三代目火影・猿飛ヒルゼンと同期に、『教育界の火影』と呼ばれた男がいた。男、三嶋フウレンは特別上忍かつ高い実力の持ち主であったが積極的に前線に出るタイプの忍者ではなかった。第三次忍界大戦でも滅多に前線に出ることはなく、たとえ出る時があっても参謀として指揮官の隣で用兵の役目を負っていた。その手腕は天才的で、彼の部隊には一人も事故や病気以外の理由で亡くなる隊員が居なかった程だ。第三次忍界大戦後は実戦を退き、九尾襲来事件までは忍者アカデミーで一般教養の教鞭を執っていた。九尾襲来によって里が大きく破壊され、更地になった部分が沢山あった。忍者という職業に就く人間は一般に、精神的にも「強くある」ことが当然、常識とされていた。カウンセリングを受けるなともってのほかという考え方が根深かった。しかし彼はタブーを打ち破り、メンタルケアを行うことを三代目火影に進言した。彼らは同年代、同じ場所で教育を受けた同期生だったのだ。当時はまだ『静かなる参謀』『昼行燈先生』と呼ばれていた彼だが遂に沈黙を破り、声を上げ、里の復興と同時に教育制度の大改革へと乗り出していった。三嶋フウレンの提案した教育制度では、若者が忍者として正式に戦場に出るのは16歳。代わりに定員が大幅に増加し、個々の能力も劇的に向上しているはず。
しかし、そんな最初の卒業生が出るまであと何年が必要なのか?
そうこうしているとまた一人、『組織の改革者』と呼ばれる男が現れた。彼もまた、三代目の同期生であった。男、竹中ハルシゲ特別上忍は当時の存在する兵力を最初から立て直して全く別の忍者組織へと改編した。木ノ葉隠れの指揮系統が整い、戦時中に存在していた参謀本部が常備するものとして再編されたのだ。
続いて、一人の民間人医師が忍者組織の衛生部門に意見を始めた。彼ら3人は『木ノ葉改革三羽烏』との異名を手にし、やがては失ってしまった里の人口を補填すべく下忍たちに難民や孤児を探してくるよう命じた。よって里は年齢ピラミッドが大きく乱れながれも人口を取り戻し、子供たちの笑顔や歓声が溢れる場所へと変化した。
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菅沼実――三嶋フウレンは転生者だった。漫画NARUTOの世界ではなく、NARUTOが漫画として存在する世界からの。フウレンは愛知県北東部にある旧家に生まれて県立教育大学に進学、卒業。奥三河にある故郷周辺で高校教員(地理歴史科)の採用試験を受け、教育レベルに不安がある地元のために尽力した。若くして校長先生を務めたのち、教育委員長を経て退職。卒業後は孫を可愛がりつつ研究に励み、孫の勧めでそれまで読まなかった漫画に手を出したのだった。
そこで彼が感じたのが、木ノ葉隠れの里の教育に対する疑問だった。作中での描写は少ないが、民間人の生活が里の中にある。忍者アカデミーしか教育期間が存在せず、教育の自由が民間人には存在していない。それでいて民間人の家系や家庭というものがあるのだから、一体この里はどうやって労働に関する技術を教育されているのか?教養教育はどうなっているのか?漫画の中の世界だというのに、彼は疑問が尽きなかった。NARUTOの他に孫から教えられたのが、異世界転生ものだった。衰えつつあり、病気に蝕まれる体の持ち主として、死んでから異世界転生してNARUTO世界にでも行けたら面白そうだと思ってみた事もある。まぁ、それが現実になってしまったのがこの原作とはかけ離れたNARUTO世界だったのだが。
