──自分に力が無いことを。
──故に少女は力をつける。
──ただひたすら己が守りたいと心から願った
──いつか
『黎明の亡都』の大きく開けた広場にてブラッドは自らの大切な仲間であったロミオの敵である隻眼の巨狼、感応種であるマルドゥークと対峙していた……が。
「グルオオオォォォォォオオッ!」
「チィッ!?」
マルドゥークは発達した上に強固なガントレットを纏う前腕を振るい此方に突撃してくるブラッドの1人──ギルを壁に叩き付ける。
叩き付けられたギルはそのまま地面に倒れるが、直ぐ様その体を起こし、再び己の仲間が立ち向かっている隻眼のマルドゥークの元へと駆け出す。
そしてギルはマルドゥーク目掛けて駆けながら己の神機であるチャージスピアを構える。そして腹から声を出して叫ぶ。
「うおおおおおおおっ!!」
するとギルの体が赤い光を放ち、彼の血の力が今この場にいる仲間達を鼓舞する。ユウ達は体の底から力が湧いてくるのを感じ、より一層神機を握る手に、そして全身に力がこもる。
そしてギルは神機を前に突き出し、そのままマルドゥーク目掛けて全力の突きを見舞おうとする。
その速度は凄まじく。瞬く間に彼とマルドゥークの距離を詰めていき、その槍が腹を抉り取ろうと登り始めた朝日に照らされ光る。
しかし、その凄まじい速度の突きを読んでいたかのようにマルドゥークは前足から爆発を発生させ、その勢いで大きく後方へと飛んで行きそれを回避する。
自身の眼前を過ぎ去っていくギルを視界に納めるとマルドゥークは計画通りと言わんばかりに口を歪める……が。
発砲音と共に、後方へと下がっていくマルドゥークの失った左目付近に強い衝撃と痛みが走る。
それによって着地が上手くいかずに少し体制を崩してしまうが、直ぐ様立て直し、先程の音の主へと視界を向ける。
そこには銃形態の神機でビルの残骸の隙間から此方を狙っていた1人の少女──シエルが強い意思のこもった瞳でマルドゥークを見つめていた。
マルドゥークは先程ギルの攻撃を避けたように勘は鋭い方である。が、今しがた発砲した少女の一撃は当たるまで感知することが出来ず、見事に食らってしまった。
自身を取り囲むようにして攻撃をしてくるヒロ、ギル、ナナの3人よりも今自身が発砲した場所から姿を消そうとしているシエルの方が危険とマルドゥークは本能で判断する。
両前足を叩き付け、自身の周囲を爆破させると同時に自身を浮かせて3人の囲いを抜ける。
そしてその勢いのままシエルの元へと向かい、巨大な前足を持ってしてその小さな体を潰そうとするが、仲間がそう易々と見過ごすわけがない。
「ナナ!」
「オッケー!思いっきり行くよーッ!!」
ブーストハンマーに内蔵されたブースターを点火させ、それから生み出された推進力で跳躍し、シエルに迫るマルドゥークへ近付き頭上へと飛び上がったナナはそのままマルドゥークの頭部目掛けてハンマーを降り下ろす。
視角外からの一撃を受け、そのまま地面に落下するマルドゥーク。
既に戦闘を開始してからそれなりの時間が経過しており、4人の息の合ったコンビネーションが確実にその巨体にダメージを蓄積させていき、最早マルドゥークの命は風前の灯であった。
直接の配下であるガルムも全て倒れ、自身の命が終わりを告げようとしているのを自覚するマルドゥークだったが、それでもなお生きようと足掻く。
それは何故か?マルドゥークにはユウ達のように信念を持っている訳でもない、ただ生きる為。それだけの為に今こうして命を賭けた戦いをしているのだ。
自分は生きるために戦う。
そのために、自分は──────
そこでマルドゥークは気付く。
──そういえば何故、自分はこうして群れを率いているのだ?
──当たり前だと思っていた己の力を行使し、今まで作ったことの無かった巨大な群れを形成し、何をしようとした?
──配下に普段加えることの無いガルム以外のアラガミを何故自分は手当たり次第に群れに加えた?
