転生アラガミの日常   作:黒夢羊

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どうも皆様、黒夢羊です。

書き始めた当初からは全く想像が出来ないくらい多くの方にこの作品を読んでもらい、それだけではなく評価や感想まで……。
まだまだ始まったばかりですが、読んでくださりお気に入りにしてくれた方や、感想と評価をくれた皆様にはそれでも感謝してもしきれないくらいです。
本当に有難う御座います。


それでは本編へどうぞ。




第11話 とある神機使いの不幸な後日談(アンラッキー・レタートーク)

接触禁忌種。それは読んで字の如く、接触が禁忌とされるアラガミ。

接触禁忌種と言えど第一種接触禁忌種と第二種接触禁忌種がおり、第一種の方が強いとされるが、第二種も俺達普通の神機使いからすれば絶望すらできる凶悪な強さを持つ。

このセクメトはシユウ神属の第二種接触禁忌種。通常のシユウよりも硬い装甲に加えて、スタン攻撃などを行ってくる非常に厄介な存在だ。

 

俺は急いでヒバリちゃんに通信を入れる。

 

 

「ヒバリちゃん!こちらジンだが、たった今接触禁忌種のセクメトと遭遇した!至急増援を求める!」

 

「ッ!?分かりました、今から接触禁忌種に対応できる方は……作戦地域近辺にブラッドの方々が居ますので対応に向かってもらいます!!」

 

「了か……いっ!」

 

通信に気を取られた一瞬の隙をついてセクメトが肉薄し、翼腕を用いてこちらの体を切り裂こうとする。

それを間一髪バスターソードで防ぐと、後ろに軽くステップで後退し3人に指示を出す。

 

「いいか?お前らは撤退しろ!」

 

「で、ですがッ!」

 

「ここでお前らが死んだら俺が困るんだよ!」

 

そう言いながら過去の景色が、言葉がフラッシュバックする。

もう何度も見てきた。目の前でかつての同僚が、そしてその次は後輩が死んでいくのを。

もう何度も聞いてきた、死を前に俺に「思い」とかいう厄介なもんを託してきたり、俺の預かり知らぬところで死んでいった奴らの遺言を。

 

 

まだ未熟ではあるが、コイツらの実力は確かだ。

成長すればきっと俺よりも多くの仲間を助けられる神機使いになれるはずだ。

なら、ここで金……は過大評価だな、銀の卵を潰してたまるかってんだ!!

 

 

3人が逃げるのを手間取っている間にもセクメトは絶え間無く攻撃を仕掛けてくる。

しかし、未だにフェロモンの効果が残っているのか狙ってくるのは俺ばかり。

キツイがそれでも今この時ばかりはありがたかった。

 

「いいから早く走れ!俺がいつまで持つかわからん!」

 

「────ッ!行きましょう二人とも!」

 

そう言いながら苦虫を噛み潰したかのような顔をしながら二人をつれて逃げようとする。

そうだ、それでいい。

やっとこさ3人が逃げるのを視界の端に捉えた俺は少しだけ安堵──

 

「グォォォォォ!」

 

「何ッ!?」

 

──しかけた所で、人間のモノでも眼前のセクメトのモノでもない獣の叫び声が聞こえた。それに続いたのは、キルスの動揺の色を含んだ声。

3人を庇うようにセクメトの前に立ち塞がりつつ後ろを見ると、そこには2体のシユウが3人を挟むように降り立っていた。

 

 

セクメトの腰巾着か!腰巾着というにはずいぶん厄介なモノだが。

しかし、そんな悠長なことを考えている暇は無い。俺は3人を信じて指示を出す。

 

「お前ら!お前ら3人でそいつらを相手しろ!」

 

「逃げろって言う話じゃないんですかねっ!」

 

「馬鹿かキルス!俺に3体も相手しろってのか!」

 

例え接触禁忌種のスサノオを相手にしたとして耐えるだけならば俺でさえ万全の状態で10分、疲弊していたとしても5分は稼げる。

しかし、こういう数に物を言わせてくるタイプはキツイ。

コイツらを逃がす為には、最悪シユウ2体にはご退場願わないと行けない。

隊長だと言うのに情けない話だよ畜生。リンドウならこんな時は一人で相手するんだろうけどな。

 

「そのシユウらを倒したらすぐに逃げろ!コアの確保なんてほっとけ!」

 

「…了解!」

 

返ってきたのはキルスの返事のみ。後の二人からは返ってこなかった……しかし、気配はしっかりと感じているので生きているはずだ。

返事が出来なかったのはここから俺を置いて逃げることが何を意味しているかを理解しているからなのかもしれない。

 

