転生アラガミの日常   作:黒夢羊

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─貴方が頑張っていることを知っています。


─これからも貴方は悲劇に嘆くでしょう、己の至ら無さに苦しむでしょう、絶望を味わうでしょう。

─でも、貴方はきっと救われる。

─私は待ちます。貴方が救われた世界のその先で。

─暖かな光を用意して、貴方を癒しましょう。




─だって。

─貴方には破滅なんて似合わないから。





第47話 朧月の咆哮─真説

 

 

 

 

マルドゥーク討伐作戦を開始してから数時間後。

 

 

作戦本部である極東支部では混乱が発生していた。というのも順調とは決して言えないが作戦通りに進んでいた所に新たなアラガミ反応が作戦区域に近づいている事が発覚。

 

そのアラガミと言うのが現在極東支部で一種の悩みの種になっているハンニバル特異種だったのだ。

 

 

 

 

 

 

──どういうことだ?

極東支部局長であるペイラー・榊は、頬を伝う冷や汗を拭うことすらせずに高速で思考を巡らせる。

考えられる可能性は先程自分が考えていた進化を促す贄を喰らいに来たか。

それとも、マルドゥークの感応能力によって集められたのか。

最悪のパターンは何らかの形で神機使いに対抗できる力を身に付けたと確信した上で、疲弊している神機使いを捕食しようとやって来た……というパターンだ。

 

どうする。

特異種は何が目的が不明だが、間違いなく作戦区域に侵入してくる。

相手にするために第1層目を担当している神機使い達を──いや、駄目だ。第1層を担当している神機使いの殆どは副隊長から下の実力だ。隊長格の神機使いも数名いるにはいるが、特異種との戦闘を経験していない者しかおらず進化を続けている特異種……特にあの黒いカリギュラと戦っていた時のままなら何も出来ずに殺されてしまうかもしれない。

 

 

そうであれば、やむを得ないだろう。

ペイラー・榊は神機兵を率いているブラッド隊の元隊長であったジュリウス・ヴィスコンティに通信を繋ぎ、特異種が接近している事と、それに付近の神機兵を対処に当てる事は出来ないかと要請する。

 

ジュリウスは榊の要請に対し待機させている神機兵数体を対処にあてると回答し、その後実際に6体程の神機兵が対処に向かっているのを作戦室に備えられた巨大なスクリーンに写し出された地図に表示される。

 

 

「特異種、神機兵に接近!!」

 

オペレーターであるヒバリの言葉につられスクリーンを見ると、特異種を表す点が配備された神機兵を表す点と接触する。

 

「特異種、神機兵と戦闘を開始!……嘘!?神機兵A大破!!」

「なんだって!?」

 

ヒバリが特異種と神機兵が交戦を開始したことを知らせた直後。同じくヒバリの動揺した声で特異種と戦闘を始めた神機兵の内1体が大破した事が作戦室内に知らされる。

 

その時間約数秒。

もはや極東支部の中堅クラス以上の神機使いが小型アラガミを討伐する速度と同程度である。

特異種にとっては神機兵など雑兵とでも言うのだろうか?

 

 

更に続いて神機兵が2機中破した事がオペレーターによって伝えられ、特異種の足止めに使われた神機兵全てが撃破されるまでに数十分もかからなかった。

それだけでも榊達は驚愕したのだが、更に次に特異種が取った行動に榊は再び目を疑った。

 

捕食しているのだ。

神機を……神機兵の巨大な神機を。

 

「………………」

 

室内に沈黙が流れる。

だがその沈黙の中でも一心不乱に特異種は神機兵の獲物である大型の神機を喰らい続ける。

 

今まで幾度と無く特異種に驚かされ、事前に予測を立てていた榊だが、それでも実際に特異種が神機を捕食している姿を目にすると小さく開いた口が暫くの間塞がらなかった。

 

 

少しして意識が戻った榊は再び思考を巡らせていく……神機はアラガミにとってあまり捕食したいと思える物ではない筈……スサノオという神機を好んで捕食するという偏食傾向を持つアラガミが居るが、それでも数少ない例だ。

 

特異種は今までアラガミを優先して捕食していた。だが何故いきなり神機を捕食し始めたのだろうか?

