改めてこの作品を書き始めて、皆様に読んでいただけた事を本当に感謝したいと思います。
自分の書きたいように書いているので、納得されない方も多く居ると思います。
ですが、これが私の書きたかったアラガミのお話なのです……。
それでも読んでくださる皆様に再度感謝致します。
では、本編へどうぞ。
あれから暫くの間、中型のアラガミを狩り続けた。
腹は満腹になるどころか依然餌を寄越せと言っているかのように感じる。アラガミがひっきりなしに壁やら車やら何やらを捕食している気持ちが少しだけ理解できた気がする。
そんな中、顔を上げるとここからは遠い遥か向こうの上空に巨大な赤乱雲が出来ていた。
それを見たとき心のなかで「ついに来たか」と呟くと同時に背筋がゾワッとそそり立つような感覚を覚えた。
これが武者震いなのか……いや、絶対に違う。これから戦うであろう今までの神生史上最強のアラガミと戦わなければいけないのだ、武者震いなんて起こるわけがない。
一旦寝床へと戻り、ルインに暫く帰ってこないこと、そして何かあったらすぐに逃げるように。と伝え赤乱雲の元へと向かっていった。
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走り続けてどのくらい経ったのだろうか。
時折上空を見るがその大きさは未だに広がり続け、止まる様子を見せない。
恐らくだが、これがロミオを失うときに出来た赤乱雲なのだろう。
正直極東支部の正確な場所は分かってはいない、近づけば市民を不用意に怖がらせるだろうし、何よりも神機使いに見つかる可能性が一気に高まる。
だが今回は好都合なことにあの赤乱雲がおおよその位置を知らせてくれる。あの赤い雲の何処かに極東支部があるはず。もしなかったらそれはそれでロミオが居なくなるイベントではないということだ。
どちらにせよ、あの超巨大赤乱雲の下に行かなければ何も分からないのだ。
こうしている間にも着々と赤乱雲の規模は拡大の一途を辿っているようで、自分が近づいたということを考慮したとしても、その大きさは先程より存在感を増しているだろう。
『間に合ってくれよ……ッ!!』
そう心で呟きながら更に足を早める。
もっと、もっと早く。神速の名の通り人間を越えた神の……いや、その神をも越えた速度で。
自分は赤乱雲の下へ進んでいくのだった。
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観測史上類を見ない超巨大赤乱雲が発生し、勢力を拡大させながら今自分達がいるこの極東支部へと向かっている──
それは榊博士から知らされた突然の報告だった。
それから僕達は急遽ゴッドイーターと神機兵による大規模な市民誘導作戦を開始。
無人化に成功した神機兵が主に瓦礫の撤去や市民の誘導等を行い、僕達ゴッドイーターが市民の皆が避難する際のアラガミの排除と市民を誘導する神機兵の補助。
赤乱雲はぐんぐんとその大きさを増していっているようで、最初は赤い点状に見えた雲が今ではハッキリと空を覆い尽くして、こちらへと向かってきている事が分かる。
赤い雨が降り始めてしまうと、僕達ゴッドイーターは活動を大きく制限されてしまう。幾らオラクル細胞を体に取り込んでいるとは言え赤い雨に濡れてしまえば黒蛛病に感染する可能性だって大いにある。
その点神機兵は赤い雨の影響を受けていないし、更には無人だからもしもの時があっても今のところは大丈夫なんだけど……いまいち戦闘能力に不安がある。
だから神機兵とゴッドイーター、その両方が揃っている今のうちに避難を完了したいんだけど……
現実はそう上手くはいかないってことを身をもって知らされることになる。
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先程から異様なほどに襲い掛かってくるアラガミ達をイェン・ツィーの感応能力を駆使してかわし続ける。
この前とは違い、赤い雨に全身を打たれながらもその足を止めることはしない。
……ゲームの時もこんなに数が居たのか!?
ひっきりなしに姿を表し続ける中型と大型のアラガミ達だが、その動きは意外にも揃っておりまるで何かに統率されていているかの──!?
異様な現状に対して呟いた統率という一言。それをきっかけに自分の中で1つの可能性が紐解かれる。
……まさか、マルドゥークか!?もしこの群れの長がマルドゥークで、このアラガミ達が向かう方向に極東支部があるとしたら、自分が攻撃され続けているのにも少し納得する。自分はマルドゥークの感応能力の対象になっていないから敵として認識されているのだろう。
赤い雨で全身が濡れながらも体と、そして頭を動かすことをやめることはしない、そんなことよりもこの規模のアラガミの群れが極東支部を襲撃すればロミオどころじゃない、大勢の人が犠牲になる可能性もある。
現在進行形で自分が知っているものとは全く異なる展開が起きている事に言い様の無い焦りを感じる。
自分の考えが全部間違いであれば良いと願うが、もし間違いだとしてもこのアラガミの大群は防衛班やリンドウを始めとした主力が不足している現時点での極東支部にはかなり辛いものだ、故にこのままであれば犠牲者も史実よりも遥かに増えるだろう。
どうすれば良い?自分に何ができる?