命を削り合う戦いの最中、マルドゥークの中には人程とはいかずとも獣なりに思考を巡らしていた。
今まで自分がしたことの無いような行動の数々。それはまるで最初からそうするように仕込まれたかのように──
そんなことを考えていたからか。
目の前に迫る複数の光弾を全身に受けてしまい、体が焼かれていく。
そして、朦朧とする意識の中でマルドゥークが視界に納めたのは此方に向かって武器を振るおうとする4人の姿。
瞬間頭部と腹部に痛みと熱が走り、それがマルドゥークの残っていた意識と命を焼き付くす。
弱肉強食のこの世の法則に負けたマルドゥークは力無く地面に倒れ付し、己を負かした人間達の姿をとらえたまま息を引き取った。
「ふふ、そろそろですね……では、始めましょうか」
──瞬間、途切れていた命に微かな炎が灯り、マルドゥークの意識が強制的に呼び戻される。
そして意識とは違い、一向に動くことがない己の体内を何かが急速に巡っていくのを感じる。
『それは』自身の細胞を喰らうのでは無く、ゆっくりと侵食していき、細胞の侵食が進む事に徐々に弱っていくだけだった体に力がみなぎって行くの感じる。
まだ体は動くことは無いが、このまま行けば体が動くようになるのも時間の問題だろう。
己のコアを起点として依然侵食を続ける『ナニか』は遂にマルドゥークの意識にまで到達し始める。
抵抗することも出来ないまま、マルドゥークは己の意識が何かに染められていき、それと同時に己の思考が消えていく感覚を味わいながら新たな生を手に入れようとしていた。
だが。
「グルゥゥゥゥゥアアアアア!!」
回復した聴覚が己の頭上から何かが降ってくるのを感じ、その直後に大きな衝撃がマルドゥーク自身を襲った。
しかし、既にその肉体は自分の支配下に無く。
ただ衝撃と痛みが走っているな。という傍観した感想しかマルドゥークは懐く事が出来ないでいた。
そして、甦った視界から驚きと警戒が混じった表情をした4人を捉えながら体が浮く感覚を覚えた数十分後、今度こそ完全にマルドゥークの意識はこの世から消え去った。
◇
「……ッ!こ、コイツは!!」
ギルが驚きに満ちた声でそう叫ぶ。
目の前に居る存在が放つおぞましいまでの威圧感に押し潰されそうになる。
ブラッドに配属されてからどのくらい経っただろうか、その中でも小型から大型、色んなアラガミを相手にしてきた。
その中には新たな驚異と言われた感応種だっていた、接触禁忌種と呼ばれる通常よりも遥かに強いと言われるアラガミもいた。
それでもナナ、ギル、シエル……そして、ジュウリス元隊長とロミオ先輩が……いや、極東の皆も含めた仲間達が居たから乗り越えれてきた。
けど、今目の前に存在する特異種は依然出合ったモノと同じとは思えないほどの驚異を僕や仲間達に与えている。
互いに動かない、いや……動けないのだ。
以前遭遇した時とは体格や見た目も、雰囲気も……そして身体能力も。
きっと何もかも桁外れなのだろう。
『皆─ん──────を───!』
電波が悪いのか先程まで明確に聞こえていたフランの声が途切れ途切れに聞こえる。何をいっているかは分からないが、普段からは想像がつかないほど焦った声。
「隊長……どうしますか」
後ろに来たシエルが僕にそう問いかける。
戦うという選択肢しか無いだろう……しかし、万全の状態でも今の特異種に勝てるか怪しいのに、今の僕達はマルドゥークの作り上げた陣形を突破するのと、マルドゥーク自身との戦いで完全に疲弊している上にアイテムだって底を尽きかけている。
「ここで、戦うよ」
だけど、ここで逃げる訳にはいかない。
それに今の僕達が逃げたとしてもすぐに追い付かれてしまうだろう……なら逃げることに労力を割くよりも戦うこと全てに注いだ方がまだ可能性はある。
「……分かりました」
「じゃあもうちょっと頑張ろっか!」
「ああ、最後まで付き合うぜ」
シエル、ナナ、ギルの3人が僕の隣に並び立ち、それぞれの神機を再度構える。
神機のグリップを握る力を強め、目の前の特異種を見つめる。竜の頭に埋め込まれたその2つの瞳はしっかりと此方を見つめていて、離れることはない。
互いに互いを見つめ続ける。
それがどのくらい続いたのかは分からない。
数分、数時間……もしかしたらたった数秒だったのかもしれない。
ぶつかり合っていた視線は特異種の方から外され、地に倒れ付しているマルドゥークを抱えると地を蹴って飛び上がり、瞬く間にその場から消え去っていった。
後に残された僕達に残っていたのはマルドゥークを倒したという達成感と、それを奪われたという言い様の無い感情……そしてどれだけ頑張っても、もう帰って来ないものがあるという悲しさだった。
──回復した電波によって繋がった回線で此方に呼び掛けてきたフランの声が聞こえるまで、ただ僕達はその場に立っていることしかできなかった。
どうも皆様、黒夢羊です。
2日前まで熱で倒れていたんですが、特にヤバイものではなかったので安心しました。
それはそうと遂にGE3のストーリーをクリアしまして、変な達成感で一杯です……フィム、本当によかった……。
GE3の小説が少ないので自分で補給しようかと思ったんですが、これを書ききるまでは書くのはやめておこうかなーって思ってます。
……でもイチャイチャ書きたい……めっちゃ書きたい。
まぁ、まったりとGE3をプレイしながらまた更新して行きたいと思いますので、どうか宜しくお願いします。
では、また次のお話で。
GE2RB編のヒロインは誰が良いですか?(あくまでも参考)
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ルイン(復活するんだよぉ!)
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キュウビまたはマガツキュウビ
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クロムガウェインまたはオロチ
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サリエル
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アルダノーヴァ(女神)