 

それでもやらなければならない。

俺はコイツらを生かさなきゃいけない。ガラじゃあないが、人類の未来のためにも。これからアイツらが救うだろう多くの命の為にも。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

「これで……終わりっ!」

 

「ヴォォォォオオオオ!?」

 

ドサリ。と後ろから先程も聞いた何かが倒れる音がする。

どうやら2体とも倒し終えたようで、そのまま足音が遠ざかる──筈が、音が無くなる。

何があった──そう俺が聞く前にキルスが大声で叫ぶ。

 

「隊長!」

 

「何……だっ!忙しいってのが見てわかんだろうが!!」

 

「後で会いましょう!絶対に!」

 

「……おう」

 

……馬鹿だな、アイツは。そんなものをしたら悲しくなるのは分かっているだろうに。

ああ、仕方ないな──ブラッドが来るまでどうにか持ちこたえ──!?

 

 

今まで難無く振るえていた神機が、突如重くなる。それは俺だけに起こっている訳では無いらしく、後ろの3人も同様に驚愕しているようだ。

そうしている間にもセクメトは攻撃の手を緩めようとはせず、翼腕を此方へ向けて殴りかかってくる。

俺はそれを防ごうとシールドを展開──できない!?

 

「うおっ!?」

 

咄嗟の判断で横に転がり攻撃を避けるが、未だに今起きた異常な状態に理解が追い付いていない。

視界にセクメトを捉えつつ3人の方を見るが自分に起きている状況と同じように感じる。

 

「お前ら!神機は動くか!?」

 

「いいえ、全く動きません!」

 

「同じく!」

 

「私もです!」

 

俺の問いかけにリヴ、キルス、イースの順に答える。

その答えはどれもこの状況において絶望を知らせるものであり、3人を無事に生還させる難易度が大幅に上がったことを示していた。

 

 

一体どういう事だ……?突然神機が動かなくなるなんて──っ、まさか。

依然俺に対して苛烈なアプローチを続けるセクメトを捌きつつ、周囲を見渡すがその面影は見受けられない─と思えばヒバリちゃんから通信が入る。

 

『近くに感応種の反応があります!至急撤退の準備を!』

 

「そういうことかい!生憎だがそいつぁ……厳しそうだ」

 

『どういう意味「すぐそこに居るんだよ!件の感応種とやらがな!」──ッ!』

 

昔は車が通っていたと思われる道路だったものの上に佇むのは、先程話していた感応種だろう。

あれは資料で見た覚えがある。確か・・・イェン・ツィーだったか?奴の能力は─なんだったか。

セクメト同様にそこだけ見れば女性特有の艶かしい体は、鮮やかな体毛に覆われ要所要所を隠している。

もしこれがアラガミじゃなければナンパぐらいしていたと思う。

 

 

そんな感応種──イェン・ツィーが指差すのは、後ろにいるリヴ。

イェン・ツィーが指差した数秒後、セクメトがいきなり俺から標的を変えてリヴの方へと向かった。

 

「何ッ!?」

 

それはリヴ達も同じだったようで、動きが一瞬固まる。

ちっ!そこはすぐに動け馬鹿!

持てる体力を総動員し、セクメトとリヴの間に入り込みポーチから1つのアイテムを持ち出して、叫ぶ。

 

「目ぇ瞑れ!」

 

反応を聞く前に栓を抜いて地面に叩きつける。

スタングレネード。爆発すると辺り一帯を光で包み込み相手の視界を一瞬奪い取り、その動きを止める事が出来る万能アイテムである。

セクメトの動きが止まった所で、ポーチに残っている挑発フェロモン剤を全て口の中に入れて無理矢理噛み砕く。

その効果は抜群なようで眼前のセクメトだけでなく、高みの見物をしていたイェン・ツィーまでも引き付けたようだった。

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

左右から迫る連撃をひたすら避ける。避け続ける。

一手間違えれば即死に繋がる綱渡りをかれこれ1分近く続けている。

通信は集中が切れてしまうので、こちらから無理矢理切った。

ブラッドが来るまで耐えるつもりだが一向に来る気配がない。何かしら妨害が入ったのか。

 

 

残りの3人と共に一定の距離を保ちつつトラップとスタングレネードでひたすら時間稼ぎを行っているが、これはあくまでもブラッドの増援を期待しての事だ。

もし来なければジリ貧以外の何でもなく、その先に待つのは死だけだろう。

 

「いい加減来いよっ……てんだ!」

 

