6月終わりの早朝、里在住の保護者がいない子供たちが入る寮の食堂にいる俺はイライラしていた。なぜなら昨日の夕方、砂隠れの姉弟と会ったからだ。
俺・サスケ・サクラちゃんの3人はカカシ先生からのお遣いを頼まれた。その時、彼らに絡まれていた木ノ葉丸たち3人組を助けた。俺たちは試験に参加するのかと問われ、「忍者学生だからしない」と返した。本当の事だから。すると、傀儡遣いの長男に鼻で笑われた。でも、そこで感情を露わにする俺たちではない。大人の対応をした。この対応こそが木ノ葉隠れの学生忍者の特徴であって、同時に誇りでもある。
「ナルト。昨日の事は忘れようぜ」
「そうよ、ナルト。私たちにはもっと大事な用事があるじゃないの」
「そ、そうだな・・・!」
二人もそう言うので、俺は気を取り直しておかわりのご飯をよそうべく立ち上がった。
中忍選抜試験。それは下忍の中から中忍を選抜する、時に命をかけた重要な行事であり、同時に忍者にとっても通過儀礼ともいわれている一台行事である。その行事は通常里一つの単独開催、または他里と共同開催で行われる。今年の中忍試験は砂隠れとの共同開催で、木ノ葉隠れを会場として行われる。多くの人間は知っていると思うが、中忍とは部隊の指揮官である。だから、その資質ややる気、適性が無い者を昇格させる訳にはいかない。そこで火の国と木ノ葉隠れは忍者の地位について徹底的に見直した結果、下忍の地位の拡充を図ることに決定した。結果、アカデミー生である13~15歳の者は『後期』である試験を受けることになっている。前期で成人者は卒業生を積極的に出していくためだ。卒業すれば前期と後期、どちらも受けるチャンスが出てくるけど。オレたちアカデミー生の受験は後期までお預け。まぁ、受ける権利を手に入れたからラッキーかな。
火影のじっちゃん曰く、共同開催の中忍試験は『戦争の縮図』でもあるから特殊な教育制度を取るこの里について知りたい他国の大名や忍者が沢山訪問しているという。そこで考案されたのが、アカデミーの学生が参加する7月4日から6日の三日間に渡って行われる国外向けの『学校見学会』である。中忍試験はといえば、サバイバル演習というものをやる予定だという。この見学会では別段特別な事はしないが、それぞれ各人員が「自分こそがこの里の代表である」という思いで過ごせと通達されている。
この中忍選抜試験の第一次試験が終われば、次は8月初旬に第二次試験が待っている。俺たち『忍者学生』たちは8月前半から8月後半にかけて3週間の夏季休暇が待っている。外泊禁止の俺たち1年にとっては初めて実家に帰れるので、存分に修行する予定である俺にとってもウキウキである。ちなみに、夏季休暇でも完全なる私服は禁止。国立あるいは里立アカデミーが出しているTシャツの着用が求められる。いついかなる時も学生忍者であると分かるように、嫌でも自覚を持たされるようにするのだ。
夏休みが終われば新学期。1学期で本格的に弱点や得意な点を見つけられているため、中忍選抜試験の受験決定者は放課後に『特別突貫コース』で鍛えられる。担当はそれぞれのクラス担任。嫌な予感しかしない。オレ、生きて試験を受けられるのか?
サスケが言ってたカカシ先生の訓練・特訓はおそろしいから。
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ところで、火の国の忍者部隊――正しくは『国防部門職員』には忍者ではない人間もいる。『事務官』『技官』である。どちらも採用試験を突破して採用され、忍者アカデミーからではなく忍具科を含む5年生の高等専門学校や総合学科の民間人学校、行政・会計・国際関係・情報・機械工学・土木などを学ぶ”大学”。木ノ葉隠れは忍者の里だけあって、殆どの民間人学校卒業生が『公務員』になっていく。
俺たち1年生はこの学校見学会で、里内にある企業が設立した民間人学校との共同授業を他国の人々に見せる事となった。私立木ノ葉平和工業高等学校は職人を養成する製作デザイン科、そして忍具職人を養成する忍具制作科の2学科を設置する企業内高校だ。扇城屋は私立一貫校である『私立平和学園 初等・中等・高等科』という男子校も持っているが、同時に民間人のための工業系私立校も設置している。前者は完全に私立だが、後者は忍具制作科という特性から半官半民の組織である。しかも、普通の民間人学校とは一味違う。学生の年齢が結構バラバラなのだ。障害を持つ学生、元不登校学生、戦闘不能で忍者を辞めざるを得なかった者を積極的に受け入れている。中には知的な障害を持ちながらも手先が器用な学生が何年もかけて卒業し、企業にとって必要不可欠な職人になった例がある位だ。
「よろしくね、ナルト」
「ナルト。こういう任務でもまた同じ班だな」
「おう!」
いつもの3人組であるオレたちはワクワク気分で平和工業高等学校に来ている。
始めてやるタイプの任務なんだ。楽しくこなせたらいい。
「私たちが一緒に活動するのは、発達障害の仲良しトリオね。二人ともちゃんと資料は読み込んできた?」
「あぁ、大丈夫だ。3冊読んできた」
「オレもサスケと一緒に読んだってばよ!」
これから始まる、初めての民間との交流授業。学生たちがそれぞれ顔を見合わせて一列に並べば、漂うのは忍者アカデミーではありえない平和な穏やかな空気。ちらりと前の方に視線をやると、フウレン先生がにっこりとほほ笑んでいた。