俺が信じる道   作:アイリエッタ・ゼロス

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100点(五人合わせて)

 次の日

 

「それじゃあ。いってきます」

「「いってらっしゃーい」」

 俺は二人にそう言って家を出た。

 そして、しばらく歩いていると後ろから声をかけられた。

 

「よぉ、一海....」

「上杉か。....どうした朝から」

 俺に声をかけてきた上杉の声には覇気がなかった。

 

「あぁ、実はな....」

 話を聞くと、家庭教師に行った上杉を待っていたのは地獄と

 形容してもいいものだった。

 生徒は中野姉妹五人で、四葉を除く四人はまるで授業を受ける気配がなかったらしい。

 さらには二乃に睡眠薬を盛られ、五月には家の事情も知られたらしい。

 

「....なんて言うか、災難としか言いようがないな」

「全くだ! だが俺は一つ思いついた」

「何を」

「雇い主からは五人を卒業させるように言われた。ならば、赤点候補だけに

 授業をすればいいことになぁ!」

「へぇ....」

「(多分、二乃はOUTだな....)」

 二乃には失礼だが、俺はそう思ってしまった。

 

「そこで一海に頼みがある。今日、テストをやってもらうんだが

 一緒に来てくれないか?」

「....は?」

「俺一人で行ったら、また睡眠薬を盛られるかもしれない。

 それに俺は五人全員に警戒されてるが、昨日一緒に昼飯を食べていた

 お前を連れて行けば警戒が緩くなるかもしれない」

「安直だな....てか、何で知ってる」

「俺が食べてた所から見えてたからな。....それで、頼めないか?」

「(....今日は手伝いもないしな)」

「わかった....その頼み、聞いてやるよ」

「本当か! じゃあ放課後にPENTAGONっていうタワーマンションに来てくれ」

「了解」

「じゃあ頼んだぞ!」

 そう言いながら、俺達は学校の中に入った。

 

 

 〜放課後〜

 

「ここか....」

「(高級マンションじゃねぇか....)」

 俺は上杉に言われた通り、PENTAGONというタワーマンションの

 前に来ていた。

 

「てか、なんで上杉はいないんだよ....」

 マンションの前に来たのはいいが、上杉の姿はどこにも見えなかった。

 

「あれ、胡蝶さん!」

「....何してるのカズミ」

 すると、後ろから声をかけられた。

 振り向くと、そこには三玖と四葉がいた。

 

「三玖と四葉か」

「こんな所でどうしたんですか?」

「....上杉って奴にここに来てくれって言われて待ってるんだよ」

「上杉....もしかして、フータローの事?」

「あぁ」

「そうなんですね! あ、だったら私達の家で待ってますか?」

「良いのか?」

「はい! 私も胡蝶さんとお話ししたいですし。三玖も良いよね?」

「....うん」

「....じゃあ、お邪魔させてもらうな」

「はい! どうぞどうぞ!」

 そう言われ、俺は中に案内された。

 

 

 〜中野邸〜

 

「ただいまー!」

「ただいま....」

「お邪魔します」

「おかえり、って、何で胡蝶君がいるのよ!?」

「胡蝶君!?」

「あ、やっほー」

「来てくれたか一海!」

 俺が家の中に入ると、私服姿の一花、二乃、五月と制服姿の上杉がいた。

 

「来てくれたか、ってどういう意味よ!」

「お前にまた睡眠薬を盛られるかもしれないからなぁ! 

 その対策の為に来てもらったんだよ!」

「....そういう訳だ。急に邪魔して悪いな」

「い、いえ! 気になさらないでください!」

「よし! これで全員揃ったな!」

 そう言って上杉は仁王立ちした。

 

「お前達、昨日家庭教師はいらないって言ったな」

「えぇ、確かに言ったわ」

「ならそれを証明してくれ」

 そう言って上杉は机の上にプリントを置いた。

 

「昨日やろうと思っていたテストだ。このテストで合格ラインを

 超えた奴には金輪際近づかないと約束しよう」

「「「「「!」」」」」

 上杉がそう言うと、五人の表情は変わった。

 

「勝手に卒業していってくれ」

「....その約束を守るという保証は?」

「一海だ」

「....は?」

「あいつが証人だ。俺でダメなのはわかっていたからな。

 あいつが証人なら文句はないだろ?」

「(なんか勝手に証人にされた....)」

「....いいでしょう」

「....五月、あんた本気?」

「合格すればいいだけです。それでこの人の顔も見なくて済みます」

「そういう事ならやりますか....」

「みんな頑張ろ!」

「....合格ラインは?」

「60、いや50あればいい」

「....はぁ、別に受ける義理はないけど。あんまり私達を見くびらない事ね」

 そう言って五人は机の周りに座った。

 