アラガミ達の猛攻を回避し、応戦しながら必死に頭を回し続ける。
「幾ら力をつけても1が100に勝てることはない」……こんなことは無駄だと頭の中の自分が囁く。
──違う、そんなことはない。
必死に否定しながらも、1度沸き出た諦めという甘い言葉は、隙を見せれば心の全てを支配するかのようにその存在感を残し続ける。
考えろ、単純に犠牲を少なくする方法を。
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悔しいが……今自分に出来るのはこの大群を押し留めて、マルドゥークの到着を遅らせること。もしくはマルドゥークの意識をこちらに向かせて標的を変えること。
どちらの条件も同時に達成しようとする場合の最短ルートは、コイツらを全て蹴散らすこと。
ボルグ・カムランを対象に発動していた能力を解除し、自分を対象に発動させる。すると自分の視界に広がる大から小までのアラガミの視線がこちらへと向けられる。それを確認してから再度能力を解除し使用、対象は目の前のヴァジュラ。そして指定すると同時に攻撃をするように命令を下す。
すると一斉に周囲のアラガミか攻撃をヴァジュラへ開始する。そして背を向けた奴らに向けて炎球と雷球を作り出し、放つ。また作り出し、放つを繰り返す。
そして能力の対象が倒れたら次の対象を指定し、襲わせる。そして自分は背後から球を作り出して放つ。
放たれた球はヴァジュラを襲っているアラガミ達に命中し、倒れるアラガミを踏みつけて新たなアラガミがヴァジュラに襲いかかる。
そんな光景をゾンビ映画みたいだな……と他人事のように考えながらも、マントを広げ再び炎と雷の双球を作り出し始めた。
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どのくらいの時間が経過したのか分からない。しかし同じ手段を使い続け、目の前に広がるアラガミを目分量だが3分の1を減らすことが出来た。しかし、その代償として少し連続してオラクルを使いすぎたのか、意識が朦朧としてくる。
そのせいかターゲットが倒れて能力が解除されたのに気付かずに、近付いていたガルムの一撃を顔に食らってしまい吹っ飛ばされる……が、すぐに体勢を立て直し、新たなターゲットに今殴ってきたガルムを指定するのだが、意識が途切れ途切れになっている為か、ターゲットへ攻撃を開始せず、逆にこちらに向かって攻撃してくるアラガミが表れる。
更にそれに対処することに頭を割くようになり1体、また1体とこちらへ攻撃を開始するアラガミが増える。
今まだコンゴウやウコンバサラ、オウガテイルの中型と小型のみだが、少しずつ大型の意識もこちらへと向き始めている。
このままではどう考えてもジリ貧だろう。持ち前の高い回復力をもってしても既に体の節々が痛みを訴えていて、頭も休みなくひたすら回り続けているので悲鳴をあげている。
体のオラクルの残量─というか残量とかあるのね──も底をつきかけているのか一度に出せる球の量や炎と雷の出力が減少している。
捕食でもすれば回復するのだろうが、そんな暇はあるわけがない、想定して見てほしい……常に死が張り付いて来ている終わりの見えない組み手を。
終わりが見えるのなら気力とかも多少は回復するかもしれないが、依然としてアラガミの攻撃の波は止まることを知らず、寧ろ自分の能力が弱まったお陰で攻撃の手数が増えていっている始末だ。
現に防げていた攻撃も受けるようになり目に見えて被弾率が増加の一歩を辿っている。
寧ろ今の今まで捌けている……と言えるかは分からないが捌けていると仮定した自分を誉めてほしい。
──そんな無駄なことを考えていたからかグボロ・グボロ達の砲撃を横からまともに受けてしまい、体がよろけた所にガルムの全力ブローが襲い、いつぞやのエミールのように遥か後方へと吹き飛ばされる。
今度は受け身を取ることは出来ず、成すがままに地面に何度か体をぶつけた後に仰向けの状態で止まる。
赤乱雲は最初の頃よりも比べ物にならないほど肥大化していて、目線を上に向けると遥か向こうの空まで赤い雲で覆われていた。
一目見ても時間がかなり経過しているのが分かるだろう、なら早くロミオの所へ助けに行かなければ……。
そんな自分の意思に反するように、体がこれ以上動いてはいけないという危険信号をあげている気がするがそんなものは全て無視する……というかそもそもここまでアラガミに喧嘩を売ったんだ。今のうちに数を減らさないと自分が後でどうなるか分かったものじゃない。
それに、ロミオを助けてハッピーエンドにすると決めたのだ。もしここでこの大群を極東支部に向かわせてしまえばロミオが大好きな爺さん婆さんを含めた市民達が死ぬかもしれない……それだけはごめんだ。
仮に名前だけだとしても神になったんだ…それくらいやらなくてどうする。
その為には早くコイツらを片付けて──
自分が再びアラガミの波へ向かおうとする時、眩く赤い光が自分達を包みこんだ。
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何が……起こった?