イェン・ツィーの足払いを飛んで避けるが、苛立っていたのか、それとも続く連戦に頭が消耗していたのか。

このとき良く考えればセクメトの攻撃を受けないように、もしくは受け流しやすいように後ろに下がれば良かったものを。

飛んだことによって出来た無防備な瞬間をセクメトは見逃さず翼腕による一撃を神機の刀身で防いだとはいえ衝撃をモロに受けて、後ろへ吹っ飛ばされる。

 

「あっ、ぶっ、ねっ!?」

 

空中で何とか体制を立て直して地面に受け身を取らずに直接ドカンは避けられたが、顔を上げた俺の眼前にはセクメトの爪が迫っていた。

──ああ、俺死ぬんだなって思った俺は静かに目を閉じた。

 

 

 

しかし、来るはずの痛みはやってこず、不思議に思った俺が目を見開き見たのは、セクメトの爪が俺ではなく俺をかばったリヴの肩を引き裂いていた光景だった。

 

「くっ、このバカが!」

 

持っていた最後のスタグレを使い、目をくらましたその瞬間リヴを担いでセクメトから離れる。

 

「何をしてるんだ!この馬鹿!」

 

「馬鹿はどっちですか!」

 

「!?」

 

リヴの思いがけない返しに思わず身を竦めてしまう。

 

「『最後まで諦めるな』──そう教えたのは貴方なのに何で貴方が諦めるんですか!」

 

「──ッ!」

 

そう、俺はリンドウみたいに優秀じゃない。

だから教えられるのは1つだけだった……それが『最後まで諦めるな』。

最後まで諦めなければきっとこのクソッタレな世界を生き抜くことが出来ると。

 

 

……まさか、後輩に叱られるとは思っても見なかった。羞恥心と反省の念が渦巻く。

しかし、それと同時に覚悟を決めることが出来た。

眼前には飛びかかってくるセクメト。

きっとそれは難しいことなのだろう。だが、それを口にする。それはいままで諦めてきた自分に渇を入れるために。

 

「お前ら……生きて帰るぞ」

 

「「「了解!!」」」

 

そう四人で覚悟を決めた直後、上空から突如巨大な何かが降り立ちセクメトを踏み潰した。

その衝撃は思っていたよりも強かったらしく、下敷きにされたセクメトからは骨や筋肉が折れたり千切れたりするような鈍く嫌な音と酷く苦しみに満ちたような声が聞こえてきた。

 

「な、なんだ!?」

 

「また新手かよっ!!」

 

リヴとキルスが今日何回目か分からない驚きを含めた声をあげる……キルスはどちらかと言うと怯えの色が強い気もする。

 

 

俺はその姿に見覚えがあった。竜と人が混ざったかのような姿に、汚れの無い純白の表皮に包まれた威光を放つかのような黄金の体。

そこに差し色のように存在を際立たせる紫色の体毛。

そして通常の個体とは違う両腕に装備された文明的な装飾が施された籠手。

 

 

──ハンニバル特異種。

ハンニバルの中でも突然変異したと言われる神速種。それが更に進化したとされる個体。

極東でも未だに遭遇したゴッドイーターが限られる為、情報が圧倒的に不足している謎の存在。

良くも悪くも現在の極東支部に置いて中心的な位置に座しているアラガミが目の前にいた。

 

「くっ!このっ!」

 

「待て!」

 

身の危険を感じた為かキルスがスタングレネードを投げようとするがそれを慌てて制する。

奴は神機使いと遭遇した際に戦わずに逃走したと聞いた、つまりコイツの目的は俺達ではなく……。

 

 

俺の考えた通り、特異種は踏み潰していたセクメトを思いきり壁に蹴り飛ばしてイェン・ツィーへと向き直り接近する。

イェン・ツィーの方もオウガテイルのようなものを産み出して足止めさせようとするが、文字通り瞬殺され接近を許してしまった。

その後人間のような、しかし人外であるアラガミの身体能力が可能にしたような格闘術で俺達が苦戦していたイェン・ツィーを屠る。

 

 

イェン・ツィーが絶命したことによって先程まで重かった神機が軽くなり、再び動くようになった。それを確認していると、その間に奴は瀕死のセクメトに接近し叩き落としを食らわせて空中へと放り投げ、セクメトに反撃の余地を与えず容赦の無い拳を連続で叩き込み、最後の一撃で向かい側の通路まで吹っ飛ばしていた。

どう見たって絶命していたのは明らかであったが、慎重な性格なのか少しの間目線を逸らすことはなかった。

 

 

さて……どうするか。とは言っても、やることは1つだ。

逃げた所で、コイツの速さだと全員捕まえるってことも余裕だろう。ならばもうすぐ来るであろう希望の早い到着を祈りつつ、コイツと戦って時間を稼ぐしかない。

 