様々な可能性が考えられるが、やはりあの黒いカリギュラ……もしくは神機使いに対抗するためだろう。

 

 

前者はアラガミに有効打を与えられる神機を取り込むことで黒いカリギュラによりダメージを与える為。

後者は神機使いからの攻撃に耐えるため。

どちらも十分に考えられる理由だが、それよりも気になることが1つある。

もし仮に特異種が黒いカリギュラを倒し、捕食する為に神機を喰らおうとしているのなら、その大前提として黒いカリギュラが生きていなければならない。

 

おそらく特異種に大きな変化が見られていない為にまだ黒いカリギュラは生きているのだろう。

そうなると今後も黒いカリギュラに対しての対策は必須になってくるだろう……。

 

 

だが、もしも。

もしも黒いカリギュラを既に特異種が喰らっているとしたら……。

特異種が神機を取り込もうとしているのは本格的に神機使いに対抗するため……なのだろうか。

 

しかし、そうならば改めて特異種の思考レベルは他のアラガミを平然と凌駕していると思う。

やはりかつて神機使いを捕食し、体に宿したノヴァの特性によってその知識を得た可能性が高くなってくると考えれる。

神機使いは体内に偏食因子を取り込んでいるために、ノヴァの能力によって捕食した人の知識などを取り込むことも不可能ではない筈だ。

 

 

ならば……。

もし、人の知識があるのなら……。

 

 

「────特異種、第2層目突破!!」

 

 

 

 

榊はオペレーターの1人であるフランの叫びで意識を引き戻される。

ハッと反射的に顔を上げればスクリーンの地図にはとてつもないスピードで進行し続ける1つの点。

おそらく特異種なのだろう。

 

神機使いと神機兵を総動員して薄くした層をやっとこさ切り抜けた我々と違い、本来の──加えれば誘導に引っ掛かったアラガミ達が集まっているために本来よりも物量が多い箇所──層をあり得ない速度で進み続けている。

急速にアラガミが倒されている報告が増加しているのはおそらく特異種によるものであろう。

 

 

そうしてブラッド達と正反対……感応種、ニュクス・アルヴァが率いるサリエル神属の群れがいる。

案の定進んできた特異種を無数の点が囲み始めている。

しかし、特異種がサリエル達に囲まれたその直後、ヒバリが焦った声で叫ぶ。

 

「特異種を基点として強力な偏食場が発生!これはイェン・ツィーの感応能力と酷似しています!」

「対象は群れのサリエル1体!周囲のアラガミが対象になったサリエルに向けて一斉に攻撃を開始しました!」

 

特異種はどうやらイェン・ツィーの感応能力を取り込み、独自の能力に作り替えたものを使ったらしい。

だが、これは以前にあった事。

驚異だが、そこまで慌てるものではない。

 

しかし……。

 

「特異種を基点として新たに強力な偏食場が発生!!……こっ、これはスパルタカスの感応能力に酷似しています!!」

「特異種のオラクル濃度急上昇中!それにともない偏食場内のアラガミの生体反応が急速に弱まっています!!」

「何!?」

 

同時に2つの偏食場だと!?

今までに前例のない状況に作戦室内にざわめきが起きる。

……スパルタカスの感応能力に酷似した偏食場については少々驚きはしたが、何もおかしくはないことだ。

おそらく自分達が知らない場所でスパルタカスと交戦し、捕食を行いイェン・ツィー同様その感応能力を得たのだろう。

 

だが問題は、1体のアラガミが同時に2つの偏食場を産み出したと言うことだ。

従来のアラガミは偏食場は1体につき1つ。

あの第2のノヴァでさえ、非常に厄介ではあったが偏食場は1つしか持っていなかった。

それをあの特異種は2つ、しかもそれぞれ異なる偏食場を産み出した……。それが何を意味するかと言えば、あの特異種は第1、第2のノヴァを優に越える個体になり得る可能性が格段に高まったと言うこと。

 

榊は今後の特異種に対しての対策をどうするか考え出そうとするが、その前にある1つの事に気が付いた。

 

 

 

……今、特異種が相手にしているのは何だ?

