転生アラガミの日常   作:黒夢羊

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どうも皆様、黒夢羊です。


週一更新を目指しているのですが、なかなかに難しいです。
大まかな流れは決まっているのですが、そこに行き着くまでの過程を書くのにヒーヒー言っている状態です。

……早くBRまで、いやキュウビ辺りまでで良いのでキング・クリムゾンっ!したいです。


それでは、本編へどうぞ。




第50話 懸念事項

極東支部にあるペイラー・榊のラボでは、その部屋の主であり現在進行形で頭を抱え苦い顔をしている極東支部局長ペイラー・榊と頭は抱えていないが、榊同様に苦い面持ちの八秦 ジンを始めとした4人の神機使い。彼らが揃いも揃ってそのような暗い表情をしている理由は、マルドゥーク討伐作戦の途中に突如出現したハンニバル特異種についてである。

 

先の作戦は見事……とは言えないかもしれないが、死者が出ること無く成功した。それ自体はとても素晴らしいことなのだが、ここにいる榊やジン達を含めた極東支部の一部の人間はそれを素直に喜べないでいた。

 

 

それというのも特異種の進化が彼らが予想していたものよりも遥かに早いのである。

 

「まさか……ここまでとはね」

 

机に幾つも並べられた報告書やデータ等を見続け、眼鏡を直す仕草をする榊。何時もであれば不適な笑みが浮かぶであろうその表情には動揺の色が見えていた。

今回特異種と直接接触したのはジンとカエデ、そしてブラッド隊に数体の神機兵で、実際に戦闘を行ったのは前の二人と神機兵だけ。

 

神機兵については報告では足止めに使われた神機兵は全てメインの動力源が破壊されている為に戦闘データ等は取れなかったらしい。ちなみに細部のパーツなどは無事なために再利用できるようならするとのこと。

 

 

 

 

ならば、ここは直接対峙した二人の意見が一番重要になってくるのだが……。榊がそう2人に視線を向けると、察したのかジンが口を開く。

 

「特異種について、まずは外見的特徴としてもう既に報告しているが首・両腕の籠手・尾辺りに紫の血管のような模様が浮かび上がっていた」

 

確かにそれは足止めとして実際に特異種を相手した彼が無線で知らせていた事であり、それは既に報告書等にも記載されている。

 

「続いて戦った所感だが、俺としては以前よりも動きは格段に速くなっていた……具体的に言うなら以前は目で追えて対処がある程度間に合っていたが、今回は目でギリギリ追えるが対応は間に合わない……って感じだ」

「捕捉するとすれば、特異種は私達とは戦おうとはしてはいなかったと感じ、いざ本気の戦闘となればより速度は上がると思われます」

 

ジンの話に続くようにカエデが口を開き、特異種との戦闘で自身が感じた事を述べていく。

その内容に部屋に沈黙が降りるが、それを破るように榊が話し始める。

 

「……おそらく、特異種の身体に血管のようなものが浮かび上がったのはスパルタカスの感応能力によるものだと思う。スパルタカスは周囲のアラガミのオラクルを吸収して自身を強化する……その際に背部にオラクルの翼を形成している事から、血管のようなものがその翼に該当するのだと思う。それならば、ジン君が言っていた以前よりも特異種の速度が向上していたというのにも説明がつくからね」

「……ってことは、特異種自体の身体能力は以前とそんなに変わってないってことか?」

 

榊の説明に今まで黙っていたロックヘッドが腰に手を当て、疑問を投げ掛ける。それに対して榊は再度眼鏡を直す仕草をした後に口を開く。

 

「現時点では何とも言えないね。特異種は他のアラガミを捕食し、その能力を身に付ける……とすれば、身体能力さえも取り込んでいる可能性だって捨てきれないからね」

 

そもそも、特異種の元であろう神速種自体が雨宮 リンドウという極東支部において最高戦力の1つである神機使いを超える化け物だったのに、それが他のアラガミの能力を手にいれた事によって対応力が上がり、より厄介で凶悪な化け物へと進化してしまったのだ。

 

さて、と小さく呟いた榊は顎に手を当て、何かを考え込んでいるジンへ声をかける。

 

「ところで、ジン君に1つ聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

「ん?……ああ、俺に答えれる事なら構わないが……」

 

思考の海に沈んでいたからか、反応が少し遅れたものの、榊の問いにジンはそう答える……それを聞いた榊は両腕を組み、見えているか分からないような細い目をジンへと向ける。

 

「君たちが今回特異種と相対した時に黒いカリギュラの時のように白い翼と天輪は確認できたかい?」

 

その質問に対してジンは悩むそぶりすら見せずに答える。

 

「いや、俺達が特務の際に見たあの翼と天輪は確認できなかった……ついでに言えば結合崩壊していた筈の逆鱗も復活していたな」

「成る程……」

 

