俺が信じる道   作:アイリエッタ・ゼロス

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結果と二乃の変化

 中間テストが終わり、今日はテストの返却日だった。

 俺は今、上杉と図書室にいた。

 

「それで、二乃はどうだった?」

「理、数、社は赤点。国、英はセーフだった」

「そうか....」

「まぁ、最初の頃に比べたらだいぶマシだろ。五人揃って100点の時と比べたらな」

「まぁな。ありがとな一海。二乃の事見てくれて」

「俺は別に良いが....お前、これからどうするんだよ」

「決まってるだろ。他のバイトを探すだけだ」

 そう言って話していると、図書室に五人が入ってきた。

 

「二人ともお待たせしました。四人を連れてきました」

「そうか。とりあえず全員そこに座ってくれ」

 上杉がそう言うと五人はそれぞれ座った。

 

「ひとまず集まってもらって悪いな」

「今更どうしたの? 水臭いなぁ」

「中間テストの報告。間違えたところ、また教えてね」

「....あぁ。とにかくまずは答案用紙を見せてくれ」

 上杉は三玖の言葉に少しだけ申し訳なさそうな表情をしたが、すぐにいつもの

 表情を戻してそう言った

 

「....見せたくありません」

 だが、五月はそう言って拒否した。

 

「テストの点数なんて他人に教えるものではありません。個人情報です。

 私は断固拒否します!」

 五月は俯いて申し訳なさそうな表情になった。

 

「五月ちゃん?」

「五月?」

 それを見て一花達は心配したような表情になった。それを見て上杉は....

 

「五月。俺も覚悟はしてる。だから教えてくれ」

 そう言って上杉は覚悟を決めた表情になった。

 

「....わかりました」

 そう言って五月は答案用紙を机に置いた。それを見て他の四人もそれぞれ

 答案用紙を机に置いた。

 

「一花は数学と英語、二乃は英語と国語、三玖は社会と理科、四葉は国語と社会、

 五月は理科と数学か....」

「ま、初めの頃と比べたら確実に成長はしているな」

 五人の点数を見た上杉に俺はそう言った。

 

「まぁな。....三玖、今回のテストで70点は大したもんだ。これからは四人に

 教えられるところは自信を持って教えてやってくれ」

「え?」

「四葉はイージーミスが目立ちすぎるぞ。焦らず慎重にな」

「了解です!」

「一花は一つの問題に拘らなさすぎだ。最後まで諦めんなよ」

「はーい」

「二乃、お前は最後まで一海に任せっぱなしだったな。だが、話しを聞く限り

 しっかり勉強はしてくれたみたいだな。これからもしっかりやれよ」

「....余計なお世話よ」

 上杉は四人にそう言ってアドバイスをしていた。

 

「フータロー! 他のバイトってどういう事? 来られないって....

 どうしてそんなこと言うの?」

 三玖は悲しそうな表情でそう言った。それを聞いて上杉は目を背けた。

 

「三玖。とりあえず先に上杉に話させてやってくれ」

「カズミ....」

 俺はそう言って三玖を止めた。

 

「....すまん一海。さて、最後に五月。お前は本当に不器用だな!」

「なっ!?」

「一問に時間かけ過ぎて全部解けてねぇじゃねか」

「....っ、反省点なのは分かってます」

「....なら良い。次からは気をつけろよ」

 上杉がそう言い終わると誰かの電話が鳴った。鳴った電話は五月の物だった。

 

「....父です」

 五月はそう言って上杉に携帯を渡した。

 

「上杉です。はい....はい....」

 上杉は五人の父親と話していた。

 

「分かっています。ただ、次からは俺なんかよりもっと良い家庭教師をつけて

 やってください。コイツらは出来る奴等ですから」

 上杉がそう言って、次の言葉を言おうとしたその瞬間....

 

「....」パシッ

「え?」

「(二乃....?)」

 二乃が急に上杉の通話していた電話を取り上げた。

 

「もしもしパパ? 二乃だけど。隣から話しは聞こえていたんだけど何となく

 事情がわかったんだけどどうしてこんな条件を出したの?」

 二乃は事情がわかったかのように父親と話していた。

 

「そう....私達のためってことね。ありがとうパパ。でも、相応しいかどうかなんて

 数字だけじゃわからないと思うけど?」

 二乃がそう言って少しすると、一瞬三玖の方を見てこう言った。

 

「....そ。じゃあ教えてあげる。私達五人で五教科全ての赤点を回避したわ」

「なっ!?」

「二乃!?」

 二乃がそう言った瞬間、俺と上杉は二乃の方を見た。

 

「嘘じゃないわ。本当よ」

 二乃はそう言って少しすると電話を切って五月に携帯を返した。

 

「おい二乃....今のは....」

 上杉は二乃に近づいて恐る恐る聞いた。

 