 

そう、今現在特異種が相手にしているのは感応種であるニュクス・アルヴァ。

このアラガミは他のアラガミを体力や状態異常を回復する能力を持ち……そして、倒すまでは一切の近接攻撃がすり抜けるという体質がある。

 

通常のハンニバルであればそこまで焦ることはない。厄介であるし驚異ではある……だが、まだ対処はできる。

しかし、特異種はアラガミの能力や性質を取り込むことができるのだ。

もし、特異種がニュクス・アルヴァの近接攻撃を受け付けない性質を手に入れてしまったら。

 

それに加えてその先にはマルドゥークがいる。

この2体の感応種を捕食させてはいけない。

 

 

 

「ヒバリ君!強襲部隊からジン君とカエデ君を急いで特異種の元へ向かわせてくれ!!」

「えっ!?……分かりました!ジンさん、カエデさん。至急ポイントを指示しますので、そちらに向かい特異種の足止めをお願いします!」

 

榊はヒバリに指示を出す。

その指示にヒバリは最初動揺を示すが、直ぐ様立て直し、ブラッド達と共に行動を共にするジンとカエデに特異種の元へ向かうように要請する。

向こうからジンの困惑した声が聞こえるが、榊の説得により第3層を切り開きながら特異種の元へと向かうことになる。

 

 

そして、ブラッド隊含める強襲部隊が第3層目を抜けて、マルドゥークと対峙しようとするその時。

 

「特異種周辺のアラガミが全滅!特異種、捕食行動に移っています!!」

「遅かったか!」

 

フランのその言葉に榊は彼らしくない焦った声で叫ぶ。その姿に数名が驚きで目を見開くが、そんなのは今の彼には気にならなかった。

 

そして、その報告から少ししてジンからの通信が室内に入る。

 

 

『こちらジン!特異種を補足した……が、現在周囲のアラガミを捕食中だが……どうする?』

 

焦りと困惑した声のジンに榊はまず確認したいことを尋ねる。

 

「それよりも、周辺に感応種であるニュクス・アルヴァは居るかい?」

『いや、事前に確認したニュクス・アルヴァの資料と酷似する姿は確認できない、それとだな……』

 

ジンは榊の質問に対して答えた後に、少し困ったような声で言葉を続ける。

 

『全身に紫色のラインみたいなのが入っているんだが、心当たりはあるか?』

「ライン?」

『ああ、今見える所で言えば首・両腕の籠手・尾辺りに血管のような模様が見える』

 

それを聞いて榊はおそらくそれはスパルタカスの能力によって自身を強化したことによる副産物のようなものだろう。

その事を伝えるとジンから呆れたような返答が返ってくる。

 

『おいおい、マジかよ?……ハァ、取り敢えず出来る限りの足止めは行う』

 

そう言うとジンからの通信は切れる。

タイムリミットはマルドゥークが討伐され、そのコア等を回収するまで。

特異種の周囲にアラガミは居ない上に、粘る戦い方はジンの得意とする分野、きっと大丈夫だ。

 

お願いだ……そう珍しく心の中で祈りながら榊は彼らが無事に返ってきたらボーナスを出そうと決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も最後まで読んで頂き本当に有難うございます。

今回は主人公無双(本人のシーンは無し)の回になりました。
主人公は神機兵の存在も既に知っていますし、尚且つジュリウスの指導が入っているとは言えまだまだ未熟な強さを持つ神機兵には数を揃えても余裕で倒せる……と考えました。

そして、都合良く駆り出されるジンさんとカエデさん。
カエデさんが通信に出ないのは、ジンさんの方が榊達とコミュニケーションを取れるから……と考えているからです。決してコミュ症とかではありません、はい。


次回はブラッド隊とマルドゥーク戦……にしたいですが、多分飛ばすと思います。
まだまだブラッドの皆の口調が難しいんです。



それではまた、次のお話で。

GE2RB編のヒロインは誰が良いですか?(あくまでも参考)

  • ルイン(復活するんだよぉ!)
  • キュウビまたはマガツキュウビ
  • クロムガウェインまたはオロチ
  • サリエル
  • アルダノーヴァ(女神)
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