ジンの回答になにか思うところがあるのか、榊は思考をひたすら回転させる。その末に幾つも浮かぶ仮説の中から1つの可能性の高い説を取りだし、この場にいる4人へ告げる。

 

「特異種は驚異的なまでの回復能力を持っていて、それによって結合崩壊していた逆鱗を再生させた……これは以前ブラッドの皆が特異種と戦った際に結合崩壊させた角が元に戻ったという報告とも合致する。そして、特異種は何らかの要因で翼と天輪を発生させる事が出来るようになり、その状態になると戦闘能力がさらに向上……今一番考えられるのは逆鱗が結合崩壊することだが──」

「──前述した驚異的な回復能力が結合崩壊した逆鱗を再生し、元の状態に戻ったと言うことですかね?」

 

榊がそこまで説明を終えた後に一息間を開けると、先程まで絶賛空気だった神機使いのレオンがようやく口を開き、先の言葉の続きを話す。

その内容に榊は静かにうなずき返す。

 

「ああ、その通りだ」

「……結局何が言いたいんだ?結論だけ言ってくれた方が俺は助かるんだが」

 

ロックヘッドはいまいち榊が考えていることが分かっていないのか、痺れを切らし結論を急がせる。

ジン達はそんなロックヘッドをまたか……と冷めた目で見るが、言葉を投げ掛けらた榊は真剣な面持ちで説明を始めた。

 

「特異種は何らかの要因で翼と天輪を出現させることができ、これによって能力が向上する。そして今回スパルタカスの感応能力によって別方法での強化手段を得ていることが判明した……つまり特異種は今回ジン君とカエデ君が相対した時よりも、最低でも後一段階能力が向上すると言うことだ」

 

その榊の言葉に薄々分かっていたジン達は勿論のこと、少し苛立っていたロックヘッドも沈黙する。ジン本人は謙遜しているが、彼はこの極東支部でもかなりの実力者だ。そんな彼が対応が間に合わないと言っている速度から更にもう一段階能力が向上するのであれば……。

 

 

そう沈黙した彼らに更に追い討ちをかけるように榊は更に口を開く。

 

「更に言えば、今回の作戦でマルドゥークの感応能力を特異種は手に入れた筈だ。

スパルタカスは周囲のアラガミのオラクルを吸収して自己を強化する能力を持ち、そしてマルドゥークは周囲のアラガミを呼び寄せる能力を持つ……となれば特異種は自身を強化するために必要なオラクルを供給する手段を得たことになる」

 

それに、と更に付け加えるように特異種は周囲のアラガミの攻撃対象を集中させることができるイェン・ツィーの能力まで有している事を話す。

これによって特異種はほぼ確実に自身に有利となる状況を作り出すことが出来るようになってしまった。

 

まだ捕食されていない感応種や、接触禁忌種など現在の特異種であれ苦戦するであろう強力なアラガミは数種類は存在している。だが、それはあくまでも『苦戦するだけ』であり『倒せない訳ではない』。

それに苦戦するのは1対1の状況であればの話であり、アラガミにしては異様とも言える程の賢さを持つ特異種であれば、前述した感応種の能力や他のアラガミの力を使い、自分な有利な状況へと持ち込み倒してしまうだろう。

 

そうなれば再び特異種はそのアラガミを喰らうことで力をつけ、ますます容易に討伐することが出来なくなる存在へとなってしまう。

 

 

かといって今から特異種を討伐する為にリンドウ達を呼び戻し、極東支部総出で事に当たるとしよう。

それならば特異種を討伐できる可能性は非常に高くなるが、今は敵対する意思を──こちらが分かる範囲でだが──一切見せていない特異種だが、自分の命の危機が迫ればそれこそ容赦なく攻撃をしてくるだろう。

 

そうなれば残るのは特異種の抵抗によって疲弊した極東支部。決して今ここにいるジン達以外が弱いとは言っているわけではないが、接触禁忌種や感応種などの対応が限られてくるアラガミを相手にするには不安が残るだろう。

 

 

それこそ今回のようなアラガミの大群が迫ってきた際に、なすすべもなく蹂躙されてしまうかもしれない。

更に言えば、いま彼らを呼び戻せばリンドウ達が進めている『レトロオラクル細胞』の研究だって進むことが無くなる可能性だってあるのだ。

 

 

 

いま目の前に置かれた手札は『広がる可能性を捨て、癌になりえるモノを排除する』か『癌になりえるモノを見逃し、それらを広がる可能性に任せる』かの2枚。

切れる手札は1枚、それをすればもう1枚は恐らく消えてなくなってしまうだろう。

 

特異種を被害を少しで討伐でき、レトロオラクル細胞の研究も進み可能性が広がっていく……なんて全てが上手く行き、丸く収まるなんて事があるかもしれない。

だが、それを信じ、実際に行動に移そうとする程、この世界のペイラー・榊はロマンチストではなかった。

 

 

 

 

しかし、打てる手は打たなければならない。

今後自分達が出来る事は限られてくるだろう。

だが、それでもしないと言うわけにはいかないのだ。

 

榊はジン達へ、出来る限りいつもの笑みを浮かべながらこれからの方針を伝えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ハンニバル特異種》

 

素材名 : ???

