・危険すぎるトラップまみれの釧路湿原だと考えていただければ
霧ヶ原湿原。それは忍軍演習場という顔を持つ巨大な湿原だ。トラップがそこらじゅうに仕掛けられていて、野生の熊が住んでいる火の国北部でも有名なデンジャーゾーン。かつては諏訪軍団が毎年恒例の武芸大会で主戦場に使用していたそうだけど、オレには信じられない。行方不明者が多いから諏訪軍団が公園レンジャーとして忍軍から管理を仰せ付かっていると、第77班の諏訪オカヤが説明してくれた。今日の夜1200丁度までに到着しなかったチームは締め切りらしい。第2の試験は翌朝から。だから、仮眠したり休んだりする時間は十分ある。
「お前ら、余裕そうだな」
「そーでもないよ。ちょっと面倒なピクニックだなって思って」
サスケとミサキ、いつもあまり見ない組み合わせで喋っているのは新鮮だ。
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300チーム900人という『可能性』を秘めた下忍が、トラップまみれの大湿原に解き放たれた。『天・地・人』3種類の巻物を揃え、目的地となる大湿原のはずれの『木ノ葉忍軍野外活動センター』を目指す。つまり、これで2/3が強制的に振り落とされる。こうなると100チーム300人にまで絞り込まれる。これは流石に多すぎるので、48チーム144人に絞り込むため、先着48チームだけが第3の試験予選に進めると試験官が言っていた。つまり、ただ巻物を揃えて目的地にたどり着くだけじゃいけない。中忍として、時間を無駄遣いせず任務をこなせるのか見たいんだなってオレは思った。
そうと決まれば、やるっきゃない。
絶対に合格してやるという思いを込めて、オレら第7班は木の上から休んでいる草隠れのスリーマンセルを待ち伏せからの奇襲をしていた。サクラちゃんが樹上から煙幕で攪乱し、サスケは写輪眼で居場所を見抜くサブアタッカーで、オレがメインアタッカー。
「草隠れだー!襲うってばよ!!」
「香燐さんの分よ、喰らいなさい!!」
「オラ、さっさと巻物を寄越せ!!」
オレたちは何となく知り合いから巻物を奪い取るのにまだ抵抗があったので、夏休みに出会った草隠れの香燐をいじめた罪を反省してもらうつもりで草隠ればかりをターゲットとして襲っている。草隠れのスリーマンセルは完全に湿原の地面にのびているのでサスケが巻物を漁ると、欲しかった分が全部そろった。
「意外と早く揃ったわね」
「残り30時間か。俺は早く目的地に行くべきだと思うが」
「オレもサスケに賛成だってばよ。早いヤツはめっちゃはええもんな」
今年度第1回目の中忍選抜試験は『死の森』とその中央にある施設を使ったらしいが、今回は耐震工事やら改修工事をやらないといけないという事で開催地が『木ノ葉忍軍野外活動センター』を使う事になったという話を聞いている。音隠れ関係で死の森の中もグチャグチャらしいし、整備が必要になったんだと。その施設については全く知らなかったため、この湿原に入る前にあった看板に書いてあるイラストしか頼りにならない。
湿原の中には『木道(もくどう)』というものが一応整備されているけど、あえてそっちを選ばない事にした。ご丁寧に「ここ通ってね!」となっているんだから、何も仕掛けてないワケがないじゃん。だから木道と並走する方法で、野外活動センターを目指す事にした。現に木ノ葉隠れの参加者たちの中でもこういった場所での戦い長けた者たちもそうしているんだから大丈夫だろう。
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『うちはイタチと未知のエリア』