「私は英国、一花は英数、三玖は理社、四葉は国社、五月は理数。五人で五教科クリアで

 嘘をついてないわ」

「んなのありかよ....」

「言っておくけどこの手は二度と通用しないわ。だから、次は実現させてみなさいよ」

「....あぁ、やってやるよ」

 上杉がそう言うと、上杉に一花と四葉が近づいていった。五月も五月で三玖に近づいて

 何かを言っていた。俺は二乃に近づいて聞いた。

 

「二乃、どういう風の吹き回しだ?」

「別に....アイツが解雇になったら三玖が悲しむと思ったから。ただそれだけ」

「....良かったのかよ?」

「わからない。でも、今は良かったと思ってるわ」

「そうか....」

 俺はそれ以上何も言わなかった。

 

「それよりも。勉強教えてくれてありがとうね胡蝶君。初めてあんなに良い点数を取れたわ」

「そうか。一応上杉にも礼を言っておけよ。教材作ったのは上杉だからな」

「....気が向いたらね」

 そう言って話していると四葉が手を挙げてこんな提案をした。

 

「せっかくですし、このまま復習しちゃいましょう!」

「えっ....普通に嫌なんだけど」

 そう言って二乃は逃げようとした。

 

「こらこら。逃げない逃げない」

 だが、一花が二乃を捕まえて逃さなかった。

 

「そうだな。テストが終わった後の復習は大切だ。だが、直後じゃなくてもいいな」

「はっ?」

 上杉の発言に俺は驚いた。そして上杉は顎に手を置いて目を逸らしてこう言った。

 

「ご褒美....だったか? 確かパフェとか言ってたよな....」

 そう言った瞬間、五人は笑い出した。

 

「何故笑う....!」

「いや! フータロー君がパフェって!」

「超絶似合わないわ!」

「そ、そんな事ないだろ! 一海も何か言ってくれ!」

「いや、二乃の言う通りだろ。少し前のお前なら絶対聞かない単語の一つだぞ」

 上杉の言葉に俺は冷静にそう返した。

 

「お、お前までそう言うか....」

 上杉は少しショックを受けた表情になった。

 

「ほら、ショックを受けてるのはわかりましたから。早く行きましょ」

「駅前のファミレスで良いよね?」

「そうだね! お店が混む前に行かないと!」

「だってよ。さっさと行ってこい」

 俺はそう言ってカバンを持って帰ろうとしたが....

 

「ちょっとちょっと! カズミ君も行こうよ!」

「そうですよ! せっかくなんですから!」

「うん。カズミのお陰でもあるんだから」

 そう言って一花、四葉、三玖に道を防がれた。

 

「そうだぞ一海....一人だけ逃げようとはさせねぇぞ」

 そう言って上杉は肩を掴んできた。

 

「....はぁ。わかった。行けばいいんだろ、行けば」

 俺は諦めてそう言った。

 

「では早速行きましょう!」

 四葉の言葉で俺達は図書室を出て学校の外に出た。

 

 

 〜数時間後〜

 

「....悪いな一海。アイツらの分奢ってもらって」

 ファミレスでパフェを食べた帰り道、上杉がそう言ってきた。

 

「別にいい。この前給料入ったばかりだからな。それほど痛い出費でもねぇよ」

「将来、出世払いで返す」

「まぁ楽しみにして待っておく」

「二人とも何の話しをしているんですか?」

 俺と上杉が何か話しているのを不思議に思ったのか、五月が聞いてきた。

 

「ちょっとした世間話だ。気にすんな」

「?」

「ほら、さっさと行くぞ」

 上杉はそう言ってどんどん進んでいった。

 

「俺らも行くぞ五月」

 そう言って俺も上杉の後を歩いた。そして俺達は五人を家まで送った。

 

「じゃあなお前ら」

「二人とも、また明日」

「上杉さん、パフェごちそうさまです!」

「二人ともまたね〜」

 それを聞いて上杉は帰ろうとしたが、俺は帰ろうとせずに二乃に近づいたこう聞いた。

 

「二乃」

「なに?」

「ご褒美のこと覚えてるか?」

「ご褒美って....何か一つ言う事を聞くって事?」

「あぁ。何か考えておいてくれ」

「ちょ、ちょっと待って! 私は赤点回避してないわよ!」

 二乃は慌ててそう言ってきた。

 

「まぁな。でも、英語と国語は回避しただろ? 俺も全教科とは言ってないからな」

「そ、それは....」

「それに、何だかんだ言いながらもちゃんと勉強してたからな。今回は特別にな」

「....良いの?」

「あぁ」

「....わかったわ。じゃあ決まったらまた電話するわね」

「了解。じゃあな」

 俺は五人に手を振って家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 


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