 

攻撃属性 : 炎・氷・雷・神

弱点属性 : 不明

 

結合崩壊部位 : 既存種と同様とみられる

 

 

【概要】

極東支部にて観測されたハンニバルの変異種であり第一種接触禁忌種。

本個体は数年前にフェンリル独立支援部隊『クレイドル』所属の雨宮リンドウが交戦したと思われるハンニバル神速種が何かしらの要因で変異し、復活した個体と思われる。

 

 

本個体は外見的特徴としてまず神速種と同様の体色に、通常片腕にしかない籠手が両腕にあることに加え、太腿に当たる部位がシユウ神属のものと酷似しており、ヴァジュラ神属にみられるマントと同様の器官が背部から見られる。

このアラガミは捕食したアラガミの特性や攻撃属性等を吸収することが出来るため、前述の外見も該当するアラガミを捕食したことで得たものと思われる。

 

また、何らかの要因で接触禁忌種であるディアウス・ピターの翼、そして禍々しい天輪を出現させることがあり、この状態になれば無差別に周囲を破壊するようになるため直ぐ様撤退をするように。

 

 

主に通常のハンニバル同様体術や炎を武器のように扱い攻撃してくるのだが、その速度が通常よりも遥かに速いこと。そして属性が炎の他にも3属性が追加されていることを覚えておかなければならない。

また、通常のハンニバルよりも炎や他の属性に扱うことに長けており観測されただけでも

 

・炎を縄状に変形させ攻撃対象を締め付ける。

・離れた距離から動作なしで属性に応じた槍等を出現させる

・ヴァジュラ神属のように属性に応じた、もしくは2つ以上の属性を含めた球を生成し、放ってくる。

 

等があり、近~遠距離に対応しているためこれと言って有利な距離がない。

 

 

また、このアラガミは神機を捕食することもあるために任務中に遺された神機を発見した場合は、出来る限り回収することが望ましい。

 

更にこのアラガミは尋常ではない程の回復能力を有しており、結合崩壊を発生させても一定時間の経過及び他のアラガミを捕食することで、結合崩壊部位を回復させる可能性が考えられる、ゴッドイーターが使用するアイテムについての理解を示しているようであり、現在判明しているだけでも【スタングレネード】と【ホールドトラップ】は仕掛けても通常では回避される事が判明している。

 

 

上記の事からこのアラガミは現在の極東支部では討伐が不可能と断定されており、更に『ゴッドイーターに対しては今のところ敵対する事はない』と判断されているため、発見したとしても直ぐ様に攻撃を行うことは禁止されている。

しかし、本アラガミをこれ以上進化させることは危険な為、下記に記載されているリストに無いアラガミを捕食しようとしている場合は捕食対象となっているアラガミの誘導や、アイテムを駆使した捕食の妨害を行う必要がある

 

 

また、このアラガミが現在捕食していると思われるアラガミのリストを掲載するので、ゴッドイーター及びオペレーターは随時目を通して置くように。

 

シユウ神属

・シユウ

・セクメト

・イェン・ツィー

 

ヴァジュラ神属

・ヴァジュラ

・ディアウス・ピター

・プリティヴィ・マータ

 

ハンニバル神属

・スパルタカス

 

ガルム神属

・マルドゥーク

 

サルエル神属

・サリエル

・ニュクス・アルヴァ

 

 

 

 

 

 

 




今回も最後まで読んで頂きありがとうございます。

主人公に対する極東支部も対応がほんの少しずつ変わってきていまして、色々と苦労しそうですが、まぁ仕方ないですよね。

いつかは主人公がゲームに実装された場合の解説とかを書きたいなーって思ってるんですが、需要がなさそうなので多分最終回以降になるんでしょうね。
その為にも最終回までたどりつけるように頑張りたいと思います。ルインとのイチャイチャも書きたいですしね。


……魚介さんの企画に参加したい。でもやったらネタバレに。


ではまた、次のお話で。

後日談的なのをネタバレ覚悟で先に書いてしまっても

  • 構わんよ
  • やめろぉぉぉぉぉぉぉ!
  • ネタバレしない程度にお願い
  • そんなことより更新頻度を高めるんだっ!

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