目の前で今しがた起きた事を理解できずに立ち尽くす……いや、『理解したくない』と本能が拒絶している。
先程、赤い光のようなものが自分達を包み込んだと思ったら、あんなに殺気立っていたアラガミ達が大人しくなり引き返して行ったのだ。
それが意味するのはこの世界の結末を知っている自分からしてみれば先の光は救いの光でもなんでもない。
絶望と終わりを知らせる最悪の光だった。
…………まだ、まだだ。
まだ、『そうなったと』決まっている訳じゃない。
そうだ、丁度良いじゃないか。これでロミオを助けに行ける……手間が省けたんだ。
震える足を無理を言わせて1歩、また1歩進ませる。
その歩みは最初は生まれたての小鹿のように覚束なかったが、段々と早くなっていき、何時もの早さを取り戻したのだが、何かにすがるような足取りだった。
未だに降り止まない赤い雨に体を打たれながら走り続け、たどり着いたのは辺りにビルだったものが並び、視界の奥に見るからに人の手では空けることが難しい穴が空いた巨大な壁。
……そして、壁から少し離れたところで自分と同じく赤い雨に打たれながら横たわる2つの人影。
自分が近づこうと歩を進めようとすると、そのうちの1人──ジュリウスが体を持ち上げた。
ジュリウスはもう1つの倒れている人影に気付くと覚束ない足取りでその人影──ロミオの元へと近寄り、目の前まで辿り着くと膝を付き、ロミオを抱き起こすと震える声で声をかける。
「ロミオ……しっかりしろ……」
声をかけられて目が覚めたのか、ロミオが弱々しい声でジュリウスに言葉を返す。
「ジュリウス……ごめん……アイツ、倒せなかったよ……」
その言葉には悔しさと申し訳なさで埋め尽くされていて、それがどれだけ彼にとって悔しかったのかが、聞いたものには伝わってきただろう。
ふと、思い出したかのようにロミオがジュリウスに問いかける。
「あ、爺ちゃんたちは……?」
先とはうって代わり心配そうにするロミオを安心させるようにジュリウスが答える。
「ああ、無事だ……お前のお陰でな」
それを聞いて安心したのか、笑みを浮かべながらロミオは段々とか細くなっていく声で言葉を紡いでいく。
「そっか……良かった……」
「なぁ、ジュリウス……ごめんな」
「ロミオ……それ以上、しゃべるな……」
安堵の次にジュリウスに謝罪をするロミオの言葉をジュリウスは震える声で塞ごうとする。
それは、これから待つであろう結末を信じたくないからだろうか。
だが、ジュリウスの命令に背きながらもロミオは口を開く。
「勝手に飛び出して……」
一言、一言に万感の思いを込めて。
「皆に迷惑かけて……」
それは悔いの無いように。
「良いんだ……それ以上しゃべらないでくれ」
ジュリウスはロミオの謝罪を受け入れ、優しく、そして静かに喋るなという命令を下す。
もうすぐそこまで迫っている『ソレ』から必死に逃れるように……だが。
ロミオは朧気な意識の中でも分かっていた。
もう……皆とは会えないだろうと。
だから……最後の最後に、本当に謝りたかった。
自分が配属についた時から憧れで、大事大事な……そして、大好きな仲間のジュリウスに。
「弱くて……ごめんな……」
そうして、ロミオの意識は暗闇の中へと眠って行くことになる。
「ロミオ……?」
問いかけるも、答えは返ってこない。
「頼む……逝くな」
願っても、応じてはくれない。
「目を開けてくれ」
その青い瞳は、もう皆の顔を見ることはない。
「一人でも欠けたら……意味がないんだ」
大好きな仲間の声さえ、届かない。
「だから……頼む……」
永遠に、届かない。
「逝くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
──それを自分はただ、眺めていた。
──眺めるだけしか、出来なかった。
──泣くことも、ジュリウスのように叫ぶことも。
──自分には……出来る筈もなかった。
今回も最後まで読んで頂き、本当に有難う御座います。
とりあえず1つの山場を越えかけているのですが、情けない話、この話を書くために再度ロミオのシーンを見返していて少し目が潤んでしまいました。
それほどまでにロミオの存在は強かった……と言うことだと私は思います。
真面目な回にふざけた話は無しということで。
では、次のお話で。
主人公やそれ関連の過去の話は──
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いる
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いらない