俺が信じる道   作:アイリエッタ・ゼロス

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中間テストに向けて

「一海、俺はどうしたらいいんだ!」

「いや、俺が知るかよ....」

 花火大会が終わって少し経ち、一週間後には中間テストが迫っていた。

 そして、今俺は屋上で上杉の相談を聞いていた。

 

「てか、五人の中で一人でも赤点なら解雇って....いくらなんでもハードルが

 高すぎるだろ。しかも五人中、一人は無視されてて、一人は喧嘩中って」

 昨日上杉は、雇い主から電話で今度の中間テストで一人でも赤点を取ったら

 解雇と言われたらしい。そしてすぐその後、五月と大喧嘩をして話を聞いて

 貰えない状況になったそうだ。

 

「お前、この状況どうすんだよ」

「それが分からないからお前に相談してるんだよ....」

 そう言った上杉の表情は暗くなった。

 

「....何か良い案はないか?」

「良い案って言われてもな....」

 俺は必死に考えた結果....

 

 〜〜〜〜

 

「二乃、少し良いか?」

「どうしたの胡蝶君?」

「中間テストの勉強、良かったら一緒にやらないか?」

「えっ!?」

 俺が思いついたのは、二乃に上杉の代わりに勉強を教える事だった。

 

「ど、どうして急に!?」

「来週中間試験だろ。なのに二乃、上杉の家庭教師受けてないんだろ?」

「そ、それは....」

「このままだと、赤点はほぼ確実だと思うぞ」

「っ、よ、余計なお世話....!」

 俺がそう言うと、二乃は言い返そうとしてきたが....

 

「そうか? もしも、アイツら四人が赤点回避して自分だけ赤点だったら嫌だろ? 

 家族の事を誰よりも大切にしてるお前なら尚更な」

 俺は半分脅迫まがいな事を言った。

 

「それは....! そうだけど....」

「だろ? だからさ、一緒にどうだ?」

 俺がそう言うと、二乃は....

 

「....わかったわよ。でも、一つ条件があるわ」

「条件?」

「もしも、もしも私が赤点回避できたら何かご褒美が欲しいわ」

「ご褒美か....じゃあ何か一つ言う事を聞くとかで良いか?」

「っ! えぇ! じゃあ約束よ」

「あぁ。じゃあ今日の放課後からやるからな」

 そう言って、俺は二乃を勉強させる事に成功した。

 

 

 〜放課後〜

 中野邸

 

 放課後になり、俺は中野邸にお邪魔していた。

 

「二乃、その公式は別のやつだ。そこで使う公式はこっちだぞ」

「えっ....」

 そして、今俺は二乃に数学を教えていた。だが、二乃の数学の出来はあまりにも

 酷いものだった。

 

「(....数学でこれって、他の教科を見るのが恐ろしいな)」

 俺はそんな事を考えながらも、二乃にテスト範囲のところを教えていった。

 

 〜〜〜〜

 

「うぅ....頭が痛い....」

「まぁ、お疲れさん....」

「(....このペースだとマズイな。範囲の所が全部終わる気がしねぇ....)」

 そう考えながらも、俺は片付けを始めた。

 

「じゃあ今日はここまでな。今日やった所の復習はしておくんだぞ」

「ま、まだやらないとダメなの....!?」

「あぁ。せっかくやったのに抜けるのはもったいないからな。出来る範囲で

 復習はしておいてくれ」

「うぅ....わかったわよ....」

「頼むぞ。....じゃあ俺は帰るな。また明日」

「えぇ....明日もよろしくね」

 そう言われて、俺は中野邸を出た。

 

 〜外〜

 

「あ」

「あれ、カズミ君?」

「どうしてここにいるのカズミ?」

「こんばんは胡蝶さん!」

「胡蝶君?」

 俺が外に出ると、丁度一花達が帰ってきた。

 

「よう。今帰りか?」

「そうだよ。それで、カズミ君はどうしてここにいるの?」

「さっきまで二乃に勉強を教えてたんだよ」

「二乃にですか?」

「あぁ。定期テストのな」

「へぇ〜、そうだったんですねぇ」

「二乃、カズミには教えてもらうんだ」

「まぁ二乃、面食いな所あるからねぇ。カッコいい男の子に教えてもらうのは

 嬉しいんじゃないかな?」

「面食い?」

 俺は一花の言葉に疑問を持った。

 

「あ、カズミ君は知らないよね。二乃って面食いなんだよ」

「....そうだったのか」

「(だから俺には聞くんだな....)」

 二乃が俺にわからないところを聞く理由がようやくわかった。

 

「ま、そういう訳だから。二乃を狙うならチャンスだよ?」ニヤニヤ

 一花はすごく悪い笑顔をしていた。

 

「別にそういう事はしねぇよ」

「ホントかな〜?」

「めんどくせぇなお前....俺はもう帰るからな」

 俺はそう言って歩き出した。

 

「ま、いっか。じゃあねカズミ君」

「おやすみ」

「胡蝶さんまた明日!」

「さようなら胡蝶君」

「おう」

 俺は手を振って家に帰った。

 

 

 〜自宅〜

 

「あ、おかえりなさい一海君!」

「一海君おかえり」

「ただいま甘菜さん、空夜さん」

 俺が家に帰ると、甘菜さんと空夜さんは晩ご飯を机に並べていた。

 

「さ、ご飯はできてるよ!」

「ありがとうございます、甘菜さん」

 俺はそう言って、服を着替えて晩ご飯を食べ始めた。

 

「テスト勉強はどう? 順調?」

 俺が晩ご飯を食べていると、急に甘菜さんがそう聞いてきた。

 

「はい。まぁ、ちょっと問題はありますけど....」

「問題?」

「何かあったのか?」

「えぇ。実は....」

 俺はさっきまでの事を話した。

 

 

「あらら....」

「それは確かに問題だね....」

「ですよね....」

 話を聞いた二人は表情が引きつっていた。

 

「ま、誘ったからには最後まで面倒は見ようと思いますけどね」

「あはは....頑張ってね」

「はい」

 そう言って食事は続いた。

 

 

 〜自室〜

 

 食事も終わり、風呂に入った俺は自分の部屋にいた。そして、俺はある男に

 電話をかけていた。

 

「あ、上杉。今良いか?」

『どうかしたのか一海?』

「二乃と中間試験の勉強をする事に成功したぞ」

『何!?』

 電話越しにでもわかるほど、上杉は驚いていた。

 

『それは本当か!』

「あぁ」

『ありがとな一海!』

「別に良い。それよりも、お前はさっさと五月と仲直りしろよ」

『うっ....わかっている....』

「なら良い。じゃあな」

 そう言って俺は電話を切った。

 

「さてと....」

 俺は自分の机の上に広げたノートを見た。

 

「明日からどうするか....」はぁ

 

 

 

 

 

 


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