『木ノ葉中央 火影直轄忍者アカデミー』第1部隊、総員90名。全員が木ノ葉隠れの額当てに任務着姿で里正門の前に並んでいると、保護者達が子供を見にやってきた。保護者達の中には俺の父方である波風家の人もいて、ちらりと俺を一瞥した。時折俺にお小遣いをくれる人だ。サスケの親戚であるイズミ姉ちゃんと扇城家当主はサスケの見送り。猪鹿蝶トリオの父親たちは当然のこと、日向一族の当主もいる。ただし、当主モードではなく父親モードの顔で。だから、俺は何だか安心した。日向ネジ先輩だけは当たり前のようにピリピリしているが。
任務着に身を包んだ忍者合計90人が一堂に会し、最初に俺たちを「制服着たガキ」と言ってきた依頼人はその雰囲気に圧倒されたのか今日は何だか静かだった。今回の任務内容は『護衛』『情報収集』『治安維持』。それぞれ学生たちは依頼人の家だったり、波の国内の宿泊施設だったりと、違う場所に泊まって国内で情報収集と治安維持任務を行う。そして、最終的には上忍である先生方が逮捕すべき人間を捕まえる。この任務では木ノ葉隠れからのお金が沢山動いている。お金の流れを観察し、どこに行きつくのかを調べるのも任務兼訓練の目的だ。一言でいえば、疑惑の大富豪ガトーの真実を暴くこと。これが、この任務兼訓練の目的だってばよ。
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依頼人を守るようにして、第1部隊の学生と教師たる上忍たちによる感知能力を使った護衛任務が始まった。その道程でオレたちは水たまりから出てきた抜け忍と対峙し、捕縛した。捕縛された抜け忍は木ノ葉隠れへと近くを通りかかったある特別上忍によって送り届けられ、俺たちは目的地への歩みを続けた。
そして、波の国に入国してから出会ってしまったのが桃地再不斬という霧隠れの抜け忍。本当の戦場を知るヤツは俺たちをぐるりと見渡してからこう言った。「木ノ葉隠れも甘くなったものだな」と。どんどん濃くなっていく霧の中、感知能力を持つ者はその能力をフル回転させて気配を探った。ここには写輪眼・白眼の持ち主だけではなく、犬塚キバ・油女シノ・山中いのといった感知に優れた家系の出身者も無数にいるのだ。俺もまた、殺気の出所を全神経を集中させて探った。そうこうしている間にも、カカシ先生が水牢の術にとらわれてしまった。
「だ、誰か土遁の使い手はいないのか!?」
3年生の先輩の叫ぶような声に呼応するように、湖の水面から透明な結晶の槍がせり出してきた。ソレの先端に片足立ちし、その同期生は両手を交差させて印を結んだ。
「土遁・珪化玉柱(けいかぎょくちゅう)!」
土遁と風遁に優れた家系、三嶋一族の次期当主である三嶋トウヤ。任務で雪の国に行ったアザミと同い年である”いとこ”で、大人たちも期待する土遁の使い手だ。
その攻撃的な蛋白石(オパール)は一瞬にして細かくなって再不斬を襲い、それがキッカケとなって先生方がヤツを倒せるかと思ったその瞬間。ヤツは木の上から小柄な性別不明のヤツによる千本での攻撃に倒れた。そして、ヤツの遺体は仮面を被った小柄なヤツ(性別不明)によって運ばれそうになったのだが。サクラちゃんが、その怪しい点を指摘してソイツは遺体を担いだまま立ち止まった。
「貴方、”追い忍”でしょう?普通追い忍は遺体をこの場で処理するわよね。でも、貴方はそうしない。つまり、貴方は彼の仲間。そして、貴方自身もどこかの隠れ里に所属している訳ではない抜け忍かそれに準じた存在。そうでしょう?」
「全くその通りですが、・・・あなた方は一体何者なのですか?」
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雪一族の白(ハク)と名乗った仮面の”少年”がした質問の意味。それは、文字通りの意味とは異なっていた。白は俺たちが木ノ葉隠れの里所属の忍者であり、アカデミー在学中の学生部隊である事は服装などから推理していたようだが。うちの里の新しい教育制度は忍界に知れ渡っているようで、とても有名なようだ。
白が驚いていたのは、うちの里の教育内容について。本来ならば忍者として経験を積んで学んでいく知識の多くを、俺たちが学ぶカリキュラムにはそれが含まれているからだ。
「そして、本題はここからです。僕たちにガトーから給料が支払われない可能性がある・・・、とは、どういう事ですか?」