忍界、長野県、また忍界と。『Uターン』で転生し、本来生まれた世界に戻ってきた形のイタチには悩んでいる事があった。イタチが長野時代読んでいた『NARUTOの原作』では、ナルトは自来也と共に里外へ修行の旅に出てしまうのだ。シスイの生存やイタチの健全な里での地位という時点で既に従来とは違う展開になってきてはいるが、イタチと同じ立場である伝説の三忍・自来也は今回、彼が孤児を拾って直々に育て上げた優秀な独自の諜報組織を保有している。木ノ葉隠れに所属する、正規の諜報部隊だ。
そのため自ら諜報活動に出ていく必要が減り、うちはサスケの警護とうずまきナルトの強化に集中する事が出来るようになった。五代目火影・綱手姫もまた、Uターンしてきて前世の記憶を持っている。日系アメリカ人4世としてホノルルに生まれた前世ではアメリカ陸軍の軍医として将官にまでなった女傑。軍事的なノウハウも医官だが持っており、前世で同じ高校の親友だった自来也とはよく行動を共にしている。春野サクラの強化につとめ、今回は春野サクラが幼い時にはもうスカウトして弟子にしていた。かなり一方的に。シズネも記憶があって、前世では綱手姫に憧れて医官として将官に上り詰めた経歴を持っている。シズネの前世は日本に生まれたので、入ったのは陸上自衛隊だったが。
うちはサスケは闇堕ちも里抜けもしなかったし、うちはイタチは志村ダンゾウなどと関係なく普通に里に戻ってきている。同じく前世の記憶と知識を持った親戚にして親友、シスイと共に。しかし、代わりにそのポジションに収まった者たちがいる。前世の長野で親戚だった星野輝瀬(ほしの かがせ)と弟の星野天都(ほしの あまつ)兄弟だ。二人は複雑な家庭の事情があり、片方は親戚に殺され、もう片方は不自然な自殺をして若くして命を落としている。天都は小学生時代まで仲が良かったサスケをライバル視し、中学生時代からは本格的に敵視しはじめた。引っ越し先の奥三河で短い生涯のなかで出会った信頼できる3人の友人を得たが、その全員が非業の死を遂げた。まだ二十代後半または三十代前半という、あまりに早すぎる死。
三嶋アザミ――滝川薊子は、彼女の地元の大手企業の工場に勤務する、数少ない女性社員だった。地元でもしっかりした家柄の家庭に生まれ、彼女自身ではなく彼女の父方祖父の家庭が複雑だったからか祖母の姓・滝川を名乗っていた。本来ならば九州由来の姓の筈だったが。どうにか生来の発達障害と折り合いをつけ、失言しないよう努力していた。しかし彼女に一方的な憎しみを向けるかつての同級生にして同僚に刺され、同じ事件でミサキと共に命を落とした。彼女の死そのものはミサキと違って故意の医療ミスだった。
稗田ミサキ――稗田三幸は、コミュニケーション能力と空気の読めなさを苦悩していたが持ち前の頭脳で防衛医科大を出て医官の研修をしていた。絶対音感を持ち、家を出て行った父と兄二人の間で苦しみながらも明るく隊員たちを診察していた。だが、後のアザミである薊子と同じ事件で亡くなった。
諏訪オカヤ――諏訪陸也もまた、友人たちと同様に生きづらいタイプの青年だった。人が良いのに加えていつも運が悪く、台風の災害派遣で部隊の仲間を庇って落ちてくる岩に押しつぶされて殉職。見た目と話した印象だけでいえば、100倍ノーといえない少年期のオビト。明るくて優しいムードメーカーだった。
あんまりな人生を送った、『前世の親戚とその親友たち』。イタチは前世の長い人生の中で、彼らについて考える機会が多かった。何もしていないのに、何も悪くないのに、命を落とした若者。その死因は戦争などではなく、誰かを助けたりするための行ったことが全て返ってきて起こった事。いつも発達障害というハードルを強いられ、重しを付けられる事が当然な人生を送り、突然幕を引かれた彼ら。
前世の忍界では存在していなかった概念に、イタチはたびたび本を手に取っていた。