 

セクメトの死を確認し終えたのか、此方へと視線を向き直してくる。その威圧感に思わず後ずさりそうになるが、どうにかして堪える。

こちらの敵意が伝わったのか、特異種は低い唸り声を上げて威嚇のような行動をとった。それが怯えからか、それとも新たに獲物を見つけた歓喜から来るのかは分からない。ただ、俺は言い忘れていた事を3人に伝えた。

 

「すまないな……俺みたいな奴の部隊に入ったせいで」

 

「何言ってんですか!隊長には最後まで着いていきますよ!」

 

俺がそう自己嫌悪に陥っていると、キルスが何時ものように明るく返事をする。ただ、声は震えていたが。

 

「何真面目そうに振る舞ってるんですか変隊長。あと今更反省した所でどうしようもないです」

 

「そうですねぇ、まだ諦めるには早いですよ?」

 

リヴが血の流れる片腕を押さえながら立ち上がる。

それに続いて、イースも震えながらも軽口を叩く。

……最後の最後に俺は後輩に恵まれたのかもな。

 

「よし、覚悟は良いな?行くぞお前ら!」

 

そう己を鼓舞しながら神機の持ち手を強く握りしめ、特異種と戦う決意をする。

 

 

が、その特異種は戦闘とは真反対の行動をとった。逃走……しかも、自分が仕留めたセクメトとイェン・ツィーをちゃっかり小脇に抱えながら。

思わず拍子抜けした俺の口がぽかーんと半開きになってしまったのは仕方無いと思う。

 

 

そのすぐ後にブラッドの増援がやって来たが、俺達は全員思った。

 

『遅いわッ!!』

 

口に出さない辺り、そこら辺はしっかりしてると思う。

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

あれから1日経った俺達は疲労困憊の身だと言うのに榊博士にひたすら質問攻めを食らってしまった。

おいおい、こちらは怪我人だぞテメー。

 

 

まぁソレは良いんだ、まだな。今俺は大変面倒くさい事になっていてだな……こうして現実逃避しているんだが、そうもうまくは行かないらしい。

 

「隊長、こちらを食べてください」

 

そう言いながら、笑顔でフォークに刺さったお肉を俺に向けてくるイース。反対側から放たれるとんでもない威圧感を感じながらも引きつった笑みで答える。

 

「イ、イース?俺は一人で食えるから大丈夫だ」

 

「ダメです。隊長は安静にしてなきゃ行けないんですから私が食べさせてあげます!はい、あーん♪」

 

瞬間、背中の方から発せられる威圧感が殺意に近いものへと変わっていく。

もうこれに耐えきれる自信がなかった俺はその殺意を発している人物──リヴに話しかける。

 

「ど、どうしたんだリヴ?」

 

「は?何もありませんけどクズ」

 

「アッハイ」

 

文面だけみると、いつもなら軽口で返せるはずが返せる雰囲気ではない、絶対に。

そうして俺が再びイースに向き直ると、イースが「私不満です」とでも言いたげな位に不満げな顔を浮かべていた。

 

「ド、ドウナサレマシタイースサン?」

 

「別に何でもないですよ?はい、あーん」

 

「ヒィッ!!」

 

おかしい、笑顔な筈なのにイースが怖い。めっちゃ怖い。何故だ、日頃は問題児(リヴとキルス)に振り回される俺を気遣ってくれる癒しなのに今はその笑顔に癒しではなく恐怖しか感じない!!

しかもリヴさんの威圧感もとい殺意が凄いです!もうやめてリヴさん!それやったら後ろがヤバイんですって!

 

「照れなくても良いですよ?はい、あーん」

 

「……………………」

 

や、やめてくれ……俺は平凡な神機使いで平凡に生きたいんだ……。

 

 

因みに後から来たキルスがニヤニヤしながら「で、どっちなんすか?隊長?」とか意味がわからんことを腹が立つ顔で言ってきやがったから思いっきりビンタと蹴りをかましておいた。

 

 




今回も最後まで読んで頂き、本当に有難う御座います。
さてさて、今回は3話通してオリキャラの話だった訳なんですが、今後はこんなバックボーン?みたいな話を書くかどうか悩んでいます。
まぁ、それは置いておくとして、感想などで自分はこのアラガミが良いと思う!等の意見を言ってくださる方が居まして、私としては出来るだけそれに答えれるように話を作っていくつもりです。

今後とも頑張りますので宜しくお願いします。

それではまた次のお話で。

サブキャラ達の話を

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