─ねぇ。
─どうしたの?
─キミはまた繰り返すのかい?
─ええ、私はまた繰り返すわ。
─結末は変わらないというのに?
─いいえ、今度こそ変わるわ。
─いいや、今度も変わらない。
──カイリ・フリンクは気が短い。
それが極東支部内で彼と少しでも接した者が抱くイメージで、彼自身も自分の気が短いという事は自覚していた。
現に今も目の前のアラガミの大群を相手取り、切れど撃てど減る様子の見えない光景に怒りが湧きかけて……いや、もう既に手遅れであった。
「あああああッ!ウッゼェ!どんだけ居るんだよコイツらはっ!!」
そう叫びながら銃形態の神機─アサルトの銃口─からオラクル弾を群れへ撃ち込み続ける。
それらは我武者羅に撃ったように見えて全て頭部や胸と、効率的に傷を負わせられる所へ当たっている辺り、流石隊長格の一人と行ったところだろうか。
そんな嵐のような弾幕をすり抜けて、1体のコンゴウが横からフリンクに殴りかかろうと飛び上がる……が、その拳は彼を吹き飛ばすことは無く、体に巨大な一太刀を浴び、切り伏せられた。
「お熱なのは良いことだが、もうちょい視野を広げるべきだな」
一瞬が命取りになり得るこの場に置いて、似合わない軽口を叩くのは極東支部第四部隊隊長、真壁ハルオミ。
バスターブレードに付いた血を神機を振るい落とすと、振り返り様に迫っていたオウガテイル2体を先程のコンゴウ同様に神機による横一閃の一撃を浴びせ、その命を断つ。
「ふぅー……どうよ?」
自信満々に聞いてくるベテランの神機使いに対してフリンクが掛ける言葉は何時とそんなに変わらない。
「うっせぇ!んなこと言わずにさっさと動きやがれください!!」
「おー怖い怖い、相変わらず辛辣だな」
そんな漫才を繰り広げながらも1体、また1体と周囲のアラガミ達を屠っていく二人。
そして中型と小型があらかた片付いた……と思ったその時。
「あぶねぇ!」
「おっと」
2人の体を狙うように数本のオラクルのレーザーが放たれる……1人は盾で防御を。もう1人は軽やかに避けた。
2人が視線を向けたその先には鮮やかなドレスを纏った美しく微笑む女性の姿をしたアラガミ サリエルがおり、その周囲にはまるで女王に侍る兵隊とでも言うように多数の小型アラガミを引き連れていた。
それを見て頭に血管が浮き出そうな、今にもイライラが爆発しかけているフリンク。
そんな彼の怒りを爆発させたのは先程攻撃してきたサリエルでも、ましてやその周囲の小型アラガミでもなく。
「うーん……80点だな」
何がとは言わないが、隣で点数をつけている真壁ハルオミだった。
「だぁぁぁぁぁ!なんでこんな時までアンタはそんな変態かましてんだ!!」
「変態とは失礼だな、これは聖なる探求の一環としてだな……」
「性なる探求の間違いだろ!しかもアンタ、アイツ襲って来たんだぞ!?何?そいつに対してもムーブメントやらを求めんの!?」
「当たり前だろ?ほら……見てみろあのサリエルも何処か照れた様子で」
「見てねーからな!?」
そんな2人に痺れを切らしたのかサリエルが再び多数のレーザーを2人に向けて放つが、それらは全て避けられる。
レーザーを避けきった2人はつい先程まで漫才をしていた人物とは思えないほど、真剣な目付きでサリエルを睨む。
「本来ならもっと眺めて居たいんだが、タイミングが悪かったな」
「アラガミに欲情するとかどんだけ守備範囲広いんだアンタは……ま、んなことはどうでも良いな」
2人の脳裏に浮かぶのは在りし日の極東支部の光景。命を賭けて戦う日々の中で心休まる穏やかな一時。
その輪の中に居た2人にとっても、もはや日常の一部と言っても過言ではなかった人物を。
今、彼の仇を討つときが来たのだ。
ならばこんなところでくたばるわけにはいかない。
「じゃあさっさと片付けるぜ!」
「了解……来いよ、狂わせてやる」
───────────────
「やれやれ、露払いも楽じゃないんだけど……なっ!!」
そうため息混じりに神機を振るい、目の前で敵対していたヤクシャの命を刈り取った八秦 ジン。
そんな彼は今、マルドゥークが形成した陣の第2層と第3層の中間を他の隊長達やブラッド隊と共に進んでいた。
第1層近辺で多数の神機兵と極東支部のゴッドイーター達が誘導を行っており、第1層は問題なく通り抜ける事ができたが、第2層の中間地点からアラガミと接敵する機械が増え、第3層へ向かう今に至っては中型を主軸とした多くのアラガミに囲まれている状況である。
「すいません、ジンさん……僕らの為に」
そう申し訳なさそうに背中合わせに語るのは本作戦の要であるブラッド隊の隊長。
実力で言えばジンを余裕で越えているのに、それに傲らず謙虚な姿勢を崩さない彼に対してジンは何処か困ったように笑みを浮かべる。
「なに、君が気にすることじゃない」
「でも……」
気にするな、と言っても申し訳なさそうな態度を崩さずに居るブラッドの隊長にジンは何処か遠い何かを思い出すように呟く。
「俺もロミオ君の事が好きだった……ああ、勿論ソッチの意味でじゃあないぜ?」