フウレンが生まれた家は、マイナーな秘伝忍術『鬼御影の術』を継承する転生者が興した家系だった。一族間は殺し合いとは無縁なほど仲が良く、迫害から逃れるために晶遁の技を磨きあげてきた。三嶋一族の家紋は『クスノキ』。樟脳の原料となり、蟲を避けるが同時に毒性もある結晶。鬼御影とはペグマタイトの事だ。土遁の中でも成分を操作したり取り出したりする能力に長けており、岩石中から石英だけを纏めて攻撃に用いる。けれど、元から無いものはいじりようがないのが実情。
本当は血継限界ではないのだが、そう思われている。だから便宜上・晶遁と自称している。つまり写輪眼にコピーされたらバレバレだ。
その結晶が美しかったから幾度も利用されかけ、その度に逃げていた。その結果、三嶋一族は『流浪の民』『山の民』といわれる集団へと変わっていた。岩から血漿成分を取り出して武器にするだけでは生きていけないので、陰の性質のチャクラを生かして幻術の使い手でもある。狼の一族と口寄せ契約し、狼と共に山を駆ける姿と撤退戦の上手さから、なかなか有力氏族たちからは正体を見抜かれなかった。時代が下ると、日向や油女、嗅覚に優れて忍犬を使役する犬塚一族からは正体を見抜かれるようになった。
三嶋一族は木ノ葉隠れの里が出来ると聞くと、すぐさま里に移住する手続きをした。木ノ葉隠れでは三嶋一族は差別も迫害も受けず、三嶋一族から出た別の一族が興した諏訪一族と共にマイナー血継限界一族として頑張ってきた。
当然のように忍者としての道を歩き、戦争に参加し、気付けば地味ながらも英雄の一人に数えられるようになった。三代目火影となった猿飛ヒルゼンと友情を築きつつ志村ダンゾウを上手く出し抜き、少しでも大変な目に遭う若者を減らすべく頑張りつつ、どうにか里の教育を変えたいと心に秘めつつ最初に『英才教育学校』を提案・した。手始めに、優秀過ぎて浮きこぼれてしまう子供たちを忍者志望者・民間人のどちらも救えたら良いと思ったのだ。
やがて、木ノ葉隠れは九尾の襲来によって壊滅状態となった。四代目火影の死により、三代目火影が火影の座に戻った。復興中だというのに、里に対しては容赦なく依頼が入ってくる。異例の事だが、木ノ葉は一度、最強の里という肩書を返上して里の復興に集中することにした。教育制度の改革・全部隊の再編・都市計画の変更。福祉制度を見直し、戦災孤児の生活を保障した。それは九尾が封印されたうずまきナルトに対しても例外ではなく、うずまきナルトが3歳になり火影直轄一貫制忍者学校の幼稚園に入る頃になってから少年の両親が波風ミナトとうずまきクシナであるという事実と人柱力であるという知識の里人への教育を開始するという決定がなされた。
フウレンがやりたかった事。それは木ノ葉隠れの忍者を増員すること。忍者登録番号から計算すると大体、1年間に忍者学校を卒業して下忍になるには大体200人。定年退職者と殉職者、怪我をして戦闘不能になった者は合計500人弱にも上る。これから平和な時代が訪れるといっても、ヒルゼンは採用人数を減らす事によって平和な世の中にしようとしていくだろう。でも、その選択は人手不足を招くことになる。
そんな話をヒルゼンにしつこいほどし続けた結果、遂に限界を迎えたヒルゼンは『忍者の教育・採用』という大きな役目をフウレンへと完全委託する事にした。
焼け野原のなか、フウレンは都市計画に詳しい『転生者』それから千手一族の大工仕事に詳しい者たちと一緒に里の復興計画の中に『忍者教育施設群建築計画』を盛り込んだ。
男―三嶋フウレンは穏やかに眠る金髪の幼児の髪をそっと撫で、もうすぐ始まる幼稚園生活に思いを馳せる。可愛い孫が、この子が、名前も知らない里の子供たちが健やかに成長できますように。そう願いながら、瞬身の術で家族の待つ家へと向かった。