「よし、なら試験かい....」

「あ、ちょっと待った」

 上杉が言おうとした瞬間、二乃が止めた。

 

「何だ」

「ちょっと待ってなさい」

 そう言って二乃はキッチンの方に行った。

 

 そして五分ぐらいするとティーカップとポットとクッキーを

 乗せた皿を持ってきた。

 

「胡蝶君、これでも食べて時間潰して」

「良いのか?」

「お客様にお茶も何も出さないのは流石にね」

「....なら、ありがたく頂く」

「えぇ」

 そう言って二乃はさっきまで座っていた場所に戻った。

 

「よし、今度こそ試験開始!」

 そう言って五人の試験は始まった。

 俺はそれを横目に見ながら椅子に座ってクッキーを食べ始めた。

 

「(美味いな....見たところ手作りみたいだが、二乃が作ったのか?)」

 そんな事を考えながら、俺は五人の様子を呑気に観察していた。

 

 

 〜1時間後〜

 

「試験終了だ」

 試験を始めて1時間が経ち、上杉の言葉で試験が終わった。

 

「今から採点をするから待ってろ」

 そう言って上杉は採点を始めた。

 

「上杉、半分やろうか?」

 クッキーも食べ終わり、ゲームをして暇を潰していた俺はそう言った。

 

「あぁ、なら半分頼む」

 上杉から二枚の解答用紙と模範解答を受け取り、俺は採点を始めた。

 

「(まずは四葉か....)」

 俺は解答を見ながら丸付けを始めたが....

 

「(....何だこの解答)」

 四葉の解答は、言っちゃ悪いがわけのわからない解答が多かった。

 

「(どうやってこんな答えになるんだよ....)」

 俺は口には出さなかったが、お世辞にも勉強が出来る出来ない以前の

 問題だと思ってしまった。

 そして最後まで丸付けをした結果、四葉の点数は6点だった。

 

「(頭痛がするような点数だな....)」

 俺は咄嗟に頭を押さえた。

 

「(まさかと思うが....)」

 俺は次のテストの丸付けを始めた。

 解答の名前のところを見ると、一花の物だった。

 そして、採点の結果、一花の点数は10点だった。

 

「(....)」

 俺は何も言わずに上杉にテストを返した。

 そして、全ての丸付けが終わり上杉は立ち上がった。

 

「凄いぞお前達! 100点だ! ....全員合わせてなぁ!!」

「....はぁ」

 俺は少し呆れて溜息が出た。

 

「お前ら、まさか....」

「逃げろ!」

 上杉が何かを言おうとした時、五人は一斉に逃げた。

 そして各々部屋に入り鍵をかけてしまった。

 

「....逃げられたな」

「....あいつらァァ!」

 

 

 〜〜〜〜

 

 結局、上杉は諦めて帰っていった。

 そして、俺も帰ろうと思ったが....

 

「(一応、礼は言わないとな....)」

 そう思い、俺は二乃が入っていった部屋の扉を叩いた。

 

「二乃、少し良いか?」

「....なに」

 二乃は扉越しから不機嫌そうに言った。

 

「俺も帰るが、クッキーと紅茶、ご馳走さま。美味かった」

「....そ。なら良かったわ」

「あぁ。じゃあまた明日」

 俺はそう言って扉から離れ、中野邸を出た。

 

 

 〜〜〜〜

 

 二乃side

 

「(二人とも、帰ったみたいね)」

 私は外の様子を確認して部屋を出た。

 

「(それにしても、私のクッキー、口に合ったんだ....)」

 私は、さっき胡蝶君に言われた事を思い出した。

 

「(ちょっと嬉しかったな....)」

「えへ、えへへ」///

「....二乃?」

「どうして笑ってるんですか....?」

「っ!?」

 私が少しニヤついていたら、後ろには三玖と五月がいた。

 

「あ、あんた達いつの間に!」

「....二乃が急に笑いだした時から」

「それで、何もないところで笑ってどうしたんですか?」

「あ、あんた達には関係ないわよ!」///

 私はそう言って逃げるようにキッチンの方に向かった。

 

「どうしたんでしょう?」

「さぁ....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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