『すべてが様変わりしてしまった忍界』へと舞い戻ってきたイタチは、イタチが舞い戻る前の世界出身者が息を潜めるようにして生きている事を知った。中でも強力な力を持つようになった転生者の氏族もおり、彼らは普通の忍者人生を送っているように見せかけて全ては『第4次忍界大戦での犠牲者を減らすため』だけに生きていた。日向ネジのように死ななくても良かっただろう者を救うためだ。それだけのために、長い年月をかけて準備を重ねてきた。そういった理由で生まれた氏族の中に、イタチが前世で親戚の子の親友たちだという事で気にしていた子供たちがいた。
稀少な晶遁を継承する『総鎮守』とよばれる三嶋一族の本家に生まれた三嶋アザミ、『氷の軍神』とよばれる諏訪一族分家末端の諏訪オカヤ、声をトリガーとした幻術に関する印をショートカットできる猿田氏族の稗田家に生まれた稗田ミサキ。
一族内では愛されて育っているが、何も知らない外部からは落ちこぼれ扱いを受けている子供たちだ。前世でつちかった大人としての精神年齢を持っているためか落ち着き払っており、不気味がられてもいた。確かに発達障害やら学習障害の傾向はある。しかし、それを補えるほどの幻術や忍術に必要不可欠な想像力を持っていた。ただし人間関係に行かせないだけで想像力に関しては相当なレベル。いや、妄想力か。
前世で救えなかった悔しさをバネにするように、里に長い諜報任務から戻ってきたイタチはそのスリーマンセルを鍛える事にした。幸い愛する弟のサスケははたけカカシ上忍に弟子入りしているし、はたけ上忍はまだうちはが存在していた頃にコピーしたうちはの火遁を教え込んでくれている。『原作』での千鳥といった術はもう一通りできており、病院での瀕死の偽装によって万華鏡写輪眼になって更には手術でそれは『永遠』になった。だから可愛い弟に関しては、イタチはかなり安心している。あとは『うちはに転生した前の世界を生きた者たち』が書き記しておいた『写輪眼図鑑』を使い、どんな万華鏡写輪眼になった星宮アマツと兄カガセともやり合えるようになっておく位だ。
五代目火影によって上忍に任命されたイタチが強引に割り込む形で結成された、『イタチ班』。本来ならば上忍師がつかない立場の忍軍附属中学校教育隊に所属する下忍なのだが、事情を悟った同じ立場の上忍たちに助けられてイタチは教え子を得た。教え子といっても、可愛い弟サスケと同い年でわずか5つ下。それでいて中身は30代なのだから、傍から見れば不気味で違和感があるだろう。それも当然だった。3人とも、肉体年齢より15歳くらい離れた相手と話してやっと会話が合うのだから。それでも、発達面のハンディキャップを考慮して修行をつける必要があった。
「幻術が得意なら、相手を足止めして時間を稼ぐ間に落ち着いて対処法を考えられるほど上手になろう。なら、まずは対瞳術の特訓がてら喰らってみてほしい。毎日チャクラを使い切る勢いでいこう」
「長い印が覚えられないのか。ならば、身体に染み付くように反復練習しよう。または短い印だけで戦えるようになろう。チャクラコントロール技術は流石だ。幼い時からやってきた下地が違う」
「諏訪も、三嶋も、稗田も、そういった特性を持つ者揃いだったようだな。血継限界の術を発動するための印が限界まで短縮されている」
「短期記憶(ワーキングメモリ)が弱いのか。他の者よりは長期記憶に割ける部分が多いんだろう?そちらを積極的に利用していこう」
「運動協調障害と、筋肉の張りの弱さが動きをぎこちなくさせている・・・。こうなったら体幹を鍛え、補いきれないグラつきを速さへと変えていけばいい」
そうやってイタチは3人に修行をつけ、中忍選抜試験の時期がやってきたと同時に推薦書を提出した。もちろん、かなり自分に自信がついた3人も乗り気で。自信がつくと才能は花開くもので、まずは第1の試験をこれまで行われた木ノ葉隠れ開催のデータをもとに突破して来いと激励してやった。
(ベストを尽くしてこい、イタチ班。君たちならきっとやれる・・・)
イタチは教え子たちを寒い朝、婚約者のイズミと共に見送った。
前世の長野県民時代に見たアニメの主題歌を思い出しながら。
逸材の花と、挑み続け咲いた一輪。
あの子たちはどちらだろう?