白はカカシ先生たちに話を振った。木ノ葉隠れの里の情報収集部隊によれば、ガトーは雇った抜け忍を使い潰し、挙句には契約した筈の給与を払わなかった事例が多々あるそうだ。この任務を里が請け負った時点で、既に里はこの事を突き止め、こういう会話が行われることまで予想までしていたらしいのだからすごいと思う。カカシ先生は白に対し、今の時点で里がある大名の依頼で既に突き止めている、明かすことが可能なガトーの情報を話した。すると白の喉が動き、ゴクリと唾を飲み込んだのが見えた。
「これでは僕たち・・・、ここで働く意味が無いじゃないですか」
「そうなるね」
やがてカカシ先生は「護衛任務に戻れ」と俺たちに言い、大人たちと白だけの話し合いを始めた。
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アカデミーの授業で部下を率いるということに慣れている3年生の先輩方と一緒に、オレたちは波の国の市街へと足を踏み入れていた。先輩方はきっちりとそういったことを学んでいるだけあって、その技能は普通の中忍と遜色ないように感じた。
2・3年生の宿泊先は野営地だが、1年生は橋の建設に関わっている人たちの自宅だ。オレ・サクラちゃん・サスケの3人と、今回の任務兼訓練の責任者であるカカシ先生は代表者であるタズナ氏の自宅に宿泊する事となった。タズナ氏の家には彼の娘であるツナミさん、そして孫息子のイナリが一緒に住んでいる。どうして1年生がホームステイなのかというと、これには『異文化の理解』というテーマがあるからだ。大歓迎を受け、夕食を食べながらタズナ氏とツナミさんからこの国の文化と歴史について話を聞くことができた。もちろん、ガトーカンパニーによる支配についても。訓練を兼ねてはいるが、オレたちは任務をこなすため波の国にやってきたのだと俺はイナリに話した。だが、イナリは言った。「勝てっこないよ」、と。
一瞬プチっときたけど、俺はこれでも一応中忍に、指揮官になる事を期待される立場の学生なのでしっかり抑えてから反論した。「オレたち木ノ葉は勝ち目があるから波の国に来たんだぜ?」、と。戦闘とか戦闘というものは感情論でどうこうなるものじゃない。根性だけじゃひっくり返せない状況なんて沢山あると、アカデミーの戦争史の授業から学んだ。サクラちゃんもサスケも、同じように真剣な顔をして頷いていた。
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波の国の最近の歴史を教えてもらう上で、ツナミさんとタズナ氏からはイナリの父親であるカイザさんについても聞いたからイナリの苦しい気持ちも分かるが。俺たち学生にはやらないといけない事がいくつもあるので、あまり彼には構っていられなかった。最初は弱音を吐いていたイナリだったが、朝早くから訓練へと出ていく俺たちを見て何か思うことがあったらしい。カカシ先生に対し、「武器の使い方を教えてほしい」と言い出したのだ。先生はそんなイナリに対し、まずはここからだと基礎体力をつけるトレーニング方法を教え始めた。するとツナミさんいわく常に沈み込んだ状態だったらしいイナリは溌溂としはじめ、まるで別人のようになった。俺たちがこの家に滞在するようになって、僅か2日でコレだ。筋トレと運動の力ってすげー!
「ところでカカシ先生。白と桃地再不斬はどうなったの?」
すっかり忘れていた事をサクラちゃんがついに先生に質問した。
居間の空気が一瞬だけ張り詰めた。
「あぁ、あの事か。明日正式に発表するが、あの二人はこちら側につく事になった」
「えぇぇ!?」
「それは本当か!?」
「どうしてですか!?」
先生の予告通り俺たちは翌日には全員で集まって方針説明を受けた。まず白と桃地再不斬の二人はこちら側につき、この任務が終わったら木ノ葉に身を寄せるという事。次に、ガトーの支配を終わらせるため波の国と親交の深い火の国の大名から正式に依頼が来たという事。後者については、木ノ葉から暗殺戦術特殊部隊が援軍として派遣されてくるので直接的な暗殺は行わないそうだ。オレたち1年生が任されるのは、民間人の安全確保と抜け忍を捕縛または殺害するための戦闘支援。その為に、これからフォーメーションや戦闘支援の訓練を本格的に開始するという。俺の隣に座っているヒナタが緊張で唇が白くなっていたので、そっとその手に俺の手を重ねる。
「ナ、ナルト君・・・、ありがとう」
「無理すんなってばよ、ヒナタ。手、めっちゃ冷たいぜ」
ヒナタがこうなってしまっている理由。それは明確だ。
これから訓練を本格的に行うに当たり、先輩後輩入り乱れたチームが結成された。ヒナタ・キバ・シノが入れられたのはネジ先輩がいるチームだ。ちなみに俺たちも同じチーム。ヒナタが後輩として教えを乞う相手はヒナタが一番恐れる相手の一人。それを感じ取ったのか、日向ネジ先輩もこちらに不敵な笑顔を向けてきた。