五月は私の妹なのよ」
「あぁ、双子ってわけか」
「違いますよ。私達は五つ子なんです」
「....悪い、もう一回言ってくれないか」
「五つ子なんです」
「(聞き間違えじゃなかったか....)」
俺はそれを聞いて、一瞬思考が停止した。
「五つ子....五つ子?」
「言っておくけど、嘘じゃないわよ」
「いや、別に疑ってるわけじゃないんだが....」
「二人ともおまたせー!」
「....その人誰?」
話していると、急に後ろから声が聞こえた。
振り向いて見ると、そこには中野に似たようなカチューシャを
つけた女とヘッドホンをつけた女がいた。
「中野の姉妹か」
「はい! 中野 四葉です!」
「....中野 三玖。あなたは?」
「胡蝶 一海だ。中野 二乃と同じクラスだ」
「そうなんですね!」
「....よろしくカズミ」
「おう。....これで後一人か」
「はぁ。一花、何してるのよ....」はぁ
「ごめんごめん! おまたせ!」
そう言って二乃がため息をついた時、ピアスをつけた女が現れた。
「遅いわよ一花!」
「いや〜、ちょっと話し込んでてね。それで、そこにいる少年は?」
「私のクラスメイトの胡蝶 一海君よ」
「そっか、よろしくねカズミ君。私は中野 一花。一花って呼んでくれていいよ」
「わかった。よろしくな一花」
「さてと、じゃあお昼食べよっか」
「ですね! いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
〜〜〜〜
「じゃあねカズミ君」
「また一緒に食べましょうね!」
「....バイバイ」
「二乃の事、よろしくお願いします」
そう言われて、俺は四人と別れた。
「....スゲェ似てるな、お前ら姉妹」
俺は隣にいた二乃にそう言った。
「まぁね。....あ、そうだ。私の事も名前で呼んでくれて良いわよ」
「良いのか?」
「中野呼びだと誰かわからないでしょ? それに、四人の事を名前で
呼んで私だけ名字呼びは嫌なんだけど」
そう言って、二乃はふてくされたように言ってきた。
「わかった、二乃」
「それで良いわ。さ、早く教室に戻りましょ」
そう言われ、俺は二乃と一緒に教室に戻った。
〜放課後〜
「一海!」
帰るために靴を履き替えていると、急に後ろから上杉に呼ばれた。
「どうした上杉」
「五月を見なかったか!」
「五月? 五月ならさっき門の外に出て行くのを見たぞ」
「そうか! ありがとな!」
そう言うと上杉は、門の方に走っていった。
「(何するつもりなんだアイツ....)」
そんな事を考えながら、俺は門を出て家に向かって歩き始めた。