「分かってますよ」
「そうかい?……まぁ、そんな彼の仇を君達が取る手伝いが出来るんだ。なら、協力しない訳がないだろう?」
「ジンさん……」
背中合わせに感じる彼の雰囲気が少し変わったのを感じながら「それに」と付け加えながらジンは目の前のコンゴウを切り伏せる。
「自分で大事な仲間の仇を取れるって言うのは、言い方は悪いが幸せなことだ……どれだけ取ってやりたくても取れないことなんてザラにあるからな」
「…………はい」
その言葉の裏にどれだけのジンの思いがあったのだろう。それを少しでも感じたのかブラッドの隊長は一言口にすると再び目の前のアラガミ達へと意識を集中させる。
「さぁ、しんみりした話は後だ……さっさとコイツらを片付けて本丸へ乗り込むぜ!ヒロ君!」
「ハイッ!」
───────────────
「現在、強襲部隊は無事に第3層へ到達……このまま行けば目標へ到達出来るものと思われます」
オペレーターであるヒバリのその言葉を聞き、小さく安堵の息を漏らすペイラー・榊。
ひとまず今のところは突出したトラブルは無く、当初の計画通りに事は進んでいる。
しかし、榊の心中には何処か言い様の無い不安が渦巻いていた。
そう、それはマルドゥークを発見した際に判明した謎の大群。
何故、今まで姿を隠していたマルドゥークが見つけてくれと言わんばかりの大群を率いて移動を始めたのか。
まるでその大群は何かに対抗するためと言わんばかりの護衛にしては過剰すぎる戦力。
寧ろ己を守るために用意した……というよりも何かを確実に倒すために用意した……といった方があの大群を表す上ではしっくり来るのではないだろうか?
ならば、その前例の無いような大群を率いてまで『倒すべき』と認識された存在は何なのか?
情報が不足している今、それを考えるのは無駄に近いのかもしれない……だが、彼の中で何かが引っ掛かっているのだ。
マルドゥーク達の進行速度が速まったのは何故だ?何かを見つけたのか?
そして、彼は現在極東支部に置いて1つのイレギュラーが居たことを思い出す。
「そうか……特異種かっ!」
そう意図せずに叫んだ彼に部屋に居た人物達の視線が集まるが、思考の海に沈んだ彼にとっては些事ですらない。
アラガミ達が進行を行っている『黎明の亡都』は始めて特異種を発見した場所だ……だが、ならば何故『愚者の空母』へと向かう?
もしや、そこが現在の特異種の住みかとなっているのではないか?
そうだとしたなら、あの大群は特異種を倒すために集められたのか……いや、本当にそうなのか?
特異種はノヴァの一部をその身に取り込んでいて、尚且つアラガミを捕食することでその力や特性を取り込む事ができる。
それはかつての第2のノヴァと同じ特性であり、この事から特異種が第3のノヴァとなり得る危険性がある。
更に以前ジン君達が黒いカリギュラと戦闘を行っていた特異種はディアウス・ピターに酷似した翼を持っており、尚且つ凶暴性が増していた。
それがノヴァへと近づいている証拠だとしたのなら……これは、この大群は特異種をより早くノヴァへと至るための供物なのか?
いやいや、そんな訳がない。
……だが、あの黒いカリギュラが超弩級アラガミのようにノヴァへと至る為の鍵だとしたら、特異種はあの黒いカリギュラを倒せるようにならなければいけない。
ならこれは特異種が黒いカリギュラを倒し、捕食出来るようになるために用意された……?
そんな荒唐無稽な考えが彼の頭を駆け巡って行くが、そのどれもが確証はなく、どれもが真実のように感じてしまう。
そんな思考の海に沈み続けていた彼を呼び戻したのは、オペレーター ヒバリの焦りを含んだ一言だった。
「作戦区域に接近中のアラガミを感知!」
「これは……ハンニバル特異種です!!」
今回も最後まで読んでいただき有り難う御座います。
マルドゥーク戦はあと2~3話くらいで終わると思います……え、短いって?
仕方ないです、急展開が多いですからこのお話。
あと原作主人公の名前をヒロ君に変えました……まぁ、殆ど出番がないので対して意味がないかもしれませんが……すいません、原作主人公さん。
では、また次のお話で。
GE2RB編のヒロインは誰が良いですか?(あくまでも参考)
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ルイン(復活するんだよぉ!)
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キュウビまたはマガツキュウビ
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クロムガウェインまたはオロチ
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サリエル
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アルダノーヴァ(女神)